デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

21 / 79
桐生「暴走した四糸乃を止めるため、仮面ライダービルドの桐生戦兎と、万丈龍我は向かった。だがその先で、万丈はマッドクラウンの足止めを食らってしまう」

士道「もうダメか………と、諦めたその時!ついに現れたニューヒーロー!その名も、仮面ライダーアライブ!」

万丈「ったくちゃっかり見せ場持って行きやがってよー!かっこいいじゃねえかちくしょー!」

桐生「と言うわけで、今回は我らが元祖ヒーロー、ビルドが大活躍!クローズがいなくても問題ない、第19話をどうぞ!」

万丈「もっと俺に出番くれよーっ!」





第19話 きっと誰かのヒーロー

ラタトスク空中艦【フラクシナス】の司令官、五河琴里は。

 

モニターの前で、唖然としていた。

 

「司令、これは…………!」

 

「何で………どう言う事なの………?士道…………!」

 

彼女に限った事ではない。

フラクシナスの、クルーのほぼ全員が、大なり小なり驚愕の表情をしていた。

 

なぜなら、彼らの目の前には________

 

 

朱色の炎の仮面ライダーに変身した、五河士道の姿が映っていたからだ。

 

 

 

 

くっ……ふはっ、フッハハハハハッ!!まぁさか、まさかまさかまぁさかぁッ!!仮面ライダァに、変身するとはなァッ!!五河(いぃつか)士道(しぃどう)ゥッ!!

 

「マッドクラウン………俺たちの戦争(デート)を、始めようか………!」

 

アライブへと変身した士道は、マッドクラウンとその配下のリキッドスマッシュを見据える。

 

 

燃える炎のような両目の複眼と、全身のアーマー。

 

まるで不死鳥のような、銀色が混じった意匠の頭部。

 

 

魂を震わせるほどの力の奔流を感じながら、士道は拳を握りしめた。

 

まぁずは小手調べだ。……やれ

 

『ァァァァァァァァアァァアァァァアッ!!!』

 

近くにいたリキッドスマッシュ二体に、クラウンが攻撃を命令する。

二体のリキッドスマッシュが、その戦闘能力の高さで以って、アライブを攻撃しようとしていた。

 

「シドー………っ!」

 

「大丈夫だ」

 

十香の心配する声を、クローズが遮る。

事実、今の士道_____否、アライブにとって、そのような思慮は皮算用であった。

 

 

「ウォォォォォラァァアーッ!!」

 

 

「ゥギィッ!?」

 

「ァグゥァ!?」

 

その右手の拳で、一体目のスマッシュの鳩尾を捉え、次いで二体目のスマッシュに、足蹴りをかました。炎のような衝撃波とともに、二体のスマッシュが前方に吹き飛ばされる。

烈火の如く繰り出される猛攻撃に、スマッシュ達も怯み、攻撃の手を緩めた。

 

「ハァァァァ………ッ!!」

 

その隙を逃さず、ボルテックレバーを一度回し、チャージャーにエネルギーを溜める。戦兎が搭載した変身戦闘用顕現装置(リアライザ)の補助によって、生成されたボトルのエネルギーがアライブの拳へと速やかに、しかし十全に送られる。

 

 

【Ready Go!!】

 

 

そのまま拳を据え、右足を踏みしめる。そして右拳に螺旋形に収束した炎のエネルギーを、正拳突きで敵に叩き込む必殺のパンチ技_______

 

 

SPIRIT BREAK!!

 

 

「ダァァァァァアーッ!!」

 

『ァァァァアアガァウァァァァアーーッ!!!』

 

 

地獄の業火の如しエネルギーが篭ったそれは、リキッドスマッシュ二体を、その一撃のみによって爆散させた。

 

 

一撃、だと…………フッハハハハハハッ!!ますます面白ぉいッ!!ならばこの俺が直々に、相手をしてやろうッ!!

 

 

その光景を見たマッドクラウンは高笑いをしながらも、大型ブレードを構えてアライブへと向かっていった。

ブレードを上段に構え、振り下ろす。

 

「ハァッ!」

 

……何?

 

それを、アライブは両腕をクロスさせ、防御する。両腕に備えられた、防御にも転用可能な鋭い装備、【ファイアークロウラー】によって受け止め、そのままブレードを押し返す。

 

………中々やるねぇ

 

「ハァッ!オリャァッ!!」

 

そのまま、空いた隙を突き、裂帛の勢いで連打を繰り出す。全身の追加アーマーに搭載された銀の飾り、【フレイアップライザー】によって、攻撃力が更に上昇しているのだ。炎がそのまま拳の形となって放たれたような攻撃に、クラウンも油断を突かれた。

 

まさか、これ程とはなぁ………っ!

 

「どうだ…?強いだろ……ッ!!ハァッ!」

 

そしてパンチとキックを交互に繰り出し、一気にクラウンを押し込む。そのまま、ボルテックレバーを勢い良く回す。チャージャーによって造られたエネルギーが、今度はアライブの両足へと流される。

 

 

【Ready Go!!】

 

 

 

電子音と共にファイティングポーズを決める。瞬間、背後にクローズの【クローズドラゴン・ブレイズ】に当たるエネルギー体、【アライブガルーダ・ライジング】が出現する。

そして背面からは赤く光る翼、【ソレスタルファイアーウイング】が出現した。

 

さながら神話の鳥のように輝くガルーダと共に、アライブが背中のウイングによって空高く飛翔する。

 

「はぁぁぁあーーーッ!!」

 

そして、アライブガルーダ・ライジングが敵目掛けて急降下し、そのエネルギーの奔流に乗ってアライブもまた急降下する。そして、両足に溜められたエネルギーを燃やし、敵にドロップキックを放つ必殺技_______

 

 

SPIRIT FINISH!!

 

 

「オリャァァァァアーーッ!!!」

 

 

ぐっ、ヌゥゥゥゥゥウ…………ッ!!?

 

 

その火弾の如きドロップキックは、クラウンを正面から捉える。そしてアライブは、クラウンの腹部を踏み台代わりにして、一回転を決め着地を決める。

地面へと着地したアライブを尻目に、【アライブガルーダ・ライジング】はその勢いのままクラウンへと体当たりの如く攻撃を加える。

 

こ………の………っ!

 

しかし、クラウンはそれを大型ブレードでもって弾き返し、霧散させた。

だが、それでもダメージは相当なものだろう。地に足を突かせ、息苦しそうに肩を上下させている。

 

………想定外だったぜぇ……?まさか、これ程とはなぁ…………。俺は、ここら辺でお暇させてもらうよぉ……。バァイナラ〜………

 

「あっ、ま、待て!」

 

口調は崩さぬまま、しかし苦しげに手をヒラヒラとさせてその場から消えるクラウン。

 

「…………」

 

その姿を見て一つ息を吐くと、アライブはドライバーからガルーダを抜き、変身を解除した。

 

『キュルッキュルゥ!!』

 

ドライバーから離れたガルーダが、えっへんと胸を張るように士道の前で飛び回る。それを見て、士道も表情が綻ぶ。

 

「………ありがとな。お前のお陰だ」

 

『キュルゥッ!』

 

士道が礼を言うと、ガルーダも嬉しげにその場を一回転してみせた。まったく、調子のいい奴め。

すると。

 

「シドーッ!!」

 

後ろから、十香が手を振りながら元気いっぱいに駆け寄ってきた。その後ろには、笑みを浮かべる万丈の姿も。

 

「ったく、まさか、本当にやっちまうとはな………」

 

「凄かったなシドー!とてもカッコ良かったぞ!!」

 

「万丈、十香…………」

 

『キュルッキュルー!』

 

「うむ、お前もな!」

 

十香が興奮気味に士道に駆け寄り、ガルーダを撫でる。万丈も士道を見ると、ふっと安心したような顔付きになり、口を開いた。

 

「……その様子じゃ、もう心配いらねえみてえだな」

 

「ああ。………サンキューな。色々と」

 

「おう、気にすんな」

 

「む、二人で何を話しているのだ!私も混ぜろ!」

 

『キュルーッ!』

 

と、十香とガルーダが拗ねたようにこちらを向いてくる。

 

「あ、ああすまん。十香も、有難うな」

 

「!……うむ、シドーが元気になったなら、何よりだ!」

 

三人と一匹で、そう笑いあっていた、その時。

 

 

_____ゴォォォォォォォォォオ…………!!!!

 

 

「っ、シドー、リューガ!!」

 

『っ!』

 

周囲から、先ほどまでとは比べ物にならない、全てを凍てつかせるかのような、凄まじい吹雪が吹き荒れた。

 

先程のクラウン撤退によって忘れかけていたが、ここは戦場のど真ん中である。

十香によってなんとか助かったものの_____次に見えた光景に、三人は目を疑った。

 

 

「なっ…………!?」

 

「んだよ、あれ…………!」

 

『キュルッ!?』

 

「あれはなんだ!?シドー、リューガ!」

 

 

三人と一匹が揃って、困惑の声をあげる。しかし、無理もないだろう。

 

何故なら彼らから視認できるものの、距離的には程遠い場所に_______吹雪が渦巻いて、まるでドームのように綺麗な半球形が形作られていたのだから。その周囲には、ASTの姿も見える。

 

「なんだよ、ありゃ……!」

 

『……四糸乃が構築した、結界だね』

 

「!れ、令音さん!」

 

すると、万丈のインカムから令音の声が聞こえてくる。先ほどまでは戦闘中だったこともあって音声が拾えなかったが、ちゃんと繋がったようだ。

 

『……すまないが、シンにインカムを付けるよう言ってくれないかい?』

 

「あ、ああ。……士道、インカム付けろってさ」

 

「え?………あ、そうだった」

 

さっき自宅に向かう際、インカムを外したままだった事を忘れていた。急いで、着用する。

 

「……琴里、聞こえるか?」

 

『聞こえるか、じゃないわよ!」

 

付けるや否や、耳元から妹の怒声が鼓膜に響いてきた。

 

『いきなり通信は途切れるし、仮面ライダーに変身してるし………どう言うことよ!』

 

「わ、悪い………説明なら、後で幾らでもする」

 

『………そうね。今は、戦場のど真ん中だもの』

 

琴里も落ち着いた様子で、ひとまず返す。

 

「それで、琴里………ありゃ、一体何なんだよ………」

 

『令音の言った通りよ。あれは、四糸乃が生み出した結界。吹雪で覆われてるから、迂闊に近づけないわ。あの中に生身で突入したら、恐らく10秒と経たずに全身が血まみれになるでしょうね』

 

「マジかよ………くそっ、どうすりゃいいんだ…………」

 

と、そこで前方の光景に変化が現れた。

 

折紙が空中に浮遊したかと思うと、なんと近くのビルの先端部をむしり取り、四糸乃の結界の上空へと運んでいったのである。

 

「な………っ」

 

「嘘ーん…………」

 

『キュルール…………』

 

『ち、あれで結界を霧散させようって腹?随分と思い切った真似してくれるわね……ん?』

 

すると、そこで琴里が戸惑ったような声を上げた。

 

『なっ………これ、戦兎……っ!?』

 

「えっ?戦兎が、どうかしたのか?」

 

「どうしたんだ?戦兎に何があったんだよ!?」

 

戦兎の名前を言って、動揺した様子を見せる琴里。問い詰めると、困惑した様子で返答してきた。

 

『あの馬鹿ヒーロー…………四糸乃の結界に向かって、真っ直ぐに向かってるわ…………!』

 

「なっ……!?」

 

「なんだとっ!?」

 

その言葉に、士道と万丈は混乱した。

 

 

 

 

「待っていろ………四糸乃………!」

 

パペットを持った戦兎は、マシンビルダーを走らせながら、目の前に見える半球形の吹雪へと直進していた。無論、変身済みの状態である。

あれが四糸乃の作り出したものだという事は、想像に難くない。先程まで、遠くから巨大なウサギが大暴れしていたのも見ていたからだ。

 

『___戦兎、聞こえる?戦兎!』

 

すると、今まで沈黙を保っていたインカムから、突然琴里の声が聞こえた。

 

「よ、元気そうだな」

 

聞こえてきた声に、至極明るく答える。

 

『何を呑気に言ってるの!あなた、自分が何しようとしているか分かっているの!?あの結界の中を進むことが、どれほど______』

 

「分かってるよ。あの中は猛吹雪だ。生身の人間が進んだら、ミキサーかけられたみたく粉々に吹っ飛ぶだろうな」

 

『なら、どうして______』

 

「でも_____今の俺なら可能だ。変身して、全身をアーマーに包んだ状態ならな」

 

強がっで行って見せたが、これも半分賭けだ。

いくらビルドドライバーが創り出す装甲でも、あの中に突っ込めばいずれ砕け散るだろう。一回の必殺技を食らうのとは訳が違う。銃弾の雨が降り注ぐ中で、ろくな回避もしないまま突っ込むようなものだ。挙句あればただの吹雪ではなく、精霊の霊力によって創られたもの。このままではいくらなんでも無謀過ぎるだろう。

 

______今のまま、なら。

 

『っ!でも、それにしたって無謀すぎるわ!吹雪が吹き荒れている領域は、結界内の外周五メートルよ!その距離を進むなんて、いくらライダーシステムでも_____』

 

「それでも!俺が………救わなきゃならねえんだよ。約束したんだ。あいつの、ヒーローになるって。………正義のヒーローが、仮面ライダーが…………そんな事で諦めてたまるかよ。こんなとこで諦めて、愛と平和(ラブ&ピース)が語れるかってんだ」

 

『戦兎…………』

 

強い意志を込めて、戦兎は、ビルドは言う。琴里の指摘は全くその通りだ。

だが、それでも戦兎は、行かなければならない。

 

仮面ライダービルドとして。

 

そして_______四糸乃の、ヒーローとして。

 

「大丈夫だ。それに、奥の手もある。この天っ才ヒーローを信じなさいって!」

 

『戦兎…………分かったわ。どうせ、止めても聞かないんでしょう?周りのASTは、何とかするわ。戦兎は、四糸乃に集中しなさい』

 

「何とか……?」

 

その言葉に、引っ掛かりを覚えた、次の瞬間。

 

 

『オォーーラァッ!!』

 

 

上空から、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「っ、万丈!それに………」

 

そこにいたのは、ビートクローザーで応戦するクローズと、ビルの屋上で鳶一折紙を相手取る、何故か霊装状態となった十香、そして………。

 

「あれは………まさか、士道か!?あの姿………」

 

背面から赤い翼を生やしてASTを相手にする、朱色の見慣れない仮面ライダーが見た。

 

普通なら見えないが、マスクアイによって強化された視界で、その腰に身につけられたもの、装填された物から、誰が変身者か見当がついた。

 

「ったくあいつ……人の発明品勝手に持ち出して……」

 

悪態をつきながらも、マスクの下で苦笑する戦兎。すると、インカムから通信が聞こえる。

 

 

『戦兎ぉ!こっちは俺たちに任せろぉっ!お前はお前のやる事に集中しろっ!!』

 

『戦兎、ドライバー勝手に使っちまって悪い!でも、ここは任せとけ!』

 

 

万丈と士道からだ。どうやらフラクシナスを介して通信を繋いだようである。そして、また通信が切り替わる。

 

『……言った通りだ。ASTは二人と十香が足止めをする。セイは、四糸乃を頼む。_____それから、もう一つ。時間がないから、簡潔に伝えよう。四糸乃は______』

 

令音が、最後に戦兎に、短く伝えてくる。

 

「………っ」

 

それを聞いた瞬間、心臓が締め付けられるかのような感覚が、戦兎の身体を通り抜けた。

 

だが_____不思議と、驚きはない。

 

 

あるのは、ああ、四糸乃ならきっとそうだろう、と言う納得と______

 

ならばこそ、何としてでも彼女を救わなければならないと言う、確信だけだった。

 

「………分かった。何としてでも、四糸乃を助け出す。俺は_____」

 

『……ナルシストで自意識過剰な正義のヒーローだから、だろう?』

 

「ちょ、俺のセリフ取んないで下さいよ!」

 

そんなやり取りを交わしながらも、ついに結界が目前まで迫る。

 

そこまで来たところで、戦兎はマシンビルダーを乗り捨て、ラビットアーマーの脚部、【ポップスプリンガー】によって、一気に近くのビルの屋上まで飛び上がる。

 

そして、結界を正面に見据えながら、戦兎は持ってきた()()を、取り出した。

 

それは_____一見すると炭酸飲料にも見える、ビルドの強化アイテム______【ラビットタンクスパークリング】であった。

 

 

 

「______さあ、実験を始めようか」

 

 

 

______シュワシュワシュワシュワ

 

 

台詞を言いながら、ボトルを振り、内部の成分を活性化させる。

そして、十分に活性化したその容器のプルタブ状のパーツを開き、ビルドドライバーにセットした。

 

 

RABBIT TANK SPARKLING!!】

 

 

音声が流れ、ボルテックレバーを回し、エネルギーを生成する。

 

その後、生成したエネルギーが、ライダーズクレスト状の【スナップライドビルダー】を形成し、パンドラボックスの残留物質【ベストマッチリキッド】を内包したアーマーが形成される。

 

 

 

【Are You Ready?】

 

 

 

「ビルドアップッ!」

 

 

その声とともに、前後のアーマーが流れ、ラビットタンクアーマーから切り替わる。アーマーが切り替わる合図であるように、ビルドのアーマーからは、炭酸が溢れ、流れ出た。

 

 

【シュワっと弾けるッ!ラビットタンクスパークリングッ!!イェイイェーイッ!!】

 

 

「勝利の法則は_____決まったッ!!」

 

決め台詞とともに、すかさずボルテックレバーを回し、エネルギーを装填する。そして、そのまま空中へと高く舞い上がった。

 

 

【Ready Go!!】

 

 

機械音声とともに、ビルドの前方にワームホール型の図形が形成される。瞬間、結界を取り巻いていた吹雪が、ワームホールへと集中していった。

そう、戦兎の考えた突破方法。それはこの技によって、結界を正面突破することであった。

だが、それでも無謀に過ぎる作戦である。だが今の戦兎にとって、最早そんなことはどうでも良かった。

 

四糸乃を救う。

 

その為なら、どんな無茶無謀もやり遂げてみせる、その覚悟があった。

 

 

先刻、令音に言われた言葉を思い出す。

 

 

 

『……セイ。調べて分かったことだが、あの子はパペットをつけている時だけ、もう一つの人格が存在している。そして………その発生原因についても』

 

『発生原因?……やっぱり、ASTか。怖いから?』

 

『……いいや。____なんとも信じ難いことに、この少女は自分ではなく、他者を傷つけまいとするために、自分の力を抑えてくれる人格____『よしのん』を生み出した可能性がある』

 

『_________っ!』

 

『……セイ。きっと、彼女を救ってあげてくれ。こんなにも優しい少女が救われないなんて………そんな悲しい話、嘘だろう』

 

 

 

「_____ああ、そうだ」

 

そんな不条理が、許されるはずがない。

 

_____だから俺が、ヒーローにならなきゃ、四糸乃を救わなきゃならないんだ。

 

 

 

SPARKLING FINISH!!

 

 

 

「ウォォォォオオオーーッ!!!」

 

無数の泡と共に、猛吹雪目掛けてキックを繰り出すビルド。

 

「_____四糸乃ォーーーッ!!!」

 

その後の戦兎の耳と視界には、凄まじい吹雪しか存在しなかった。

 

 

 

 

「ぅ、ぇ………っ、ぇ…………っ」

 

結界の中心部で、四糸乃は氷結傀儡(ザドキエル)の背にうずくまり、一人泣いていた。

外で氷弾が吹き荒れているとは思えないほどに、内部は静かな空間だった。ただただ、四糸乃の嗚咽と鼻をすする音だけが、いやに大きく反響するだけである。

 

外には、怖くてとても出られない。でもここは______この上なく、寂しかった。

 

「よ、し、のん…………っ…………」

 

涙に濡れた声で、友だちの名前を呼ぶ。

答えてくれるはずがないのは、四糸乃も分かっていた。それでも、呼ばずにはいられなかった。

 

『は・あ・い』

 

「……………ッ!?」

 

四糸乃はビクッと肩を震わせると、バッと顔を上げて辺りを見回した。

 

「_______!」

 

そして、涙を拭って目を見開いた。

なぜなら結界中心部と外縁部のちょうど境目に、見慣れたパペット_____『よしのん』が確認できたからである。

 

「!よしのん…………っ!?」

 

四糸乃は叫ぶと、氷結傀儡(ザドキエル)の背から飛び降り、そちらにパタパタと走っていった。見間違えるはずがない。

 

だが______

 

「…………ひっ…………!」

 

バタン!と。

 

『よしのん』の後ろから、誰かが倒れこんできて、四糸乃は思わず足を止めてしまった。

 

否、正確に言うなら、よしのんを手につけた人が、倒れこんできたようだった。

 

容貌は、はっきり言うと異常だった。

 

赤と青の体に、所々トゲトゲのような意匠がある。その身体はすでにボロボロで、何故か割れ目のようなものも入っていた。

 

「…………っ!?」

 

すると、いきなりその人が仰向けに回転し、大の字になった。

 

そして、赤と青の体_____否、正確には身に纏っていたものが、粒子になって消えた。

 

そして、仮面に覆われていた、その容貌が見て取れるようになる。

 

「…………!?戦兎さ…………っ」

 

四糸乃は、驚愕に染まった声を発した。

 

マスクの下もボロボロで、所々から血が流れ、それでも笑顔を浮かべたその人間は、あの桐生戦兎だったのである。

 

その場で寝ながら、ふぅぅぅぅ………と、深ぁく息を吐き出した。

 

「っあーーっ!疲れたぁーーっ!!ほんっとに死ぬかと思った…………!!」

 

 

あの後、戦兎の放ったスパークリングフィニッシュは、結界内部ギリギリのところまで行き、その効力を無くした。そのまま傷だらけのアーマーで、内部へと到達したのである。お陰ですっかりドライバーも、ついでに生身もボロボロになってしまった。帰ったらメンテナンス必至である。

 

外部はさながら機銃掃射のようだったのに、中心部は実に静かだった。なんとも奇妙な空間である。ここまで音を遮断するとは。

 

「_____四糸乃」

 

戦兎は名前を呼ぶと、ウサギのパペットを掲げるように立ち上がった。

 

「約束通り、お前を助けに来たぜ………痛ってて………」

 

まだ痛む身体を押さえていると、四糸乃は目を丸くした後、

 

「う、ぇ、ぇぇぇぇ…………」

 

目に涙を溜め、泣き出してしまった。

 

「えっ?ちょ、泣くなって!なんか俺、ダメだったか………?」

 

戦兎が慌てると、四糸乃がふるふると首を振った。

 

「違………ます、嬉し………て………来て………くれ、て…………っ」

 

そう言って、再び泣き出してしまう。

そんな様子に苦笑しながら、右手で四糸乃の頭を優しく撫でる。

そして、左手のパペットをピコピコの動かしてみた。

 

『やっほー、元気だったかい?お久しぶりー』

 

などと、口をもごもごさせて見よう見まねで腹話術をする。

拙過ぎる芸だったけど、四糸乃は嬉しそうに首を何度も前に倒した。

 

「ありが、とう………ござ、ます……」

 

「え?」

 

「………よしのんを、助けて、くれて」

 

戦兎は一瞬を頰をかき、くしゃっと笑って「ああ」と頷いた。

 

「今度は_____お前を助ける番だ」

 

「え………?」

 

四糸乃が、不思議そうに返してくる。戦兎は四糸乃と合わせるように、その場に膝をついた。

 

インカムからは何も聞こえてこない。大方、結界を通る際にマスクも欠損してしまったから、その際に一緒に壊れてしまったのだろう。

しかし_____いざ自分がするとなると、緊張してくる。

ただでさえ実年齢二十六だと言うのに、そこで幼い女の子とキスをすると言う行為が_____なんと言うか、とてつもなくいけないことにしか思えないのである。

しかし、やるしかないのだ。腹を決める。

パペットを失った時の四糸乃との触れ合いと、今この会話で。四糸乃が戦兎に最低限の信頼を得ていると信じて。

 

「ええと、それでだな。四糸乃。お前を助けるには、その_______キスを、しなきゃいけないんだ」

 

「キス………?」

 

四糸乃が不思議そうに聞いてくる。キスの意味を知らないのだろうか。

頭を掻きむしってから、改めて四糸乃に向き帰り、説明をする。

 

「あー、キスってのはな。こうやって、唇と唇を近づけて_______」

 

と、戦兎が説明を始めた途端。

 

 

 

「_________は?」

 

 

 

四糸乃が、ふっと目を伏せ、戦兎の唇にちゅっ、てと口づけをした。

 

瞬間、身体の中に、何か温かいものが流れる感覚がする。これが、前に士道が言っていた事だろうか。

 

「よ、四糸乃………お前…………っ?」

 

「違い………ました、か…………?」

 

「い、いや………合って、るぞ?」

 

戦兎が言うと、四糸乃がコクリと首肯した。

 

「戦兎、さんの………言う事なら、信じます」

 

と、その瞬間_____四糸乃の後ろに佇んでいた氷結傀儡(ザドキエル)やー彼女の纏っていたインナーが、光の粒となって解け消えていく。

そして、その解け消えた光の粒子が、戦兎の手のひらで一点に集まり______やがて、一本のボトルを生み出した。

 

ボトルの色は水色で、白いウサギが描かれたボトルだ。手に握ると、しんと冷たさが伝わった。

 

「これは_____」

 

そして……戦兎と四糸乃を囲っていた吹雪の結界もまた、急激に勢いをなくして掻き消えていった。

四糸乃の肩が、驚いたようにビクッと震える。

 

「………………っ、せ、戦兎さ…………、これ_______」

 

四糸乃は何が何だか分からないといった様子で、目をぐるぐると回した。そして、半裸になった自分の身体を隠すように、身をかがめる。

 

「あー、えっと、その、なんだ。と、とりあえずは、これ着とけ」

 

「は、はい………」

 

目のやり場に困った戦兎が、上に着ていたトレンチコートを渡し、顔が真っ赤になった四糸乃にかける。さっきの猛吹雪のせいでボロボロだが、無いよりかはマシだろう。

 

と、そこで。

 

「ん………」

 

四糸乃が、眩しそうに目を細めた。雲の切れ目から_____太陽と光が、注いで来ていた。

 

「暖か______い」

 

「………青空を見たのは、初めてか?」

 

「はい………………」

 

「そっか。_____綺麗だろ?」

 

「はい。とても………きれい、です…………」

 

ぼうっと、呟くように。

 

四糸乃が、天を見上げて言う。

 

戦兎も、それにつられて顔を上にやった。

 

そして、四糸乃が見ていたものを見つける。

 

 

灰色の雨雲が掻き消えた空には______この上なく綺麗な、虹がかかっていた。

 

 




どうでしたか?
今回で第二章『四糸乃チェンジング編』は終了です。
士道の初変身だったり、戦兎の初攻略だったり、路線変更だったり、個人的にだいぶゴタゴタして難しかった印象のある章ですが、だいぶ楽しくやれました。

さて、次回からはいよいよ、あの問題の精霊と、ナイトメア絶対殺すウーマンが現れます!
そして_____次回、最初も最初から原作改変が起こります。
仮面ライダービルドが来たからこそ、起こる改変とも言えますね。次回をお楽しみに。

それでは____『第3章 狂三デモリッシュ』『第20話 転校生はナイトメアにやって来る』、をお楽しみに!

よければ高評価や感想、お気に入り登録をよろしくお願いします!

あ、狂三は変わらず士道攻略路線で行きます!ここは変更しません!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。