GOD EATER The SAMURAI 作:umiusi
ともかく、今年も『SAMURAI』をよろしくお願いします。
これは、シュウジがゴッドイーターになる前の話。
1月1日。新しい年を迎え、人々はそれを祝う日。そんな日の早朝、まだ日が昇り始めたばかりの頃、二人の少年が走っていた。
「さすが新年。空気が違う」
「そうか?俺はただ寒いだけなんだけど。~~~~っ寒!帰ったらバガラリーでも見よ」
一人は月刀シュウジ。もう一人は藤木コウタだ。
コウタはゴッドイーターだが、シュウジは違う。なのに、コウタは寒がりながら走り、シュウジはそんなことをものともせず走るという不思議な状況になっている。
そもそも何故、こんなことになったかというと―――――
アナグラにて
「おーい、コウタ野球しようぜ」
「いや、中島かよ」
「冗談冗談。本当は走りに行こうだ」
「分かった。今は近くにアラガミもいないし丁度いいもんな」
―――――こんな感じの軽いやり取りがあったからだ。
「おいおい、帰るってお前、忘れたのか?」
「そういえばお前んちで新年会だっけ?……想像するだけでヨダレ出てきた」
毎年月刀家では新年会が行われる。今年の今日はアラガミ反応が近くにないためほとんどのゴッドイーターが非番で、コウタやその他のメンバーが招待させられたというわけだ。
そこでは、おせちなどの料理がふるまわれる。その食材はすべて、月刀家で栽培してあるものや配給を保存したり、家の面々が自ら狩りに行ったものだ。ちなみに今年は魚がある。
「そうだ。じゃあそんなわけだし、早く帰ろうか」ダンッ
「お、おお……」(あれ?あいつ一般人だよな。なんで俺より速いんだ?)
そんなこんなで二人はマラソンを終え、一度アナグラの戻り、月刀家へ向かった。
「邪魔するぞ」
「あ、お邪魔します」
「お邪魔します」
「失礼させてもらうよ」
「ここがあの月刀家ねぇ」
「皆さんお揃いで。ささ、こちらへどうぞ」
今喋ったのは上から順に、ソーマ、カノン、アリサ、エミール、ハルオミ、シュウジだ。ちなみに、シュウジは晴着に着替えており正月モード全開だ。
「おうおう、これまた大勢な。ん?雨宮の倅がおらんのか」
「ジジイ、リンドウさんは家族水入らずってことで来ないって言ってただろ」
リンドウはサクヤと結婚し、子供もいるため偶には家族と過ごすと言い、今年は不参加になった。エリナも同じだ。
「おお、そうじゃったな。しかし、年を取ると物忘れが激しくて敵わんわい」
「なーに言ってやがる。その年で俺以上に動けるくせに」
「相変わらずだな、爺さん」
「ふむ、おぬしは変わったのう。背もだいぶ伸びたしの」
「まあな」
「おじいさん、お義兄さん。そろそろ出来上がるので手伝ってください」
彼女はパシフィカ・オーシャン。パスの愛称で呼ばれていて、アキヒサの恋人だ。
「分かった……その呼び方はあいつと結婚してからな?」
「ふえ!?もう!シュウジさん!」
「はっはっは!」
呼び方をきちんと変えるあたり、パスはよく出来た子だ。
シュウジが皆を広間に案内してから台所へ向かうと、そこにはアキヒサがいた。
「兄さん、あまりパスをからかわないでくれよ。あ、あとこっち頼む」
「おう」
そう言ってアキヒサが指をさす方向には、ありえないものがあった。
「どれ……よし、腐ってはいないな。さて、解体を始めようか」
それは巨体で、光を反射し、尾や背、胸にはヒレがある。それは、12月の終盤、シュウジが自作した船で沖に向かい捕まえてきたもの。そう、マグロ、クロマグロだ。
「これなら船盛りでいいか」
シュウジは日本刀、マサムネを構える。解体包丁がないからだ。……なんてもったいない使い方をするんだこの男は。サムエルが聞いたらどんな顔をするだろう。ちなみに彼は今のんべぇ組の方に行っています。
「イヤァ!」
一拍の溜めの後、裂帛の気合いとともに振り下ろし、その勢いで横に振る。十字斬りだ。それだけで、マグロの頭が落ち、胴体は真っ二つに分かれた。更に刀を振り、今度は骨を外し、身をブロック体にする。ここまで来たら後は包丁で切るだけだ。
「あとは……これでよし、と」
「さーてどれから食おっかなー」
「まだ駄目ですよ、コウタ。シュウやアキヒサ君が来てません」
「そうですよ。もうちょっと待ちましょう?」
「あ、うん」
「まあまあ、そう焦らんでももうそろそろ来るじゃろうて」
噂をすれば影、ということだろうか。ゲンブが話し終えると同時に襖が開きシュウジとアキヒサが顔を出した。シュウジは何やら船のようなものを抱えている。
「うわ、なにそれ。でかくね?」
「ああ、これか?……マグロだ」ドヤァ
本人のドヤ顔はともかく、その一言で辺りは静まり返った。
「おい」
それから立ち直り、まず最初に言葉を発したのはソーマだ。
「まさかとは思うが、違法なルートから持ってきたわけじゃないよな」
それに対し、シュウジは笑ったまま頭を横に振る。
「違う。確か、二、三日前だったかな、沖に出て捕ってきた。いやーあの時は大変だった。海に出たまではよかったんだけど、あー、グボロ・グボロだっけか?それに会ってなあ。振り切るのが大変だった。で、帰りはオウガテイルやらなんやら小物に多く出会ってなあ……ああ、悪い。話がそれた。とにかく、違法ではないから大丈夫だ」
「……なら問題ないな」
「いや、問題でしょう!?」
「う、うう……」
「エミール?」
突然うめき声をあげたのはエミールだ。悔しそうな顔をしており、目には涙が浮かんでいる。
「僕は、僕は悔しい!か弱き一般人をみすみす危険なところ行かせてしまうなんて!」
「あの、エミールさん?その心配は兄さんには杞憂だと思います。だってアラガミは倒せなくても殺されることはまずないでしょうから」
「え?どうゆうことだい?」
「そうか、あれはエミールがここに来る前だからエミールは知らないんだ」
「な、何をだい?隊長」
コウタは顔を伏せ重々しく語りだす。あの日のことを思い出すように。
「あの日、この世の常識が覆された。一般人はどう頑張ってもゴッドイーターを超えられないというな」
「そのあの日、とは?」
「シュウが、リンドウさんとの一対一の勝負で勝った」
シュウジがリンドウに勝った?コウタは何を言っているのだろう。しかし、エミール以外の人間は驚いた様子もない。
「ま、まさかそんなことが「あるんだよ」そんな馬鹿な……」
「ハハ、買いかぶり過ぎだ。俺よかジジイの方が強いのは知ってるだろ?」
「はい、でもどちらにせよ、あなたたち二人に剣で勝てる人はこの中に居ませんからね」
そう、シュウジとゲンブは、刀だけの戦闘ならゴッドイーターに引けを取らないし、新米相手になら余裕で勝ってしまう。リンドウでやっと拮抗するレベルだ。
「月刀シュウジ!」
やがて立ち直ったエミールが唐突に叫ぶ。
「ん?」
「君はいずれ僕が倒す!この騎士道精神に懸けて!」
まさかのライバル宣言だ。それに対しシュウジは不敵な笑みを返す。
「いいだろう。ならば俺は武士道精神をもって相手をしてやる」
「「…………フ(ハ)」」
「フ、フフフ」「ハハ」
「「ハーッハッハッハッハッハ!!」」
スパァン!「「いでっ!?」」
「うるさいわ、小童ども!シュウジ、さっさと挨拶せんか!」
高らかに笑いあう二人を沈め、ゲンブが吠えた。
「っ痛ー、分かったよ。……では皆様、飲み物をお持ちください。それでは、無事、新年を迎えられたことを祝って、カンパイ!」
『カンパイ!!』
宴が始まった。場は盛り上がり、多くの笑い声が響く。そこに、また一人来訪者が現れた。
「遅れてごめん!って、もう始まっちゃてる……」
「お、ユノ!遅かったじゃないか。ほら、こっちが空いてるから来い」
「うん!」
ユノだ。
宴は、歌姫が参加したことによりさらに盛り上がる。
酒が次々と運ばれ、ユノが歌い、場は少ない人数だというのに大宴会さながらになる。これ以上、新年で行うことでめでたいことは無いだろう。
その空間は今がアラガミという脅威を忘れ、人が、ただただ楽しんでいる空間だった。
「なあ、シュウ」
「なんだ?」
「俺たち、お前らの支えになってやれてるか?」
「何を言ってるんだ。当然に決まってるだろ…………お前たちの手の届かないこっち側の問題は俺が何とかする。だからお前は、お前にしかできない、お前がやろうと思うことをやれ、コウタ」
「ああ……!シュウ、今年もよろしくな」
「こちらこそだ」
この世界でのパスは似て非なるものです。だって育った環境全然違うし。