士道「あ、今回は俺がメインだから、戦兎出番ないよ」
桐生「マジで!?つかなんでお前ここにいんだよ」
士道「そこは…………ご都合主義ってやつじゃない?この空間限定の」
桐生「お前がそれ言うとはな。ま、まあと言うわけで、第18話をどうぞ!ハックショイッ!寒い…………」
「………っ!?」
目を開け、四糸乃は狼狽に身を震わせた。
闇の中で微睡むような感覚が搔き消えると同時に、ひんやりとした空気が頬を撫で、視界に街の景色が流れ込んできたのである。
「ぇ…………、ぁ……………っ」
辺りを見渡した。
どこか知らない街の真ん中。四糸乃の周りだけ、爆発が起きたように消し飛んでいる。
そして空からは、冷たい、雨。
何度も、飽きる程に経験した、現界の感触。
ただ違いがあるなら_______その左手に、四糸乃の無二の友達がいない事だろう。
そして、空を見上げる。
そこには______四糸乃の予想通りに、機械の鎧を纏った幾人もの人間が浮遊していた。
「_______目標を確認。総員、攻撃開始。逃すんじゃないわよ!」
『はっ!』
そんな会話の後、人間たちの手足から、 幾つもの弾が放たれる。
「……………っ」
四糸乃は息を詰まらせると、地面を蹴って空に舞った。
そのまま人間達の攻撃を避けるように、複雑な軌道を描きながら逃げていく。
それぞれが致死の力を持つ、必殺の一撃。霊装が無かったら、四糸乃を100回殺しても足りないほどの、悪意と殺意の化身。
「………!………!」
四糸乃は錯乱気味に空を舞いながら、声にならない叫びを上げた。
動機が激しい。お腹が痛い。目がぐるぐる回る。
頭がぐちゃぐちゃになって、訳が分からなくなる。
いつもなら_____左手に、よしのんがいてくれた。
そして、よしのんはとても強くて頼りになるから、こんな攻撃は物ともしない。だから四糸乃も平気だった。みんなを傷つけずにいられた。
でも今は_______いない。
どうしようもない恐怖感が、四糸乃の心に広がっていく。
ガチガチと歯が鳴って。
ガタガタと足が震えて。
グラグラと視界が揺れる。
自分じゃ抑えきれないくらい、頭の中がグシャグシャになってしまう。
「ぅ、ぁ、ぁ……………」
雨が、より強くなった。
「よし、このまま一気に行くわよ!」
リーダー格の女が言うと同時に、人間達の禍々しい武器が、一斉に四糸乃に向けられる。
今までで一番の殺意が、形となって降り注ぐ。
それらが着弾する瞬間。四糸乃は、天高く右手を上げていた。
______そして。
災厄の名を、叫んだ。
◆
「な…………っ、なんだよ、こりゃあ………っ」
「全部、凍ってやがんのか……………っ?」
自宅にいた士道と万丈は、外へ出て目の前へと広がる光景に目を見開いた。
見慣れた街の景色が、一面銀世界へと変貌していたのである。
それも、大雪が積もったとか、そう言う話ではない。純粋に、街が凍りついているのである。
『_______警報が聞こえたでしょう?ハーミット_____四糸乃よ』
「よ、よしの?それが、あいつの名前なのか?」
『ええ。あまり悠長に構えていられる事態じゃないわ。本来なら排水される雨水まで凍ってしまっているから。このままだと、地盤や地下シェルターの方にまで深刻な影響が出る可能性があるわ。その上_____』
そこで一つ区切り、苦虫を噛み潰したような声を発した。
『______先日、戦兎達が交戦したっていう………マッドクラウン、だったかしら。そいつの反応が、近くで確認されているわ。おまけに、街全体が凍結した後で、未確認周波数のスマッシュがそいつの周りに数体』
恐らく、この間クラウンが出していた、リキッドスマッシュ、とか言うやつだろう。何故液体でできてたのに凍っていないのかは謎だったが、恐らくそこは何かしらの力が加わっているのだろう。
『万丈、今すぐ現場に急行して。_____士道は悪いけど、今の貴方じゃやれる事はないわ。回収も難しいから、近くのシェルターに向かって』
「分かった。来い、ドラゴン!」
『ギーギギーギガ!ギーギーギー!』
万丈は返事をすると、ビルドドライバーを取り出し、ドラゴンフルボトルを振る。
そして、どこか固い動作でやって来たクローズドラゴンにボトルを挿し、ビルドドライバーへ装填した。
「変身ッ!」
「おっしゃぁっ!」
いつもよりも早く変身を済ませ、琴里の通信を頼りに現場へと向かう万丈。
「………………俺は」
その背中を見送った士道は、その場へ立ち尽くし、自分にできる事を考えた。
『士道、何をしているの。早く逃げなさい!』
琴里から諌める声が聞こえる。きっとこの場で士道が取るべき選択は、シェルターへと逃げる事なのだろう。
だが_____少しの逡巡を後で、士道は顔を上げ、インカムに手を伸ばした。
「悪いな琴里………ちょっと、行ってくる」
『は?何を言っているの!?士道!士道!』
インカムを耳から引き抜く。その時。
『キュルッキュルゥ!キュルッキュルゥ!』
するとガルーダが、何かを訴えるように鳴き声を鳴らして、士道の元へと飛んできた。
「お前………」
『キュルッキュル!キュルッキュイーッ!』
ガルーダは士道の周りを勢い良く飛び回り、『自分に任せろ!』と訴えているようだった。
「ごめんな……ちょっと、付き合ってくれ」
『キュルッキュルゥッ!』
首肯するように小さな首を曲げると、士道の手元に収まる。
それを持った士道は、自宅へと戻り、大急ぎで、
◆
『あぁ〜ららぁ。ついに始まっちゃったぁ〜……ん?』
「はぁっ、はぁっ……見つけたぞテメエ!」
『おぉやおやぁ、クローズじゃぁないか。わざわざ寒い中ご苦労だったなぁ』
「うっせえ!」
凍てつくような寒さの中、マッドクラウンはリキッドスマッシュと共に商店街にいた。と言っても、既に店は凍りつくし、もはや商店街としての機能を果たせそうにもないが。
「ウォォォオォオーッ!!」
その姿を確認したクローズは、ビートクローザーを取り出し、マッドクラウンとスマッシュに向かう。
『う〜ん、今は、お前とやる気分じゃないしなぁ………行け』
「ゥゥゥゥゥゥゥウァァァァァア!!」
マッドクラウンは顎に手を当ててから、近くのリキッドスマッシュに指示した。数体のスマッシュが、クローズめがけて襲いかかる。対してのクローズは短期決戦で決めるために、ビートクローザーに先日入手したロックフルボトルを装填、グリップエンドを力任せに思いっきり引いた。
「オォーラァァッ!!」
ビートクローザーを振るうと同時に、刀身から蒼炎のエネルギーが放たれる。
攻撃を受けたスマッシュは数体が爆散し、残り数体はまた、クローズへと向かって行った。
それを迎え撃つように、クローズは再びビートクローザーを構えた。
◆
「あ_____あれは…………っ!」
凍り付いた街を走っていた十香は、視界の先に見えた光景に戦慄した。
開けた道路の先に、スマッシュとか言う怪物と戦う、万丈ことクローズと、そのスマッシュを引き連れていると思われる紫色のサソリ男、さらにその奥では、先日見た青い髪の少女、それにASTの姿が確認できたのである。
「________あっ」
十香は、そのサソリ男を見たとき、恐怖を覚えた。
ASTと対峙した時とは、決定的に違う、何か恐ろしいもの。
何故だろうか。本能とか、そういうレベルでしか語りようがないが_______あれは、とても危険な物だ。
そして、その奥にいる、人形を駆る少女。それが後退し、周囲の大気を吸い込むように人形を仰け反らせる。
「…………っ!?」
十香は、腹の底がぞくっと冷えるのを感じた。
あれも_______サソリ男とは違うが、よくないものだ。間違いない。
言語化しづらいのだが、そう。例えるとするなら、十香が【
「…………っ、シドー、セント、リューガ!」
その安否を憂い、思わず三人の名前を叫んでしまう。万丈はともかく、ほか二人は今この場にもいないのだ。意味の無い事は分かりきっている。
十香は、咄嗟に踵を地面に突き立てた。
「【
十香の最強の矛の、その名を呼ぶ。しかし、何も起こらない。
「くっ……………!」
一応、琴里達から説明は受けていた。その過程で、自身の存在についてや、その力が士道の身体と、あの戦兎達が使っていたボトルに、封印されたと言うことも、聞いていた。
不安が無かったわけではない。今まであった力が突然無くなるのは、誰だって不安になる事だ。
しかし次第に、それが士道や戦兎達と過ごすうちに、それが人間として暮らす上で必要な事だと理解できた。
十香は、今の生活が楽しくて仕方ない。
折紙は未だに鼻持ちならないし、琴里や令音も、完全に信用に足る訳ではない。もしかしたら戦兎と万丈ですら、心の中では信用し切れていないのかもしれない。
_____だが。
「
今、彼らを救う為、そのいらないはずの力を求めなければならなかった。
幾度も幾度も地面に踵を突き立てる。だが、何度試しても
「くっ………頼む………出てくれ、
泣きそうな思いで、地面を蹴り続ける。
頭の中で、士道が凶弾に倒れた光景が鮮明に浮かぶ。
戦兎達が、みんなとくしゃっと笑っている光景が浮かぶ。
前者は、もう絶対に見たくない、経験したくない光景だ。
後者は、絶対に失ってはいけない光景だ。士道と、戦兎と、万丈と、みんなと笑っているときは、心の底から幸せを感じられた。
「…………っ!」
ゆらゆら、ぐらぐらと、十香の精神状態が、不安定になる。意識が飛んでしまいそうになる。それほどのストレスが、十香の頭の中を蹂躙する。
「く_________ぁ、ぁぁあああああああああああああああああッ!!!」
◆
「はぁっ、はぁっ…………ぐぅっ!!」
息も絶え絶えになりながら、クローズは戦い続けていた。
敵の攻撃がある程度弱まった所でボルテックレバーを回し、エネルギーを充填する。
「オォォォォォリャァァァァーッ!!」
渾身のキックを放ち、最後のリキッドスマッシュを葬り去る。
しかし、クローズの体力は限界に近かった。ただでさえ通常スマッシュよりも強力なリキッドスマッシュ。それを数体一気に相手取ることは、幾ら歴戦のクローズといえど、苦行であった。
その上_____
「(なんか俺…………前より、弱くなってねえか?………)」
ふと、頭にそんな考えが浮かぶ。
そう。この世界で戦ってきてから、ずっとそんな考えが頭の中にあった。スマッシュと戦っているときも、何故だろうか。最後に戦った時より、だいぶ強く感じたのである。
否、正確に言うなら_____自分の力が、弱まったというべき。
だが、今は戦場の真ん中だ。
その疑問を横へ投げ、再び姿勢を整える。
そして正面の道化師野郎_____マッドクラウンを見据える。
『おぉ〜おぉ〜、こりゃあ凄い!まぁさか本当に倒しちまうとはなぁ。で、も………そんななりで大丈夫かぁ?』
「うるっ……せぇ!」
強気に言うがしかし、クローズの身体はほぼ満身創痍であった。全身の疲労がかさみ、痛みが襲う。
それを奥歯を噛み締め堪えて、マッドクラウンへと向かっていく。
「うぉぉぉーーッ!!」
『ふん』
しかし、それをクラウンは難なく避け、取り出したブレードでクローズを地に伏せさせた。
「ぐはぁっ!?」
『終わりだ』
言うと、クラウンは銃を取り出し、持ち手を回転させ、ブレードを銃口へと取り付け、大型ブレードへと変形させた。
そしてフルボトルを取り出し、セットする。
音声が鳴ると同時に、刀身にジェット機の様な形のエネルギーが纏われる。
『ほぉ〜らよっ!』
妙に間の抜けた声とともに、刺突のフォームで構えたブレードを突き出す。
その後、ブレードからジェット機のエネルギーが放出され、そのままクローズへと向けて放たれる。
____だが、しかし。
「………はっ?」
『何だとぉ?』
______クローズとクラウンの間に入るように、人影が降り立ち、そのエネルギー弾を、 手に持った巨大な剣で以って、打ち消していたのだから。
「と、十香…………?」
「無事か!?リューガ!」
「あ、ああ………何とかな」
立ち上がり、十香のそばに立つクローズ。ちなみに、何故霊力を封印された十香が霊装姿になっているかとかは、聞かなかった。単純に考えてなかったのである。
『ほぉ〜、プリンセスかぁ〜。こりゃ驚いた!』
「………貴様か。シドーを苦しめた敵というのは」
『そぉんな怖い顔すんなって。綺麗なお顔が台無しだよぉ〜?っと!』
瞬間、クラウンが再びブレードのスイッチを操作し、先端部からスマッシュを二体生成した。数の不利を悟ってか、数的優位を作り出すためである。
「なっ、テメエ!卑怯だぞまた出すなんて!」
『ハッハー!残念ながら俺ぁ、卑怯もラッキョも大好きなんだよぉ〜』
と、クラウンの高笑いが響いた、その時。
「____待てッ!」
後ろから、息も絶え絶えに走ってくる、士道の姿があった。
「なっ、し、シドー!?」
「お前!シェルターに避難しろって言われてただろうが!」
十香と万丈の声を聞かず、士道はボトルを握りしめ、スマッシュへと向かっていく。
「うぉぉおーーーッ!!」
「ッ!?」
スマッシュへと向けられたその拳は、スマッシュの鳩尾をとらえ、吹き飛ばした。
「なっ!?」
『なぁに?』
戸惑いの声が上がる。そして、士道は息も絶え絶えに告げた。
「万丈、決めたよ。_____俺は、戦うッ!!」
その力強い声とともに、また、スマッシュへと向かっていく。その目には、朝の何かに取り憑かれていたような、妄執にも似た何かが完全に取り払われ、代わりに、大きな決意を宿したようにも、見えた。
「俺はもう、迷わないッ!!迷ってるうちに、十香が、みんなが、悲しむくらいなら…………ッ!」
それはきっと、茨の道なのだろう。
挫ける時も、傷付く時も、きっと数え切れないくらいにあるのだろう。
だけど______その苦難を乗り越えた先に、誰かの笑顔が………十香達の笑顔が、守れるのなら。
「俺は………みんなの笑顔を、救って、守ってみせるッ!これ以上、誰かの絶望を見たくないんだ!!」
「士道………」
まだ見ぬ、どこかで苦しむ精霊達が、救えるのなら。
_______その為に、力を使おう。
「だから………見ててくれッ!!俺の………戦いッ!!」
その、強い決意と共に。
士道は懐から、さっき持ってきた、
「ッ!そいつは、戦兎の………!」
「……戦兎に、悪いって伝えといてくれ」
それは、戦兎が開発した新型のドライバー_______リビルドライバーだった。
それを腰にあてがうと、銀色の【アジャストバインド】が巻き付く。
そして、ポケットから自身のボトル______【スピリットフルボトル】を取り出す。
『キュルッキュルゥッ!!』
すると上空から______【アライブガルーダ】が舞い降り、士道の手元へと変形して収まる。
「力を、貸してくれ」
短く言うと、士道は右手に持ったガルーダに、左手で勢いよく振ったボトルを挿しこむ。
そして、ガルーダに付けられたボタン型パーツ、【アウェイクンスターター】を勢いよく押し、リビルドライバーへと挿し込んだ。
電子音声とともに、炎の燃え盛るような音と、鳥の鳴き声が混ざったような待機音が流れる。
それが聞こえたと同時に、【ボルテックレバー】を勢い良く回し、【ボルテックチャージャー】からエネルギーを生成、リビルドライバー内部に接続された、変身用
そのまま、士道の前後に高速ファクトリー、【スナップリアライズビルダー】が展開される。前後には朱色のボディ、横にはさながら不死鳥のような形をした、チェストアーマーパーツが生成された。
_______覚悟はいいか、と、ベルトが問い掛ける。
しかし今の士道にとっては、そんな質問は無意味だった。
戦う覚悟や、背負う覚悟など_______とっくのとうに、出来ている。
だからこそ、決意を抱き、自分を変えるための、その言葉を叫ぶ。
その声とともに、生成された【スピリットアーマー】が士道を挟み込み、頭部の【バーニングスピリッター】と、胸部ボディアーマー、【スピリッションフレーマー】が装着される。
魂のボトルの力で、本当に覚醒した、もう一人の、炎の仮面ライダー。
強い決意を胸に秘め、マッドクラウンの前へと立ち上がった。
「………あいつ、やりやがった………っ!」
「し、シドーが………仮面ライダァーーっ!?」
万丈から感嘆の、十香からは驚愕の声が上がる。
「俺は………戦う。笑顔を、守るために。精霊を…………救う為に!」
士道は叫ぶ。拳を握り締め、自らの、その名を________
「俺は仮面ライダー…………!アライブだぁぁぁあッ!!!」
この日、五河士道は………仮面ライダーに、覚醒した。
どうでしたか?
遂に、士道が仮面ライダーとして覚醒しました。その名も、仮面ライダーアライブ!
………重ね重ね思う。やっぱ違和感が残ってしまった。ま、まあそこは、次回の戦兎の活躍を増し増しにする事で手を打ちましょう!次回、士道の初戦闘シーンからだけど………。
あ、士道の変身に対するラタトスクやASTの反応については、次回描写します。スマッシュ戦闘多めでしたが、後ろでは依然四糸乃が暴れてる状態ですからね。
それでは次回。『第19話 きっと誰かのヒーロー』を、お楽しみに!
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