デュエル・メモリーズーデュエル・マスターズ戦記ー   作:置き物

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皆様、遅くなりました。最終回です。最初は3回ぐらいで終わらそうと思ったんですけど予想以上に長くなりました…(汗)
遂にシンの秘密が明らかになります。
それではどうぞ!


Ep fin シン

「転移プログラム正常起動。シンさんが帰ってきます!」

 

オペレーターの声から数秒後、重症ともいえる姿でシンは観測室へと帰ってきた。

 

「シン…!」

 

暴走超獣との戦いで彼は必ずと言っていいほど傷ついていた。アリスはその姿を何度も見ているにも関わらず驚きを隠せないでいた。

 

「大丈夫なの…?」

 

「当たり前だ。俺の身体の事ぐらい知ってるだろ」

 

「けど…!」

 

「疲れたんだ。寝させてくれ」

 

シンはそう言いながらアリスの横を通り過ぎる。

傷ついた少年を見て、彼女はかつての仲間の姿を思い出してしまう。

 

(本当に似てるわ…テスタに…)

 

「待って。部屋まで私もついて行くから」

 

「…部屋までだぞ?」

 

「ええ。分かってるわ」

 

その言葉を聞いたシンは無言で歩き出していく。

するとドアが開き、バルトが現れた。

 

「シン、お疲れ様。ご苦労だったね」

 

バルトは肩に手を置き、任務終了を激励する。

 

「…疲れてるんだ。俺は寝るぞ」

 

シンはバルトを気にもとめず、呆気なく返事する。

足を引きずりながらの状態にも関わらず、少年はドアの方向へと歩き出した。

 

「まったく…。けれども休息は大事だからね。ゆっくり休むといいよ」

 

ドアが閉まる音がする。

彼はアリスと共に廊下を抜けて、自分の部屋へ向かっているだろう。

 

「所長…」

 

「ん?」

 

振り返るとそこには任務を終え、休憩中であるはずのオペレーターが立っていた。

 

「君は…確か転移プログラム構築班のサイモン君だったかな。一体どうしたんだい?」

 

「実は…シンさんについて教えて欲しいんです」

 

その言葉にバルトは多少驚いた。

オペレーター自らがシンについて聞きに来る事は今まで無かったからだ。

 

「どうしてシンの事を知りたいと思ったんだい?」

 

その問いかけにサイモンは少し言葉が詰まってしまう。

しかしその沈黙を解くかの様に唾を飲み込む。

そして、勇気を出して知りたい理由(ワケ)を話す。

 

「俺…近くに居るから毎回見るんです。シンさんの何かに怒ってる顔。最初は暴走超獣に大して怒ってるんじゃないかと思ったです。アイツら世界をめちゃくちゃにするから…」

 

「………」

 

バルトは無言で頷く。

 

「けど最近思ってきたんです。シンさん本当は悲しいんじゃないかって。今日だって帰ってきたら姿はボロボロだし、重症なのにアリスさんの力も借りずに自分で歩こうとしているし。そんな状態なのに表情が悲しそうに見えたんです。何で怒りを感じていたはずの彼が悲しさを感じているのか。それを知りたいんです!」

 

サイモンはシンの事を本当に知りたいという気持ちを必死に言葉にし、バルトに訴えてきた。

 

「君の想い伝わってきたよ。君の望み通り話そう。彼の…いや『彼達』の事を」

 

「お…お願いします」

 

サイモンは自身の想いを出し切ったからか、少し疲れが現れる。

 

「おっと、大丈夫か?この椅子に座ってくれよ」

 

「は、はい。失礼します!」

 

サイモンが椅子に座ったのを確認した後、バルトも自身がいつも座っている所長専用の椅子に座る。

 

「じゃあ話を始めようか」

 

サイモンは知る事になる。

シンがどのような存在であるのか。

そして、彼の誕生をー。

 

 

 

 

 

「アリス、ここまでだ。後は俺一人でも行ける」

 

部屋に着いた瞬間の事だった。

シンはそう呟き自分だけ部屋に入ろうとする。

しかし、アリスはシンの手を離そうとしない。

 

「何言ってるの。部屋までって言ったでしょ」

 

「もう部屋だぞ。戻れ…」

 

「部屋の中()()入るわよ。」

 

シンはしばらくそこにいたが、手を離そうとしないアリスに根負けする。

 

「…勝手にしろ」

 

こうして2人でシンの部屋の中に入っていく。

 

「まったく…インテリアすら置いてないじゃない」

 

「寝れればそれで十分だ」

 

ベットとテーブルしか置かれていない部屋にアリスは呆れる。シンはそういった物に興味が無いようで、単純に寝れればよいという思考らしい。

 

「さて、俺は寝るぞ」

 

いつの間にかベットの上へと移動したシンは、アリスの事などお構い無しに眠りにつき始める。

数分後彼は眠りの世界へと誘われた。

 

「こうして見ると…普通の男の子なのね」

 

アリスが見た彼の寝顔はごく普通の少年が見せるものであり、普段の暴走超獣と戦っている時の彼とは真逆の姿がそこにあった。

 

「おやすみなさい。シン」

 

優しい声で彼に語りかけ、シンの頭をそっと撫でた。

彼女は微笑んだまま、彼の部屋から退出した。

 

 

夢を見ているのか。

いや、違う。この感覚は俺が俺である為の記憶を再び見ているだけだ。これは夢じゃない。

この記憶があるから俺は俺として存在している。

眠りにつく度に俺はこの光景を見る。

 

「出来た!俺だけのクリーチャー!」

 

一人の少年が真っ白な紙に書き上げた落書きとも呼べる絵。そこにはカードを操る少年が描かれていた。後で知ったことだが、当時人間の様なクリーチャーは珍しかったらしい。

 

「名前は…そうだ!俺の名前から付けよう!」

 

この人は突然の閃きによって名前を決めようとしている。

すぐさま別の紙に自分の名前を書き、考え始めた。

 

神や 新田(かみやあらた)っと…名前は神?うーん、これじゃないな…」

 

そうして彼は悩み続ける事30分。

彼は笑顔で顔を上げて、こう言った。

 

「新…シン!このクリーチャーの名前はシンだ!」

 

そう、俺という()()()()()()はここで生まれたんだ。

 

 

 

 

 

「シンさんが…俺達と同じクリーチャー…?」

 

バルトから告げられた事実にサイモンは驚愕せざる得なかった。あの少年がクリーチャーだと思った事が一度も無いからだ。

 

「そんな…シンさんはどう見ても人間ですよ!

真のデュエルはクリーチャーと契約した人間じゃないと出来ないはず…!」

 

そう可笑しいのだ。

確かにクリーチャーならばDW(デュエル・ウォーリアー)として真のデュエルを行うことが出来る。

しかし、デュエルマスターの力を持っているという事がサイモンに違和感を与えた。

なぜならばデュエルマスターの力はクリーチャーとマスター契約を行うことで手に入れる力だからだ。

シンがこの力を使っている以上、彼がクリーチャーである事はおかしいのだ。

クリーチャーであるならば真のデュエルは彼のDW(デュエル・ウォーリアー)権限にて行われる筈なのだから。

 

「いや…クリーチャーだとちょっと語弊があったかな。シンはね()()()()()()()()()()()()なんだよ」

 

「えっ…?」

 

再び告げられる驚愕の真実。

ー人間であり、クリーチャー。

前代未聞の存在にサイモンは混乱する。

 

「それってどういう…」

 

「シンが暴走超獣と真のデュエルして怪我をする事があるだろう。彼の場合、大抵致命傷になるまで戦っているけどね…。けれど、それだけの攻撃を受けて人間が生きてるはずがない。クリーチャーじゃなければ成しえない事さ。」

 

「それだけの致命傷なら、何で暴走超獣が現れる度に戦えるんですか!過去にありましたよね…僅か半日で再び暴走超獣が出現した事。何でシンさんは…」

 

自身が抱いた不信感にサイモンの表情は暗くなり、俯き始める。バルトはサイモンの肩を叩く。

予想外の対応に思わずサイモンは顔を上げる。

 

「それを説明するにはある少年について話しておかなきゃならないね。シンが何故人間であり、クリーチャーなのか。その答えを教えよう」

 

 

 

 

 

「よしっ!行くぞー!シン!」

 

カードに描かれた俺に向かって、あの人(あらた)は声を掛けてきた。

喋りもしないと言うのにまるでそこに居るみたいに嬉しそうに話しかけてくる。

 

「《ボルシャック・ドラゴン》を攻撃!」

 

おいおいよしてくれ。

その俺にはパワーすら書かれていないんだぞ。

勝てる訳が無い。

 

「よし!シンはカードの力で《ボルシャック・ドラゴン》を仲間にしたぞ!」

 

カードの欄には『あいてのクリーチャーを仲間にする!』って書いてある。

けど、俺にそんな能力あるわけないじゃないか。

そうは思っても口には出せない。

(シン)という存在はいても、クリーチャーとしての(シン)は存在していないからだ。

喋れるはずもない。

まだ紙の上の存在だった俺は数年の時をあの人と過ごした。ちゃんとしたデュエル・マスターズのカードが手に入ったというのにあの人は俺を捨てなかった。それどこか余計に大切にした。

彼が中学生になった時に一度こんなことがあった。彼の母親がこんな絵()に執着してるのを見て心配したらしい。それで俺を捨てるように言ってきた。

 

「新田、そんな落書きいつまでとってるの?捨てちゃいなさい」

 

「嫌だよ。これは僕の大切な思い出なんだから。これから大きくなっても僕はこの仲間も捨てやしないさ」

 

「…分かったわ。母さん捨てないであげる。ちゃんと大切にするのよ」

 

「ありがとう!」

 

この少年は俺をいつまでも大切にするだろう。

ーそう思っていた。

 

「残念ながら…」

 

「そんな!新田!新田!」

 

人間は脆かった。

俺を生み出してくれたあの人、神谷新田(かみやあらた)は交通事故に巻き込まれて死んでしまった。

これも後から知ったことなのだが、どうやらデュエル・マスターズの大会に遅れそうになって急いでいた所を急に現れた車に轢かれたそうだ。

最後までデッキと俺が描かれた紙が入ったケースを大事そうに持っていたらしい。

俺は消滅する事を覚悟した。

普通のクリーチャーの様に多くのプレイヤーに覚えて貰っている訳でもない。

ましてや、この落書き()をこの人以外が見たとしてもデュエル・マスターズのクリーチャーだとは思わないだろう。

人に覚えていて貰わなければクリーチャーは存在が()()()

例え、俺みたいなちっぽけな存在だったとしても。

ー俺は消える。そう思った時だった。

 

(僕は…忘れないよ。シンも楽しかったデュエル・マスターズも)

 

その声が聞こえた。

そして、彼と過ごしたデュエル・マスターズの記憶が流れ込んでくる。

楽しい記憶も辛い記憶もあったが、全て彼にとって大切な思い出だ。

あの人の暖かい想いが俺に伝わってくる。

 

(僕が君を覚えてあげるね…)

 

その一言を言い終えた瞬間、俺の前が真っ暗になる。

 

「待って…!」

 

目覚めた時に俺は知らない所にいた。

周囲には訳の分からない機械が並んでおり、床のひんやりとした感覚が俺の足に伝わってきた。

 

「なんだこの感覚…?」

 

俺が下を見ると、足がある。

上の方を向けば、手があった。

 

「これは…?確か俺は消えた筈…いや、そんな事じゃない。俺の姿は…?」

 

器具に映る俺の姿を見る。

どう見たってこれは人間だ。

しかも、あの人と同じ中学生ぐらいの少年の姿をしていた。

 

「君が…この観測世界に呼ばれた存在かな?」

 

俺の背後から声をかけられる。

そこには迷彩服を来たおかしな奴が、右手にコーヒーを持ちながら立っていた。

 

「誰だアンタは…」

 

「僕はバルト。この観測世界にある『観測室』の所長さ」

 

「観測世界だと…?」

 

俺が疑問に思った途端、突然この世界に関する情報が頭の中で反響した。

 

「ぐっ…!」

 

「今、観測世界から説明を受けているようだね。ここではデュエル・マスターズの歴史を見守る事を使命にしている。そして歴史に異変が起こった時、僕ら職員がそれを正すんだ」

 

「それを俺にやれと…」

 

「そのようだね。君はこの世界によって呼び出されたデュエルマスターなんだから」

 

デュエルマスター。その言葉には聞き覚えがあった。確かあの人が読んでいた漫画や見ていたアニメにも出てきた言葉だ。

 

「本来ならば人間しかなれないデュエルマスターだが、君の場合事情が異なっていてね。君は君を作り出したプレイヤーの人格と融合して、人間としての肉体を得ている。つまり人間であり、クリーチャーなんだ」

 

「俺があの人と…?」

 

困惑しながら俺は答えた。

人間とクリーチャーの融合した存在というのは前代未聞のモノだったからだ。ましてや人格まで融合しているとなると流石に驚かざる得ない。

困惑する俺を見ながら、バルトは説明を続けていた。

 

「さて本題に入ろう。この観測室の所長として君にお願いしたい。君がよければ僕達と一緒にデュエル・マスターズの歴史と記憶を守ってくれないか。」

 

「…さっき俺がこの世界に呼び出されたといったな?何故聞くんだ。呼ばれた以上俺は戦わなくてはいけないんじゃないのか?」

 

「確かに世界は君を呼んだ。けれども戦うかどうかは君の『意思』次第だよ」

 

バルトがコーヒーを口にする。

だがその顔は苦笑を浮べ、苦かったのか咳き込み始める。

 

「ゲホッ!…ちょっとブレンドを間違えたか?後でもう1回やってみよう」

 

「…いいだろう。協力してやる」

 

「おっ、いいのかい?」

 

「ああ。あの人の記憶が俺の中にある。あの人が楽しんでいた世界を、デュエル・マスターズの記憶を守れるならな」

 

「…OKだ!君を観測室の仲間として歓迎するよ」

 

俺とバルトは握手する。

握手した時の感覚は俺が初めて味わった『手』の感覚だった。

 

 

 

 

 

「こうしてシンさんと所長は出会った訳ですね。…シンさんの経緯にそんな事があったなんて」

 

「そうさ。結構ドラマチックだろう?」

 

ニヤニヤしながらバルトはサイモンの方を見る。

サイモンはどう反応すれば分からず、苦笑いを浮かべていた。

 

「さて、君も疑問も少し残っている。答えるとしよう。1つ目。何故『怒りや悲しさが彼に見えるか』だ。『怒り』はシン、『悲しさ』は彼の元になった新田君の感情さ。シンはどちらかと言うとクリーチャーの側面が強いからね。忘れ去られてしまうクリーチャーの気持ちが分かると同時に、簡単に忘れてしまうプレイヤーへの怒りもあるのさ」

 

サイモンは思い返す。

暴走超獣のほとんどはプレイヤーに対して、憎悪を抱いている存在だ。

先程の《エンペラー・セブ・マルコX》も自分を忘れたプレイヤー達への復讐だった。

どのクリーチャーも忘れられてしまえば存在が消えてしまう。

その辛さや怖さを理解しているシンだからこそ、プレイヤーに対して怒りの感情を抱くのも無理はない。

 

「逆に悲しさは新田君の人格から現れたものさ。元プレイヤーとして『自分達がもっと覚えていれば』っていう罪悪感を感じているんだろうね。」

 

「確かに…悲しいですよね。デュエル・マスターズを知っているプレイヤーだから感じてしまう罪悪感もあるでしょうし…」

 

「けれど新田君の人格があるからこそ、再び暴走超獣達はプレイヤーに覚えて貰う事が出来るのさ。新田君が覚えてくれる事で存在は消えることが無い。きっと誰かがそのクリーチャーの事を思い出してくれるさ」

 

彼の疑問を1つ解決したバルトは、疑問解消を続けていく。

 

「そして2つ目。『彼が暴走超獣と戦い続けれるワケ』。それはシンは存在を回復してるんだよ」

 

「存在を回復…?」

 

「シンは任務が終わると早々に寝ちゃうだろ?彼は睡眠をとる度、自分がどうやって生まれたかを再び見ている。そして『シン』はこういうクリーチャーだってことを新田君の人格が思い出して、シンを元通りにしているのさ。簡単に言えば()()()()()()かな」

 

バルトはあっさりと答えたがあれだけの致命傷を受けて、完治するという事にサイモンは驚かざる得なかった。

 

「彼の姿が変わらないのもそのためだよ。これ以上身体的には成長しないのも悲しいけど、本人もそれに満足してるようだ」

 

それ(2つ目の疑問)を言い終えた後、彼は立ちながらこういった。

 

「さて最後だ。『彼がどうしてデュエルマスター』なのか。新田君の人格が融合してるってさっき言ったが…アレに関係するね。最近の事だがドラゴンが消えて、新しい種族が現れた世界が誕生しただろう?」

 

「確か…ジョーカーズが生み出された世界ですね。あの世界と関係が…?」

 

「あの世界で新たに作られた『マスター・クリーチャー』と『デュエルマスター候補』の概念はこの世界にももたらされた。シンの場合、新田君の人格がシンに大してマスター契約を行っている形になっているね。だからシンにもデュエルマスターとしての力が宿ってるわけさ。どうだい?君の疑問は晴れたかな」

 

サイモンは黙り込む。様々な真実が明らかにされ、少し困惑しているようだった。

だがー。

 

「正直…驚いています。でも、何よりシンさんと一緒に戦えている事がとても嬉しく感じられるんです。やっぱりあの人は凄い人ですよ!」

 

先ほどまで困惑していた表情が誇りの満ちた明るい顔へと変わっていた。

彼はこの先もシンと一緒に戦える事を誇りに思うだろう。

一人のプレイヤーとして。そして、仲間として。

 

「それなら良かった。職員のメンタルチェックも所長の僕の仕事だからね。さて長話で疲れただろう?君もしっかり休みたまえ」

 

「は、はい!所長…ありがとうございました!」

 

サイモンがとったのは敬礼。シンの重大な秘密を教えてくれた所長に対しての彼なりの精一杯の感謝であった。

 

 

 

 

その頃。

デュエル・マスターズのプレイヤーが存在する世界では、一人の青年が引越しの為に整理をしていた。

 

「まったく…我ながらよく集めたよなぁ」

 

一人の青年は集めたカードを整理していく。

引越し先でもデュエル・マスターズを遊ぶ為だ。

プレイヤーならばカードを持っていかない理由がない。

 

「ってどわーっ!?」

 

足が引っかかり、カードの山が崩れる。

辺りにはデュエマのカードが散乱していた。

 

「うわぁ…コレ、片付けるのがしんどいぞ…」

 

そう言いながらカードを集めてゆく。

《霞み妖精ジャスミン》や《躍動するジオ・ホーン》が散らかっていた。

 

「懐かしいー!よくやってたなぁ【Λビート】!」

 

笑いながらカードを整理していく中、1枚だけ裏向きになったカードがあった。

彼は何気なくそのカードを捲り、表面にする。

 

「…えっ?」

 

そこにあったのは《エンペラー・セブ・マルコX》のカードだった。

 

「なんでこのカードがここに…。ーっ!」

 

その時、彼は思い出した。

かつてこのカードが魂のカードであり、デュエマを楽しんでいた事を。

そして、自身がこのカードを捨てた事を。

 

「うっ…!」

 

床に水が落ちてくる。その正体は彼の涙だった。

溢れでる涙を、彼は止めることは出来なかった。

 

「お前を捨てたりしてごめんな…!」

 

『直人。おかえり』

 

「へっ…?」

 

誰かに呼ばれた気がして振り返るもそこには誰も居ない。けれども彼には分かった。その声の正体が。

 

「もう一度…俺と一緒に戦ってくれ…!」

 

狭い部屋に大きな願いが響きわたった。

 

 

 

ー再び観測世界では。

 

 

「…ン!シン!」

 

その声が聞こえ、少年は目を覚ました。

 

「…アリスか。どうした?」

 

「エピソード2の世界でトライストーンの暴走超獣が暴れているの」

 

「そうか…なら俺が行くしかない。」

 

「早く観測室まで行くわよー!」

 

アリスとシンは急いで観測室まで駆け付ける。

扉の先にはバルトがオペレーターに指示を下していた。

 

「遅かったねシン。何かあったかい?」

 

「…ちょっとな。長い夢を見ていた気がする」

 

「フフ…そうか」

 

「…?何を笑っているんだ?」

 

「いや、何でも。とりあえずエピソード2までの転移プログラムはもう構築済みだ。転移開始してくれ!」

 

シンはバルトの意味不明な微笑を気にするも、誤魔化された。その真意を知るのはバルトと一人のオペレーターだけだ。

 

「シンさん、転移開始しますー!」

 

「…分かった。デッキ準備(セット)

 

いつも通りに空間からデッキを取り出し、ケースにセットする。

 

「アリス、予め行っておくが…俺は必ず帰ってくるぞ」

 

「…馬鹿。帰ってこないと許さないわよ」

 

「ああ。必ずな」

 

シンは微笑を浮かべる。

その顔には彼が滅多に出さない喜びの感情が現れていた。

そして、彼は光に包まれていく。

ー彼の新たなる戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様ここまで読んで下さりありがとうございます。
カードゲームを題材にしているのにデュエルパート1話しかなかったですね(困惑)
番外編を書くかもしれませんが、シンとクリーチャーの物語はここで終わります。
また何かの作品を書くかもしれませんのでその次の作品で会いましょう!
それでは今まで読んで下さりありがとうございました!
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