士道「なあ、一つ思ったんだが、仮面ライダークローズって、何でその名前になったんだ?」
万丈「あ、それ俺も気になった。なんでクローズ、なんて名前なんだよ」
桐生「そりゃ、単純にガジェットの『クローズドラゴン』からでしょ」
万丈「じゃあなんでそれクローズドラゴンなんて名前になったんだ?」
桐生「ボトル一個で完結する、閉じるから、『クローズ』なんだよ。他にも、ベストマッチの組み合わせがロックフルボトルだから、とかかな」
万丈「へえ、結構色々考えてたんだな」
桐生「まあ、単細胞の筋肉バカで三度の飯よりプロテインが好きなどこかの万丈さんと違って、俺は年中頭使ってるからねー」
万丈「もっとまともな肩書きの言い方出来ねえのかよ!」
桐生「じゃあお前が考えろよ」
万丈「えっ?うーん………」
士道「はいはいそこまで。あらすじ紹介終わっちまうから。コホン、と言うわけで、どうなる第13話!」
「…………で、訓練って実際に何やるんだ?俺に何をやらせようってんだよ」
『キュルゥ?』
『ギーギガギ?』
戦兎の部屋での一件から、おおよそ三時間後。
前よりも多い人数で夕食を済ませ、リビングのソファに腰掛けた琴里に問うてみた。アライブガルーダとクローズドラゴンも、疑問符を浮かべたように首を傾げて鳴き声を上げる。
今五河家のリビングにいるのは、士道と琴里の二人に、ガルーダとドラゴンの二匹だけである。令音はあの後すぐフラクシナスに帰り、戦兎は作業の続きがあると言って部屋に戻り、万丈は風呂掃除を買って出て、十香は客間で荷解きをしていた。そういえばここ最近、戦兎の部屋での作業時間が増えている気がする。
「別に、何もしなくていいわよ」
黒いリボンで髪を括った琴里が、食後のチュッパチャプスを咥えながら唇を動かしてくる。
「は?どういうこった?あれだけ訓練訓練言ってたのに」
「んー、正確に言うと、普段通りの生活を送ることが今回の課題……かしらね」
「あ?」
「基本的に士道の訓練は、これから何人もの精霊とデートすることになった事態を想定して、女の子と緊張することなく話せるようになることを目的としているわけよ。要するに………」
そこで一つ間をあけて、琴里が言った。
「士道は十香との同居期間中、どんなラッキースケベイベントが起こっても、焦らず対応してくれればそれでいいわ」
「なっ……、なんだそりゃ………」
『キュルル?』
『ギーギー』
普段あまり聞き慣れない単語に、盛大に眉をひそめる。ガルーダとドラゴンも互いに顔を向け、何が何だかわからないと言った様子になる。こうして首を傾げたりしている姿を見ると、こいつらが本当に機械なのか、たまに分からなくなる時がある。
「おーい、風呂掃除終わったぞー」
『ギーギー!』
「お、なんだなんだ」
とここで、風呂掃除を終えた万丈がリビングに戻ってきた。主人が帰ってきたのを見てか、ドラゴンがそちらに飛んでいく。
「まあ、百聞は一見にしかずよ………万丈、悪いんだけど、トイレの電球を取り替えてくれない?さっき行ったら切れてたのよね。予備の電球ならそこにあるから」
「ん?おお、別に構わないぞ」
『ギギーガ』
特に疑問を感じることなく、近くの戸棚から予備の電球を探って取り、丸椅子を手に取ってトイレへと向かう万丈と、それに着いて行くドラゴン。
「琴里、トイレの電球切れてんなら、なんで俺に言わないんだよ。万丈より俺の方がよく知ってるだろ」
「言ったでしょ?百聞は一見にしかずって。まあ、しばらく廊下の方を見ていなさい。」
「はあ?何を言ってるんだよ…………」
『キュル?』
と、ますます困惑した士道だったが、取り敢えずは言われた通りに廊下を覗き込む。
そして、それとほぼ同じタイミングで。
「は、早く閉めんかっ!」
「のぅわぁぁぁぁーーッ!!?」
『ギギギーー!!?』
十香の声と共に、凄まじい勢いで万丈とドラゴンがトイレから吹き飛んで宙を舞った。万丈は顔面にトイレットペーパーを思いっ切りぶち当てられて。
というか、今普通にトイレの電球付いてなかったか?
「なっ!?お、おい琴里、どういう事だよ!」
「こう言うことよ。これから十香がうちにいる間、こうやって遭遇しても平常心を乱さずにいればクリアよ。ちなみに失敗したらペナルティとして、士道が中学時代に書いた詩を公共ラジオで流すから」
「おいちょっと待て!なんか前よりグレードアップしてねえかそれ!?」
「訓練だからって気楽にやられちゃ困るからね。大丈夫よ。全部失敗でもしない限り、作者名を流すような事にはならないから」
「それ全部失敗したら流すって言ってるようなもんじゃねえか!」
「いいからお前ら説明しろぉっ!!」
『ギギギー!!』
五河家の廊下に、女子中学生一人と男子高校生二人、機械龍一匹の声が響き渡った。
とここで、士道がある事を思い出す。
「って、そういえば。戦兎はどうなるんだよ!あいつにもなんかペナルティがあるのか?」
「戦兎は仮面ライダーとして戦う仕事があるでしょ」
「納得いかねぇぇぇえーっ!!」
とここで、またしても疑問が浮かぶ。
「って、そういや戦兎はどうしたんだ?部屋から全然出てこないし、機械音も聞こえないけど」
「……そう言えばそうね。戦兎にもまだ説明してないことがあったし、この際だから部屋に行きましょうか」
という事で士道達は、戦兎の部屋へと向かうことにした。
◆
「おーい戦兎、入るぞー?」
コンコン、とノックをして、部屋に入ろうとした、その時。
_______カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……………
何かを打ち出すような音が、凄まじい速度で聞こえた。
パソコンで作業しているのだろうか。それにしてもこの速度はおかしい気がする。
すると琴里が士道をどかして、部屋に入る。ドアに鍵はないので、簡単に入れた。
「戦兎、ちょっと話があるから、入るわよ…………って、何これ!?」
瞬間、琴里が困惑の声を上げた。
次いで士道と万丈が中を覗く。
「うわっ!なんじゃこりゃ!」
「あいつまたなんかやってんな…………」
『キュルル!?』
『ギギーガガ!?』
士道が驚愕の声を漏らし、万丈が見慣れたとばかりに呆れた様子で頭を掻く。ガルーダとドラゴンは互いに驚きの鳴き声をあげた。
戦兎の部屋には今、膨大な量の用紙と、それにびっしりと書かれた数式が並んでいた。その奥に、ひたすら作業に打ち込む戦兎の姿が見える。長年相棒として見てきた万丈は察しがつくところがあるようで、深く溜息を吐いた。
「もう少しだ…………もう少しで…………ッ!!」
何か鬼気迫る様子で笑いながら一心不乱にキーボードを打ち込む姿は、一周回って恐怖すら感じた。他の人で同じ光景を見たら過労死を心配するレベルである。
「ん?なんだありゃ」
パソコンの横を見ると、ケーブルに何かが繋げられているのが見えた。
一見するとそれは、戦兎達がいつも使っているビルドドライバーにも見える。しかし、戦兎達のビルドドライバーは二つとも横に置かれているし、それはよくよく見ると細部の形状が少し違っていた。
ビルドドライバーの下段にあった、銀色のチューブみたいなパーツが大分少なくなってるし、全体的な大きさも、若干ではあるが小さくなったようにも見える。
エネルギーを作り出す丸状のパーツ、確か、【ボルテックチャージャー】だったか。とか、ボトルを挿す部分などに相違点は見られない。
などと、士道が思っていると。
戦兎が見ていたモニターに、【COMPLETE 100/100】というテキストが表示された。
「っ!遂に………キターーーーーッ!!!」
寝癖を立てて、感極まったように立ち上がり両手を挙げる。そこで後ろを振り返り、士道達の存在に気づいたようだ。
「あっ!ちょうどいい所に!見てくれよこれ!」
そうはしゃぎながら、戦兎はパソコンに繋がれていた、ビルドドライバーに似た何かを取り出す。
「この前令音さんに教えてもらったこの世界の
「あ、そういや最近ベルトの調子いいと思ったら、これの実験のせいか!」
と、矢継ぎ早に自慢するよう掲げる戦兎に、一同がキョトンとした顔になる。唯一万丈だけ得心がいったようにポンと手を打ってたが。
実際、士道達にはどのくらい凄いのかがいまいちピンとこないため、実感しかねないのだ。あと、ほんと発明がらみになるといつもとテンションが違いすぎてついて行けなくなる。
ここで、琴里が咳払いをして、戦兎に言う。
「………それについては後でじっくり聞くから、取り敢えず今は、戦兎の訓練について説明させてほしいわ。リビングまで来て」
「え〜、まだ俺の発明品について小一時間は話したいんだけど〜」
「駄々っ子か!早く来なさい!」
「はぁ〜、分かりました〜。はぁ〜…………」
まるで学校の宿題をやるよる親に言われた子供のような調子で、戦兎は部屋から出て行った。それに続くように、万丈も部屋から出て行く。
その時。
「…………」
俺の視線はしばらく、戦兎が置いてあったドライバーに集中していた。
◆
______それから、士道達の訓練は、当人にとっては正に地獄とも言うべき物となった。その場にマッドクラウンがいたら、爆笑していただろう。
「おーう五河、桐生、万丈…………って、お前らどうした」
朝、三人揃って重たい足を引きずって教室に入るなりかけられたのは、殿町の怪訝そうな声だった。
身体中あちこちに湿布を貼り付けている上、足取りは今にも倒れそうなほどフラフラである。唯一万丈のみ、格闘家として鍛えたからか少し余裕そうだったが。尚ガルーダとドラゴンは訓練に参加していないのに、主人と一緒にいた為に飛び火してしまった。フラフラと調子が悪そうに飛んでいる。
「………ああ、ちょっとな」
「そーそー。折角の発明品も殆ど試せなくって。その上朝士道のとばっちり食らっちゃってさー。こいつ朝十香の胸にモゴォッ?」
「い、いや。ほんとに、何でもないんだ。ちょっと家で色々あってな」
「そ、そうか。大変、だったな」
余計な事を口走りそうになった戦兎の口を塞ぐと、殿町はなにかを察したように乾いた笑いを浮かべた。
「あ、ああそういえば。お前らに聞きたいんだが____ナースと、巫女と、メイド。お前らどっちがいい?」
「「「………は?」」」
予想外の言葉に、三人揃って間の抜けた声を発する。すると、殿町は手にしていた雑誌を取り出す。殿町が見せたページには、漫画のキャラクターと思われる美少女のイラストが映っていた。
「読者投票で、来月号のカラーイラストのコスチュームが決まるんだが………三人の意見が聞きたくてな」
「……ああ、そう」
「つれないなぁおい。ま、それでだ。お前はどれがいいと思う?俺はどっちもいいんだが……」
笑いながらそう言うので、何となく考えてみる。
「うーんそうだなぁ…………メイド?」
「ほお!五河はメイド好きなのか!それで、桐生と万丈はどうだ?」
今度は戦兎達二人に向かって、聞いてきた。二人は少し困った様子で返す。
「どう、って言われてもなぁ。俺、コスプレとかは特に興味ないし」
「俺もなぁ。そういうのよく知らねえし」
「そうかそうか。なら、後学のためにこいつは貸しておこう。ちゃんと読んどけよ?」
そう言うと、殿町はおもむろに応募用紙を切り取って、雑誌を戦兎達に手渡し自分の席へ歩いて行った。
「……なんだ?あいつ」
「まあ、いつもあんな感じだし、気にすんな」
万丈の言葉にそう返すと、士道達は自分の席へと向かい、鞄を置いた。
その際、既に士道の隣の席に着き、分厚い技術書を読んでいた折紙が、目を向けてくる。
「メイド?」
どうやらさっきのやり取りを聞いていたらしい。抑揚のない声で聞いてくるので、慌てて手を振る。
「い、いや、気にしないでくれ」
「そう」
そう短く言うと、再び書面に視線を戻した。
その後は十香が入ってきたが、特に何と言うわけもなく、軽く会話をして自分の席へと向かった。
「………そういえばあの時、十香が変なこと言ってたな」
ふと、先の十香との会話を思い出す。
確か、「とても髪が長い先生とすれ違った」、だっけ。そんな先生、うちの学校にいたっけかなぁ。
◆
その頃。
「…………」
一応来禅高校の教師である村雨令音は、物理準備室での用事を終えた後、職員室へと向かっていた。怪しまれないためにも、ある程度は顔を見せておいたほうがいいという事で、こうしている。まあ、既に立ち入り禁止エリアとなっている物理準備室に出入りしている噂がたっている時点で、一部生徒からはだいぶ怪しまれているのだが。
「………っ」
「おっと」
そこで、よそ見でもしていたのだろうか。
先生の一人とぶつかってしまった。床に倒れてしまう。
「______大丈夫ですか?申し訳ありません。私の不注意でした」
「……いいえ。私こそ、前を見ていませんでした」
互いに謝罪をしながら、前方の先生から差し出された手を取り立ち上がる。
そこで、ふと疑問が浮かんだ。
「……?」
「どうかされましたか?」
令音の記憶が確かなら、こんな教師を来禅高校で見かけたことがない。
容姿は中性的で、男性のようだが、服装がスーツ姿でなければ女性と間違われてもおかしくない外見だ。
髪はとても長く、膝上程度にまで伸びている。瞳の色は紫色で、髪で少し隠れた左目の下には手術跡のように、横線で何かで縫った痕跡が見られる。
いつもあまり物理準備室から動かないが、それでも不測の事態が起こった時のために、ある程度の教師の顔やデータは把握している筈だ。しかし、こんな教師はデータベースで見かけた覚えがない。
「……失礼ですが、貴方は?」
「ん?ああ、これは失礼しました」
目の前の人が失念していたように苦笑して、紹介をした。
「今日から来禅高校で教鞭を取ることになりました、
「……ああ。そうでしたか。ええ、合っていますよ。よろしくお願いします」
社交辞令に挨拶をして、神代針魏はその場から立ち去った。
状況だけを見るなら、別段怪しいことなどない。
「…………」
しかし、妙だ。
生徒であれ教師であれ、この学園に新しく人が来ることになった場合は、ラタトスク側が情報を入手しているはずだというのに。精霊十香が学園にいる以上、そういった細かな変化も見逃すわけにはいかないのだ。
しかしフラクシナスで見たデータベースにも、『神大針魏』という名前は見覚えがない。見落としたとも思えないし、もしかしたらラタトスク側がデータの入手を怠ってしまった、ということもあり得るが_____
「……少し、探りを入れたほうがよさそうかもね」
一つ言い残すと、令音はその場を立ち去った。
この時既に、接触は果たされていた。
◆
四時限目の授業終了のチャイムが校舎に鳴り響き、昼休み開始が示される。
それと同時に、
「シドー!セント、リューガ!昼餉だ!」
『キュル!』
「…………」
士道の机に、左右からがっしゃーん!と、机がドッキングされた。
無論、右は十香、左は折紙、上はガルーダである。
ちなみに十香に呼ばれた戦兎と万丈は、亜衣麻衣美衣と五人で食べていた。あいつらいつの間に仲良くなったんだ。そしてその上空を、ドラゴンが飛んでいた。
「むう、セントとリューガは他のものと食べているのか…………む」
十香が戦兎と万丈の方を見て少し残念そうに呟いた後、折紙の方を睨む。
「……なんだ貴様。邪魔だぞ」
「それはこちらの台詞」
『キュルル!』
士道を挟んで、上と左右から猛禽類もかくやという鋭い視線が向けられた。
「ま、まあ………落ち着けって。みんなで食えばいいだろ?」
そう言うと、渋々といった様子ではあったが、二人は大人しく席に着いた。
ちらりと、戦兎達の方を見る。
「へぇー!じゃあこのドラゴンって、桐生くんが作ったんだー!」
「すっごーい!本当に生き物みたい」
「マジ引くわー」
「ほらね!どうよ、俺の、発・明・品!」
「生き生きしてんなぁオイ」
『ギギーガ!』
何仲良く話してんだ正義のヒーロー。
と、思わずカチンときたが、今更どうしようもない。
溜息を吐きながら、鞄から弁当箱を取り出す。十香もまた弁当箱を取り出すと、二人揃って蓋を開けた。ちなみに戦兎の弁当は自分で作ってみたい料理があると言っていたので、俺の弁当とはメニューが若干異なる。
そして。
「……………」
折紙がほんの少しだけ目を見開くのを見て、自分の判断を呪った。今なら思う_______何故、戦兎に十香の弁当を作るよう頼まなかったのか。
「……………」
折紙が冷たい視線を、士道と十香の弁当箱の中身に交互に這わせる。
_______まったく同じメニューで揃えられた、二人の弁当に。
「ぬ、な、なんだ?そんな目で見てもやらんぞ?」
事の重大さに気づいていないのか、十香が怪訝そうな眼差しを向ける。十香。違う、そうじゃない。
「どういう、こと?」
「こ、これはだな………」
折紙から問われ、士道は顔中に粘っこい汗を噴き出しながら目を泳がせた。
ちらりと、戦兎達の方を見る。
「え!?これでもまだ足りないの?」
「うん。母さんの卵焼きは、これよりもっと甘かったと思う」
「ほぇー……やっぱ、頭使ってると糖分が欲しくなるのかなぁ」
「まじ引くわー」
「まあそこは、天っ才物理学者ですから!どこかの誰かさんと違って、いつも頭はフル回転ですからね!」
「おい、何だよそれ!その誰かさんって俺のことだろおい!」
『ギギーギガー!』
なに人がピンチに陥ってる前で楽しく笑いあってんだ!!
駄目だ。この様子じゃ戦兎達の助力は望むべくもない。取り敢えず適当な嘘で誤魔化すか………
「じ、実はあれだ。朝、弁当屋で買ったんだ、これ。そこで、偶然十香も…………」
「嘘」
せめて最後まで聞けや!と、士道は心の中で叫んだ。
「これは今から154日前、あなたが駅前のディスカウントショップにて1580円で購入したのち、使用し続けてる物。弁当屋のものではない」
「そ、それは…………いやちょっと待て。なんでそんなこと知ってんだ」
「それは今重要ではない」
いや大分重要だと思うのだが。大丈夫この人、警察の御用になるような事してないよね?
「むう、さっきから二人で何を話しているのだ!仲間外れにするな!」
『キュルキュー!』
横から、不満げに頰を膨らませた十香とガルーダが声を上げてくる。
と、その時。
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ______________
街中に、けたたましい警報が鳴り響いた。
瞬間、ざわついていた教室内が静まり返る。
_______空間震警報だ。
「…………」
折紙は一瞬逡巡のようなものを見せながらも、即座に席を立ち、あっという間に教室から出て行った。
士道は複雑な心境で、その背を目で追うしかなかった。また、彼女は陸上自衛隊ASTとして、戦場へ向かうのだろう。________十香のような、精霊を殺すために。
と、そこで教室の入り口から、ぼうっとした様子の声が響いてきた。
「……皆、警報だ。すぐに地下シェルターに避難してくれ」
白衣を纏った村雨令音が、廊下の方へ指を向ける。
生徒達はゴクリと唾液を飲み下した後、次々と廊下に出て行った。
「ぬ?シドー、一体皆どこへ行くのだ?」
十香がクラスメート達の様子を見て首を傾げてくる。
「あ、ああ。シェルターだよ。学校の地下にあるんだ」
「シェルター?」
「ああ。とりあえず説明は後だ。俺たちも行くぞ、十香」
『キュルルッ!』
「ぬ、ぬう」
十香は弁当に名残惜しそうな視線を残しながらも、士道の指示で立ち上がる。
そして、戦兎や万丈達の後について廊下に出ようとしたところで。
「……シン、セイ、バジン。君たちはこっちだ」
「っ、れ、令音さん?こっちって………」
「……決まっているだろう、フラクシナスだ」
士道と戦兎、万丈の首根っこを掴むと、令音は声を潜めながら言ってきた。
「……昨日の今日で、シンは結論が出ていないのかもしれない。だが………いや、だからこそ、君には見ておいてほしい。精霊と、それを取り巻く現状を」
士道は渇いた喉を唾液で湿らせると、小さく拳を握った。
「……分かりました。行きます」
「俺たちも行きます。実際のとこ、精霊がどんな現状にあるのか、まだ詳しくは知らないから」
「おう!………って、そういや十香は連れてかないのか?」
万丈が他のクラスメートの様子を眺めている十香の様子を見て問いかける。
「……ああ、そのことか。うむ、十香は皆と一緒にシェルターに避難させてしまおう」
「え?それでいいんですか?」
「……ああ。力を封印された状態の十香は人間とそう変わらない。それに、精霊とASTの戦いを見て、自分の事を思い出されても困ってしまう。言っただろう?ラタトスク側としては、十香のストレスはできるだけ少ない方が望ましい」
「………分かりました。行くぞ、士道、万丈。ほら、お前らも」
『キュルッキュー!』
『ギーギギガ!』
「おう」
「いや、でも………」
戦兎達とは対照的に、まだ不安気な様子を見せる士道。とそこへ、士道達の担任のタマちゃん先生が、焦った様子で避難を促す。どうやら、迷っている時間は無さそうだった。
「………岡峰先生、十香をよろしくお願いします!」
「ふぇ?え?、あ、は、はい、それはもちろん」
「シドー、セント、リューガ………?」
十香が、不安そうに眉を歪めてくる。
「十香。いいか?先生と一緒に、シェルターに避難していてくれ」
「シドー達は、シドー達はどうするのだ?」
「あー……俺たちは、ちょっと大事な用があるんだ。先に行っててくれ。な?」
「と、言うわけで、ドロン!」
「!あっ……!」
「五河くんに、桐生くんに万丈くん、村雨先生まで!?一体どこへ!?」
心配そうな二人の声を背に聞きながら、四人は校舎の外へと走っていった。
はい、どうでしたかね?
新アイテム、新キャラ登場です。その割に見せ方が下手なのは、まあ、すいません。初心者なもので。
それで、少し予定を変更したいと思います。
沢山の読者から、『戦兎のヒロインは四糸乃がいい』という意見を頂いたので、士道にとって重要なエピソードにする路線は変えず、四糸乃は戦兎のヒロインにしたいと思います。
今まで散々四糸乃は戦兎のヒロインにしないと言っておきながら、すいません。
ですが、自分も考えてみたら四糸乃はウサギがイメージで、戦兎もウサギがイメージなので、確かにベストマッチと思いました。原作の方のエピソードがとても良かったので、あまり崩したくはなかったのですが。
それでは次回、『第14話 儚きハーミットとマッドな道化師』をお楽しみに。
………もっと評価つけてくれても、良いんですよ?(チラッチラッ