万丈「どうしたいきなり。いつもと始まり方ちょっと違うじゃねえか」
桐生「いや、毎回このあらすじ紹介って始まり方がワンパターンじゃん?だから、ちょっと変えてみたんだよ」
万丈「ふーん。あ、俺の新しい肩書き!ようやく考えたぜ!」
桐生「へー」
万丈「ちょっとは興味持てよ!丸一日考えたんだからなー………ゴホン。ズバリ、『プロテインの貴公子』!どうだ!俺が一日掛けて考えた肩書き!」
桐生「そんなものに一日かけた事を少しは恥ずかしがって?さて、そんなボキャブラリーの少ない万丈は置いておいて、どうなる第14話!」
「ああ、来たわね四人共。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」
「……ああ」
士道と戦兎と万丈、令音がフラクシナス艦橋に着くなり、琴里からそんな言葉が飛んできた。
令音が小さく頷き、艦橋下段にあるコンソールの前に座り込む。
「______さて」
と、士道が無言でいると、琴里が首を傾げるようにしながら問うてきた。
「あまり時間をあげられなくて悪いのだけれど。腹は決まったのかしら、士道」
「………っ」
息を詰まらせる。が、そこで突然、環境内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「な………なんだ?」
「おい、なんだよこの音!」
「非常に強い霊波反応を確認!来ます!」
士道達が狼狽に目を丸くすると同時、艦橋下段から、男性クルーの叫び声が発せられた。
「オーケイ。メインモニタを出現予測地点の映像に、切り替えてちょうだい」
琴里が指示を発すると、メインモニタに街の映像が俯瞰で映し出された。
いくつもの店が立ち並ぶ大通りだが、そこに当然人の姿は無い。
そんな映像の中心が、ぐわんっ、と撓む。
「え………?」
一瞬、映像を映し出している画面の方に問題があるかと思ったが、違う。
何もないはずの、空間に。
水面に石を投げたような波紋が、広がっていた。
「な、なんだこりゃ………」
「おい!何がどうなってんだよ!」
『キュル!?』
『ギギーガ?』
「あら?三人とも見るのは初めてだっけ?」
琴里がそう言うのと同時に、空間の歪みがより大きくなっていき________
画面に光が生まれたかと思った瞬間、爆音と共に画面が真っ白になった。
「「「______っ!」」」」
画面内の出来事だとわかっているはずなのに、三人とも思わず腕で顔面を覆ってしまう。
そしてその後目を開くと、画面には、今までと全く違う光景があった。
街に、穴が空いている。
ついさっきまで多くの建物があったはずの通りの一部が、浅くすり鉢のように削り取られている。コンクリートで舗装されていた街路は下の土が剥き出しになり、その周囲もまるで大型台風が直撃したかのような酷い有様となっている。
その様は、およそひと月前に十香と初めて会った時と酷似していた。
即ち、今のが______
「空間震………っ」
「………起こる瞬間は初めて見たけど、こうして見ると凄いな」
「なんだよ…………これ…………」
廃墟を見たことは何度もあったが、爆発が起こる瞬間を目撃したのは初めてだった。
頭では分かっていた事象が、ようやく実感として理解できた気がした。人々の生活空間が、一瞬で全て破壊されてしまう、その恐ろしさを。
「ま、でも今回の爆発は小規模ね」
「そのようですね」
と、琴里とその後ろに控えていた副司令、神無月が声を発する。
「小規模……これでかよ!?」
すると、万丈が困惑するように言葉を発し、戦兎がそれを宥める。
「よく考えろよ。ユーラシア大空災程ではないにしろ、最近じゃ街一つ消し飛ぶレベルの空間震がいくつも起こってるって説明したろ?そう考えりゃ、これが小規模なのは当然だ。…………ま、だからってそう簡単に納得できるものでもねえけどな」
「…………」
戦兎の発した言葉に、万丈が黙り込む。戦兎も口調は冷静であったものの、そこにはどうしようもない割り切れなさが残っていた。彼にも思うところがあるのだろう。
「僥倖、と言いたい所ですが、《ハーミット》ならばこんなものでしょう」
「まあ、そうね。精霊の中でも気性の大人しいタイプだし」
「ハーミット?」
琴里達の会話の中に、聞きなれない単語が交ざり、疑問符が浮かぶ。
「それって、何の事だよ」
「ああ、今現れた精霊のコードネームよ。ちょっと待って。画面拡大できる?」
するとすぐに映像がズームし、街にできたクレーターへと寄っていった。と、それに合わせるように、画面内にも変化が訪れる。
「ん?おい、雨なんて降ってたか?戦兎」
「………いや、降ってなかったと思うぞ」
『キュルルゥ……』
万丈達が呟く。そう、ふっと画面が暗くなったかと思うと、ぽつ、ぽつと雨が降り始めたのである。ガルーダがこの前雨に濡れたのを思い出してか、鳴き声のトーンが少し下がった。
だが、そんな変化も気にしていられなくなった。
クレーターの中心に、小さな少女の姿が確認できたからだ。
「……………あれは………っ!」
その少女の姿を確認した瞬間、士道の全身を衝撃が駆け抜ける。と同時に、忘れかけていた焦燥感の様なものが、胸の内に込み上げてきた。
ウサギ耳の付いたフードを被った、青い髪の少女。
歳の頃は琴里と近く、インナーを着て左手にウサギのパペットを装着している。
士道の目に狂いがなければ、間違いない。
あれは________士道が昨日、学校帰りに遭遇した、女の子だった。
スマッシュから______庇った女の子だ。
「ん?どうしたんだ士道」
「俺、あの子と、会ったことが、ある………」
「なんですって?一体いつの話よ」
「つい昨日だ………学校から、帰る途中に…………」
「それって、お前がスマッシュと遭遇した時か?」
「ああ。あの子を、庇って………………」
_______そのまま、何も出来ずに倒された。
という一言をぐっと押し込み、昨日合った出来事を簡潔に話した。
「女の子庇ってスマッシュに立ち向かうなんて………なんだ、やるじゃないの、士道」
「………どうもな」
「?」
少し棘のある口調で、士道が返す。戦兎は疑問符を浮かべながらも、特に気にしない様子でモニターに視線を移した。
と同時に、けたたましい音がスピーカーから轟いてきた。
「………ASTか」
「ええ。精霊が現れたんだもの。仕事を始めるのは私たちだけじゃないって事」
画面に目をやると、今し方《ハーミット》と呼ばれた少女の精霊がいた場所に、煙が渦巻いた。恐らくは、ミサイルか何かを撃ち込まれたのだろう。
その周囲を、物々しい機械の鎧に身を包んだ人間______ASTの部隊が、浮遊していた。
煙の中からハーミットが飛び出し、AST隊員達の間を抜けるように身を捻り、空に躍った。
しかし、ASTはそれを確認すると、一斉にハーミットを追跡し、身体中の武装から夥しい量の弾薬を発射する。
「っ!あいつら、あんな小さい奴にも見境なしかよ!」
万丈の憤った声に、しかし琴里が冷静に言う。
「十香の時にも分かってるでしょう?ASTにとって、精霊は精霊。排除すべき存在で、それ以上でもそれ以下でもないの。姿形なんて、関係ないわ」
「っ!だからってよ!」
万丈が口を開いた瞬間、煙の中から再び少女が空に躍る。だが、《ハーミット》は決して反撃しようとはせず、逃げ回るばかりだった。
「あの子………反撃しないのか?」
「ええ。いつもの事よ。彼女は精霊の中でも、極めて大人しいタイプ。だからこそ、
「なら………っ!」
「ASTに情けを求めるなら無駄よ、士道。彼女が、精霊である限りね」
「……………っ」
にべもない答えに、士道は唇を噛んだ。
分かっていたはずなのだ。彼女がどういう性格で、どういう気性かなんて、ASTには関係ない。
彼女達にとっては、この世に害なす敵を討っているだけでしかないのだから。
「_____三人とも、転送の準備をするわ。総員、第一級攻略準備!」
『はッ!』
クルー達が一斉にコンソールを操作し始める。
「士道たちも準備しなさい。………迷ってる時間は、無いわよ」
最後にそう言い残して、琴里はメインモニタに視線を移した。
◆
「ふぅ、ここでいいのか?」
『ええ。精霊も建物内に入ったわ。ファーストコンタクトを間違わないようにね』
「………了解」
「了解」
「おう」
三人で返事をして、インカムから手を離した。
どうやらハーミットは比較的出現回数が多い精霊らしく、その行動パターンの統計と、令音の思考解析を組み合わせれば、おおよその進路に目星がつくのだという。
また、ASTの主要装備であるCRユニットは屋内戦闘に不向きであるらしく、建物を破壊してこない限りは、ASTからの襲撃は警戒しなくても良いのだそうだ。
しかし、その時間はもって数分か数十分といった所。その僅かな時間が、戦場で士道達が精霊と話をするための貴重な時間なのであった。
「………スマッシュの反応は?」
『今のところ無いわ。確認できたら、随時知らせるから大丈夫よ』
「分かった」
しかし、問題はスマッシュだ。スマッシュはASTと違って所構わず暴れてくるため、その襲撃については常に警戒せねばならない。最悪の場合、対話役を士道一人に押し付けなければならないからだ。
『______三人共。《ハーミット》の反応がフロア内に入ったわ』
「…………!」
「………いよいよか」
不意に響いた琴里の声に、士道達は身体を緊張させた。
そのまま、ゆっくりと進んでいく。
すると、通路の向こうで。
「ん?おい、あいつじゃねえか?」
万丈が、何かを見つけたように指を指した。
その方向を見ると、たしかにフードと青い髪の女の子が見える。
『ええ。間違い無いわ。ハーミットよ。そのまま接近して』
琴里からの指示が聞こえ、その場へ向かおうとする。
と、その時。
『おおっと、そうはいかねえなぁ』
どこからか、粘つくような声が響いた。
「っ!この声は………!」
万丈が反応し、次いで、インカムから声が上がる。
『っ!三人とも、緊急事態よ。正面に謎の反応を確認………スマッシュに酷似しているけど、見覚えのない周波数ね………』
その声が響いた瞬間、正面の空間が歪む。
まるで鉛筆で紙の窪みをなぞった時のように、その場に姿が見えてくる。
『どうも初めまして、かなぁ?ああ、クローズの方は、お久しぶり、だったなぁ……』
「っ、てめえは!」
「……まさか、あいつが?」
「ああ……間違いねえ」
戦兎達が話してるうちに、とうとうその姿の全貌が見えてくる。
闇に溶け込むような、濃い紫色の身体。
胸元から伸びる茶色い管。
鋭利な黄色いバイザーに、同じく黄色い胸元の、サソリのような光るマーク。
『どぉーもどぉ〜も。みぃ〜んな大好きマッドクラウンでぇすよぉ〜』
まるで子供番組のようなひょうきんな声で言う、男。
その姿に、士道は言い知れない恐怖を覚えた。
まるで、全身が拒否反応を起こして総毛立っているような、そんな感覚。
「な………んだよ、お前………っ!」
『通りすがりの道化師、って言ったところさ。覚えておいてくれよぉ?
「っ!なんで、俺の名前を………っ!」
『知っているともさぁ。ず〜っとずぅっとずぅ〜っと前からねぇ?』
「っ………あっ………あぁ…………っ」
その言葉一つ一つに、恐怖を覚える。
ホラー映画とかの恐怖とは根本から違う、本能的な恐怖。
自分の人間としての、生き物としての本能が告げている。
この男は、自分にとって
「………お前か。前万丈が言っていた男は」
『んん?おぉ!仮面ライダー、ビルドかぁ!こんな所で会えるたぁ、運命、感じちゃう?』
「……御託はいい。何故俺たちのことを知っている。それに、その姿。何故この世界にボトルのシステムがある」
『おっ!これの事も知ってるたぁ、さっすが正義のヒーローだぁ!どんな悪も見逃さないってか!』
まるで囃し立てるように笑う、眼前の道化師。
それを戦兎は鋭い視線を向けながら、言葉を発した。
「……そこを退いてくれ。俺たちにはやらなきゃいけない事があるんだ」
『ハーミットの事だろぅ?知ってるぜぇ?』
「……精霊の事も知っているのか」
『まぁな。でも、今行っても無駄だ。俺が眠らせたからな。今頃はスヤスヤ寝てんだろぉ』
「っ!何だと?」
その言葉に、戦兎をはじめ、士道も少なからず動揺していた。
精霊とは、人間をはるかに凌駕する力を持った存在である。それこそ、出現するだけでその余波で周囲が吹き飛ぶくらいに。
それを、眠らせたと言うのか。
……この男は、一体どれほどの力を持っているのだろうか。
先ほどよりも幾らか冷静になった頭で、士道は考えた。
『あぁ、助けを求めようとしても無駄だぜ?俺が電波妨害をしたからな。お前らに指示してる奴からの通信も来ないだろぅ』
「っ!」
そう言えば、先ほどから琴里の声が聞こえていなかった気がする。
試しにインカムを軽く突いてみても、ノイズのような音が出るだけだ。
『ま、ここを退く気は無いけどな。俺にもやる事があるんでねぇ』
「……だったら、力づくで行くまでだ」
「ああ。来い、ドラゴン!」
『ギーギギーギガ!ギーギーギーッ!』
そう言うと、戦兎と万丈はビルドドライバーを取り出し、腰に巻きつける。そして万丈は手にクローズドラゴンを収め、変形させた。
そしてボトルを取り出して振り、戦兎はドライバーに、万丈はクローズドラゴンへと挿し込んだ。
「「変身ッ!」」
変身が完了するや、ビルドとクローズがマッドクラウン目掛けて攻撃を仕掛けた。
『おぉーおぉー、血気盛んだねぇ!けど………』
マッドクラウンも銃撃で応戦し、寄せ付けようとしない。
戦いの火蓋が、落とされた。
どうでしたか?
今回ちょっと区切りが悪く短かったんですが、文章が続かなかったので一区切り入れさせてもらいました。
ちなみにこの四糸乃編ですが、原作にある十香とのすれ違いイベントは起こらず、代わりにビルド本編で言う所の万丈の変身までの流れのようなパートが入ります。
ええ、もう大体の読者が察しているでしょうが、ぶっちゃけます。隠そうと思ってましたが、ぶっちゃけちゃいます。
この章で、士道が仮面ライダーに変身します。
士道が初変身するくせになんで戦兎が攻略するんだよとかツッコミどころがあると思いますが、この章くらいにしか士道の初変身を突っ込めそうなところが無かったんです。あと当初は変わらず士道が攻略する流れにしていたので。
なので、多少不自然な流れになってしまっても、大目に見ていただけると幸いです。
それでは次回、『第15話 覚醒と白兎のザドキエル』、をお楽しみに
あ、前回沢山の感想や評価、ありがとうございます!
励みになるので、今後ともぜひよろしくお願いします!