万丈「おい、俺の紹介は無えのかよ!ただでさえ最近出番すくねえのに!」
十香「おお!ビルドがスマッシュを吹き飛ばしたぞ!これは戦兎なのだろう?」
桐生「そ!俺の
十香「ほお………かがくのちからとはすごいのだなぁ………!」
桐生「そこは俺の頭脳が凄いと言って欲しかったなぁー」
万丈「おい無視すんなよ!」
桐生「さて、そんな万丈がいなくても全然問題ない第12話をどうぞ!」
「ただいま………」
戦兎に家まで送ってもらった士道は、ずっと浮かない顔をしていた。
戦兎はまたしてもスマッシュの目撃情報があったとのことで、急いでそこへ向かっていた。万丈が先に向かっている、とも言っていた。
この時士道が、なぜ浮かない顔をしていたのか。
雨で濡れたこともあるし、十香と折紙の喧嘩に巻き込まれたこともあるだろう。さっき怪我を負ったのもある。
しかし、それ以上に…………
「(………結局、足手纏いだった)」
凄まじい無力感が、士道の胸中を包んでいた。
あの時、あのボトルを振ったら、もしかしたらと思った。
もしかしたら、戦兎みたいに戦えるのかもしれない、と思った。
けど______甘かった。
結局少し抵抗ができただけで、何も変わらなかった。あの時何もしなくても、戦兎が来て倒してくれていた。
あの少女の怖がる顔を_______やめさせることが出来なかった。
戦兎のように、誰かを笑顔にするなんてこと、出来なかった。
それに比べて戦兎や万丈達はどうだ。
ああやって雨の中でも、スマッシュを倒すために向かい、退治している。
「………俺は、お前が羨ましいよ」
ふと、そんな呟きが溢れた。
そう思ってしまった自分に思わず嫌気がさして、溜息を吐く。
「って、そういや風呂に入らねえとな」
改めて自分の姿を見ると、酷い有様だった。雨でずぶ濡れだし、泥まみれだ。怪我は回復し、痛みはとっくに引いたが。
「琴里?先風呂入るからな」
雨で濡れた靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾を捲り上げて廊下を歩く。
と、廊下の先からテレビの音が漏れ聞こえてきた。きっと、琴里がリビングにいるのだろう。
それを確認してから、再び風呂場へと歩く。風呂から出た後、ゆっくり話し合えばいいだろう。主にひと月前からの、現実と思えないようなさまざまな出来事について。
士道は鞄と靴下を持って、脱衣所の扉を慣れた調子で開けた。すると。
「___________ッ!?」
瞬間、士道は身を凍らせた。
________そこには、本来ここにいるはずのない、十香の姿があったのだ。
それも、一糸纏わぬ生まれたままの姿で。
「と、十香………?」
「な…………っ、し、シドーッ!?」
そこでようやく、十香が肩をビクッと震わせ、顔をこちらに向けてきた。
「!あ、や、ち、違うんだ!これは_______」
何が違うのかわからないが、一先ず弁解を試みたものの________
「いッ、いいから出て行けっ!」
「ぐぇふっっ!?」
見事すぎる右ストレートを叩き込み、十香はそのまま脱衣所の扉を閉めた。
◆
『…………今日のは、ちょっとした挨拶代わりだぁ………』
少し前、バイクで家まで戻る士道の様子を遠巻きから見ていたサソリ男_______マッドクラウンは、笑って一人呟いた。
『にしても…………まさか、これほどだとはなぁ…………』
そう、少し意外げに言って、すぐに堪えきれない様子で笑い出した。
『あれからたった一ヶ月で、2.4だと………?最っ高だなぁ……!』
そう言うと、クラウンは座っていた場所から降り、パンパンと手を叩いた。
『……次の試練で、奴は恐らく覚醒するだろう…………その時は………俺の出番だなぁ………』
クラウンは大仰に手を上げ、その後起こる未来の出来事に、歓喜の笑みを浮かべた。
マスクの下で隠されたその顔はまるで、人形を手元で弄ぶ、道化師の笑みにも見えただろう。
◆
「………十香がうちに住む、って事はまあ分かった。その精神状態を安定させる、ってのもな」
先ほどのお風呂場アクシデントから数分後。着替えを済ませた士道は琴里と、既に家にいた令音から、十香がしばらく家に住むという旨の話をされた。ちなみにガルーダは既に待機状態から戻り、今は家の中に設けられたスペースで休んでいる。
当然、士道としてはそんな話、納得できるはずもない。ただでさえ、この間から空き部屋には戦兎達が住んでいるというのに。余談だが、戦兎と万丈は通学の関係で、この間から二階の空き部屋に住んでいる。最近では頻繁に夜中うっすらと機械音が聞こえてくるのだが、そこは置いておこう。
まず一つ目の理由としては、十香のアフターケア。実は十香はフラクシナスにいる間、学校にいる時と比べるとストレスの蓄積が激しい、との事である。どうやらまだ士道や戦兎たちといる時以外では、人間を完全に信じきれないらしい。
それはラタトスク側としても望ましくない事態らしく、最悪の場合士道に封印された霊力が逆流する恐れもある、との事だった。そこで、そろそろフラクシナス外部に十香の住居を移すという事になり、それができるまでの間だけ、十香をうちに住まわせる、と言う事である。
その理由については、十香の力の危険性を知っている士道にとっても納得できるものだった。どうやら戦兎達にも既に話は通されているらしい。________何故、自分にだけ伝えられなかったのだろうか。と、その点だけはそこはかとなく納得いかなかったのだが。
士道が気になる点は、二つ目の理由_____『士道や戦兎達の訓練』のため、という所である。
どうやら精霊というのは、何も十香一人という訳ではないらしい。その他にも、数種類の精霊が確認されており、また士道や戦兎達に任務にあたってもらう_______即ち、精霊をデレさせる必要があるということが分かった。
「冗談じゃねえよ、またあんな_____」
「_______嫌なの?士道」
士道が抗議したところで、高圧的な雰囲気が琴里から発せられる。見覚えがあった。今の琴里は、
「あ、当たり前だ!」
士道がそう言うと、琴里は軽く身体を反らしてあごをあげながら唇を開いた。
「なら、お終いね。_______空間震によって世界がボロボロになっていくのを黙って眺めるか、それともASTに精霊が殺されるなんてラッキーイベントを待つか。どっちかになるでしょうね。それとも______戦兎一人に背負わせる気かしら?スマッシュと戦う彼を」
「ッ!!」
その言葉に、身体が強張る。
失念していた訳ではない。だが、改めてその事実を口に出されると、心臓がチクチクと痛んだ。
隣界と呼ばれる異空間に存在する精霊は、
自分が知らぬ間に背負わされた責任と、仮面ライダーとして戦う戦兎へのプレッシャー。その二つの重さで、胸が苦しくなる。
それに、今となってはスマッシュも人類の脅威となっている。それと戦う戦兎に、無理を強いたくはない。
_______だが、そもそもの前提として。
士道にはひとつ、確かめねばならないことがあった。
「______琴里」
「何かしら?」
「………まず、聞かせてくれないか。《ラタトスク》ってのは、一体何なんだ?お前はいつ、そんな組織に入ったんだ?それに_____俺や戦兎のこの力ってのは、一体何なんだ?」
士道がずっと訊こうと思っていたことは、これだった。
琴里が家を空けていた、故に聞き出せなかった問い。
そして、その静寂を破るように。
「____たっだいまー。ん?どうしたの、みんな揃って」
「つっかれたー。あん?お前ら何か話してたのか?」
スマッシュとの戦いを終えたらしい戦兎達が帰ってきた。変身したまま帰宅したのか、服が濡れている様子はない。
_____一瞬、戦兎を見た時に、少し目を伏せてしまった。
「_____戦兎達も来たことだし、丁度良いわね。私たちについて、簡単に話しておくわ」
そう言って、琴里はチュッパチャプスを口にくわえると、ラタトスク機関について話し始めた。
◆
「______これが、私に説明できる事よ。とりあえず重要なのは、『士道と戦兎には、精霊をどうにかする力がある』、て事だけ覚えておいて」
「_____琴里、それって辻褄が合わなくないか?その年から考えると、当時のお前はまだ八歳かそこらだろう?」
「そ、そうだ。おかしいじゃねえか!」
「実際に指揮を取り出したのはここ最近よ。それまではずっと研修のようなもの」
「いや、研修って」
「そんなアルバイトみたいな感じで……」
琴里の話を聞くと、戦兎は寝癖を立てて頭を掻き、士道は苦悶の顔を浮かべ、万丈は分かっているとも分かっていないとも取れない微妙な表情をしていた。十中八九分かっていないだろう。
そしてガルーダだが、万丈が帰ってきてからはクローズドラゴンと一緒に家の中をゆらりと飛び回っていた。さっき士道はその様子を見て、まるで兄弟のようだ、と思った。鳥と龍で全然違うが。
そして確かに今の話によって、分かったことも多かった。しかし同時に、謎が深まった事も多かったのである。
まず、ラタトスク機関の存在理由とは、《精霊を保護し、幸福な生活を送らせる事》、らしい。まあ、この点については一枚岩でもないと、琴里は言っていたが。
そして組織の転機となる、キスによって精霊の力を封印できる少年が発見される出来事が起こった。それが士道であり、つい最近現れた戦兎もまた、それに当てはまるのだという。
それによってラタトスクは、積極的に精霊を保護する方針にシフトする、という流れになったのだそうだ。______なぜそんな力があるのか聞かれた時、士道の時だけはぐらかされたのが気になったが。
「とにかく、よ」
琴里はひとつ咳払いをすると、士道にビシッと指を突き立ててきた。
「______その事を念頭に置いた上で、選んで頂戴。_____これからも、精霊を口説き落としてくれるかどうか」
「…………っ」
士道は、苦々しく唇を引き結んだ。
士道達がやらねば、精霊は______士道が救いたいと思った十香と同じ存在達は、こちらの世界へ来るたびにASTに災厄と断じられ、命を狙われてしまう。
自分の意思で、世界の破壊者となることを望んだわけでもないのに。
それに、空間震だってある。いつまた、ユーラシア大空災のような大災害が来るとも分からない。
士道は頭を伏せ、一つ息を吐いた。
「…………少し、考えさせてくれ」
「_______まあ、今はそれでいいわ」
琴里は、ふうと息を吐いてそう言った。
「____話が終わったなら、士道。ちょっと俺の部屋に来てくれるか?」
「え?どうかしたのか?」
急に戦兎が立ち上がり、士道に部屋へ行くよう促した。
「例のボトルの解析が終わったんだ。もう令音さんとかには話したけどさ、お前にはまだだったろ?」
「あ_____そうか」
士道が十香を封印した際に現れたボトルを、戦兎は解析していた。確かに、もう終わった頃だとは思っていたが。
言われた士道は、戦兎についていく形で部屋へと向かった。
◆
「悪いな、散らかってて」
散らかってる、と言う割には、戦兎の部屋は拍子抜けするほど綺麗だった。道具やらが大量に置かれているが、ちゃんと整頓されている。確かに机周りは書類やら発明品やらが雑多に置かれているが、床などには特に物が落ちている形跡がない。
「こっちに来てくれ。解析の結果だ」
パソコンを操作しながら、士道にモニタを見るよう促した。モニタの側には電極のようなもので繋がれた、件の紫色のボトルが置かれていた。
モニタにはボトルの図と、よくわからないデータのような物が記載されていた。
「それで………何が分かったんだ?」
「ああ。解析して分かったんだが………そのボトルには」
視線をボトルへと移し、手に取る。
「______お前が封印した十香の
「え…………?」
その返答に、思わず声が漏れる。
「れ、霊力だって?それって、俺の体内に封印されてるんじゃ………?」
「ああ。確かにお前の体にも霊力は封印されてる。けど詳しく解析して、そのボトル_____『エンジェルフルボトル』にも、間違い無く十香の霊力が詰められていた」
「………………」
戦兎の手から渡され、ボトルを手に取り振ってみる。振ると、まるで剣のような金属音が鳴った。ボトル本体には、金で施された玉座と、それに突き刺さった剣のエンブレム。
まるで、十香の持っていた武器____巨大な剣と玉座を現しているように思えた。
「ま、例の封印能力に何かしらの力が働いて、それが出来たって事なんじゃないか?取り敢えず、そのボトルはお前が持っとけ」
「え?い、いいのか?」
「お前が封印した十香の力だろ?だったら、お前が持っとくべきだ」
「…………」
しばらくそのボトルを見つめ、そして再び握り締めた。
_____改めて、自分に特殊な力があることを、自覚した。その力を使わなければ、世界が救えないことも。
______確かめたい、事があった。
「戦兎は、さ」
「ん?」
「どうして_____そこまで戦えるんだよ。自分のこと、ヒーローだ、って言って。怖く、ないのか?」
世界を救うために、精霊達をデレさせ、霊力を封印する。
言葉だけなら荒唐無稽な話の、その重責に、士道は少し前押しつぶされそうにもなった。
しかし戦兎は、前の世界でも今の世界でも、同じく世界を脅かすスマッシュと戦い続けている。
それなのに、普段の戦兎は笑顔を絶やさずに、クラスのみんなや士道達と接している。
戦う事への悩みや不満、恐怖なんか、一切口に出さず。
戦兎も何となく士道の質問の意図するところを察したのか、一瞬顎に手を当て、そして変わらず、かつて相棒に言ったように、笑顔で言った。
「_____自分の力で誰かを守れたり、誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって、
マスクの下で見えねえけど。と、最後に付け加えた。そして、指摘するように言う。
「_____お前さ、さっき酷い顔してたぞ」
「えっ?」
「まあ、あんなにボロボロにされたらしょうがないと思うけどさ。_____本当にお前は、十香と同じ境遇の精霊達を助けたいと思っているのか?」
「……………」
その言葉が、胸に突き刺さった。
まったくその通りだった。士道は助けたいと思っていながら、その為に取れるたった一つの手段に対して渋っていたのである。確かに、ラタトスクや琴里に関してはまだまだ分からないことも多い。
けど、それでも目の前にまた、十香のような悲しい顔をした精霊が現れたとして。
その時も、士道に迷う時間なんて、あるのだろうか。
「…………」
「______ま、今は考える時間があるんだし、すぐに結論を出さなくてもいいんじゃないか?それに、お前はお前が思ってるほど、弱くないと思うぞ」
「えっ………?」
「だって、最後に十香を助けたのは、俺や万丈のライダーの力でも、琴里達フラクシナスの命令でもない、お前自身の言葉じゃないか」
「それは………」
まだ言いたげな士道に、戦兎が今度は厳しそうな目で言う。
「でも、これだけは言っておく。_______見返りを期待したら、それは
「っ!」
______全て、お見通しってわけか。
そう心の中で思いながらも、士道は少し肩の荷が軽くなった気がした。
戦兎が士道に向けて言った、かつて万丈にも放った、その言葉。
その言葉が、その後士道の迷いの霧を晴らす事となる。
どうでしたか?
基本的に章ごとの1話1話の展開は、序盤短く後半長い、というスタンスになると思います。変わる可能性がなきにしもあらずですが。
今回、あまり物語が進んでいない気がしますが、これも全てゴルゴムのディケイドに変身する乾巧って奴の仕業なんだ…………嘘です筆者の力量不足です。ごめんなさい。
それでは次回、『第13話 ドキドキ?同棲クライシス!』をお楽しみに。
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