万丈「おいついでってなんだよ!もっとマシな紹介しろよ!」
桐生「だってお前全然役に立ってなかったし、むしろ火に油注いでんじゃん」
士道「てか!前回の最後の描写には触れねえのかよ!俺撃たれてんだけど!?」
桐生「ん?って、うわぁぁぁっ!ゾンビだぁ!」
士道「んな訳あるか!とにかく、その真相が分かる、ちょっと長めの第10話をどうぞ!」
万丈「あ、最初は俺の視点からスタートな?」
士道「マジで!?」
士道が撃たれる、少し前。
「オリャァァッ!!」
「グゥォォァァッ!!」
戦兎がASTを足止めに行っている頃、万丈はスマッシュとの戦闘を繰り広げていた。相手は死角から攻撃を行ったりするなど攻撃方法が多彩であったが、ただのスマッシュならクローズの敵ではない。クローズが撃ち込んだ拳がスマッシュを捉え、吹き飛ばした。
「これで終わりだ!」
ボルテックレバーを握り、チャージャーを高速で回転させる。
すると、背後から蒼炎のエネルギー体、クローズドラゴン・ブレイズが現れ、足にも同じく蒼炎のエネルギーが宿る。
機械音声が鳴ると同時に、クローズが前方へジャンプ。同時にドラゴンが火炎のブレスを吐き、その勢いのままスマッシュへとボレーキックを蹴り込む必殺技______
「ウォオリャァァァァァアッ!!!」
「グゥォォォァァアァッ!!!」
蒼炎を纏ったキックが、スマッシュの肉体に衝突する。
クローズの渾身のキックを受けたスマッシュは、断末魔をあげて爆散した。
「うっし。んじゃ、後はこれで………」
クローズエンプティボトルを取り出し、キャップを開けて成分を吸収した。粒子となって流れた成分はエンプティボトルへ行き、手元には黄色いボトル_____【コミックフルボトル】が生成された。
「………つーか、なんで俺も浄化できんだ?」
そう、戦兎と同様、万丈にもまた、ボトルの浄化能力が備わっていたのである。思えば、昨日のスマッシュとの戦闘の後、ボトルを浄化できたのも変だった。その時は深く考えなかったが。
「うーん…………考えてもわっかんねえ!取り敢えず戦兎と合流しねえとな………」
と、変身を解除するために、クローズドラゴンを抜こうとした、その時。
どこからか、粘りつくような声が聞こえた。
「っ!誰だっ!?」
慌てて周囲を警戒する。
すると、クローズの正面………さっきまでスマッシュがいた場所に、謎の影が揺らめいた。
『そぉんなに声を荒げるなよぉ〜………怖いだろぉう?』
気の抜けるようなひょうきんな声と共に、謎の影が姿をあらわす。
濃い紫色の身体に、茶色い管とアーマーと、黄色いバイザー。
そして胸にある、黄色い
そして手には銃______まるで、トランスチームガンのような形をした銃が、握られていた。
「っ!てめえ、何モンだっ!!」
『俺?俺かい?そうかそうだなぁ………何者か、と言われたら、果たして俺は何者なのか、はっきり分からないねえ…………んじゃあ、取り敢えず…………』
一言置いて、名を言った。
『_______
「っ、てめえ!なんで俺の事!」
『まあまあ、細かい話はぁ?どうでもいいだろう………なぁっ!?』
すると、いきなり目の前の男______マッドクラウンは、クローズに向かって射撃を仕掛けた。
「くっ………マッドだかハットだが知らねえが!とりあえずぶっ飛ばすっ!」
ビートクローザーを取り出し、応戦する。しかし、相手はクローズの攻撃を避け、死角から攻撃を仕掛けてくる。
「ちっ!くそっ、当たらねえっ!」
『ほぉらほらどうしたぁ?ぜぇんぜん当たらないぜぇ?ほいっ』
「いってぇ!」
相手は余裕綽々とばかりに、クローズの頭にデコピンを打ってくる。そして、すかさず銃撃で距離を話す。
「のわっ!!ぐっ………」
『これで、終わりだ』
言うとマッドクラウンは、手元から
「っ!フルボトル!?」
マッドクラウンの銃が底から響くような重低音を出したかと思うと、鮫のような形をした巨大なエネルギーが、クローズめがけて放たれた。
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」
クローズは吹き飛ばされ、木にぶつかる。変身解除まではされなかったが、かなりの痛手を負ってしまった。
『この程度かぁ……?んま、今日は挨拶ついでだ。精々よろしくなぁ?仮面ライダーよ………』
「くそっ、待ちやがれっ!!」
言葉を残すと、マッドクラウンは身体の管から蒸気を出し、まるで溶けるかのようにその場から消えた。
「………くそっ!何なんだよあいつ………って、そうだ!戦兎と合流しねえ、と………」
また痛む身体を引きずりながら、クローズは戦兎の元へと向かった。
◆
_____士道が撃たれる、数分前。
「おお、絶景だな!」
『キュルー!』
夕日に染まった高台の公園で、十香は柵から身を乗り出し、黄昏色の天宮の街並みを眺めていた。ガルーダも周囲を飛び回り、同意するように鳴き声を挙げる。
士道達はフラクシナスクルー達の巧み(?)な誘導によるルートを辿り、この見晴らしのいい公園へとたどり着いていた。
士道も、ここに来るのが初めてではない。寧ろ、この心安らぐ場所は、密かなお気に入りの場所でもあったのだ。
「____それにしても」
十香がうんと伸びをして、屈託のない笑顔を浮かべた。
「いいものだな、デェトというのは。実にその、なんだ、楽しい」
「…………っ」
不意に顔が赤くなるのを感じる。自分からは見えないが、真っ赤に染まっているのが分かる。
「どうした、顔が赤いぞシドー」
「い、いや、何でもねえよ」
「?そうか」
『キュル?』
士道は額に滲んだ汗を拭いながら、ちらりと十香の顔を見た。十日前、そして昨日、十香の顔に浮かんでいた鬱々とした顔は、随分と薄れていった。とても____可愛くて晴れやかな、悪くない顔をしていた。
「____どうだ?お前を殺そうとする奴なんて、いなかっただろ?」
『キュルキュル!』
「………うむ、みんな優しかった。正直に言えば、まだ信じられないくらいに」
「あ………?」
士道が首をひねると、十香は自嘲気味に苦笑した。
「あんなにも多くの人間が、私を拒絶しないなんて。私を否定しないなんて。_____あのメカメカ団、 ………ええと、なんといったか。エイ………」
「ASTのことか?」
「そう、それだ。街の人間全てが奴らの手の者で、私を欺こうとしていたと言われてたほうが真実味がある」
「おいおい………」
『キュル……』
流石に発想が飛躍しすぎていたが…………十香にとっては、それが普通だった。
否定され、され続けるのが当たり前。
そんなこと______あまりにも、悲し過ぎる。
「_____でも本当に、今日はそれくらい、有意義な一日だった。世界がこんなに優しくて、楽しくて、こんなに綺麗だなんて………思いもしなかった」
「そう、か____」
士道は、口元を綻ばせて息を吐いた。しかし、そんな士道とは対照的に、眉を歪めて苦笑した。
「あいつら____ASTとやらの考えも、少しだけわかったしな」
「え………?」
「私は………いつも現界する度に、こんなにも素晴らしいものを壊していたんだな」
「________っ!」
士道は、息を詰まらせた。
「で、でも、確かそれは、お前の意思とは無関係なんだろ………ッ!?」
今日のデートの時、聞いた。この世界にくるのは何かの外的要因によるもので、そこに十香の意思は介入しないと。
「………現界も、その時の現象も、私にはどうにもならない」
「なら_____」
「だがこの世界の住人達にしてみれば、破壊という結果は変わらない。ASTが私を殺そうとする道理が、ようやく、知れた。……リューガには悪いが、やはり私は、化け物なのだろう」
士道は、すぐに言葉を発せなかった。
十香の悲痛な顔に胸が張り裂けるような感覚を覚え、上手く呼吸ができなくなる。
「シドー。やはり私は………いない方が、いいな」
言って十香は_____笑った。
けどそれはさっきまで十香が見せていた、無邪気な笑みとは程遠かった。
まるで自分の死期を悟った病人のような______弱々しくて痛々しい、張り付いたような笑顔だった。
「そんなこと………ない。そんな訳…………あるか………ッ!」
士道は力を込め、グッと拳を握りしめた。
「だって………今日は空間震が起きてねえじゃねえか!きっといつもと何かが違うんだ…………っ!それさえ突き止めれば…………!」
しかし十香は、ゆっくりと首を振った。
「例えその方法が確立しても、不定期に存在がこちらに固着するのは止められない。現界の数は、減らないだろう」
「だったら…………ッ!もう、帰らなきゃいいじゃねえか!!」
士道が叫ぶと、十香は顔を上げて目を見開いた。そんな考えなど、全く持ち合わせてなかったように。
「そんなこと_____出来るわけが………」
「試したのか!?一度でも!」
「…………」
十香が、唇を結んで黙りこむ。確か琴里の説明では、精霊がこの世界にくる際に起こる余波が、空間震となるという話だった。
勢い余って出た言葉だが_______それが本当なら、この世界にずっといれば、それでいいのだ。
「で、でも。あれだぞ。私は、知らないことが多すぎるぞ」
「そんなもん俺がなんとかする!いや俺だけじゃない!戦兎や万丈もだ!」
「寝床や食べるものだって必要になる。きっと、迷惑になるだろう」
「それだってなんとかする!」
「予想外の事態が起こるかもしれない」
「そんなもん起きてから考えろッ!」
十香は少しの間黙り込んでから、やがて震えた声で、小さく唇を開いた。
「………本当に、私は生きてもいいのか?」
「当たり前だ!」
「この世界にいてもいいのか?」
「そうだ!」
『キュルキュル!』
十香の言葉に力強く答える。最後はガルーダも一緒になって答えていた。機械のくせに、やたらと感情豊かな奴だ。
「………そんな事を言ってくれるのは、きっとシドーやセント、リューガだけだぞ。ASTは勿論、他の人間だって、こんな危険な存在が、自分のいる空間にいたら嫌に決まっている」
「ASTだ……?他の人間だ………?そんなもん、知ったことかッ!!そいつらが十香!お前を否定するってんなら…………!」
強く息を吸い、叫ぶ。
叫んで、士道は十香に手を伸ばした。十香の肩が、小さく震える。
「握れ!今は、それだけでいい………ッ!」
十香は顔をうつむかせ、数瞬の間沈黙した後、ゆっくりと顔を上げて、そろそろと手を伸ばしてきた。
「シドー______」
士道と十香の手が触れ合おうとした、その瞬間。
「_______」
士道は、とてつもない寒気を感じた。やるで、ザラザラの舌で全身を舐めまわされるような、途方もなく不快な感覚。
「十香!」
『キュル?』
ほぼ無意識のうちに、士道は十香の名を叫び_____
「…………っ」
思いっきり、両手で十香を突き飛ばした。
「_____________あ」
胸と腹の辺りくらいに、凄まじい衝撃を感じた。
「な、何をする!」
十香の声が聞こえる。______おかしい、よく聞こえない。
息が、できない。
意識と姿勢が、保っていられない。
途方もなく、気持ち悪い。
「_____シドー?」
十香の声が、聞こえない。
震える手を、なんとか脇腹にやってみる。
______あれ、おかしいな。
なんにも、な
◆
「シドー………?」
名を呼ぶが、返事が無い。士道の身体には、十香の掌を広げたよりも大きい傷穴が、抉られたように空いていた。
意味が、わからない。
「シ____ドー」
十香は士道の隣に膝を折ると、その頰を突いた。
反応は、ない。
数瞬前まで十香に差し伸べていた手は、一分の隙なく血に塗れていた。
『キュルッキュルゥ………』
今日のデートですっかり聞き慣れた鳴き声のした方に、顔を合わせる。
そこには赤いメカ鳥____アライブガルーダが、士道の体を突いていた。そして、死んだ主人を労わるように、悲しげな鳴き声を出した。
「ぅ、ぁ、あ、あ________」
やがて、頭が理解し始める。
十香を突き飛ばした事。士道の身体に穴が空き、血が流れていること。辺りに、焦げ臭い匂いが立ち込めていること。
いつも、十香を殺そうとしてくる、ASTと言う奴らの仕業だろう。
「_______すま、ない」
『キュルッキュゥ………』
十香は途方もなく目眩を覚えながら、悲しげに鳴くガルーダを軽く撫で、虚空を見つめる士道の瞼を、そっと閉じてやった。
そして、着ていた制服の上着を脱ぐと、優しく士道の亡骸にかける。
「_______やはり、駄目だった」
あの時十香は、この世界でも生きられるかもしれないと思った。
士道がいてくれたのなら、なんとかなるかもしれないと思った。
きっとすごく大変で、険しくて難しいだろうけど、できるかもしれないと思った。
だけど_______やはり、駄目だった。
世界は_____やはり十香を否定した。
瞬間。
世界が、啼き、空が、震えた。
空間が歪み、十香の身体に絡み付いて、荘厳なる霊装を創り出す。
そして_______災厄は、降臨した。
「ああ」
喉を、震わせる。
「あああああああああああああ」
天に響くように。
「あああああああああああああああああああああああああ_______________」
地に響くように。
自我が摩滅するような、焼き切れるような感覚。
「よくも」
目が、湿る。
「よくもよくもよくもよくもよくもよくもくよくもよくもよくもよくもよくもよくもくよくもよくも」
十香は剣を握る手に力を込め、その名を、叫んだ。
刹那、十香が足を置いていた玉座に亀裂が走り、バラバラとなって砕け散った。
そして、玉座の破片が十香の剣に纏わり付き、そのシルエットをさらに肥大化させた。全長10メートルはあろうかという、長大すぎる剣。
十香はそれを軽々と振りかぶると、士道を撃ち抜いた方向へと振り下ろした。
瞬間、凄まじい爆発が辺りを襲い、その一撃で以って、広大な台地を縦に両断した。
「やめろぉっ!!十香っ!!」
「よせ!十香!!」
二つの方向から声が聞こえる。後ろからは、息も絶え絶えな様子の万丈と、爆発を免れた戦兎の姿があった。その後ろには、無味な表情をした、士道を撃った女の姿もあった。
「セント、リューガ………すまない。私を庇ったばかりに、シドーが………」
「十香が悪いわけじゃない!だから、今すぐそれをやめてくれっ!お前がそんな事をするのを、士道は望んでいない!」
「止めてくれるなセント。あいつは私の友を…………シドーを、殺した。奴は____」
静かに、唇を開く。
「_____殺して
十香はそれだけ言い残し、静かに狂いながら、視線の先まで距離を
◆
「全く、男なら止めなさいよ万丈、戦兎」
『ぐっ………無茶な、こと、言うな!』
『そうだ!事前に聞かされてても、仲間が血まみれだったら動転もするわ!』
フラクシナス艦橋。正面モニターには身体をごっそりと削り取られた士道と、十香の攻撃を紙一重でかわしている戦兎ことビルド、十香に向かって走っている万丈ことクローズの姿が映っていた。
状況は、圧倒的なまでに絶望的だった。
ようやく空間震警報が鳴り始めたようだが、住民の避難は殆ど終わっておらず、そのまま十香とASTが交戦してしまったのである。
人が住んでいない所だったのが唯一の救いだが、十香の一撃は、そんな楽観視できるものでは無かった。何せただの一撃で、中心に底の見えない深淵を作ってしまったのだから。
「ま、ちょっと優雅さが足りないけど、
『………おい、そういうのは無いんじゃないか?幾ら何でも、士道に失礼だ』
「……分かってるわ。これでも、心配はしてるんだから」
クルー達が、琴里に戦慄したような視線を送ってくる。
ラタトスクの最終兵器にして、戦兎と万丈の大事な仲間、琴里にとっては実の兄が、今しがた目の前で殺されたばかりなのである。
だがそんな中にあって、なせ彼らはこうも平然と会話を続けていられるのか。
しかしその直後、さらなる衝撃がクルーを襲った。
「し______ッ、司令!あれは………!」
艦橋下段にいたクルーが驚きに満ちた声を上げた。
「_____来たわね。士道が、これで終わりなわけがないでしょう」
そこに映っていたのは、公園に横たわる士道の姿。
その士道の制服が、燃え始めたのである。
それも、制服だけではない。制服が焼け落ち、綺麗にくり抜かれた士道の身体が露わになる。
「き、傷が………っ!」
その、くり抜かれた部分の傷口が、燃えている。
その炎は士道の傷を見えなくするほどに燃え上がってから、徐々にその勢いを無くしていった。
そしてその炎が舐めとった後には、完全に元の姿へ再生した士道の姿があった。
『__________ん?あれ?』
『キュ………?キュ、キュル?』
画面に横たわった士道が。
『んー……………………って熱あぁぁぁぁぁぁっ!?ちょっ、熱っ!熱いんすけどっ!?熱っ!ちょ、熱っっ!!!』
『キュルッキュー!』
と、未だに燻っていた火を見て、跳ね上がった。慌てた様子でバンバンと腹を叩き、火を消し止める。先ほどまで悲しげに鳴いていたガルーダが、喜ぶように元気に飛び回った。
『て______あ、あれ?俺、なんで…………』
艦橋内が騒然となる。
「な………し、司令、これは______」
「言ったでしょ。士道は一回くらい死んだって、すぐニューゲームできるって。にしても………万丈、あんたよく落ち着いてたわね。てっきり、十香と一緒に暴れるものだと思ってたけど」
『………今は、それよりもあいつを止めんのが先だ』
「上出来よ」
琴里を唇を舐めながら、クルー達へ命令した。
「すぐに士道を回収して。彼女を止められるのは士道だけよ」
◆
「ふっ、ほっ、あぶねっ!?」
戦兎ことビルドは次々と繰り出される十香の攻撃を、なんとか紙一重で回避していた。攻撃自体はビルドを狙ったものではないが、その余波も十分な威力がある。自分が
「ぁ…………私、が…………士道、を……………」
「何してんだ!とっとと逃げろっ!!」
茫然自失となっている鳶一に、ビルドが強く叫ぶ。
とはいえ、既にビルドのアーマーもボロボロだった。複眼のアンテナは先が折れ、ドリルクラッシャーや忍法刀は修理しないと使い物にならない。
よって今はあくまでも攻撃を当てずに、トライアルフォームの【ニンジャラビットフォーム】のスピードに物を言わせて回避している状態だった。ラビットドラゴンの前例がある為、有機物同士でも可能かと思いビルドアップし、なんとか成功した。
「セント……何故その女を庇う?その女は、シドーを殺した女だ」
「士道は………そんなこと、望んでない。それに……俺は、ここを退くわけにいかない」
「本気か?邪魔立てをするなら………セントであろうと、容赦はしないぞ」
言うと、十香は、剣を持ち直す。十香を取り巻く殺気が、より濃密なものになるのを感じながらも、それでもなおビルドは、戦兎は続けた。
「いいや、そういう訳じゃないよ。ただ_____」
さっきまでとは調子を変えて、ビルドはボロボロの体で、空を指差す。
「今日の
「何だと?」
と、十香が眉を潜めた、その時。
「十ぉぉぉぉ香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ___________っ!!!!」
空から、そんな叫び声が、聞こえてきた。
「え_____?」
「ったく、遅いんだよ、王子様」
ビルドはボロボロになりながらも、マスクの下で笑った。
十香は自分を呼ぶ声に、己の耳を疑いながらも、顔を見上げた。
「シ______ドー…………?」
まだ状況が理解できていないような声で、十香が呟く。
士道が、空中から急速で落下してくる。ラタトスクからのサポートによって、だんだんと落下速度が緩やかになっていき、十香の両肩へ手をかけた。
「よ、よう……十香」
「シドー………ほ、本物、か………?」
「ああ………一応本物だと思う」
士道がそう言うと、十香はふるふると唇を震わせた。
「シドー、シドー、シドー…………っ!!」
「ああ、なん_____」
と、答えかけたところで、士道の視界に、いやビルドの視界にも、凄まじい光が満ちた。
十香が振りかぶったまま空中に静止させていた剣が、あたりを夜闇に変えんばかりの黒い輝きを放っている。
「な、なんだこりゃ………」
「し、しまった………!【
「ど、どこかってどこに!?」
「________」
十香は無言で、地面の方を見た、そこには、クローズの姿があった。
「ん?なんだ………って!おいおいなんだよそれっ!!ちょ、やめろやめろこっち撃つな!撃つなよ!絶対撃つなよ!?」
「な、なんだ万丈。フ、フリか?」
「フリじゃねーよ!てかお前もビビってんじゃねーか!」
地上ではビルドとクローズが、慌てた様子で上空を見据えて叫ぶ。
「と、十香!だ、駄目だ!あっちに撃っちゃ!」
「そ、そうだやめろ!あっちに万丈いるんだぞ!」
「で、ではどうしろと言うのだ!もう臨界状態なのだぞ!」
言っている間にも、十香の握った大剣はあたり一帯に黒い稲妻を撒き散らしていた。このままでは被害が拡大する一方だ。
その時、士道のインカムから琴里の声が聞こえる。
『ほら士道、さっき教えたお姫様を助けるたった一つの方法、実行しちゃいなさいよ』
「っ!で、でもあれは………!」
「何だ!?何かあるのかシドー!」
幸か不幸か、十香に聞かれてしまう。
いや、あるにはある______琴里から聞かされた、精霊を封印する唯一の方法。
正直な所、それはあまりにも支離滅裂で根拠に乏しく脈絡がないようなものだったが、もはやこの状況ではどうしようもない。
ええいままよ!と、士道は決心を固めて問いに答える。
「あ、あるにはある………。そ、その、あれだ!十香!俺と、キッ、キスをしよう………ッ!い、いやすまん、忘れてく___」
「キスとはなんだ!?」
「は………?」
「早く教えろ!」
「…………っ、き、キスってのは、こう、唇と唇を合わせ_____」
と、士道の言葉の途中で。
なんの躊躇いも無く、十香が桜色の唇を、士道の唇に押し付けてきた。
「____________________ッ!?」
力一杯に目を見開き、声にならない声をあげる。だって、もう言葉で許容出来ないほどに、十香の唇の感触が_______いや、なんて表現すればいいんだろこれ。キスはレモン味とかあれ真っ赤な嘘。十香が昼間に食ってたパフェの甘い味がした。
______すると、天に聳えていた剣にヒビが入り、バラバラに霧散して空に溶け消える。
次いで、十香が身にまとっていたドレスのインナーやスカートを構成する光の膜が弾けるように消失した。
「な____」
「……………ッ!?」
十香が狼狽に満ちた声を発し、士道がその動いた唇の感触で脳内トランス状態と化していた。
士道と十香の身体が、地面に向かって緩やかに落ちていく。逡巡しなからも、士道は十香を離すまいと強く抱いた。かなり弱々しく。おっかなびっくり。
唇と身体を合わせながら、二人が落下していく。
十香の霊装が粒子となって、軌跡を描く。
そして、その粒子が一つに合わさっていく。
それらはやがて、一つの形を形成し_______士道の手元へと、落ちていった。
そこにあったのは、紫色の、
水晶色のキャップと、黄金で描かれた玉座と剣。
しかし、士道はそれを確認する余裕がなかった。
十香と唇を離し、次いで、真っ赤になって身体を硬直させた。
霊装がボロボロに崩れた十香の姿は、見るもいやらしい半裸姿だったのである。
「ち、ちちち違うんだ十香、俺は____」
「み、見るな、馬鹿者…………ッ!!」
キスの意味を知らない割に、人並みの羞恥心はあるようだった。頬を染めながら睨みつけてくる。
「す、すまん………っ!」
士道がとっさに謝罪すると、十香がより身体を密着させてきた。
「え____」
「……これで、見えまい」
「っ、あ、ああ………」
本当にこれでいいのだろうか、と思いながらも、身動きを取れず、そのまま固まる。
「きゃー、士道くんのえっちー」
すると、いつの間にか変身を解いた戦兎が、ボロボロの体で、からかうように近付いてきた。万丈も、目のやり場に困るように視線を右往左往させながら、近付いてきた。
「か、からかうなよ戦兎………」
「ハハッ。まあ、頑張ったんじゃないの?今日のヒーローの座は、お前に譲ってやるよ」
『キュルキュル〜!』
「お前まで……ちょっ、くすぐってえって!」
戦兎はくしゃっとした笑みを浮かべながら、士道に言った。
ガルーダも士道の頬を突きながら、鳴き声を挙げる。
「……シドー」
そんなやり取りをしていると、十香が消え入りそうな声を発してきた。
「なんだ?」
「また………、デェトに連れて行ってくれるか………?」
「_____ああ。そんなもん、いつだって連れて行ってやる」
士道は、力強く首肯した。
その答えを聞いた十香は、今まで一番のとびっきりな、くしゃっとした笑顔を見せた。
◆
『ハッピーエンド、までには、まだ遠いぜ?五河士道』
士道達を遠目に見ながら、マッドクラウンはマスクの下でシニカルに笑った。
『まあ、今回は良しとするか。これでまた、覚醒へと一歩進み、そして………天使のボトルが一つ、生まれた』
視線を、士道の手元_____紫色のボトルへと向ける。
『この調子で頼むぜぇ?俺は、お前の成長が楽しみで仕方ないんだ………』
それだけを言い残すと、狂った道化師はまた、溶けるように消えていなくなった。
どうでしたか?
色々詰め込んだ結果、最終的に一万字を超えました。そして、やっと敵キャラが出せました。………今まで台詞だけ出して匂わせてたのに、誰もコメントしないんですもん。いや、いいんですけれど。
とりあえずこれで、『十香デットマッチ』は終了です。次からは四糸乃編です。なんか戦兎がメインみたいな終わり方でしたが、すいません、次回も士道がメインとなります。というか、士道をメインにしないといけない構成にしてしまったので、本当にすいません。
戦兎がメインで精霊を攻略するのは、もう少し後のお話になります。気長に待ってくれればと、思います。
それでは新章、『四糸乃チェンジング』編、
第11話 雨降る日のパペットガール を、お楽しみに。
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