デュエル・メモリーズーデュエル・マスターズ戦記ー   作:置き物

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色々ありまして久しぶりの更新となります。
今回の話にはヘイトシーンがあり、読んでいる方は気分を害するかもしれません。予めご了承下さい。
それではどうぞ!


Ep4 Xの記憶

「《エンペラー・マルコ》を召喚!効果でカードを3枚引くよ!」

 

「3ドロー!?強ぇーっ!しかも進化クリーチャーだからそのターン攻撃できるのかよ!」

 

楽しげに遊ぶ少年達。帽子を被った少年が出した彼の切り札《エンペラー・マルコ》に場が盛り上がっていた。

 

(これは奴の記憶か?それにしては…)

 

シンが感じた違和感。

なぜなら彼が見ているのはエイリアンとなる前の《エンペラー・マルコ》であった頃の記憶であるからだ。

 

「よしっ!《エンペラー・マルコ》でダイレクトアタック!」

 

「うわーっ!負けた!直人そいつ手に入れてから強くなったよなぁ〜」

 

「へへっ!だってこれは僕の切り札だもん!」

 

直人と呼ばれた少年は自慢げに《エンペラー・マルコ》を見せる。その少年は万遍の笑みを浮かべていた。

 

そして、場面が切り替わる。ある店の公認大会。そこでは決勝戦が行われていた。

 

「《クゥリャン》から進化。《エンペラー・マルコ》を召喚します。能力で3枚ドローします。そして、《エンペラー・マルコ》でシールドをW・ブレイク!」

 

「くっ…!シールド・トリガー《デーモン・ハンド》!これで《エンペラー・マルコ》を破壊!」

 

「更に幻緑の双月(ドリーミング・ムーンナイフ)で最後のシールドをブレイク!」

 

「トリガーはない…」

 

「ターンエンドです。さぁ、貴方のターンですよ」

 

眼鏡をかけたプレイヤーが追い詰められる。先程のブレイクで手札は増えたものの、シールドは無い。

 

「俺のターン…ドロー。4マナを支払い《解体人形ジェニー》を召喚。手札を見て、一枚捨てさせる」

 

手札を確認するも、その中には《ボルシャック・大和・ドラゴン》と《大勇者「ふたつ牙」》のカード。片方を捨てたとしても、次のターンには即座に殴れるアタッカーが場に出てしまう。

 

「《大勇者「ふたつ牙」》を捨ててくれ…」

 

次にターンに《ボルシャック・大和・ドラゴン》が出てきてしまうが、それでも《「ふたつ牙」》による2マナブーストは阻止しておきたかった。

 

「他に何も出来ないか…ターンエンド」

 

「僕のターンですね。ドロー。チャージ。6マナで《ボルシャック・大和・ドラゴン》を召喚。」

 

召喚されるのは荒々しい武者の鎧を纏った赤きドラゴン。彼の手に持つ剣は、あらゆる敵を真っ二つに両断する。《ボルシャック・ドラゴン》が今、バトルゾーンに帰って来た。

 

「行きますよ…!《ボルシャック・大和・ドラゴン》でダイレクトアタック!」

 

「…俺の負けだ」

 

「優勝はカドヤさん!おめでとうございます!」

 

眼鏡の男が負けを認め、決着がつく。決勝戦を制したのはカドヤと呼ばれたプレイヤーだった。彼の使用したデッキ。

《幻緑の双月》などのマナブーストから《クゥリャン》といった軽量サイバーロードを展開。

そしてサイバーロードを《エンペラー・マルコ》に進化させることによってドローしつつ、アタッカーを増やす。

攻めの火文明。ドローの水文明。マナブーストの自然文明。

かつての【ボルバルブルー】を彷彿とさせる赤青緑3色で組まれたそれは【マルコビート】と呼ばれ、戦国編までビートダウンの王道と言われるようになった。

 

「そうだ…私は皆に愛されていたのだ…」

 

マルコXの声が聴こえる。その声と共に記憶がパズルのピースの様に分割され、広がる。

そこに映っていたのは《エンペラー・マルコ》を切り札とし、デュエマを楽しんでいたプレイヤー達の姿だった。

 

「後に環境が変化し、赤青緑の【マルコビート】は不利になった。しかし私は新たに現れたシノビと合わさり、デッキタイプが【黒マルコ】へと姿を変えながらもプレイヤー達に使ってもらっていたのだ」

 

マルコは語る。自分が多くのプレイヤーに使われ、愛されていた事を。

そして、()()()()()()()()事も。

時の流れが加速する。先程まで戦国編だった記憶の世界が移り変わり、数年後の2011年・エピソード1の開始から四か月。季節は秋になっていた。

 

「直人!カードショップへ行こうぜ!」

 

「おう!アレを手に入れるんだな?楽しみだったんだよな~」

 

(あれはさっき奴の記憶の中に居た…)

 

直人と呼ばれた少年。当時小学生だった彼は中学生となっていた。身長は伸びたものの、その笑顔には彼が小学生であった時の面影を感じさせる。

 

「来たぜこの日を…!」

 

カードショップに入った直人は新発売のパックを探す。

 

「『フルホイルパック リバイバル・ヒーローズ・エイリアン』!待ってたぜ!」

 

少年は興奮を抑えきれずに、パックを開ける。

光り輝くフルホイルの仕様。種族にエイリアンが追加され、リメイクされたクリーチャー達。

そして、直人は再びマルコと出逢う。

 

「キターッ!《エンペラー・セブ・マルコX》!俺の切り札のエイリアン版かぁー!使いてぇ〜!」

 

そう。彼がこのパックで一番欲しかったカード。

それが《エンペラー・セブ・マルコX》。効果はマルコと変わらない。だが種族がエイリアンになった事により水文明に縛られること無く、他文明のエイリアンから進化出来るメリットがあるのだ。

少年は更にパックを開けていく。

 

「出た!《躍動するジオ・ホーン》!コイツでこのセブ・マルコXを手札に加えれば次のターンにそのまま進化出来る…!コイツもデッキに入れるぜ!」

 

続いて、手に取ったのは《鳴動するギガ・ホーン》のリメイクカード。山札からエイリアンをサーチする能力を持っている。

 

(このカード…真のデュエルで…)

 

シンの思った通り、このカードはマルコXXが実際に使用していたカードである。マルコXとジオ・ホーン。この2枚を見た彼はある事を確信する。

そして、再び()()()()が目に宿っていた。

 

「そう…私は嬉しかった。種族がエイリアンとなろうとも、私を覚えていてくれたプレイヤー達がそこには居た。もう一度使ってくれるプレイヤーが居るのだと。そう信じていた」

 

マルコXとなった彼がその言葉を終えた瞬間。

無数に増えていた記憶が弾け、消えていった。

 

(…!!)

 

「だが奴が…奴が出た事で私は忘れられたのだ!」

 

彼の登場から2ヶ月の時が過ぎた。エピソード1期3番目のパック『ガイアール・ビクトリー』。新たな覚醒リンク持ちのクリーチャーや《ドンドン吸い込むナウ》が代表的なナウサイクル等が収録されたパックである。この中に彼が怨む存在(ソレ)が居た。

 

「憎き《超電磁コスモ・セブ・Λ(ラムダ)》…!」

 

マルコX、最後の記憶。

それは直人がとある公認大会に出場していた時の事である。友人とのデュエマに熱中するうちに、彼は楽しむデュエマをする事から勝つデュエマへとスタイルが変わりつつあった。

それでも直人は自分の相棒であるカード《マルコX》をデッキから抜くような事はしなかった。

このカードがあるから自分は今まで勝つ事が出来たと信じていたからだ。

 

「よしっ!《エンペラー・セブ・マルコX》でダイレクトアタック!」

 

「ま、負けました…」

 

準決勝 直人は《マルコX》を使いこなし、見事勝利した。今まで何度か大会に出場してきた彼であったが、決勝はおろか準決勝まで来たことはなかった。直人にはもしかしたら優勝出来るかもしれないという思いが現れ、始めていた。

 

「決勝戦を行います。右の席にNAOTOさん、左の席にシュウヤさん。お願いします」

 

店員の声と共に、呼ばれた2人が席に移動する。

そしてお互いにデッキをカット&シャッフルし、シールドと手札を準備する。

その後、ジャンケンで勝利した直人が先行となった。

 

「それでは…デュエマ・スタート!」

 

対戦が始まる。初めての決勝戦という大舞台に立ち、直人は緊張していた。対する相手のシュウヤは淡々と手馴れた手つきでゲームを進めていく。

 

「4マナで、《躍動するジオ・ホーン》を召喚します。効果で《エンペラー・セブ・マルコX》を手札に加えます」

 

手札にマルコXが加わったその時ー。

 

「フン…そんなカードか」

 

シュウヤは小声でカードを馬鹿にするような発言をした。

 

「えっ…?」

 

先程の声は近くにいる直人にしか聞こえていなかったようだ。

 

「あ?ターン終わったのか?」

 

「は、はい。ターン終了です」

 

その眼光に威圧され、慌ててターン終了を宣言する。

 

「4コス《ジオ・ホーン》」

 

召喚されるのは直人も使ったジオ・ホーン。その能力で新たなエイリアンが手札に加わる。

 

「じゃ、《Λ》サーチで。エンド」

 

彼が手札に加えたカード《超電磁コスモ・セブΛ》。種族にエイリアンを持つクリーチャーの為、当然《ジオ・ホーン》でサーチできる。

 

(なんだろうあのカード…だけど俺には《マルコX》が居るー!)

 

「俺は5マナ支払って、《ジオ・ホーンを《マルコX》に進化!」

 

現れる直人の魂のカード。エンペラー・マルコの頃から愛用し続けている彼にとって、勝利をもたらすカードなのだ。

 

「《マルコX》の能力で3枚ドロー!そして、このままW・ブレイク!」

 

シュウヤのシールドチェック。シールドを確認するが、トリガーがなかったのか舌打ちと共に手札に加える。

 

「ターンエンドです」

 

(増えた手札もあるしこのままいける…!)

 

自らの切り札《エンペラー・セブ・マルコX》を出した事で、試合の流れが自分に来ていると感じている直人。

しかし、その希望は打ち砕かれる。

 

「俺のターンを5コスト。《ジオ・ホーン》を《Λ》に進化」

 

現れる水文明の進化エイリアン。直人は見た事も無いクリーチャーに少し動揺する。

 

「《Λ》で《マルコX》攻撃 。メテオバーン。このクリーチャーが殴る時下のカード墓地に送って《3枚ドロー》」

 

「えっ!?」

 

直人は思わず驚愕してしまう。自身の切り札である《マルコX》の召喚時能力を攻撃するだけで使ってしまったのだ。

 

「《Λ》の方がパワーが1000上だ。《マルコX》は破壊される。ターンエンド」

 

確認の為にΛのカードを見る直人。シュウヤの言う通り、パワーがマルコXを1000上回っていた。更に、カードを確認した際直人は驚きが隠せなくなるものを見てしまった。

 

(進化元のクリーチャーが()()()()()()()()()()()…!?しかも、手札からクリーチャーを入れればメテオバーンがまた使える!?)

 

この時直人は感じてしまった。

今まで相棒として使ってきた《マルコ》よりもこの《コスモ・セブΛ》の方が強いのでは無いかと。

だが、それを認めてしまえば今まで彼がマルコを使い続けた思いが簡単に崩れ去ってしまう。

その為には何としてもこのデュエマに勝つ必要があった。

 

(負けてたまるか…!僕の《マルコ》は…《マルコX》は決して弱くはないんだって…!)

 

その思いを胸に直人は自身の手札で常に最善手と思えるプレイをした。何度Λで手札差を付けられようとも、直人は決して最後の最後まで諦める事はしなかった。

だがー。

 

「…トリガーはありません」

 

「じゃあ《コスモ・セブΛ》でダイレクト。俺の勝ちで」

 

「負けました…」

 

必死のプレイも虚しく、直人は決勝戦で敗れた。

彼の内心は準優勝という結果に喜ぶ事よりも、《マルコX》が弱くは無いということを証明出来なかった事への悔しさで埋まっていた。

 

「優勝はシュウヤ選手!おめでとうございます!」

 

周りから拍手がシュウヤと直人に贈られる。

しかし、その拍手は悔しさを抱えている直人の慰めになる事はなかった。

そして、彼の心はこの大会で崩れ去ることになる。

 

「おい。確かNAOTOとか言ったな?」

 

悔しさで落ち込む直人にシュウヤが近づく。

優勝した彼が敗者である自分に何の用があるのかと疑問に思っていた。

 

「アンタなんでそんな弱いカードを入れてんの?」

 

「えっ…?」

 

「あの《エンペラー・セブ・マルコX》とか言う奴?あれ《Λ》の下位互換っしょ。ジオ・ホーン入れてんなら《Λ》の方が強いのによ」

 

止まることの無い《マルコX》への罵倒。

シュウヤの口から言葉が発せられる度に直人の心から『何か』が失われていく。

その言葉に直人な顔を上げることすら出来なかった。

 

「まぁ、《マルコX》じゃなくて《Λ》だったら俺に勝てたかもな。俺は優勝賞品貰って帰っか」

 

シュウヤが何気なく言い放った言葉。

だが、その言葉はまるで呪いのように直人の心に染み込んでいった。

 

(俺が負けたのは…《マルコX(コイツ)》のせい…?《マルコX》を使()()()()()()勝てた…?)

 

先程までの悔しさが憎しみへと変わる。

このカードが悪いのだ。自分は悪くない。

負けを認めたくないと思う気持ちが現れ始める。

自分は勝つ為にデュエマをやっているのだ。

今の直人にはその想いしかなかった。

 

「そうだ…俺も《Λ》を使えばいいんだ。そうすれば俺は勝てる」

 

そう呟きながら店のカードファイルを手に取り見る。そこにはあの《超電磁コスモ・セブΛ》のカードがあった。

 

「これで俺も…」

 

そのままレジへと進み、Λのカードを購入する。

そして、席へと戻った彼は淡々とデッキを取り出し、《マルコX》のカードを抜いた。

 

「じゃあな。二度と使う事はないだろうけど」

 

「ちょっと君ー!カード忘れてるよー!」

 

店員の声にも耳を傾けず、彼は魂のカードであった《エンペラー・セブ・マルコX》を机に置き去りにし、店を去った。

 

直人だけではない。多くのプレイヤーが【マルコビート】から【Λ《ラムダ》ビート】へと乗り換えつつあった。

かつてプレイヤー達に《エンペラー・マルコ》を思い出させた存在である《エンペラー・セブ・マルコX》すらも使われなくなってしまう。

その使われなくなるという事は人々の記憶から消えるという事。プレイヤーから忘れられてしまう度に、超獣世界の彼らは力を失ってしまう。

 

「私は…このまま消えてしまうのか…」

 

悲痛な訴えもプレイヤー達には届かない。記憶し続けてもらうにはプレイヤーの力が必要だが、クリーチャーから彼らに思いを伝える事は不可能なのである。

力が消える度に自身の消滅を覚悟するマルコX。

その時、彼の背後に何かが現れた。

 

「まだ消えたくないのだろう?」

 

「ー!!」

 

マルコXが振り返ると、そこには黒いフードを被った男が立っていた。

 

「私が君を救って上げよう」

 

そう言うと、フードの男は持っている本から漆黒のオーラを生み出した。得体の知れない物に警戒するマルコXであったが。

 

「この力を手に入れれば君は忘れられる事はない。欲しいか?」

 

その言葉に惹かれるように、マルコは今にも消滅しそうな体で男の方へと向かっていく。先程の警戒心が無かったかのようにそのオーラを求め始めた。

 

「君は正直なクリーチャーだ。よかろう、受けとるがよい」

 

漆黒のオーラがマルコXに流れ込み、激痛が走る。

 

「がぁぁ…!」

 

「さぁ!思い出せ!お前が受けてきた行為を!一つのデッキタイプを築き上げたクリーチャーでありながら、他のクリーチャーに主役を奪われた怒りを!下位互換と批難され、捨てられた悲しみを!そして、魂のカードであった彼に捨てられた怨みを!全てはそう!《超電磁コスモ・セブΛ》が奪い去った事を!」

 

男が高らかに声を挙げる度にマルコXは激痛が快楽に変わる悦びを覚えた。

 

(私、いや我は…!あのΛよりも強い!)

 

彼はその自信と共に、男が持つオーラを全て吸い尽くした。そして漆黒の霧が現れ、体を覆い尽くす。その霧を振り払い、変貌した彼の姿が現れる。

 

「フハハハ!何だこれは!先程までの我ではない!強大な力を感じる!」

 

「おめでとう。君は見事進化を超える力を手に入れた。教えよう、君を捨てたプレイヤーと《Λ》に復讐する方法を」

 

こうして《エンペラー・セブ・マルコXX》が誕生した。

 

(これが奴が復讐鬼と化した一部始終か…)

 

再び周りが眩くなり、シンは記憶の世界から元いた場所へと帰ってくる。

そこには先程までの力を無くした《エンペラー・セブ・マルコX》としての彼が存在していた。

 

「…プレイヤー達は私を忘れた。だから力が欲しいと願ったのだ。忘れ去られるくらいならば世界ごと消してやろうと思ったのだ」

 

マルコXは淡々と話す。自分が消えるぐらいなら消す。彼はそれを理由にこのエピソード1の世界と後に誕生するパラレルワールドさえも消滅させようとした。

次の瞬間。その一言を聞いたシンは生身でマルコXを殴りつけた。

 

「なっ…?」

 

マルコXにほんの少しではあるが、体がボロボロであるはずの少年の拳の衝撃は届いた。

そして、仕掛けたシンの右手から血が滴り落ちる。

 

「ふざけるな…自分の復讐の為だけに世界を、記憶を消そうとしたのか?」

 

「何が悪い!私を忘れたプレイヤーなぞ…!」

 

「そこまで憎かったのか…」

 

シンは顔を伏せながら、マルコXへと近づいていく。マルコは弱々しいあの拳をまた仕掛けて来るのではないかと身構える。

 

「辛かっただろうな。悲しかっただろうな。」

 

「…何?」

 

「プレイヤー達から使われなくなって、忘れられて、自分の存在が無くなってしまうかもしれない…だから消そうとしたか…」

 

その言葉と共にシンの動きが止まり、顔を上げる。この世界から来る前に感じていた怒りとは一転して、彼の目から涙が溢れていた。

 

「確かにプレイヤー達はお前達を忘れてしまう。だけど、プレイヤー達はデュエル・マスターズを楽しんでいるんだ。それを壊すのはやめてくれ」

 

「私を消そうとしているのだぞ。プレイヤーなど信じられるかー!」

 

「だからお前を…」

 

真のデュエルで傷ついた体で歩き、マルコXの前に立つ。

 

「俺がずっと覚えておいてやるから…!」

 

「ー!!」

 

シンの手がマルコXの体に触れる。

その時、マルコXは久しぶりに感じた。

この温もりは自分を覚えていてくれたプレイヤー達の想いなのだと。

 

「私の存在が修復されてゆく…私は消えなくていいのか…?」

 

「ああ。これからもこの世界で生きれるさ」

 

「そうか…」

 

今、マルコXは再び存在を取り戻した。

彼が本来の姿を取り戻したことで焦土と化していた大地に緑が戻り、フィオナの森が再生される。

それと同時にシンの体が粒子に包まれる。

 

「シン!」

 

デッキケースから聞き覚えのある女性の声が聴こえてくる。

 

「…アリスか」

 

「貴方、大丈夫なの!?」

 

「ああ。シールドは全て割られたが何とか勝て

た」

 

「また無茶して!…無事で良かったわ。帰還プログラムが作動中よ。後30秒で帰還出来るわ」

 

通信越しでも彼女が心配している様子が伝わってくる。シンは帰るべき場所へと戻るのだ。

 

「…お別れだ。歴史が修正されるからお前からこの異変の記憶は無くなる。これからは安心して生きろよ」

 

「…最後にいいか?」

 

「後15秒だ。早くしろ」

 

「シン。私を救ってくれてありがとう」

 

マルコXは自身を救ってくれた恩人として初めて少年の名を呼ぶ。

 

「…ああ。元気でな」

 

シンは微笑を浮かべ、消えていった。

=




今回はここまでです。
ヘイトシーンがありながらも読んで頂いた方、ありがとうございます。
次回が恐らく最終回となりますので、お付き合いして頂けたら幸いです。
それではまた次回!
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