士道「死んでねえから!ちゃんと生きてるからな!?」
十香「セント、これを読めばいいのか?」
桐生「そ。お願いね十香」
十香「うむ!しかし!倒れた士道はよみがえり!見事十香を封印することに成功っ!したのだ!どうだシドー、セント!ちゃんと読めたか!?」
士道「あ、ああ。大丈夫だ」
桐生「うんうん、ちゃんと読めてるし大丈夫。しかし、裏では何やら不穏な動きが………?どうなる第11話!」
第11話 雨降る日のパペットガール
士道と十香のデートから、土日を挟んで月曜日。
「…………ふはぁ」
「………くー………zzz」
『キュルー』
復興部隊によって完璧に復元された校舎は、もう相当数の生徒が集まっていた。
そんな中、士道はぼうっと天井を眺め、戦兎は寝不足からか寝癖を立てて机に突っ伏してすやすや眠り、万丈は亜衣麻衣美衣と談笑していた。心なしか顔が疲れているようにも見える。ガルーダは士道の上空をぷかぷかと飛んでいた。
あの日、あれからすぐ気を失った士道が眼を覚ますと、フラクシナスの医務室に寝転がされていた。
その後、施設で入念なメディカルチェックを受けさせられたのだが、それ以降十香の姿を見ていない。話をさせろと言っても、検査があるの一点張りで、結局面会すら叶わなかった。
そこからの休日は、ひたすら何もなかったので、戦兎の発明や修理の手伝いをしていたのだが、正直あまり身が入らなかった。空虚さと無力感で、死にたくなるくらいだった。加えて戦兎が何をどうやって何をしているのかが殆ど分からなかったので、それもあるかもしれない。あと、戦兎はそろそろちゃんと寝たほうがいいと思う。
そして一つだけ____士道の思考に引っかかったものがある。
あの時の、紫と金のフルボトルである。
なんでも十香の霊力を封印した際に、俺の手のひらにあったものらしい。その時は気付かなかったのだが、気絶した後も握りしめたままだったという。
今は戦兎に渡してあるため手元に無いが_____戦兎によると、もうすぐ解析が終わるそうだ。
そしてあの時______何か自分の身体に、暖かいものが流れてくるような感覚を覚えた。あれは一体、何だったのだろうか。
「______おーい五河、どうしたんだよ」
「っ、殿町。いるなら気配発してろよ」
話しかけてきたのは、クラスメイトの殿町宏人だ。何だかんだ、高校に入ってから仲良くしている友人である。
「普通にいただろ?ったく寂しいなぁ。殿町さんは寂しいと死んじゃうんだぞ?」
「いや知らねえよ。てか自分の席戻れよ。もうすぐホームルームだろ?」
「別にいいだろ?どーせタマちゃん先生、少し遅れるんだし」
「まあそうだけどさぁ」
「つか、お前と桐生、本当にどうしたんだ?そんな疲れた様子で」
「あ?まー、色々あったんだよ」
と適当に返したところで、教室のドアが開く。瞬間、教室がざわついた。
無理もないだろう。何しろあの鳶一折紙が、額やら手足やらを包帯だらけにして登校してきたのだから。
「………むー…………ん?ふぁぁ………何だ?こんな騒いで」
「あ、戦兎。起きたか」
「士道、一体どうした………って」
そこで戦兎も、折紙が包帯だらけなことに気づいたようだった。
折紙は教室中から注目を集めながらも、おぼつかない足取りで、士道と戦兎の前まで歩いてきた。
『キュルゥ………』
ガルーダが何やら威嚇した様子で、折紙の前を飛ぶ。先日の件で、彼女を敵と認識したのだろうか。
「お、おう、鳶一。無事で何より_____」
気まずげに言いかけたところで、いきなり折紙が二人に対して深々と頭を下げていた。
「と、鳶一………ッ!?」
「______ごめんなさい。謝って済む問題ではないけれど」
後に聞いた話だが、あの十香を狙った射撃は、折紙によるものらしい。恐らくは、それについて詫びているのだろう。
「………五河、桐生、お前ら鳶一に何かしたのか………?」
「しとらんわ!してたら俺が謝る方だろうが!」
「そーそー。何もしてない。………まあ、何かはあったけど」
「んだよそれ気になるなぁ。つか、その赤い鳥みたいなの何?」
殿町がガルーダも含めて訊いてくる。
とはいえ、詳しく説明する訳にもいかない。士道は折紙に向き直った。
「い、いいから、取り敢えず頭を上げてくれ……」
「……分かった。本当に、ごめんなさい。でも_____」
一言区切ると、折紙は表情を変えずに、士道に顔を近づけた。
「浮気は、駄目」
「………………は?」
あまりにも予想していなかった台詞に、思わず目が点になる。聞き耳を立てていた生徒達も、同じような反応を示した。しかし当の折紙は意に介さず、今度は万丈の方へと歩いて行った。
「………お前、鳶一と付き合ってたのか?」
「………いや、俺の記憶が確かなら付き合ってない。と、思う」
「………じゃあ、浮気って?」
「そんなん俺が知りたいよ」
呆然としている間に、チャイムが鳴り、教室のドアが開いた。
「はーい、みなさーん。ホームルーム始めますよぉー」
「あ、先生来た。ガルーダ、カバン入っとけ」
『キュルゥ』
タマちゃん先生が教室に入る。クラスメイト達も自分の席に着いた。ガルーダも待機状態になって、士道のカバンの中に収まる。
すると、タマちゃん先生がやたら元気な声で、クラス全員に聞こえるように言った。
「そうそう、今日は出席を取る前にサプラァーイズがあるの!_____入ってきて!」
言って、自分が入ってきた扉の方へ声をかける。
「うむ!」
すると、それに応えるように、聞き覚えのある声がして。
一人の少女が、教室へと入ってきた。物凄くいい笑顔をして。
「今日から世話になる、
と、名乗った。急すぎる展開に、士道も戦兎も万丈も折紙も、唖然とする。
十香はそんな視線など意に介さず、チョークを手にとって下手くそな字で、黒板に『十香』とだけ書いた。そして満足げに、「うむ」と頷く。
「お、おまえ、なんで………」
「………最っ高だな
士道が戸惑ったような声を上げ、戦兎が笑って言う。
「ぬ?」
すると、十香がこちらに気づいたのか、視線を向けてきた。
「おお、シドー、セント、リューガ!会いたかったぞ!」
大声で三人の名前を呼び、嬉しそうにぴょんと飛び跳ねた。
◆
その後は事情が事情なので鳶一と物凄く仲が悪かったものの、おおよそ楽しそうに十香は学校生活を謳歌していた。まあ、そのとばっちりに士道が巻き込まれて、男子から嫉妬と怨嗟に満ちた視線を向けられることも少なくなかったのだが。
それがただの口喧嘩などで済めば良かったが、そうもいかない。
片や、世界を殺す災厄と呼ばれた
片や、陸上自衛隊・
どちらとも人間の領域を遥かに超えた、規格外の少女である。………まあ、それを言ったら仮面ライダーも似たようなものだが。
その二人の間に、一応は一般人の士道が割り込まねばならないのだ。肉体的にも精神的にも疲労が蓄積してならない。
「ったく、少しは仲良くできないのかねえ……」
『キュルゥ?』
「ああいや、何でもない……」
言ってから、士道は自分の発言の阿呆さに思わず嘆息した。
一月前まで比喩なく命のやり取りをしていた相手だ。むしろ、仲良くしろという方が難しいだろう。
「ん………?」
溜息をつきそうになって、上を見上げた。
すると、上からポタポタと、雨が降ってきた。空もどんよりと曇ってきている。
「おいおい雨かよ。天気予報じゃ。晴れだったじゃんか」
『キュ!キュルルゥ!』
するとガルーダが何やら慌てた様子で、士道のカバンの中に入った。
「お前も雨は苦手か。そりゃそうか、機械だもんな」
カバンの中のガルーダに話しながら、小走りで家に帰る。しかし、雨はみるみるうちに激しさを増し、士道の制服を容赦なく濡らした。
「マジかよ………これ明日までに制服乾くか?」
と、家事を取り仕切っている家主ならではの同年代の中では少しずれた心配が口に出た。
なるべく服が濡れないよう、無駄な努力をして自宅への道を走る。
だが、丁字路を右に曲がったところで。
「あ………?」
ふと、足を止めた。前方に、気になるものを見つけたからだ。
「…………女の子?」
可愛らしい意匠の施された外套に身を包んだ、小柄な影。顔は分からない。ウサギ耳のような飾りがついた大きなフードで、顔をすっぽり覆ってしまっているからだ。
そして左手には、これまたコミカルなウサギのパペットが装着されていた。そんな目を引く格好の少女が、人気の無くなった道路で楽しげにぴょんぴょんと跳ね回っているのである。
「なんだ………?」
士道は、眉をひそめてその少女を凝視した。
なぜ、こんなにもあの少女のことが気になるのだろうか。
確かに、目を引く格好ではある。傘をさしていないことも、気にはなる。
だが______そういう事ではない。
何か、決定的に違う、違和感がある。
不思議な感覚だ。前にも、しかもつい最近にも感じたことのあるような気がしてならない。
そのまま、冷たい雨だれの中、軽やかに踊る少女に、目を釘付けにされ______
_______ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!
「は………?」
思いっきり、女の子がコケた。
顔面と腹を盛大に打ち当て、周囲に水しぶきが飛ぶ。ついでに少女の左手にあったパペットがすっぽりと抜け、前方へと飛んで行った。
そしてそのまま、動かなくなる。
「………お、おいッ!大丈夫か?」
士道が慌てて駆け寄ると、その小さい身体を抱きかかえるように仰向けにする。
そこで、初めて顔が見れた。年の頃は琴里と同じくらいだろう。髪の色は海のような青色で、ふわふわとしている。まるで人形のようにも見えた。
そこで、少女が目を見開いた。
「ああ、良かった。怪我はないか?」
士道が訊くと、少女は一目散に跳び上がり、少し距離をとって全身をカタカタと震わせた。
「…………こ、来ないで、ください…………っ」
「えっ?」
「いたく、しないで…………ください…………」
続けて、少女がそんな言葉を吐いてくる。
士道が、自分に危害を与える人間に見えたのだろうか。その様は、まるで震える小動物にも見えた。
反応に困った士道は、そこで地面に落ちたパペットに気がついた。
先ほど少女の手から抜けてしまったものだろう。ゆっくりと腰を折ってそれを拾い上げ、少女に近づいて示してやる。
「これ、君の?」
「…………!」
すると少女は目を大きく見開き、一瞬躊躇ったのち、士道の持つパペットを取り、左手に装着した。
だが、次の瞬間。
「ガァァァァゥァァァアッ!!!」
「…………っ!!?」
「なにっ!?」
近くから、謎の叫び声が聞こえ、次いで奥から謎の巨体が現れた。
間違いない、スマッシュだ。
「くそ、このタイミングで…………!」
ジリジリと迫ってくるスマッシュに、士道は冷や汗をかく。そして、ちらりと少女の方を見る。少女は怯えきった様子で、後ずさりしていた。
______覚悟を、決めるしかない。
「う、うぉぉぁぁぁあっ!!」
「…………っ!」
自身を奮い立たせるように大声を上げ、スマッシュへと体当たりをする。相手はビクともしなかったが、構わず後ろを振り返り叫ぶ。
「ッ、逃げてッ!!」
「…………ッ!で、でも…………」
「早くッ!!ぐ、ぐぁぁぁぁあっ!!」
そこでスマッシュの巨大な腕が振られ、思いっきり地面へ飛ばされる。身体が打ち付けられ、鈍い痛みが全身を襲う。
「がはっ………ぐっ………」
痛みが全身を支配し、出血するも、歯を食いしばって何とか立ち上がろうとする。
「あ………っ」
そこで、地面に落ちた、赤いフルボトルを見つけた。
士道が持っていた、謎のフルボトルだ。そこで、前に戦兎に言われた言葉を思い出す。
_____何かあった時は、そのボトルを振れ。
「試してみるか…………っ!」
迷う暇はなかった。こうしている間にも、スマッシュはじりじりと少女に迫っている。
勢いよくボトルを振り、握り締める。瞬間、身体中にエネルギーが漲ったような感覚に襲われた。
「よし、これなら…………っ!うぉぉぉぉぉぁぁあっ!!」
再び走り、スマッシュへ向かって思いっきり殴りつける。本来ならそれは、スマッシュの硬い皮膚によって不発に終わるはずだった。
だが_____
「アッ、ガァァァァァアッ!?」
士道が振ったボトルの力によって、スマッシュは大きく後方へと吹き飛ばされる。瞬間、殴りつけた拳に鈍痛が走る。骨の一本くらいは折れたのではないかと思うくらい。
「ぐっ…………、よ、し………」
痛いことには変わりないが、スマッシュは何とか遠ざけられた。これなら。
「今の内だッ!早く逃げてッ!!」
「…………ッ!」
まだ腰が抜けていたらしい少女に、思いっきり叫ぶ。すると、少女は一瞬躊躇いながらも、踵を返して走っていった。
「よ、よし………ぐっ………」
安堵しかけるが、再び拳と全身の痛みが襲ってくる。その上、スマッシュが起き上がってこちらへ迫ってきた。先ほどのようにジリジリ迫るのではなく、こちらへ向かって走ってくる。
咄嗟の痛みによって回避が出来ず、派手に身体を殴られてしまった。
「ウァガァァァアアアッ!!」
「あっ、がぁぁぁぁ…………っ!」
しかし、先ほどよりは痛みが少ない。恐らくは、このボトルのおかげだろう。
だが痛いことには変わりなく、加えて恐怖や緊張感からか、さっきのようにうまく拳に力が入らない。
「あっ…………くっ、う…………」
思わず、怯えるような声が出る。
こうして相対して、初めて分かった。
戦兎は、万丈は、こんな化け物といつも戦っていたのだと。
あの二人は、なんて強いのだろう。きっと、途方も無い苦労があったのだろう。
それに比べて自分は______なんて無力なのだろうか。
腰が抜けることはなかったが、拳に力が入らず、手からボトルが落ちる。
もう駄目か、と、そう思った時。
遠くから電子音と共に、巨大な拳のようなエネルギー体が、スマッシュめがけて繰り出された。その衝撃にスマッシュは耐えきれず、その場で爆散し、倒れた。
「え……………っ?」
「大丈夫か?士道」
遠くから、赤と青の姿をした、見慣れた仮面男____ビルドがやってきた。間違いない、戦兎だ。
「うわっ、酷い怪我だな。送ってってやるよ。ちょっと待ってろ」
士道にそう言うと、戦兎はボトルを取り出し、スマッシュに向けた。その後、スマッシュの体から粒子のような物が流れ、ボトルへ吸収されていく。やがてそれは、黄緑色のボトルへと変化した。
「おっ、電車ボトルじゃん!」
戦兎は喜ぶような声を出し、しまって士道に手を伸ばした。
「大丈夫かよ?おい。血が出てるじゃんか」
「あ、ああ……何とか………これのおかげで」
「ん?お、それ使ったのか」
赤のボトルを拾い上げ、見せる。幸いどこか動かないところもないし、奇跡的に骨などは折れていないようだった。
「あとでちゃんと治しとけよ?ほら、乗れよ」
「………ああ」
差し出されたヘルメットをかぶり、戦兎のバイクの後ろに跨る。
バイクで走る家までの道のりで、士道の胸中はずっと、悔しさと無力さでいっぱいだった。
「…………」
その姿を、ひとりの少女とパペットが、影から見つめていた。
どうでしたか?と言うわけで新章突入です。
これからも不定期ですが、応援してくれると嬉しいです。
あと、ジオウでアギト編が来るそうですね。賀集さんが出たら泣く自信がある。(通りすがりのアギトファン)
それでは 第12話 一つ屋根のボーイミーツガール をお楽しみに。タイトルがふざけた感じですが結構シリアスになると思います。
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