ドールズフロントライン4.3 -IRIS- 作:仲村 リョウ
「SOPとAR15。体はもう大丈夫か?」
「うん。この通り思いどおりに動くよ」
SOPは笑顔のままそう言うと片腕を回した。
「よし………諸君、静粛に。これからブリーフィングを始める」
暗くなった部屋に投射モニターを映し出し、ブリーフィングの内容をマップと共に表示する。
「先日の戦いに参加した部隊はご苦労だった。破壊された者がいなくてなによりだ」
「指揮官は大丈夫だったの?」
「ああ。軽い切り傷や打撲だけで済んだ」
報告書などをまとめてから自室に帰ってからシャワーを浴びたが全身のあちこちから痛みが走ったのは言うまでもない。
「話を戻して、昨日の巡航ミサイルの件についてだが………ヘリアンから詳しい詳細が送られている」
俺はそう言うとモニターの画面を切り替える。
「昨日俺たちに向けて発射された巡航ミサイルはS14地区から発射されたと見ている」
「そこって極寒の大地じゃない」
S14地区とはここS09地区より上にある場所だ。
「種類は
俺達も損害を出したとはいえ、全員生き残っているのは奇跡というか悪運が強いというか………まあ、どちらでもいいが、損失するような被害が出なかったのはいいことだ。
「俺達を消し去るなら通常弾頭でもよかったはずだが………奴らはそうしなかった。そこは気まぐれなのかあえてそうしなかったのか………まあ、過ぎたことを考えても仕方ない。それに、問題は鉄血の奴らが巡航ミサイルを所持していることだ」
「もしかしたら、人間が協力している可能性もありますね………」
「その通りだM4。俺も同じことを思ってる。鹵獲されたとなると納得できるが、正規軍からも奪われたという報告は受けていない。そうなると、あんな高度で精密なものを作れるのは技術者である人間が関わっている可能性が大きい。もしかしたら、イントゥルーダーが俺をスカウトしてきたのも何かしら理由があると見ている」
その言葉を聞いた人形達はざわめく。まあ、無理はないな。
「ミサイルの件に関しては正規軍と合同で調査を進めているらしく、判明次第連絡がくる手はずだ…………そしてもう一つ、ヘリアンから同時に任務の内容が届いている。詳細は制圧任務だ。S09地区から東へ行ったところに敵の司令基地からあることが判明した。規模的には大きくないものの抵抗は予想される。かといって俺達の敵じゃない。その為、ハンドガン、サブマシンガンとアサルトライフルを中心とした部隊で制圧を行う。期間は指定されていないが、ミサイルの脅威もあるため3日以内には終わらせる予定だ。部隊編成の内容は後日知らせる………ブリーフィングの内容は以上だが、なにか質問があるものは?」
「はい」
左側にテーブル上へ座っていたスコーピオンが手を挙げる。
「昨日鹵獲………じゃなくて、拘束した鉄血工造の人形はどうなってるの?」
「今のところペルシカの検査待ちだ。それが終わり次第、俺が尋問を行う予定だ。そこで不審な点がなければ、晴れて無罪放免………というわけじゃないが、保護する形だ」
「信用できるの?」
「さあな。だが、信用できるかできないかはアイリスがなにを語るかだな………他には?」
静まり返るブリーフィングルーム。どうやら誰も質問はないらしい。
「よし、ブリーフィングは以上だ。行動があるまで各自自由にしてくれ。以上解散」
俺の言葉と同時に投射モニターは消され、部屋は照明で明るさを取り戻す。同時に集まっていた戦術人形達は雑談をしながらもブリーフィングルームから退出していく。
「指揮官。この後のご予定は?」
片手にファイルを手に持つと、前の席に座っていたスプリングフィールドがこちらへやってきて話しかけてくる。
「ペルシカの所へ行って検査の報告を聞きに行く。その後、さっきも話した通りにアイリスの尋問を行う予定だ」
「そうですか。なら、私は作戦の立案でもしておきます」
「ああ。そうしてくれると助かる」
今回の任務以外にもやることがあり過ぎて正直オーバーワークすぎて困っていたところだ。その中でスプリングフィールドの補佐ぶりには感心する。副官としての働きぶりは誰もかなわないと俺は思っている。
(さてと………ペルシカの元へ向かうか………)
-side Ethan-
昨日、カリーナさんから『指揮官様は本日多忙ですので、後日以降だとありがたいのですけど………もし、多忙でなければ宿舎も貸してくれると言っていましたのでどうなさいますか?』と言われたので急かされている仕事もないため、僕は言葉に甘えて泊まらせてもらうことにした。普通なら追い出されているところだが、ここは懐が大きいようだ。指揮官には感謝しないといけない。
そして、翌朝となり僕は食堂へとやってきていた。ここではクルーガー社の社員や戦術人形達が混じって食事を行なっている。どうやらここにいる人達は戦術人形に偏見を持たない人達が多く見受けられる。人形達も食料を食べることで精神状態などを維持していると社員の人達から聞き、僕達人間とさほど変わりがなのだと改めて思ってしまう。
そう思いながらトレーに乗せられた食べ物をスプーンですくい、口の中へと運ぶ。街中のレストランで出されるものより味はマシだが、やはりどこか素っ気ない味だ。
贅沢は言えない。こんな世紀末のような世界では作物や家畜なんて一部限られた地域でしか育てられず、野菜も肉も種類問わず高級品だからだ。最後に肉を食べたのはいつだろうと思い返せるのはいい思い出と言っていいのだろうか?
しかし、他所からやってきた人に食事を提供してくれるのもここの指揮官のおかげだろう。以前に他のPMCの基地へ取材へ行った時なんかMREをそのままトレーに乗っけられただけとか、時には栄養ブロックや水すら与えてくれないところもあった。
他の基地と違って空気が張り詰めていないのが不思議だ。普通なら話しかけるだけでも嫌な顔をされるのだが、ここの社員達はみな快く話をしてくれる。それだけグリフィンの景気はいいみたいだ。
(どうりで他のPMCの顔が渋ってる訳だ………)
話を聞く限りだと今いる指揮官が来てから鉄血工造との勝率が上がったらしい。指揮官として就任してばかりだというのに不可能だと言われた作戦を成功させたことから評判はよくなったという。
だが、その中でもよく聞くのが指揮官が自ら前線へ出て戦うのだとか………最初は僕もそんなバカなとは思ったが本当のことらしい。そうなれば昨日ヘリから降りてきた人間の男性と思われる人物はこの指揮官だったのだろう。まさか不在の理由が前線へ出ていたと分かると驚愕してしまう。
だからこそ、僕のジャーナリスト魂が熱くなっている。
衛生兵の事とは別にあの指揮官のことも気になり始めていたのだ………