ザコ敵から逃げたらボス部屋に来ちゃった…   作:カナーさん

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(見直すまでは)文字数がちょうどよかったのでここまで。


02

 コンコンっと固い床を靴底で鳴らす音がふうのの後を付いてくる。

 

 「…………」

 

 ふうの達は現在B棟1Fエントランスを抜け、B棟1階地下研究所への通路を歩いていた。

 ここはいつもなら緑色をしたヤツらが天井に待ち伏せしており、下を通過すると落下して襲い掛かってくる。とはいえ、そいつ等は比較的動きが鈍い部類なので注意していれば脅威にはなりえないが、今回は彼がいる。故に壁際を進んでいたのだが。

 

 唐突に止まってみると、カタンと彼の足音が一つ聞こえて彼も足を止める。そしてまた歩き出して止まると彼もまた歩き出し、一歩多く音を出して止まる。

 

 立ち止まった状態で後ろを振り返る。彼は相変わらず気怠そうな表情で、眠そうに眼を細めてふうのを見つめていた。

 

 「あそんでいるの?」

 

 「そりゃ、泥棒でもないのにコソコソしているのが、可笑しくてね。でも真面目な表情だから茶化すのも(はばか)れたからな、こういう遊びで我慢してるだけだよ。面白いよ。ひたひたと、俺はカタカタとして」

 

 そう言ってガシっと手袋をした手が肩を掴んでくる。

 

 「えっ?」

 

 「はいはーい。さっきと行きましょうねー」

 

 「っ!」

 

 彼は背後から私を押して扉まで直線に行く。

 このルートだと扉の前の方に待ち伏せしているヤツらが襲ってくる。

 

 そう思ったのだが、どういう訳か襲われることなく、予想外に無傷のままエレベーターに来てしまった。

 

 「???」

 

 そしてどう言う訳かシャワー室まで抜け、この子の前まで来てしまった。不気味なほど、罠だと疑ってしまいたくなるくらい、そこまでにヤツらの影すら見えなかった。

 

 とはいえさっさとキーを使用してパスワードを入力した。

 

 カシャっと小気味良い音がしてドアが開いた。

 

 「やった、開いた…」

 

 彼を置いて一人で入る。彼はそれに黙って後からついて行く。

 

 中にいた少女はケイと見た時よりもグッタリしていた。

 

 「大丈夫!?今外してあげるからね!」 

 

 拘束具は一部だけだが取り外す事が出来た。

 

 「…うぅ…ありが…とう。…やっと地獄が…おわる……」

 

 相当衰弱しているのか息も絶え絶えで苦しそうに悶ていた。

 

 「…口開けろ。飲めば少しは楽になる」

 

 どこから取り出したのかはわからないが、小さいペットボトルのような物を開けコーラのような色合いのものを少女に飲ませてあげる彼。

 飲ませたのはキャップにも満たない微かに波打つくらいの量。これで大丈夫だとふうのに伝える。

 

 「そうよ。もう苦しい思いをしなくていいのよ。何者もあなたを縛らないわ」

 

 「……そう……助けてくれたお礼に…私からもひとつ」

 

 「?」

 

 「…あなたをつけねらっている…男がいるわ」

 

 「えっ!?つけ狙っている男?」

 

 「くろい服の…銃を持ってる…うぅ…」

 

 「しっかりして…!」

 

 少量だとこれくらいか…とゴチる彼。その小さな呟きは側にいる少女にしか聞こえない。

 

 ふうのはその呟きは聞こえずに考え事をしていた。

 

 …黒い服…?…ケン?…まさか、第一彼はケガをしていて歩けないもの、えぇ…そのまさかよ。ケン以外にも生き残りがいるのよ。

 

 「…ごほっごほっ…ゴフッ…うぇぇ…」

 

 さっきまでとは打って変わって苦しそうに咳き込む。

 

 「どうしたの…?この装置を外したらダメなの…?」

 

 「そうさ、装置を外したらダメなんだよ」

 

 ガタッと誰かが土足でさも当たり前かのようにここに入ってきた。

 

 「!!」

 

 瞬時に手に銃を握るふうのは素晴らしいが銃口は愚か銃身すら相手に向けてなかった。ふうの最後の良心なのか銃その物すら見せようとしなかった。

 

 「誰かいるのかと思ったら被験体か…。そっちは…!!!?なっ何故お前がこんな所に居るんだ!!!?」

 

 研究員らしき男は彼を見るなりそう驚愕の表情を顔に覆った。

 

 「…………」

 

 「……別にいいだろ。少なくとも今、お前達に害を与える気はない」

 

 ふうのは被験体と言われ、彼は何故此処に居るんだと言われ、思うところがあった。

 

 「…どうやって逃げ出したかは知らんがもう諦めた方がいいぞ…」

 

 「あなたは他の人と違うみたいね」

 

 「あぁ…まだあいつらに侵されていないからな。だがまあ…この分じゃあいつらにやられるか、この怪我で死ぬか、二つに一つだがな…」

 

 彼の動向が気になるのかチラチラっと仕切りに彼に視線を向ける男。そんな彼だが男には目もくれず少女を息が荒くなっているのを、ずっと心配そうに見ていた。

 

 「ケガをしているの?」

 

 「…がはぁっ……っぅ……。そいつ、装置を戻さないと死ぬぞ…?」

 

 「それはどうして?」

 

 「体中"奴ら"の毒まみれなんだよ。その装置をつけた状態じゃないと生命を維持できない、体なんだ…」

 

 ふうのの問に答えたようにも見えるが男は彼に説明していた。神に慈悲を欲する教徒のように。生贄を捧げ、怒りを鎮めて貰おうとする教祖のように。

 

 「ひどすぎる…あなたたちのしている事は決して許される事じゃないわ…」

 

 ようやく男がふうのを見た。聞き流せない言葉があった。

 

 「…許される事じゃない?…誰にだ…!ここは…国が作り上げた施設だ。俺は知りたかった…作りたかった…今…ここで…それが許されていたから自分の純粋な好奇心に従ったまでだ…!」

 

 それは純粋な思いだった。子供の頃、蟻で遊んだ人間もいるだろう。蟻の目といえる、コミュニケーションの器官である触覚を剥いて遊ぶ、少し年齢が上がれば残酷だと思う遊びだ。

彼が告白した思いそういうものだった。純粋故だからこそ恐ろしいことができていた。

 

 「…うあぁっ…あく…ぁ…ぁ…」

 

 「も、戻すわね…」

 

 「いらない…」

 

 「えっ」

 

 「もう…連れ戻さないで…じごくが、またやってくるのは、もう嫌」

 

 少女はそれを拒絶する。このまま飼い殺しのままよりは死のほうがましだと。死にたくとも死ねなかった少女には願ってもないチャンスだった。

 

 「……。……他の人を苦しめて自分達のしたい、事をするなんておかしいわ!」

 

 「…被験体が…言う事じゃあ…ないな」

 

 ふうのの叫びは男には届かない。純粋な子供にそんな叱りかたでは届かない。

 

 「がはっ…うぇ……かえ…れる…これでやっと……おうちにかえ…………。………………………………」

 

 ガタッと倒れる少女を彼が支える。少女はもう声をすら出せない状態だった。

 

 「…床は寒いぞ。俺の膝を貸してやるから…床で寝るより柔らかくや温かいと思うぞ…」

 

 少女の頭を乗せる。せめての安らぎを、という思いからだった。

 対照的にふうのは床にペトっと座り込んだ

 

 「……………。………………………。……………………………………私には付けられなかった」

 

 「ああ?」

 

 「私にはこの子に装置を戻すなんて事できなかった!!」

 

 ふうのの心からの叫びだった。救いたかった。救いに来たんだ。ここに入ってくるまではイケたと思っていたからこそ目の前にいたのに救えなかったのはかなりのショックだった。

 

 「ケッ、被験体同士で何をわけのわからんことを…」

 

 そこでハッと気付く。あいつがここにいると居るということは、少なくともこいつと一緒じゃなければまずあり得ない。そして今の言葉は不味い。今の言葉であいつが矛先を向けたらっと。それだけはダメだ。奴らに侵されるよりも殺されるよりも恐ろしい事になる…っと。

 

 「私たちは被験体じゃないわ!教えて、どうやったらここから出られるの!?」

 

 どうやらあの被験体に意識を向けているのかとくになにも変わらない。とはいえ、この被験体の質問に答えなければどうなるかわからない。

とはいえ、もう男は、深く考えられるほどの余裕がなかった。

 

 「…まだ本気で…ここから出ようなどと…思っていたのか…」

 

 「私は生きなくちゃいけないの!!この子のぶんまで!!」

 

 「…よく考えて見ろよ。被験体…お前は国ぐるみで拉致されたんだ…ぞ?…ここから出られたとして…そんな奴に…帰る場所があると思うか…?」

 

 「…!」

 

 「気付いた…みたいだな。…お前は…行方不明者として登録され…警察は…触れてはいけない案件として…処理し…永遠に闇に葬りさられるんだよ…」

 

 「そんな…」

 

 「…親に会いたいか?戻ってみろ…その瞬間…今度は…家族纏めて誘拐されるだろう…な…」

 

 「うっ………」

 

 「…お前に……居場所なんて…どこにもない。いい加減目が…覚めた…ろ?」

 

 「そ、そんなの嘘よ!」

 

 「…お前が…信じなくとも…何も…変わる事は…ない。せいぜい…あが…いて…死ぬ……が………い…………い………………」 

 

 男は力尽きて倒れた。ふうのに現実を教えて。奴らに何かされる事なく、彼に何もされる事なく、死んだ。

 

 「……ケイのところへ、戻ろう。………?」

 

 ドアに向かっても彼は動く気配がなかった。そういえばっと研究員との話に割り込んでこなかった事にふうのは今、気が付いた。

 

 「俺はそのケイとかいうこと奴のところには行かない。…この子を外に連れていきたいしな。こんな所に居させるよりは…ね」

 

 …確かに。こんな所に死体を置いとくのもかわいそうだと思った。

 

 「外までの道は覚えているから、先に行ってていいよ」

 

 「…でも」

 

 彼はヤツらに抵抗する武器を持っていなかった。だから一緒に付いていったほうがいいと考えていた。

 

 「大丈夫だよ。ここに来るまでヤツらにのを見たかい?それにケイって人の事も心配だろう…?」

 

 「…そうね、先に行くわ。…その子をお願い」

 

 「いざって時はエレベーターホールに行くよ」

 

 「わかったわ」

 

 そう言ってふうのは先に出ていった。

 ふうのが出ていくのを見送ると彼は少女の拘束具を外していく。そして外して終わって少女を背負ってふうのと同じ様に部屋を出た。

 

その部屋には研究員の男の死体だけが、比較的綺麗で笑った状態のまま、残されていた…。

 

 

 

 

 彼は歩く。ふうのと違い何故かヤツらは現れない。ふうのは襲われるかもしれないという緊張の中を彼は悠々と歩いて行く。

 難なくエレベーターまで辿り着き、簡単に外まで出てしまった。

 だが彼は少女を降ろそうとせずそのまま歩いて行く…自身の住処へ。

 

 無駄に頑丈なエレベーターに乗り、これまた無駄に深い自身の部屋まで、彼は少女を運んだ。

 

 自身の部屋に入ると少女をベットに優しく横たわらせた。

 

 寝かせた少女の胸を注意深く見やる彼。

 

 それはふうのが知ったら驚いた事だろう。

 

 胸が動いていた(・・・・・)。まるで呼吸に合わせ上下に動くように。よく耳を立てれば少女の呼吸音も聞こえた。少女は生きていた。声を出せるほどの回復はしていなかったが生き永らえていた。

 

 彼は、少女の口元についたコーラのような黒色の液体を手袋で拭う。そしてベットから離れ、自身の服が仕舞われた古びたタンスのような物から、ジャージと手袋を取り出し、汚れた手袋を替え、ジャージは少女に着せた。

 彼は毛布を少女に被せてやると、ベットの隅に座り少女を眺めていた。

 …手持ち無沙汰になったのか先程飲ませた小さなペットボトルのような物を取り出した。

 

 それ少し傾け、戻すとチャプッという跳ね返った音が聞こえた。それはおかしかった。なぜなら満タンに入っていて、飲ませた量から考えても波打って出る音にしては大きかったからだ。

 

 少女に飲ませた液体が入った容器。それはほんの少し、キャップで波打つかどうかというほどの量しか飲ませていないのにも関わらず、半分くらいの量がなくなっていた。

 

 「…これを飲ませたのは久しぶりだよ…俺の血を飲ませたのは」

 

 

 

 

  




とくになにもないならタグに断章のグリムを入れよう…。
あ、今回タグに原作改変とネタバレ注意を入れさせて貰いました。少女ちゃんが"まだ"生きてますし、そうじゃなくとも「原作だと死ぬんだぁ」となりましたので。
感想ほしいなぁ〜。
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