万丈「二十六歳のおっさんがちっちゃい女の子に話しかけるってどうなんだ?お前もしかしてロリコン?」
桐生「な訳ねえだろ。大体葛城巧だった時でさえ恋愛を全くしたことがない俺だぞ?そんな特殊な性癖に目覚めるわけないっての」
万丈「あーそうかー!いっつもイケメンぶってるナルシストな自称天才物理学者さんは彼女の一人もできた事ないんだーwww!!」
桐生「うわうぜえ。ていうか、お前も今いないでしょうが」
万丈「あっ……………そうだな……………………………」
桐生「…………なんか、ごめんな?」
万丈「い、いや、いいんだ。ははは、は、はぁ……………んじゃ、第17話、どうぞー」
「_____どうだ?パペットは見つかったか?」
『………駄目ね。さっきから解析を続けてるけど、全然見当たらないわ』
パペット捜索を続けてから、おおよそ二時間。
戦兎は雨に濡れた髪を掻き上げながら、インカムで琴里と通信を行なった。さっきからフラクシナスクルーの面々にも協力を仰いでいるのだが、一向に見つかる気配がないのだ。
雨の中の作業ということもあり、流石に疲労も溜まってきた。身体も雨に打たれ、すっかり冷え切っている。
すると、その時。
_______きゅるるるるる。
「ん?四糸乃?」
「……………!」
隣で、パペットを探す四糸乃の方を見た。
何やら、やたらと可愛らしい音が聞こえた気がする。
「………腹、減ったのか?」
戦兎が訊くと、四糸乃は顔を真っ赤にしてブンブンと首を横に振った。
しかし、そのタイミングでまたも音が鳴る。
「……………っ!」
四糸乃はその場にうずくまると、フードを引っ張って顔を完全に隠してしまった。
精霊でもお腹は空くのか、と考えてから、戦兎は四糸乃の方へと振り向いた。
「一度休憩しようぜ。腹が減ってはなんとやら、って言うだろ?」
「……………」
四糸乃は少し考えを巡らせると、躊躇いがちに首肯した。
「よし。つっても、このなりじゃ店には入れないだろうしなぁ………」
今の戦兎の格好は、雨でびしょ濡れの状態である。財布は一応持ってるが、こんなにびしょ濡れでは店には入れないだろう。戦兎は暫く考えてから、インカムを小突いた。
「琴里、これから休憩するんだが、お前らの家でも大丈夫か?この格好じゃ店に入れそうもない」
『ん、分かったわ。士道達には私から通信しておく。大丈夫よ』
「サンキュー」
短く返事をすると、四糸乃に声を掛けた。
「よし、行くか。………乗ってくか?」
「…………!」
バイクに乗るよう促すと、四糸乃は躊躇いがちに頷いた。
◆
「えーっと、ご飯は、余ってるな。………あとは卵と………鶏肉か。卵焼きと………鶏丼で良いか。俺、料理あんまりできねえし」
慣れない手つきで冷蔵庫のものを取り出し、自分で作れそうな物に当たりをつけて調理を始める。そして、ちらりとリビングの方を見た。
そこにはソファに座りながら、物珍しそうに辺りを見回す四糸乃の姿があった。戦兎は帰ってからすぐ着替えたのだが、四糸乃はさっきと変わらない服装だった。恐らく雨水も乾いたのだろう。霊装と言う奴は結構便利な代物である。
「すぐ作るから、ちょっと待っててくれ」
四糸乃に待つよう言いながら、覚束ない手つきで料理を作る。卵焼きは簡単に終わり、鶏肉を調味料と一緒に炒めて、ご飯を盛った丼に盛り付ける。
簡単な物だが、戦兎の料理の腕では凝っても逆に美味しくなくなるだろう。改めて、毎日ご飯を作る士道の腕に感服した。
「ほら、簡単なもので悪いな。しっかり食って、早くよしのん見つけようぜ。いただきますっと」
戦兎が手を合わせて言うと、四糸乃も仕草を真似るようにぺこりと頭を下げた。
そして、慣れない手で箸を取り、戦兎特製の卵焼きを一口、口に運ぶ。
「………!…………!」
すると四糸乃は目を見開いて、テーブルをぺしぺしと叩いた。
「ん?どした」
そのまま、何かを伝えたいが言葉を発するのが恥ずかしい、という表情を作ってから、ぐっ、とサムズアップしてきた。
「お、卵焼き美味しかったか!良かった、共感してくれる人がいて。これ、みんな甘すぎるって言うんだよなぁ」
言いながら、戦兎も卵焼きを口に入れる。
「(やっぱ、まだ母さんの卵焼きよりも甘くないよなぁ……)」
という感想が戦兎には浮かんだが、四糸乃はこの味がお気に召したらしい。小さい口を目一杯広げて、卵焼きと鶏丼をすぐに平らげた。
「お気に召したなら何よりだ」
笑いながら言うと、そのタイミングを見計らったように、琴里から通信が入る。
『まだ少し休憩するでしょう?できるだけ精霊の情報が欲しいわ。ちょうどいい機会だし、いくつか質問をしてみてくれない?』
「質問?……あ、そうか。よし、分かった」
何となく察せたのか、戦兎が了解するように返事をし、満足そうに息を吐く四糸乃に目を向けた。
「なあ、四糸乃。あのパペット、随分大事にしてるみたいだけど、あの______よしのんって、お前にとってどう言う存在なんだ?」
戦兎が聞くと、四糸乃は恐る恐る、と言った調子でたどたどしく唇を開いた。
「よしのん、は……友だち……です。そして………
「ヒーロー?」
戦兎にとって言い聞き慣れたそのワードに、ふと聞き返す。
「よしのんは……私の、理想……憧れの、自分……です。私、みたいに……弱くなくて、私……みたいに、うじうじしない……強くて、格好いい……」
「理想の自分、か………あくまで、俺の感想だけど……」
戦兎が頭をかいて、デパートで始めて四糸乃と会った時のことを思い出した。
確かにあの時パペット越しに話した四糸乃とは話しやすいし、好感も持てたが_____
「俺は今の四糸乃の方が、好感持てるけどなぁ」
なんというか、どこまで本当でどこまでが冗談か分からなかったが………こう言っちゃ悪いが、なんか、あの嘘みたいに陽気な感じが、何となくエボルトを思い出してしまった。ついでに、最近会ったあのイカレ道化師野郎も。
多少言葉がたどたどしくても、誠実に答えようとする今の四糸乃の方が、戦兎にとっては良い。
だが戦兎がそう言った途端、四糸乃は顔をボンっ!と真っ赤に染め、背を丸めながらフードで顔を覆い隠してしまった。
「ん?おい、どうしたー?」
戦兎が声をかけると、四糸乃がそろそろと顔を上げた。
「(…………傍から見たら、これ高校生が幼い女の子泣かせてる図にしか見えねえよなぁ。しかも俺、一応は二十六歳の…………お、おじさんだし)」
と、認め難い現実を心中で苦々しく呟く。
これで元の世界のなりのままだったら、いい歳こいた大人が幼い子を虐めてる、という図にしか見えない。どう考えても救えない人種だ。
その思考をぐっと呑み込んで、四糸乃の顔を見る。
「……そ、んなこと、言われた……初め………った、から……」
「……そうなのか?……いや、そうか」
四糸乃は精霊だ。人と接する機会が、そもそも無かったのだろう。そんな事を言われるのが初めてなのも、納得できた。
『……戦兎、あんたロリコンなの?』
「な訳ねえだろ。二十六でロリコンとかいよいよ救えねえぞ」
戦兎が返すと、琴里がくすくすとからかうように笑った。
『冗談よ。にしても………今の計算だったら凄いわね』
「計算?」
『……いや、何でもないわ』
よく分からないことを言う司令官だ。
『取り敢えず、もう少し質問を続けてみて』
「ん、分かった」
返事をして、四糸乃へと向き直り、再び質問をした。
「それで、えっと。四糸乃、お前ASTに襲われても、殆ど反撃しないみたいじゃんか。どうしてだ?」
訊くと、四糸乃はまたも顔を俯かせ、消え入りそうな声を出した。
「………わ、たしは………いたいのが、きらいです。こわいのも………きらいです。きっと、あの人たちも………いたいのや、こわいのは、いやだと………思います。だから、私、は…………」
油断していれば、聞き逃しそうなほどに小さく、掠れた声。
けど。戦兎はその言葉に、まるで心臓を握り潰されるかのような衝撃を覚えた。
「っ………!?」
この子は。
自分の嫌な感情を、他人に感じて欲しくないから。
ただ、それだけの為に、他者を傷つける事を、良しとしなかった。例え、自分がどれ程憎まれ、蔑まれ、痛めつけられても。
_______それはきっと、相手も感じるのが嫌だろうからと。
四糸乃はなおも、全身を小刻みに震わせて、言葉を続けてきた。
「でも……私、は………弱くて、こわがり、だから………。一人だと………だめ、です。いたくて………こわくて、どうしようも、なくなると………頭の中が、ぐちゃぐちゃに…………なって……………きっと、みんなに………ひどい、事を、しちゃい、ます」
最後は、もう涙声だった。
鼻をすするようにしてから、さらに続けてくる。
「だ、から………よしのんは…………私の、ヒーロー………何です。よしのんは………私が、こわく、なっても………大丈夫って、言って…………くれます。そした、ら………本当に、大丈夫に………なるんです。だから………だ、から………」
「………………っ」
戦兎は、無意識のうちに唇を噛んでいた。両手は、もはや血が出るのでないかと言うくらいに、強く握り締められていた。
そうでもしないと_______とても、耐えられそうになかった。
この子は_______とても、優しいのだろう。きっと、こんなに優しい子は、世界中探したって、いやしない。
けど、だからこそ_________あまりにも、悲しい。
『いたい』や、『こわい』は。きっと嫌だろうからと。
数えるのも億劫なほど自分に敵意を、悪意を、殺意を向けてくる相手を、何度も何度も慮り、傷つけないようにする。
それが、一体どれほど困難で、どれほど勇気ある事か。
四糸乃が_____
そんな訳、あるか。
この子は、戦兎よりも、万丈よりも、士道よりも。きっと、ある意味では誰よりも強い子だ。
嗚呼、でも、その優しさは。
酷く、歪な_______あまりにも悲しい、慈悲だ。
「________俺が」
気がつけば、戦兎は席を立っていた。
テーブルを迂回し、四糸乃の隣に腰を下ろし、そのまま、四糸乃の頭を撫でた。
「俺が…………お前を救う。必ず」
「…………っ?」
言うと、四糸乃が目を丸くする。構わず、戦兎は続けた。
「絶対に、よしのんは見つけ出す。そして、お前の元へと返す。………もう、よしのんに守ってもらう必要なんか、無くしてやる。『いたい』ことや、『こわい』ことは、俺が全部遠ざける。俺が_______お前の、ヒーローになる」
フード越しに頭を撫でて、戦兎は言う。
四糸乃の優しさには、重大な欠落がある。
その、聖人のような優しさが、一つ足りとも自分に向けられていないのだ。
先日戦兎は、四糸乃の流した涙を見た。
あんな涙を流しても、少女はその優しさを、他人にしか与えないのだ。
自分一人が『いたく』て、『こわく』ても、誰かにそれを与えさせない。そう信じてる。
それは四糸乃にとって______なんという理不尽、なんという悲劇か。
四糸乃に。こんな、あまりにも優しすぎる少女に。
なんの救いもないなんて。そんな事が、あって良いはずがない。
そんな理不尽のために、この少女が流していい涙なんか。感じていい痛さや怖さなんか。一つもあっていいはずがない。
絶対に、そんな事は許されない。
ならば______自分のすべきことは決まっている。
四糸乃はしばしの間目を白黒させていたが、やがて、小さく唇を開いてきた。
「………あ、りがとう、ございま…………す」
「当然だ。何せ俺は………愛と平和のヒーロー、正義の味方、仮面ライダーだからな」
「……仮面…………ライダー……………?」
「ああ。みんなを守る正義のヒーローだ。お前一人のヒーローになんか、いくらでもなってやる」
「…………は…………ぃっ…………!」
「おう」
四糸乃が、素直にそう言ってくれたことが、無性に嬉しくて。
戦兎は、くしゃっと笑みを浮かべた。
すると、ポケットに入っていたビルドフォンから、着信音が鳴った。
「…………!」
「ん?ああいや、大丈夫だ。ちょっと待っててくれ」
驚いた様子の四糸乃を落ち着け、ビルドフォンを取り出す。
『非通知』_____登録されてない番号だ。訝しみながらも、廊下に出て電話に出る。
「もしもし?」
『やぁやぁ、元気してたかぁーい?ビルドぉ?』
「ッ!マッドクラウン…………っ!」
電話から聞こえてきた声は、例のイカレ道化師野郎_______マッドクラウンの物だった。
慎重に、電話に応える。
「………何の用だ」
『いやいやぁ、大した用じゃあないよう。あ、今の駄洒落ちょっと面白くなかった?偶然の産物だねぇ』
「御託はいい。とっとと答えろ」
『おぉーおぉー怖い怖いってぇ〜。そんな急かすなよ。多分お前さんの
「っ!なんだと………?」
◆
数分後。
戦兎は、五河家近くの公園に来ていた。マッドクラウンに、呼びつけられたのである。
『おっ、ちゃぁんと来たな。感心感心』
「………本当に、あるんだろうな」
『だぁからそう慌てんなって。慌てる乞食は貰いが少ないって言うだろぉ?』
そう言って、クラウンは後ろから持っていた物________
「っ!やっぱりお前が………!」
腕尽くでも取り返すとばかりに、戦兎はビルドドライバーを取り出そうとする。が、それをクラウンが制した。
『おぉっと待ちなぁ!戦う前に、ちょいと俺とお話をしようじゃあないか』
「……なんだと?」
そこで、一瞬手を止める。確かに見てみると、マッドクラウンには武器の類が一切見えなかったのである。だからと言って警戒を解かない訳ではないが、少なくとも今すぐ事を構えようとする気配はない。
『オーケー。ま、他愛も無い話だよぉ』
そう言って一つ区切ると、マッドクラウンは近くのベンチに腰を下ろした。
『________お前さんら、自分のしてる事が、本当に正しいと言い切れるのかぁ?』
「っ…………」
先程までとは打って変わって、疑問を投げかけるような口調になるクラウン。言葉を続ける。
『精霊を保護して、霊力を封印。そのまま、幸福な生活を送らせる…………だったか。お前さんら『ラタトスク』の理念とやらは』
「っ…………どうしてそれを」
『今はどうだっていいだろぅ?ま、ご立派な理念だな。確かに、そいつぁ幸せになれる奴だっているし、それで得をする奴もいるだろうさ。けど…………』
チッチッ、と指を振って、クラウンは立ち上がった。
『精霊ってのは、本来空間震を引き起こす、地球の………言い方が悪いが、病原菌や、厄災みてえなもんだ。爆弾なんだよ、爆弾』
「っ、お前!」
構わず、クラウンは言葉を続ける。
『お前らのやってることってのは、その爆弾を起爆させずに手元に置くってことだ。地球や地球に住む人にとっちゃ、不安で不安で仕方ねえようなもんなんだよ。その時は被害が出なくても、またいつ起爆するかも分からねえ………そぉんな感じだ』
「…………っ」
『その点、ASTってなぁ合理的だよなぁ。その場で爆発させちまってから、爆弾を一つ一つ無くそうとしてんだからよぉ。いや、ご立派なこった』
一見、ASTを擁護するかのようなその台詞は、どこかASTの存在を、皮肉ってるようにも聞こえた。
「………お前は、何が言いたいんだ」
『んぁ?大した事じゃねえよ。ただ………お前さんらのしてる事ってなぁ、お前さんの言う、
「…………」
確かに、そうだ。マッドクラウンの言っていることは、確かに正しいんだろう。
寧ろ、どちらかと言えば間違っているのは、戦兎達の方かもしれない。
けど______納得は、できない。出来るわけが、無い。
『ま、今のは俺の、他愛ない言葉だ。気まぐれな道化師の独り言だとでも思って、忘れてくれて構わない。ほらよっ』
ぽい、と戦兎に何かが投げ渡された。四糸乃のパペットだ。
『ま、どぉ〜するかはお前らが決める事だ。言った通り、俺は舞台を盛り上げるだけ。そこで何をするかは、お前らの自由。RPGで例えるなら………お前らはプレイヤーで、俺はゲームのNPCやナレーションみたいなもんだ』
そう言い残すと、マッドクラウンは踵を返した。
『また近いうちに会おうぜぇ〜?バァイナラァ〜』
手をひらひらと振って言い残すと、マッドクラウンはまた、蒸散したようにその場から立ち消えた。
そして、そのタイミングで。
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ________
「っ、空間震警報だと………?」
空間震警報が、街中に鳴り響いた。そして、一つの可能性に思い当たる。
「……まさか、四糸乃_______?」
鼓膜を震わせる警報に眉をひそめ______懐にパペットをしまい、持ってきた缶の形のアイテムが、あるのを確認する。
そして、そのまま逸る気持ちを抑えて、バイクを走らせた。
どうでしたか?
今回は完全に戦兎視線のみでした。士道の出番もっと増やせ!と思ってるそこのあなた。
安心してください。次回、遂に……………?
それは置いておきまして。今回は珍しく早く書きあがったので、いつもよりちょっと早く投稿しました。
ここ最近ライダー関連のニュースが多くてとても嬉しいです。仮面ライダーブレンとか、CSMデルタギアとか。まさか三、四年くらい前のエイプリルフールネタを実現させるとは思わなかった…………。
それでは次回、『第18話 燃やせスピリット』を、お楽しみに!
今回のこの終わり方からアレですが、次回は多分士道メインになると思います。
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