士道「俺これから学校で鳶一と会う時めっちゃ気まずいんだけどどうすりゃいいの?」
桐生「まあそこはあれよ。…………………がんばれ」
士道「うわ誤魔化した!」
万丈「てか感想でも言われてたけどよ、俺のグレートクローズの説明杜撰すぎんだろ!まともに触れてんのあらすじ紹介だけじゃねえか!」
桐生「馬鹿お前言わなけりゃバレなかったのに!なんで言っちゃうの!」
士道「いやもうバレてるよ!読者さんの九割にもうバレてるよ!」
万丈「感想で『グレートクローズどうしたんですか』って言われちゃってんだよ!」
桐生「だーもうっ!そこら辺今回説明するから!あらすじ紹介が終わっちまう!と、ということで、どうなる第9話!」
「………そりゃ、そうだよな。普通に考えりゃ休校だよな………」
士道は後頭部を掻きながら、瓦礫とかした学校の前にいた。
士道が精霊十香と会い、名を付けた次の日。
普通に考えれば昨日の惨状で休校になる事は分かるはずだったが、何となく、いつも通りに登校してしまったのである。
戦兎達がASTやスマッシュと戦っている間、士道は十香と存分に話すことができた。内容はなんて事のないものである。十香が知らないことを質問し、士道が答える。そんな取り留めのない会話でも、十香はとても嬉しそうに笑った。
その後はラタトスク機関員に後押し、というか、はやし立てるようなコールに後押しされて、十香とデートの約束をすることが出来た。が、その直後に十香は消えてしまった。琴里によると、
その後は合流した後にフラクシナスに収容され、夜にずっと録画ビデオで反省会をさせられていた為、寝不足で思考力が落ちていたというのもあるかもしれない。
「やっぱ戦兎の言う通りだったか………」
戦兎も朝呼びに電話したのだが、「どうせ今日は休みでしょ」と言って、とっとと電話を切ってしまったのだ。何か電子音が聞こえたので、発明品を創っているのだろう。ちなみに万丈はそもそも電話に出なかった。
『キュルッキュルィ〜!』
「ちょ、お前なんだよっ」
すると、鞄から昨日戦兎に貰ったロボット、『アライブガルーダ』がからかうように周囲を飛び回る。昨日はなんの疑問も抱かなかったが、これ何気に凄いアイテムかもしれない。こんな小さくて自在に飛び回るロボットなんて見た事無いし。天才と自称するだけのことはあるということだろうか。
取り敢えずは、家とは違う方向へと向きを変える。ガルーダも士道に追従するように、周囲を飛んでいた。
「さて、どうすっか。確か、卵と牛乳切れてたよな?」
このまま帰るのも何なので、どこかスーパーにでも寄って帰ろうとして、しかし士道は再び足を止めた。
「っと、通行止めか」
『キュルゥ』
だがそんなものいらないと言わんばかりに、その道が通行できないことは容易に知れた。
アスファルトの地面は滅茶苦茶に掘り返され、ブロック塀は土塊のように崩れ、雑居ビルは模型のジオラマか何かのように崩落している。まるで戦争でもあったような有様だ。
「______いや、あったな。戦争みたいな事」
『キュル?』
この場所には見覚えがあった。初めて十香にあった空間震現場の一角である。
まだ復興部隊が処理をしていないのだろう。その惨状は十日前と全く同じ状態だった。
「…………ドー」
頭の中で少女の姿を思い出す。
______十香。昨日まで名前を持たなかった、精霊と、災厄と呼ばれる少女。
昨日、前よりもずっと長く話して______その予感は確信に変わった。
確かにあの少女は、普通では考えられない、人外じみた力を持っている。国家機関が危険分子と判断するのも、理解できる。今目の前にある光景が、何よりの証拠だ。
けど、それ以上に。
あの子が、いたずらに力を振るうような、思慮も慈悲もない、鳶一の言う化け物とは、到底思えなかった。
「………い、………ドー」
昨日、万丈が叫んだ言葉を思い出す。
_______力を持つから化け物だ………?そんな訳ねえだろぉっ!!
そうだ。力を持つから化け物になるなんてこと、ある訳がない。
そう言われて、あの少女は士道の一番嫌う、鬱々とした顔を作っている。それが悲しくて仕方なくて、どうしても許容できなかったのだ。
「おい、シドー」
………まあ、そんな事を朝から考えていたから、気づいたらこうして学校まで歩く羽目になってしまったわけなのだが。
『キュルッ、キュルッ』
「ん?どうしたんだよガルーダ」
すると、ガルーダが服の裾を摘んで、何かを訴えるように鳴いた。
と、その時。
「…………おい、無視をするなっ!」
「えっ?」
視界の奥______通行止めエリアの向こうからそんな声が響いてきて、士道は首を傾げた。
凛とした、美しい声。確か………昨日にも、同じ声を聞いたような気がする。
………今、絶対に聞こえるはずのない声。
「え、ええと______」
士道は自分の記憶と今しがた響いた声を照合しながら、その方向へ視線を向けた。瞬間、身体が硬直する。
視線の先の、瓦礫の山の上。
そこに、明らかに現代社会では似つかわしくないドレスを纏った少女が、ちょこんと屈みこんでいた。
「と…………十香っ!?」
「ようやく気づいたか。ばーかばーか」
そう、士道の脳か視覚に異常が無いなら、その少女は紛れもなく、昨日士道達が学校で会った少女、十香だった。
背筋が凍るほどに美しい貌を不満げな色に染めた少女は、トン、と瓦礫の山を蹴ると、かろうじて原型を残しているアスファルトの上を辿って士道の方へと進んできた。
「な、何してんだ、十香……」
「ぬ?なんだと言われてもな…………お前から誘ったのだろう?シドー。そう、
「なっ………」
『キュルキュルー!』
こともなげに言い放った十香に、士道は肩を震わせた。
ガルーダはまたも士道をからかうように、奇妙な鳴き声を鳴らして周囲を飛び回った。
◆
「あー…………流石に徹夜はしんどいなぁ……………」
学校で精霊____『十香』と邂逅した次の日。遅めに起きた万丈は戦兎の部屋でいつも通り筋トレをして、戦兎は机の上で項垂れていた。昨日の説明の後も、戦兎は自室で強化アイテムの修理に取り掛かっていたので、大分寝不足なのである。まあそのお陰で、なんとかスパークリングは修理の目処が立ちそうなのだが。
ちなみに戦兎と万丈はそれぞれ隣の部屋に住んでおり、大抵万丈は戦兎の部屋に居座ることが多い。
「って、んなこと言ってる場合じゃなかった。おーい、万丈?」
「ん?なん、だ、よっ……ふっ」
戦兎が声をかけると、万丈は腕立てをやめて戦兎の方へと向き返った。
「お前、結局グレートクローズのボトルどうなったんだよ?」
「あぁ?だから言っただろ。
「だよなぁ」
言って、戦兎は所持しているボトルを並べる。
万丈が所持していた、【グレートドラゴンエボルボトル】。
この世界に来てから、初めてスマッシュと戦闘した後、そのボトルは綺麗さっぱりと消失してしまったのであった。
戦兎は万丈から聞いただけでその光景を見ていないのだが、どうやら光の粒子になりながら消えたらしい。
だからこそ、昨日のスマッシュとの戦闘では、通常のクローズで戦っていたのだ。
「つーかよ、なんでボトルが消えたんだ?」
「………考えられる可能性は………ここが、エボルトのいない世界だから」
「っ!なんだと?」
元々あの【グレートドラゴンエボルボトル】は、エボルトが万丈の身体に憑依した際に生成した【ドラゴンエボルボトル】を、万丈が奪って自身の思いによって変化させたボトルだ。
そしてそもそものエボルボトルは、エボルトが居たことで作られた物である。故に、ここがエボルトのいない世界だと仮定するなら、一応の辻褄は合うのだ。
「成る程な………まあでも、それはそれで良いじゃねえか。だって、それならエボルトがいねえってことだろ?」
「ああ。それはいい。けど………問題はそこじゃないんだ」
「?なんだよ」
「そもそも…………どうしてフルボトルが必要となるような…………スマッシュが現れたか、だ」
「………そういや、そうだな」
言って、戦兎はフルボトルを並べる。
いま手元にあるボトルは、【ラビットフルボトル】【タンクフルボトル】【ゴリラフルボトル】【ダイヤモンドフルボトル】【タカフルボトル】【ガトリングフルボトル】、そして昨日の戦闘で万丈が入手した、【ニンジャフルボトル】、そして万丈の持つ【ドラゴンフルボトル】を合わせて計八つ。
「変なのはそれだけじゃない、どうしてスマッシュを倒して成分を吸収した後、直ぐに浄化済みの状態になったか、だ」
「確か、浄化装置に入れて美空が居ねえとフルボトルになんなかったよな?」
「ああ。一体、どうして………」
再び考える。考えても考えても、より一層謎が増えるばかりだった。
すると、その思考を遮るように。
『♪♪〜〜』
「ん?電話?」
昨日の夜に新機能を追加したばかりのビルドフォンに、通話の着信音が聞こえた。『村雨令音』からだ。
「もしもし?」
『セイ、繋がってよかった。バジンはいるかい?』
「え?ああ、いますけど」
ちなみにバジンと言うのは、万丈の令音さんの呼び方だ。俺たちのと比べて二文字同じだからマシな方だろう。
『実は、君に頼みたいことがあってね_____』
◆
数分後。天宮大通りのカフェにて。
「ほう、この本の中から食べたいものを選べばいいのだな?」
「ああ、そうだよ」
「きなこパン。きなこパンは無いのか?」
「………や、流石に無いだろ。ていうか最初のパン屋の時食いまくってたじゃねえか」
「また食べたくなったのだ。一体なんだあの粉は……あの強烈な習慣性……あれが無闇に世に放たれれば大変なことになるぞ……人々は禁断症状に震え、きなこを求めて大戦が起こるに違いない」
「ねえよ」
『キュルゥ〜』
と、傍から見れば仲良さげな同じ学校の男女カップルと、男の肩に止まった珍妙な赤い鳥を見る、
「ふーん、仲好さそうじゃん。まさか、昨日の今日でとは思わなかったけど」
小洒落た店員姿の天才物理学者の姿があった。何故彼がこんな所でウェイターの真似事をしているのか。話は数分前にさかのぼる。
電話を受けた戦兎と万丈は、令音、及び琴里からの命令で、目の前の二人____五河士道と十香のデートを護衛するよう命じられたのだ。
護衛、といっても大したことではない。二人のデートが滞りなく進むよう計らって欲しい、との事だった。
最初は出歯亀のようで気が進まなかった戦兎も、渋々引き受けることにした。_____後で
ちなみに万丈は変装して外でビラ配りをしている。
「お?動いたか」
「……セイ、出番だ。それが終わったら、今度は彼らを遠目で見張っておいてくれ。バジンにも伝えておく」
「りょーかい」
後ろから令音の声が聞こえたので、レジへ向かう。ちなみにテーブルの上にある皿は、あれ払えるかと一瞬不安になる量だった。
「お会計お願いします」
と、こちらに気付いていないのか、何とはなしに財布からお金を出す士道。
「ほーいお預かりしまーす」
「…………ッ!?」
そこでやっと戦兎の姿を認識したのか、盛大に眉をひそめ、一度目を擦り、再び目を見開いて、一歩下がった。まあ店員が同級生だったら驚くだろうが、今その反応はされると困る。
一瞬士道を睨み付け、チョイチョイと手招きした。
↓以下、パントマイムでお送りします。
「(頼む、から、十香に、悟られる、なよ!)」
「(お前、何、してるん、だよ!」
「(令音さん、から、頼まれた、の!サポート、しろって!)」
「(デートを、続行、しろって、ことか?)」
「(そうだ!取り敢えず、ここは、あくまで、店員と、客、という体で、頼む!)」
「(………分かった)」
パントマイムによる意思疎通終了。即興で合わせてくれた士道に感謝しつつ、戦兎は何事も無かったように会計を済ませた。ちなみに十香は頭の上に疑問符を浮かべていたが、特に気にした様子はなかった。
「こちら、お釣りとレシートです」
士道に手早くレシートと釣り銭を渡し、次いでレジ下の引き出しからカラフルな一枚の紙を取り出し、士道に手渡す。
「こちら商店街の福引券となっております。この店を出て、えーと、右手道路沿いに行った所に福引き所がありますので、
うん、頼まれた通り場所を説明して後半をはっきりと伝えた。ちょっと棒読み臭くなったがいいだろう。……分かってる、わかってるから士道、そんな微妙な顔になるな。悟られるだろうが。
「シドー、それは何だ?」
すると、十香が興味津々で福引券を見てきた。よし、食いついた。
「行ってみるか?」
「シドーは行きたいのか?」
「………ああ、行きたくてたまんねー」
「では行くか!」
『キュルキュルー』
十香が大股で元気よく店から出て行き、ガルーダが追うようにヒラヒラと飛んでいく。それを士道が追いかけて出るのを見て、俺はレジから離れて服を着替えた。途中でまた士道の驚いたような声が聞こえたが、気にしないでおこう。さて、万丈にも動くよう言わないと。
◆
「……………で、なんで初デートでいきなりホテルに直行するようなプランにした訳だ司令官さんよお?」
『………いけると思ったのよ』
「んな小学生みたいな言い訳を………」
さらに数分後、戦兎は自分を保護している組織の司令官に突っ込んでいた。
理由は簡単、例の福引所で当たった、というか当てさせた景品が、『ドリームランド』とかいう大人のホテルの無料ペアチケットという代物だったからだ。尾行しておいてよかった。
「付き合ってるわけでもない男女が初デートでいきなりホテルに行くなんて事あるか。幻さんじゃあるまいし」
『幻さん?』
「いや、何でもない」
紗羽さんによると初対面で『朝までホテルで語ろうか』と言い放ったというかつての仲間、氷室幻徳の事をつい思い出した。まさかこの世界に来て同じことを間接的にしようとする人がいたとは。
というかちょっと待て。先日十香の名付けの際、彼女は事もあろうに『トメ』などと言う名前を付けようとしていなかったか?
まさか、と不穏な考えが頭を過ったが、振り払って琴里と話す。
「とにかく、初デートであれば無理がある。今度はもっとまともなやつにしてくれ。こっちも身が持たん」
『分かってるわ。ほら、見失わないで。移動したわよ』
「あっ、いけね。…………本当に頼むぞ?」
きちんと言い含めて、通信を切る。万丈と合流した俺は、二人で尾行を再開した。ちなみにいつもの服装だとバレるので、俺は目立たないシャツにジーンズ、万丈はメガネと付け髭に紳士服という出で立ちだった。………いやちょっと待て。
「万丈、お前なんだよその格好」
「あ?変装にはメガネとつけ髭は基本だろうが」
「いや前から思ってたけどそれかえって怪しいだけだからな。細かなところで馬鹿を露呈しないの」
「馬鹿ってなんだ!筋肉つけろ筋肉」
と、いつものやり取りを挟みつつ、士道達の様子をうかがう。二人とも付かず離れずの距離で、士道の方はどこかぎこちなさそうにしていた。
するとその様子を見た万丈が、ため息混じりに言う。
「ったく情けねえな。デートっつったら男から手を引くもんだろうが」
「お、何だ。万丈にしちゃやけにまともなこと言うじゃないか」
「うっせ。………まあ、一応彼女いたしな」
「あ…………」
そうだ。万丈は既に______
「…………すまない」
「いや、気にしてねえよ」
そう言った万丈の目は、どこか悲しそうにも見えた。
小倉香澄………スマッシュの人体実験によって、ドラゴンフルボトルを遺して消滅してしまった万丈の恋人。今でも、彼女の事を忘れていないのだ。ずっと、心の中で留めている。
「(………余計な話は、するべきじゃなかったな)」
心の中で後悔しつつ、士道達の方を見る。士道達が手を繋いでる光景が見えた。周囲に見覚えのある人がいるあたり、おそらくラタトスクの差し金だろう。
『戦兎』
すると、耳元のインカムから琴里の声が聞こえた。
「ん?どうした。尾行ならちゃんとしてるぞ?」
『そうじゃないわ。今士道達のいる位置から近いところで、スマッシュの反応があったわ』
「っ!このタイミングで!?」
『ええ。その上、士道達の半径一キロ圏内に、ASTの反応もある………まずい事態よ』
確かにまずい。スマッシュが来るタイミングも最悪だし、何よりAST。恐らくはどんな手段を使ってでも、十香を精霊として始末しようとするだろう。それこそ、遠距離からスナイパーライフルか何かで狙撃すれば終わることだ。
「分かった。ASTの方は俺がなんとかする。万丈、スマッシュの方頼めるか?」
「おう、任せとけ!」
「という訳だ。スマッシュとASTの位置情報を教えてくれ」
『分かったわ。くれぐれも頼むわよ。二人の尾行は他のメンバーに頼むわ』
その後、二人はそれぞれ別の方向へ、駆けて行った。
◆
時刻は十八時。
天宮駅前のビル群に、オレンジ色の夕日が染み渡る。そんな最高の絶景を一望できる高台の小さな公園を、少年と少女が二人、歩いていた。あとその側に、何やら珍妙な赤い鳥のようなナニカが一体。少年の方は問題ない。問題は、少女の方だ。
「_____存在一致率九十八.五パーセント。さすがに偶然とかで説明できるレベルじゃないわね」
精霊。
世界を殺す災厄。
三十年前この地を焦土とし、五年前にはこの町を大火に包んだ化け物。
しかし、今燎子の網膜に映るその姿は、どこからどう見てもただの可愛い女の子だったのである。
「狙撃許可は」
と、静かな声音が聞こえた。折紙だ。
燎子と同じくワイヤリングスーツにスラスターユニットを装備し、右手には自分の身長よりも長い対精霊ライフル《クライ・クライ・クライ》を携えている。
「……出てないわ。待機してろってさ。まだお偉い方が協議中なんでしょ」
「そう」
安堵した様子も落胆した様子も見せず、折紙が頷く。
今精霊の一キロ圏内には、燎子をはじめとするAST要員が十人、五班に分かれて待機していた。二人がいるのも、そのポイントの一つだ。公園からさらに離れた、開発中の土地だ。昼間はトラックやらクレーンが列を作って騒音を鳴らしているが、夕方ともなるともう静かなものだった。その上アンノウンの反応も感知されたこともあって、数名がその排除へと向かっている。
しかし、現段階ではまだ、重役達は対応を協議している途中であった。攻撃を仕掛けるか、否か。
空間震を観測できない、言わば静粛現界であったため、空間震警報は鳴っていない。つまり住民は誰一人として避難しておらず、今精霊が暴れだすと周囲に甚大な被害が出るのである。
かといって警報を鳴らせば、精霊を刺激することにもなる。この上なく嫌な状況だった。
しかし______
「____っ!なんですって?………了解」
燎子は一瞬驚くと、短く答えて交信を終了した。
「……驚いた、狙撃許可が下りたわ。折紙、あんたが撃ちなさい」
「了解」
その言葉に、やはり何の感慨も浮かべずに答えた。
「総員、実戦配備!…………?ちょっと、何があったの?誰か応答しなさい」
燎子は他の隊員にも交信を行なったがしかし、応える者は誰もいなかった。
「多分誰もこないと思うよ。今頃はスヤスヤ寝てるさ」
後ろから聞こえた声に、折紙と燎子は思わず振り返った。
そこに立っていたのは、先日戦闘を繰り広げた、仮面ライダービルド【ニンジャタンクフォーム】………多様性を重視した、トライアルフォームの姿だった。
「貴方は、昨日の……!」
「仮面ライダービルド。『創る』、『形成する』って意味のビルドだ。以後お見知り置きを」
葛城巧がビルドに変身した際の台詞を真似ながら、ビルドは自己紹介をした。手には先日修理を済ませた武器、【四コマ忍法刀】と、ガンモードの【ドリルクラッシャー】が握られている。
「あなたの仕業ってこと………!?」
「そ。念のため言っとくけど、気絶させただけだからね。何事も平和的解決が一番。だから………その物騒なもん、下げてくれると嬉しいんだけどな」
ビルドは言いながら、手元の四コマ忍法刀で、折紙の持ったライフルを指す。
「あなたの目的は何。何故、精霊を庇うの」
折紙は少し表情を歪ませながら、ビルドに訊いた。普段表情を滅多に変えない折紙がわずかでも歪んでいるのは、先日の戦闘でその実力をまざまざと見せつけられたからだろう。お陰で部隊は撤退にも追い込まれてしまった。死傷者がいなかったのが奇跡だ。
「二人のデートを邪魔しないようお節介を焼いてるだけだよ。ほら、人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやら、って言うじゃん。それに、あの子を撃ったら士道も悲しむと思うよ?………ま、そもそもそんな事、させねえけど」
「…………っ」
ビルドの挑発するような言葉に、一瞬言葉が詰まる。士道が悲しむのは、折紙としても本意ではない。
しかしその言葉を、折紙はASTに入った強い覚悟でもって跳ね除けた。
「嫌だと、言ったら?」
「まあ、ちょっと痛い目に合うかもしれないな」
言って、ビルドが忍法刀とドリルクラッシャーを構える。が、その瞬間。
「させないわよ!」
「え?うわっ、ちょっ!」
燎子が凄まじい速度で、ビルドに切り込んできた。すかさず忍法刀でガードの姿勢をとり、トリガーを三回押す。
【風遁の術!竜巻斬り!】
「くっ!」
忍法刀の剣先から、小規模な竜巻が発生する。ビルドも殺さないよう威力を調整していた。
しかし、その一瞬の隙が仇となる。
「今よ!折紙!」
「なっ!しまった!」
折紙はこのチャンスを逃さず、すかさず射撃体勢をとり、そして______
_______
どうでしたか?デートってタイトルで書いたくせに、あまりデート描写が書けてなくてすいません。
戦兎の修理スピード遅くね?と思った人もいるでしょうが、序盤から強化アイテム出してもつまんねえだろという考えのもと、スパークリングあたりは結構後に登場しそうです。
次で十香デッドマッチは終わると思います。
次回、 第10話 プリンセスの笑顔 をお楽しみに。あ、ちょうど10話で終わってなんか語呂がいいな。
よければ感想や高評価、お気に入り登録よろしくお願いします!あとUA数が6000超えました。ありがとうございます!
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