万丈「またあいつが出てくるとはな………つーか、なんかあいつ、エボルトに似てね?」
桐生「うん、変なテンションなんかはそっくりだよね。俺も思った。誰なんだろあいつ」
士道「……な、なあ、俺については触れないのか?前回スマッシュ吹っ飛ばして、気絶して終わっただろ?」
桐生「そんな古いネタに構ってられないの。ネタは鮮度が大事なんだから」
万丈「なんか俺、前にも似たような台詞聞いたぞオイ」
士道「ネタの使い回しってしらけるからやめといたほうがいいぞ」
桐生「これはネタじゃないからセーフ!というわけで、どうなる第16話!」
「なん、だよっ………あれは…………!」
「これは……………っ!」
二人の目の前に映ったもの。それは、巨大な人形だった。
全長三メートルはあろうかと言う、ずんぐりとしたぬいぐるみのようなフォルム。体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれていた。
そして、その頭部と思しき場所には、ウサギのような耳が見受けられる。
そして何よりも________その全身から発せられる、液体窒素から発せられる空気のような、全てを凍てつかせるかのような煙が、他を寄せ付けぬ存在感を放っていた。
『_______このタイミングで
「あぁ!?天使ってなんだよ!?」
突然響いた声に、万丈が大声を出す。
『目の前に現れたものよ!精霊の最強の矛!精霊を精霊たらしめる、形を持った奇跡よ!十香の
「あー!よく分かんねえけど、前の十香のやつと同じでいいんだな!?」
「それでいいんだ!とにかく、この場は逃げるぞ!」
すると、『よしのん』が小さく手を引いたかと思うと、人形______【
瞬間、デパート側面部のガラスが次々と割れ、フロア内部に雨が、まるで弾丸のように入ってくる。
しかしそれはどちらかと言うと、入ってきた、ではなく、叩き割って来た、という方が正しかった。
「うっそだろ!?」
『ギギッ!?』
「お前服ん中隠れてろ!」
万丈がスカジャンを開くと、すかさずその中にクローズドラゴンが入り込み、待機状態になった。
「雨だと………っ!?」
戦兎も急いで身を翻し、床に倒れこむ。
雨は周囲の商品棚を穿った後、床へ落ちていった。
とそこで、よしのんの駆る【
鈍重な見た目に似合わぬ、まるでウサギのような俊敏な動きで地を蹴ると、先ほどまで戦兎達のいた位置を通り抜け、そのまま割れた窓から屋外へと飛び出して行ってしまった。
「………た、助かった、のか?」
「……反応は、どうなった」
『……ええ。反応は完全に
通信を聞き届け、思わずその場に座り込む。
さっきまで外で降っていた雨は、すでに止んでいた。
◆
「んぅっ…………つっ…………」
士道は激しい倦怠感と、全身を巡る鈍痛で目を覚ました。
まだ重い瞼を開き、天井を見上げる。
「ここ、は……………」
「……ああ、気がついたか」
『キュルッキュルゥ!』
すると、隣から聞き覚えのある声と鳴き声が聞こえた。
令音とガルーダだ。令音はいつも通りの不健康そうな顔で、こちらを見ている。ガルーダは主人の目が覚めたのを喜んでいるのか、調子良さそうに鳴き声をあげて飛び回った。
体を持ち上げ、なんとか起きようとする。
「令音さん………俺……っつぅ……!?」
「……まだ無理はしないほうがいい。傷が治っているとはいえ、痛みまで消えるわけじゃないからね」
「傷……?あっ…………」
そこで、思い出した。
先程まで士道は、ハーミットと対話をするためにデパートまで向かい、その道中、あの紫色のサソリ男______マッドクラウンに襲撃されたのだ。
そこで男が呼び出したスマッシュと戦闘になり_______その後、どういう経緯かスマッシュを倒し、気絶したのだった。
「……………」
拳を、ぐっと握る。
いずれにせよ、酷い状態だったのだろう。事実、目立つ所に外傷は殆ど見受けられないが、全身の痛みはまだ残ったままだ。
「あの後………どうなったんですか?戦兎達は…………」
「……彼らは無事だ。今は、君の代わりに作戦を遂行している」
「………」
無事と聞き、一先ずホッとする。
しかし同時に、最近ずっと感じていた、どうしようもない無力感が、身体中を蝕んだ。
「……私は、用があるので席を外す。何かあったら、知らせてくれ」
そう言い残すと、令音は席を立ち、医務室を後にした。
「……………っ」
空になった部屋で、一人拳を握りしめる。
______結局俺は、足手纏いだった。
よしんばスマッシュを倒せても、その後倒れたんじゃ意味が無い。
結局、俺はいつまで経っても、戦兎達の陰で守られるだけなのだろうか…………。
「………俺は、力が欲しい。戦兎達みたいに、戦える力が………………」
誰ともなく発せられた呟きは、虚しく部屋にこだまするだけだった。
◆
「おーい、シドー?」
『キュルゥ?』
十香がコンコン、と扉をノックする。
『………十香か。悪い、ちょっと、一人にさせてくれ………』
しかし、中からは暗い声が聞こえてくるだけだった。
先日の作戦以降、士道は自室に篭もってばっかりだった。
出てくる時といえば食事や風呂、家事をするときだけで、終わらせるととっとと部屋へ戻り、誰とも会話を交わそうとしなかった。
普段一緒にいるガルーダすら、部屋から締め出されている有様である。
「……十香、どうだった?」
「駄目だったのだ。まったく、取り合おうとしない。…………士道に、一体何があったのだ?」
『キュルルゥ………』
よしのんが隣界へと消失してから一日経った、土曜日。
戦兎達がフラクシナスに回収され、士道共々五河家に戻ってこられたのはいいが………家に帰ったっきり、士道はずっとこんな調子なのである。いつもの調子からは程遠い、酷く陰鬱とした雰囲気なのだ。
「………士道、ちょっと良いか?」
『……戦兎か?……悪いな。ちょっと、話せそうに無い』
「いいから、話を聞けって………」
と、そこで、ノックをする戦兎の手を、誰かが遮った。
「万丈?」
「ここは、俺が話をする。お前は買い物にでも行って来い。さっき冷蔵庫見たら、材料ギリギリだったからよ」
「……大丈夫なのか?」
「おう。任せとけ」
そう言うと、万丈は部屋へと入っていった。
◆
「………万丈か?ノックくらいしろよ」
「ノックしたって、どうせ出ねえだろ。……バナナ食うか?」
「………いらねえよ」
短いやり取りを経て、万丈は士道の隣に座り込んだ。部屋は電気が落ちており、士道は部屋の壁に体育座りをしていた。
「お前、どうしたんだよ昨日から。全然元気ねえじゃねえか」
「………別に。ちょっと、自己嫌悪になってさ」
「……?」
そう言うと、士道は少し顔を上げて、ぽつぽつと話し始めた。
「………昨日さ。俺、スマッシュに襲われて、戦った時。すっげー痛かったんだ。でも、それでも戦って、結局勝った。………でも、それもギリギリでさ。その後倒れて、全部お前らに押し付けちまって。………それで、結局俺はお前らと違って、力が無いんだな、て思っちまってさ………それで……」
一つ区切ると、士道は自分の拳を握り、見つめた。
「………俺は、力が欲しいんだ。戦兎や万丈みたいに、誰にも頼らずに、戦える力が。誰にも、守られずに戦える力が………」
そういった士道の目は、虚ろだがしかし、しっかりとした意思を持っているように見えた。
「…………」
それを聞いた万丈は、士道に尋ねる。
「_____お前、
「………っ!」
その言葉に、士道は虚をつかれたような表情をしていた。まるで、そう思っているのを知っていながら、無意識のうちに目を逸らしていた事を言われたような、そんな顔だった。
「それは…………いや、そうなのかもな。……ああ、そうだ。俺は、その力が欲しい。そうすれば、誰かの陰で守られずに、俺も、戦うことができる」
得心したように、苦笑しながら士道は言う。
だが、しかし。
「……………士道。今のお前じゃ、多分無理だ」
その言葉を、万丈は否定する。
「えっ………?」
「お前、戦兎が誰かに一度も頼らずに、戦えてると思ってるのか?だとしたら、お前、俺以上の
「っ………………」
笑いながら、万丈は言う。そして上を見上げて、何かを思い出すように語り出した。
「_____俺も、前はそうだった。戦う為の力が欲しくて、その為にライダーになろうとした。……でも、最初はなれなかった。定まってなかったんだ。これっぽっちも、
「………っ!」
「戦兎にも言われたよ。生半可な覚悟で、力は手に入らねえってな。自分しか見えてなかったら、力は使えねえってさ」
「……………」
万丈の言葉が、士道の胸に刺さる。
「そんで覚悟を決めて、いざ変身しても、次は何で戦うんだって話になってさ。それで思った。自分は、何の為に戦ってたんだ、ってな」
言い終わると、万丈は士道の方へと顔を向ける。
「お前は、何のために力を手に入れて、戦おうとしてたんだ?」
「…………………」
その問いかけに、答えが出せない。
結局自分は、何のために力が欲しかったのだろう。
ただ力が欲しいからか?…………違う。誰にも頼らず戦うため?…………今思えば、それも違う気がする。
なら、何のために…………。
「…………万丈は………」
「ん?」
気がつくと、士道はどこか縋るような声で、万丈に問いかけていた。
「万丈は………何の為に、戦うんだよ。戦兎みたいに、
「まさか」
また笑って、否定する。
「それ一つのために、命かけて俺は戦えねえよ。だから______だからあいつは、正義のヒーローなんだよ」
「えっ?」
それまで笑っていた万丈の顔が、真剣なものになった。
「例え自分が傷付いても、誰かの力になりたくて。誰かを守りたくて、あんな必死になって戦ってる。誰に感謝されるためでも無く、顔も知れねえ誰かの事も、俺らの事も、全部守りてえって。そんな事、他の誰にも出来ねえよ。だから、桐生戦兎は_____仮面ライダービルドは、正義のヒーローなんだよ」
「…………」
士道に向けて言ったであろうその言葉は、まるで自分自信に言い聞かせるようなものにも、士道は思った。
「その為に戦えんのは、桐生戦兎だけだ。俺は______俺の為に戦う。俺を信じてくれた奴の為に、戦ってんだ」
「……………」
「お前は、どうなんだ?」
______戦兎も、万丈も。
それぞれ、自分の持つ正義と、覚悟の元に、戦っていた。
誰にも頼らず、自分の為だけになんて戦ってなかった。
支え合いながら、確かに正義のために、戦っている。
どんなに傷付いても、誰かの為に、戦っている。
それに比べて自分は______なんて、ちっぽけなものの為に力を欲したんだろう。
「………俺から言ってやれるのは、これだけだ。後は、自分で答えを出せよ」
そう言うと、万丈は立ち上がって、部屋を後にした。
一人になった部屋で、士道は座ったまま、しかし、さっきとは確かに違う表情をしていた。
その時、再びドアが開く。
「…………シドー?」
「十香………」
『キュルゥ……』
「お前も……」
心配そうな眼差しをした十香と、十香の手に乗ったガルーダがそこにいた。
______ああ、そうだ。なんで、忘れていたんだろう。
俺は、どうして十香を、救いたいと思った。
どうして、あんな危険に傷付いても、救おうと思ったのか。
簡単だ_____十香が、助けて欲しいって、顔をしてたからだ。
そして_____自分を信じてくれた十香を、心から、助けたいと思った。
「(_____見返りを期待したら、それは正義とは言わねえぞ)」
戦兎に言われた言葉が、脳裏をよぎる。
そうだ。自分はさっきまで、本当に誰かの為、戦おうと思っていたのか?
「……どうしたのだ?最近、元気が無いぞ、シドー………」
「………ごめん、十香。心配かけて。お前も、最近構ってやれなくてごめんな」
『キュルゥ?』
一言言うと、士道は立ち上がって、十香に歩み寄り、ガルーダの頭をチョンと撫でてやる。毎度だが、ガルーダは機械とは思えないような仕草で、首を傾げて疑問符を浮かべていた。
「し、シドー?」
「……ありがとう。お陰で、答えが出せた気がする。十香の、お陰だ」
「う、うむ?よく分からんが…………シドーが元気になったのなら、何よりだ!」
『キュルルゥッ!』
十香は、疑問符を浮かべながらも、いつものように、屈託のない元気な笑顔を浮かべた。ガルーダも十香の手を離れ、嬉しげに宙を飛び回る。
その笑顔を見て、再び思い、そして、決心した。
_____ああ、そうだ。………………ずっと前から、決まってる。
◆
「………万丈に任せて、大丈夫だったか……?」
不安に駆られながらも、戦兎は商店街へとバイクを走らせていた。冷蔵庫を念のため確認したら確かに材料が少なかったので、士道の代わりに買い物へ向かったのだった。
まあ、普段どういう材料を使ってるかとかはあまり分からないが、大体買うものは分かるだろう_____と思いながら、バイクを走らせる事数分。
「ん?…………なっ」
道の途中、見覚えのある後ろ姿を見て、戦兎はバイクを止めて降りた。
その、ウサギ耳の付いた緑色のフードを見つけて。
「よ、よしのんか?」
眉をひそめて、その名を口にする。すると、フードがぴくりと動き出し、こちらに振り向いた。
「ひっ………い……………」
そして、今にも泣き出しそうな顔を作り、右手をバッと高く掲げる。
あの動作には見覚えがある。昨日『よしのん』が、巨大な人形を顕現させた時のものだ。
「お、おい落ち着けって!昨日あっただろ?桐生戦兎だ」
「………っ!」
すると、何かを思い出したように、よしのんがハッとした顔になる。
そして、恐る恐る右手を元の位置に戻し、戦兎の様子を伺い始めた。
「よう。今日はどうしたんだ?」
「……………」
「うわ、すごい雨だな。傘も刺さずに大丈夫か?」
「……………」
しかし、何も返してこない。ただ、怯えながらも警戒するように、睨んでくるだけだ。
「うーん、どうしたもんかね、これは。いくら天才でも分かんな………」
と、言いかけたところで、戦兎の視線がある一点に留まった。
よしのんの左手である。昨日までは付けていたはずの、ウサギのパペットが、見当たらなかったのである。
「………もしかして、パペットを探してるのか?」
「………!」
戦兎が尋ねると、よしのんが目を見開き、戦兎の元へと歩み寄って、コクコクと頷いてきた。
「やっぱりか………もしかして、昨日のAST………えっと、あの空を飛んでた奴らとの戦いで失くしたのか?」
「……………っは………ぃっ……………」
上ずった声でそう言うと、よしのんはヘナヘナとその場へ倒れこみ、嗚咽を漏らし始めた。
戦兎は少し考え、ポンと手を突く。
そして、俯いたよしのんに話しかける。
「よし!じゃあ俺が一緒に探してやる!」
「………………ぇっ………!?」
戦兎が言うと、『よしのん』が驚いたように目を見開いた。
そして数秒の後、初めて顔を明るくし、うんうんと力強く首を縦に振り、ようやく濡れた地面から腰を上げた。
「よし、じゃあ探すか。よしのん」
「………!」
よしのんが首肯し______しばし口をもごもごさせてから、声を発してくる。
「わ、たし………は、」
「ん?」
「私………は、よしのん、じゃなくて………
「四糸乃………?まあ、なんでもいいか。あ、そうだ」
戦兎が言うと、一度マシンビルダーまで戻り、操作する。そして内部ストレージから、傘を一本取り出し、四糸乃の元へと戻った。
「ほら、これ使えよ。もう濡れてっかもしれないけど、無いよりかはマシだろ?」
「…………!…………!」
傘を開き、四糸乃に持たせてやる。すると四糸乃が興奮気味に、傘を持ってない方の手をパタパタと動かした。余程気に入ったようだ。こうして見ると、とても精霊だとは思えない。どこにでもいる小さな女の子だ。
「はは、気に入ったんなら良かった」
すると、四糸乃が戦兎に問いかけるような視線を向けてきた。
「ん?俺はだいじょーぶだから、使いなさいって」
四糸乃はしばし逡巡するように傘と戦兎を交互に見たのち、ぺこりとお辞儀をして礼を言った。
「ぁ………り、が………ぅ………」
「いいっていいって。早く探そうぜ?大事なんだろ?」
「……………!」
戦兎が言うと、二人はパペットの捜索へと戻っていき、戦兎は耳元のインカムを操作した。
どうでしたか?
一つ言っておきましょう。四糸乃のパペットは、原作通りに折紙は持っていません。
今回、描写にすげー苦労しました。結局戦兎達のハザードレベルについても触れられてないし…………。
あと、多分ですが第2章の四糸乃編、第1章の十香編よりちょっと短く終わりそうです。あの十香とのすれ違いを引き抜いたが故の結果なのか、それとも私の文章力が無いのか………?
あ、関係ないですが、皆さんライダータイム龍騎見ましたか?私が見た感想は…………(ネタバレ注意)
………何で、何で裏切ったんや手塚………………
という感想です。流石井上敏樹さん。1話から早くもえげつなかったです。
それでは次回、『第17話 酷く歪なテンダーネス』を、お楽しみに!
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