デュエル・メモリーズーデュエル・マスターズ戦記ー   作:置き物

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置き物です。今回は以前からやりたかったデュエル・マスターズの小説となります。連載といっても数話ぐらいで終わる予定です。拙い文章ですが、読んで頂けると有難いです。


Ep1 暴走と少年

話をしよう。どこかの宇宙、超獣(クリーチャー)が居る世界を。謎の爆発と文明による戦争から始まったその物語は今なお続き、彼らの魂はデュエル・マスターズのカードに宿っている。

君達、プレイヤーはその魂と共に闘っているのだ。そして、君達が忘れない限りその闘いの想いや記憶をクリーチャーは覚えている。

今回はその記憶から外れてしまったクリーチャーと一人の少年の出来事を語ろう。

 

 

「超獣世界 戦国武道会異常なし」

 

「こちらドラゴン・サーガ異常なし」

 

モニターを操作しながらオペレーター達が超獣世界を見守る。ここは『観測世界』と呼ばれる超獣世界のどこの歴史にも属さない世界。

あらゆる超獣世界の歴史を見守る為に現れた『世界』なのだ。

 

「よし、今日も異常ないようだな。結構結構」

 

サングラスをかけ、迷彩服を着た奇妙な男が感心しながら観測室を見て回る。

 

「バルト所長お疲れ様です」

 

「お疲れ様。休憩はちゃんと取ってくれよ?」

 

バルトと呼ばれた男はオペレーターの挨拶に対し、フレンドリーに接する。格好こそ奇妙ではあるが、この観測所『クリスタル・メモリーズ』で世界を見守る最高責任者がこのバルトである。

すると、後ろの扉から一人の女性オペレーターが現れた。

 

「おはようございます、所長」

 

「おはよう、アリス君。今日も超獣世界は平和だねぇ」

 

「平和な訳ないですよ、超獣世界はあの爆発が起きてからどの時代も争ってばかりいるんですから」

 

「歴史が()()()()って意味で言ったんだけどなぁ言葉って難しいもんだね…」

 

苦笑いしながらバルトは答える。アリスと呼ばれたオペレーター。

その正体は観測世界が彼女の優秀な頭脳を見込んで、エピソード3の歴史から呼び出したクリーチャーである。

 

「はぁ…しっかりしてくださ…」

 

アリスが溜息をつきながら答えようとした時、観測室にサイレンが鳴り響いた。

 

「エピソード1!大規模な歴史変動を確認ー!この反応は…暴走です!」

 

「ほう…暴走ときたか。この事態は『暗黒の騎士』以来だな!総員、転移プログラム構築開始!並行してクリーチャー種の特定急げ!」

 

必死なオペレーターに対し、バルトは冷静に判断し、指示を下す。

その指示を受けて、オペレーター達はプログラムを構築し始める。

 

「アリス君、悪いが彼を呼んで来てもらえるかな。暴走超獣(オーバーロードクリーチャー)といえば、彼はすぐ来ると思うがね」

 

「もう来てますよ、バルト所長」

 

アリスの声にバルトは振り返る。そこにはやや幼げさを感じさせる少年が立っていた。彼の名はシン。暴走超獣と闘う観測室メンバーの一人である。

 

「所長、その暴走したクリーチャーがいる世界はどこだ」

 

「まったく、君はせっかちだな。エピソード1だ。かなり危険な奴みたいだが…行くかね?」

 

「当たり前だ。暴走超獣は俺が止める…」

 

何かに取り憑かれたようにシンの表情が変わる。先程までの子供らしさは薄れ、何かに怒っているような事を感じさせた。

その表情に見慣れたバルト所長はシンの肩を叩く。

 

「ああ、君が奴を止めたい理由は分かってるさ。だがもうちょっと待ってくれるか?まだ転移プログラムとクリーチャー特定が出来てなくてね」

 

「…分かった」

 

少しして、シンの表情から怒りの色が消える。

バルトの言葉で若干ではあるものの冷静さを取り戻したようである。

 

「バルト所長!種族特定出来ました!エイリアンです!」

 

「よぉし!そのまま個体種特定まで持ち込め!転移プログラムは何%まで構築出来ている?」

 

「80%まで出来てます!」

 

オペレーター達は順調に事態へ対処する。しかし、それを乱すかのように異変が起きる。

 

「なっ!?特定システムが壊された!?」

 

「馬鹿な!あれにはステルスプログラムが搭載されているはずだぞ…!」

 

クリーチャーの特定は特定システムを搭載した小型マシンが暴走超獣を観測することで始まる。観測している状態であれば、種族まで判明できる。

しかし個体種、つまりクリーチャーの名称までは特定システムが直に触れ、解析するまでは分からない。それを解消する為に姿を消すステルスプログラムが搭載されている。

だが、見えないはずのそれ(マシン)が破壊されたとなると驚きを隠せない。

 

「特定システム帰還しますっ…!」

 

オペレーターの声とほぼ同時に特定システムが観測室に帰ってきた。その姿はあまりにも無残なものであった。

 

「…見せてくれるかしら」

 

「は、はいっ…!」

 

オペレーターはアリスに特定システムであったものを手渡す。アリスはあらゆる角度からそれを見詰め、自身のモニターで分析する。

 

「…ステルスプログラムの存在を知ってるって事は、高度な知能を持つ水文明ね。恐らくだけど、サイバーロード。この種族とエイリアンを併せ持つクリーチャーを過去のデータと照合してみるわ」

 

「流石だね、アリス君。正体に繋がる情報をもう見つけるとは」

 

「このくらい出来ないと世界に呼ばれたオペレーターとして働けませんよ」

 

バルトの褒め言葉を受けながらも、アリスは淡々と解析を開始していた。

 

「所長、転移プログラム構築完了しました!」

 

「ご苦労!じゃあ、シン。後は頼んだぞ」

 

「…任せろ。そいつは俺が救ってやる」

 

そういったシンの表情は先程とは変わらなかったものの、目には『怒り』の感情が宿っていた。彼の目に圧倒され恐怖を覚える職員もいる。

その怒りの矛先が向けられている対象が誰であるかを知る人物は数人しか居ない。バルトやアリスも数少ない者の一人なのだ。

 

「シンさん、こちらへ。転移を開始します」

 

「ああ。ーデッキ準備(セット)

 

シンが呟くと空間が歪み、そこから40枚のカードの束『デッキ』が現れた。それをデッキケースにセットする。

闘いへ赴く準備は完了した。

 

「シン、絶対帰ってきてよね」

 

「分かってるさ。必ず戻ってくる」

 

シンはアリスとの約束を交わす。生きては帰ってこられないかもしれない任務だが、それでも彼は帰ってくるとアリスに誓った。

 

「転移開始ー!」

 

そのオペレーターの声と共に、シンの身体が転移プログラムの粒子に包まれる。数秒後、彼の姿はこの世界から消えていた。

 

 

エピソード1の世界。

暴走超獣は何者かが来ることを感じていた。

 

「来るか。我を監視していた者よ」

 

異形と化したモノの口が大きく開いたー。

 




今回はここまでです。次回からデュエルパートに入る予定ですので、読んで頂けれると嬉しいです。

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