ドールズフロントライン4.3 -IRIS-   作:仲村 リョウ

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人間が全員貴方みたいだったら今みたいにはならなかったのかな?


案件1-7:尋問

ペルシカがいる部屋までやってくると、薄暗い部屋の中で彼女はコーヒーを啜りながらパソコンのキーボードを淡々と叩いている。

 

「ペルシカ。検査は終わったのか?」

「ん?うん。さっき終わったところ」

 

俺が声をかけるとペルシカはいつも通り気だるげに言葉を返した。

 

「どうだったんだ?」

「ん~……特に以上は見当たらなかったよ。ウィルスを仕込まれた形跡や追跡装置等の機器も見当たらなかった。彼女………アイリスだったかな?アイリスの言う通り、同じ鉄血でも追われていたのは本当みたい」

「そうか」

「傷もあったから一応治しておいたよ」

「………改造してないな?」

「Vectorに見張られていたし、してない」

 

まあ、それを聞けてよかった。でなければ16LABへ送り返しているところだ。

 

「それで。アイリスはどこに?」

「空き部屋。今はVectorに見張らせているよ」

「なら、丁度いい。Vectorに連絡して尋問室まで連れてくるよう伝えてくれ」

「了解」

「あと、彼女に連れて来たら休むよう言ってくれ」

「それも了解」

そう言い終えると俺は彼女へ背を向けて部屋から出て行く。

 

 

-数十分後-

 

『ここで待ってて』

『あのー……ボクはこれからなにを………』

『指揮官が来て説明してくれるから』

『…………』

 

鏡越しに無表情のまま不安になっているアイリスを見つめながら淡々と話しをする姿が映る。当然向こうからはこちらの姿は見えていないし、壁にしか見えていない。声もこちらからONにしないと届かない仕組みになっている。民間にしては昔にあった映画さながらの設備だ。

 

それよりもVector………ペルシカから休めって聞いてなかったのか?

 

「カリン。機器の調子は?」

「問題ありませんわ」

 

機材の前に座っているカリンは、無数に付いたボタンやダイヤルを調整しながらそう答える。

 

「すまない。少し遅れた」

 

すると、ドアからこちらの部屋に入って来たのは左目にモノクルをかけたクールな外見をした女性。

 

「全くだヘリアン。5分の遅刻だぞ」

「そう言わないでくれ。先日の任務の件で正規軍と報酬の交渉で手間取ってな」

「………なら仕方ねーか」

 

交渉が相当難航していたのかヘリアンは疲れたと同時に呆れた顔を見せている。

 

「それで尋問の方は?」

「今からだ」

 

俺はそう言いながら尋問室へ向かうためヘリアンの横を通り過ぎようとすると………

 

「………信用できるのか?あの鉄血工造の人形は」

「それを今から調べるんだろ」

 

キリッとした表情を崩さずに俺へそう問いかけるヘリアン。やはり、鉄血工造の人形は信用しきれないようだ。

「奴らの新型コンピュータウィルスの件もあるんだ………安易に彼女を保護するのも得策ではないと思うが」

「分かってる………」

 

ヘリアンの気持ちは分からなくもない。彼女が言う新型コンピュータウィルスのことは俺も懸念してることだ。

 

"雨が降った、平原に"

 

この言葉が意味することはまだ分かってはいないが、俺達に脅威となり得るのは間違いはない。そのため、アイリスを匿うのもあまり得策ではないと思う自分もいるのは確かだ。

 

しかし、その新型コンピュータウィルス以外にも脅威があるのは明白なのだ。この件もあまり妥協はしてられない。

 

「だが、アイリスが持っている情報も何かしらの脅威につながる手がかりかもしれない。一応、彼女と信頼関係を築くのもある意味策だと思わないか?」

「信頼関係か………ふっ。まさか、指揮官から冗談が聞けるとは思わなかったな」

 

冗談?俺が?

 

今のは皮肉げに言ったつもりだが………まあいい。とっとと尋問を始めるとするか。

 

 

 

 

 

尋問室のドアが開き、部屋へと入ると正面にはテーブルの向かいに手錠をかけられたアイリスとその横には監視役のVectorが側についている。

 

「監視はもういいぞVector。休んでこい」

「了解」

 

Vectorはそう言うと表情を変えずにそのまま開いたドアから出て行く。相変わらず無愛想な奴だと思うが今更。あれでも俺がグリフィンに来た時よりは軟化している方だ。

 

それはさておき、今はアイリスの尋問だ。

 

「さて。あまり休めていないようですまないが尋問を始めるぞ」

「う、うん………」

 

俺は椅子を引き、腰掛けると軽くため息を吐きこれから質問することをザッと脳内に整理する。

 

「先に言っておくがこの尋問の内容は全て記録される。言葉は慎重に選んで答えろ………まず、お前の所属と名前を答えろ」

「ボクは……アイリス。所属…………元?所属が鉄血工造」

 

再び自信をアイリスと名乗った鉄血工造の人形は緊張した様子で俺の方へと焦点を当てる。

 

「………単刀直入に聞く。お前は何故、鉄血に追われてたんだ?」

「それは…………」

「…………」

「…………」

 

お互い長い沈黙が続く。狭っ苦しいこの部屋に味方のいないアイリスにとって相当なプレッシャーを感じていることだろう。

 

「………なるほど。あくまでも約束を守ってくれるまでは話さないってことか」

「………ごめんなさい」

「いや、謝るな。逆に関心した」

「えっ?」

 

アイリスは俺の言葉が意外だったのかキョトンとする。

保身の為に走る奴だったらすぐ話していただろうし、信用もしないのは当然のことだ。それなのにアイリスは尋問とはいえ、先日の約束が守られるまで話そうとはせず黙秘を貫くつもりだろう。どっかの小心者の鉄血工造の人形とは違い見た目に反して度胸はある奴だ。

それに………アイリスが持っている情報が重要なものだとしたら悪用されることを懸念してるのかもしれない。アイリス自身も俺という人間を見定めているのだろう。

 

「質問を変えよう。どこから逃げてきた」

「それは………北からずっと降りてきたんだ。あいつらの追跡がかなりしつこくて」

 

北か………少なくも寒冷地で山岳地帯が目立つ場所だ。鉄血が隠れて基地を作るにはもってこいだな。恐らく北から降りてきたと言うならS05地区付近を通ったのは確かだろう。

 

「武器も持たずによく逃げ切れたな」

「事前に鉄血の情報をハッキングして地理を把握したからね………隠れ場所とか見つけるのに苦労はしなかったよ」

「そうか………」

 

大したものだ。鉄血のボスが追跡していた中、五体満足で逃げ切れたのは称賛できる。

 

(奴らが執着するということは、やはりこいつが持っている情報はかなり重要なものなのか)

 

断定はできないが俺の直感ではそう感じとれていた。なにより、鉄血にしてはアイリスの雰囲気が奴らと全く違うからだ。

 

「お前は何のために造られたんだ?俺から見れば戦闘向きではないのは分かるが………」

「それは………ボクも分からない。目が覚め時から戦闘に関するプログラムなんてなかったし、人間に関しても憎悪のような感情はなかった………」

「全員が全員じゃないと思うが………鉄血工造とは思えない発言だな」

「指揮官が鉄血をどう思ってるかは分からない………けど、ボクには本当に貴方達と敵対する意思はないんだ。信じて………」

「…………」

人間のように感情の起伏を見せながら訴えかけるアイリス。

俺はしばらく黙り込むと、軽くため息を吐くと口を動かし始める。

 

「正直なところ、信用できるかできないかで言えば………俺は信用してもいいと思ってる」

「………本当に?」

「ああ。でなければこんなのんびりと質問なんてしてないからな」

 

そう言いながら俺はヘリアン達がいるであろう部屋の方へとチラッと見つめる。恐らくだが何を言っているんだと表情を変えて聞いているに違いない。

 

「と言っても、保護………というより亡命のほうが正しいか。俺だけが信用してもどうこうできるって問題じゃない。お前の安全が保障されるでまだ少しかかるが………その時が来たら必ず話せ」

「う、うん!約束する」

 

(約束………か)

 

こんなこと45に聞かれたら甘いと言われそうだが、自分自身もそう思ってしまう。以前の自分なら尋問よりも拷問が当たり前だっただろう。そんなクズみたいな俺でも変われてしまったのだから、人形とはいえ彼女達との絆は案外と侮れない。

と言っても、俺の本性は根本的に変えられないのだが。

 

「さて、次は………」

 

それからというもの、約一時間くらい尋問が続いた。アイリスは疲れきった顔をしていた為、区切りがいいところで尋問は終了したが、ヘリアンが詰め寄って俺の真意を問いただしてきたのは言うまでもない。

 

 

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