士道「もうダメか………と、諦めたその時!ついに現れたニューヒーロー!その名も、仮面ライダーアライブ!」
万丈「ったくちゃっかり見せ場持って行きやがってよー!かっこいいじゃねえかちくしょー!」
桐生「と言うわけで、今回は我らが元祖ヒーロー、ビルドが大活躍!クローズがいなくても問題ない、第19話をどうぞ!」
万丈「もっと俺に出番くれよーっ!」
ラタトスク空中艦【フラクシナス】の司令官、五河琴里は。
モニターの前で、唖然としていた。
「司令、これは…………!」
「何で………どう言う事なの………?士道…………!」
彼女に限った事ではない。
フラクシナスの、クルーのほぼ全員が、大なり小なり驚愕の表情をしていた。
なぜなら、彼らの目の前には________
朱色の炎の仮面ライダーに変身した、五河士道の姿が映っていたからだ。
◆
『くっ……ふはっ、フッハハハハハッ!!まぁさか、まさかまさかまぁさかぁッ!!仮面ライダァに、変身するとはなァッ!!
「マッドクラウン………俺たちの
アライブへと変身した士道は、マッドクラウンとその配下のリキッドスマッシュを見据える。
燃える炎のような両目の複眼と、全身のアーマー。
まるで不死鳥のような、銀色が混じった意匠の頭部。
魂を震わせるほどの力の奔流を感じながら、士道は拳を握りしめた。
『まぁずは小手調べだ。……やれ』
『ァァァァァァァァアァァアァァァアッ!!!』
近くにいたリキッドスマッシュ二体に、クラウンが攻撃を命令する。
二体のリキッドスマッシュが、その戦闘能力の高さで以って、アライブを攻撃しようとしていた。
「シドー………っ!」
「大丈夫だ」
十香の心配する声を、クローズが遮る。
事実、今の士道_____否、アライブにとって、そのような思慮は皮算用であった。
「ウォォォォォラァァアーッ!!」
「ゥギィッ!?」
「ァグゥァ!?」
その右手の拳で、一体目のスマッシュの鳩尾を捉え、次いで二体目のスマッシュに、足蹴りをかました。炎のような衝撃波とともに、二体のスマッシュが前方に吹き飛ばされる。
烈火の如く繰り出される猛攻撃に、スマッシュ達も怯み、攻撃の手を緩めた。
「ハァァァァ………ッ!!」
その隙を逃さず、ボルテックレバーを一度回し、チャージャーにエネルギーを溜める。戦兎が搭載した変身戦闘用
そのまま拳を据え、右足を踏みしめる。そして右拳に螺旋形に収束した炎のエネルギーを、正拳突きで敵に叩き込む必殺のパンチ技_______
「ダァァァァァアーッ!!」
『ァァァァアアガァウァァァァアーーッ!!!』
地獄の業火の如しエネルギーが篭ったそれは、リキッドスマッシュ二体を、その一撃のみによって爆散させた。
『一撃、だと…………フッハハハハハハッ!!ますます面白ぉいッ!!ならばこの俺が直々に、相手をしてやろうッ!!』
その光景を見たマッドクラウンは高笑いをしながらも、大型ブレードを構えてアライブへと向かっていった。
ブレードを上段に構え、振り下ろす。
「ハァッ!」
『……何?』
それを、アライブは両腕をクロスさせ、防御する。両腕に備えられた、防御にも転用可能な鋭い装備、【ファイアークロウラー】によって受け止め、そのままブレードを押し返す。
『………中々やるねぇ』
「ハァッ!オリャァッ!!」
そのまま、空いた隙を突き、裂帛の勢いで連打を繰り出す。全身の追加アーマーに搭載された銀の飾り、【フレイアップライザー】によって、攻撃力が更に上昇しているのだ。炎がそのまま拳の形となって放たれたような攻撃に、クラウンも油断を突かれた。
『まさか、これ程とはなぁ………っ!』
「どうだ…?強いだろ……ッ!!ハァッ!」
そしてパンチとキックを交互に繰り出し、一気にクラウンを押し込む。そのまま、ボルテックレバーを勢い良く回す。チャージャーによって造られたエネルギーが、今度はアライブの両足へと流される。
電子音と共にファイティングポーズを決める。瞬間、背後にクローズの【クローズドラゴン・ブレイズ】に当たるエネルギー体、【アライブガルーダ・ライジング】が出現する。
そして背面からは赤く光る翼、【ソレスタルファイアーウイング】が出現した。
さながら神話の鳥のように輝くガルーダと共に、アライブが背中のウイングによって空高く飛翔する。
「はぁぁぁあーーーッ!!」
そして、アライブガルーダ・ライジングが敵目掛けて急降下し、そのエネルギーの奔流に乗ってアライブもまた急降下する。そして、両足に溜められたエネルギーを燃やし、敵にドロップキックを放つ必殺技_______
「オリャァァァァアーーッ!!!」
『ぐっ、ヌゥゥゥゥゥウ…………ッ!!?』
その火弾の如きドロップキックは、クラウンを正面から捉える。そしてアライブは、クラウンの腹部を踏み台代わりにして、一回転を決め着地を決める。
地面へと着地したアライブを尻目に、【アライブガルーダ・ライジング】はその勢いのままクラウンへと体当たりの如く攻撃を加える。
『こ………の………っ!』
しかし、クラウンはそれを大型ブレードでもって弾き返し、霧散させた。
だが、それでもダメージは相当なものだろう。地に足を突かせ、息苦しそうに肩を上下させている。
『………想定外だったぜぇ……?まさか、これ程とはなぁ…………。俺は、ここら辺でお暇させてもらうよぉ……。バァイナラ〜………』
「あっ、ま、待て!」
口調は崩さぬまま、しかし苦しげに手をヒラヒラとさせてその場から消えるクラウン。
「…………」
その姿を見て一つ息を吐くと、アライブはドライバーからガルーダを抜き、変身を解除した。
『キュルッキュルゥ!!』
ドライバーから離れたガルーダが、えっへんと胸を張るように士道の前で飛び回る。それを見て、士道も表情が綻ぶ。
「………ありがとな。お前のお陰だ」
『キュルゥッ!』
士道が礼を言うと、ガルーダも嬉しげにその場を一回転してみせた。まったく、調子のいい奴め。
すると。
「シドーッ!!」
後ろから、十香が手を振りながら元気いっぱいに駆け寄ってきた。その後ろには、笑みを浮かべる万丈の姿も。
「ったく、まさか、本当にやっちまうとはな………」
「凄かったなシドー!とてもカッコ良かったぞ!!」
「万丈、十香…………」
『キュルッキュルー!』
「うむ、お前もな!」
十香が興奮気味に士道に駆け寄り、ガルーダを撫でる。万丈も士道を見ると、ふっと安心したような顔付きになり、口を開いた。
「……その様子じゃ、もう心配いらねえみてえだな」
「ああ。………サンキューな。色々と」
「おう、気にすんな」
「む、二人で何を話しているのだ!私も混ぜろ!」
『キュルーッ!』
と、十香とガルーダが拗ねたようにこちらを向いてくる。
「あ、ああすまん。十香も、有難うな」
「!……うむ、シドーが元気になったなら、何よりだ!」
三人と一匹で、そう笑いあっていた、その時。
_____ゴォォォォォォォォォオ…………!!!!
「っ、シドー、リューガ!!」
『っ!』
周囲から、先ほどまでとは比べ物にならない、全てを凍てつかせるかのような、凄まじい吹雪が吹き荒れた。
先程のクラウン撤退によって忘れかけていたが、ここは戦場のど真ん中である。
十香によってなんとか助かったものの_____次に見えた光景に、三人は目を疑った。
「なっ…………!?」
「んだよ、あれ…………!」
『キュルッ!?』
「あれはなんだ!?シドー、リューガ!」
三人と一匹が揃って、困惑の声をあげる。しかし、無理もないだろう。
何故なら彼らから視認できるものの、距離的には程遠い場所に_______吹雪が渦巻いて、まるでドームのように綺麗な半球形が形作られていたのだから。その周囲には、ASTの姿も見える。
「なんだよ、ありゃ……!」
『……四糸乃が構築した、結界だね』
「!れ、令音さん!」
すると、万丈のインカムから令音の声が聞こえてくる。先ほどまでは戦闘中だったこともあって音声が拾えなかったが、ちゃんと繋がったようだ。
『……すまないが、シンにインカムを付けるよう言ってくれないかい?』
「あ、ああ。……士道、インカム付けろってさ」
「え?………あ、そうだった」
さっき自宅に向かう際、インカムを外したままだった事を忘れていた。急いで、着用する。
「……琴里、聞こえるか?」
『聞こえるか、じゃないわよ!」
付けるや否や、耳元から妹の怒声が鼓膜に響いてきた。
『いきなり通信は途切れるし、仮面ライダーに変身してるし………どう言うことよ!』
「わ、悪い………説明なら、後で幾らでもする」
『………そうね。今は、戦場のど真ん中だもの』
琴里も落ち着いた様子で、ひとまず返す。
「それで、琴里………ありゃ、一体何なんだよ………」
『令音の言った通りよ。あれは、四糸乃が生み出した結界。吹雪で覆われてるから、迂闊に近づけないわ。あの中に生身で突入したら、恐らく10秒と経たずに全身が血まみれになるでしょうね』
「マジかよ………くそっ、どうすりゃいいんだ…………」
と、そこで前方の光景に変化が現れた。
折紙が空中に浮遊したかと思うと、なんと近くのビルの先端部をむしり取り、四糸乃の結界の上空へと運んでいったのである。
「な………っ」
「嘘ーん…………」
『キュルール…………』
『ち、あれで結界を霧散させようって腹?随分と思い切った真似してくれるわね……ん?』
すると、そこで琴里が戸惑ったような声を上げた。
『なっ………これ、戦兎……っ!?』
「えっ?戦兎が、どうかしたのか?」
「どうしたんだ?戦兎に何があったんだよ!?」
戦兎の名前を言って、動揺した様子を見せる琴里。問い詰めると、困惑した様子で返答してきた。
『あの馬鹿ヒーロー…………四糸乃の結界に向かって、真っ直ぐに向かってるわ…………!』
「なっ……!?」
「なんだとっ!?」
その言葉に、士道と万丈は混乱した。
◆
「待っていろ………四糸乃………!」
パペットを持った戦兎は、マシンビルダーを走らせながら、目の前に見える半球形の吹雪へと直進していた。無論、変身済みの状態である。
あれが四糸乃の作り出したものだという事は、想像に難くない。先程まで、遠くから巨大なウサギが大暴れしていたのも見ていたからだ。
『___戦兎、聞こえる?戦兎!』
すると、今まで沈黙を保っていたインカムから、突然琴里の声が聞こえた。
「よ、元気そうだな」
聞こえてきた声に、至極明るく答える。
『何を呑気に言ってるの!あなた、自分が何しようとしているか分かっているの!?あの結界の中を進むことが、どれほど______』
「分かってるよ。あの中は猛吹雪だ。生身の人間が進んだら、ミキサーかけられたみたく粉々に吹っ飛ぶだろうな」
『なら、どうして______』
「でも_____今の俺なら可能だ。変身して、全身をアーマーに包んだ状態ならな」
強がっで行って見せたが、これも半分賭けだ。
いくらビルドドライバーが創り出す装甲でも、あの中に突っ込めばいずれ砕け散るだろう。一回の必殺技を食らうのとは訳が違う。銃弾の雨が降り注ぐ中で、ろくな回避もしないまま突っ込むようなものだ。挙句あればただの吹雪ではなく、精霊の霊力によって創られたもの。このままではいくらなんでも無謀過ぎるだろう。
______今のまま、なら。
『っ!でも、それにしたって無謀すぎるわ!吹雪が吹き荒れている領域は、結界内の外周五メートルよ!その距離を進むなんて、いくらライダーシステムでも_____』
「それでも!俺が………救わなきゃならねえんだよ。約束したんだ。あいつの、ヒーローになるって。………正義のヒーローが、仮面ライダーが…………そんな事で諦めてたまるかよ。こんなとこで諦めて、
『戦兎…………』
強い意志を込めて、戦兎は、ビルドは言う。琴里の指摘は全くその通りだ。
だが、それでも戦兎は、行かなければならない。
仮面ライダービルドとして。
そして_______四糸乃の、ヒーローとして。
「大丈夫だ。それに、奥の手もある。この天っ才ヒーローを信じなさいって!」
『戦兎…………分かったわ。どうせ、止めても聞かないんでしょう?周りのASTは、何とかするわ。戦兎は、四糸乃に集中しなさい』
「何とか……?」
その言葉に、引っ掛かりを覚えた、次の瞬間。
『オォーーラァッ!!』
上空から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「っ、万丈!それに………」
そこにいたのは、ビートクローザーで応戦するクローズと、ビルの屋上で鳶一折紙を相手取る、何故か霊装状態となった十香、そして………。
「あれは………まさか、士道か!?あの姿………」
背面から赤い翼を生やしてASTを相手にする、朱色の見慣れない仮面ライダーが見た。
普通なら見えないが、マスクアイによって強化された視界で、その腰に身につけられたもの、装填された物から、誰が変身者か見当がついた。
「ったくあいつ……人の発明品勝手に持ち出して……」
悪態をつきながらも、マスクの下で苦笑する戦兎。すると、インカムから通信が聞こえる。
『戦兎ぉ!こっちは俺たちに任せろぉっ!お前はお前のやる事に集中しろっ!!』
『戦兎、ドライバー勝手に使っちまって悪い!でも、ここは任せとけ!』
万丈と士道からだ。どうやらフラクシナスを介して通信を繋いだようである。そして、また通信が切り替わる。
『……言った通りだ。ASTは二人と十香が足止めをする。セイは、四糸乃を頼む。_____それから、もう一つ。時間がないから、簡潔に伝えよう。四糸乃は______』
令音が、最後に戦兎に、短く伝えてくる。
「………っ」
それを聞いた瞬間、心臓が締め付けられるかのような感覚が、戦兎の身体を通り抜けた。
だが_____不思議と、驚きはない。
あるのは、ああ、四糸乃ならきっとそうだろう、と言う納得と______
ならばこそ、何としてでも彼女を救わなければならないと言う、確信だけだった。
「………分かった。何としてでも、四糸乃を助け出す。俺は_____」
『……ナルシストで自意識過剰な正義のヒーローだから、だろう?』
「ちょ、俺のセリフ取んないで下さいよ!」
そんなやり取りを交わしながらも、ついに結界が目前まで迫る。
そこまで来たところで、戦兎はマシンビルダーを乗り捨て、ラビットアーマーの脚部、【ポップスプリンガー】によって、一気に近くのビルの屋上まで飛び上がる。
そして、結界を正面に見据えながら、戦兎は持ってきた
それは_____一見すると炭酸飲料にも見える、ビルドの強化アイテム______【ラビットタンクスパークリング】であった。
「______さあ、実験を始めようか」
______シュワシュワシュワシュワ
台詞を言いながら、ボトルを振り、内部の成分を活性化させる。
そして、十分に活性化したその容器のプルタブ状のパーツを開き、ビルドドライバーにセットした。
音声が流れ、ボルテックレバーを回し、エネルギーを生成する。
その後、生成したエネルギーが、ライダーズクレスト状の【スナップライドビルダー】を形成し、パンドラボックスの残留物質【ベストマッチリキッド】を内包したアーマーが形成される。
その声とともに、前後のアーマーが流れ、ラビットタンクアーマーから切り替わる。アーマーが切り替わる合図であるように、ビルドのアーマーからは、炭酸が溢れ、流れ出た。
「勝利の法則は_____決まったッ!!」
決め台詞とともに、すかさずボルテックレバーを回し、エネルギーを装填する。そして、そのまま空中へと高く舞い上がった。
機械音声とともに、ビルドの前方にワームホール型の図形が形成される。瞬間、結界を取り巻いていた吹雪が、ワームホールへと集中していった。
そう、戦兎の考えた突破方法。それはこの技によって、結界を正面突破することであった。
だが、それでも無謀に過ぎる作戦である。だが今の戦兎にとって、最早そんなことはどうでも良かった。
四糸乃を救う。
その為なら、どんな無茶無謀もやり遂げてみせる、その覚悟があった。
先刻、令音に言われた言葉を思い出す。
『……セイ。調べて分かったことだが、あの子はパペットをつけている時だけ、もう一つの人格が存在している。そして………その発生原因についても』
『発生原因?……やっぱり、ASTか。怖いから?』
『……いいや。____なんとも信じ難いことに、この少女は自分ではなく、他者を傷つけまいとするために、自分の力を抑えてくれる人格____『よしのん』を生み出した可能性がある』
『_________っ!』
『……セイ。きっと、彼女を救ってあげてくれ。こんなにも優しい少女が救われないなんて………そんな悲しい話、嘘だろう』
「_____ああ、そうだ」
そんな不条理が、許されるはずがない。
_____だから俺が、ヒーローにならなきゃ、四糸乃を救わなきゃならないんだ。
「ウォォォォオオオーーッ!!!」
無数の泡と共に、猛吹雪目掛けてキックを繰り出すビルド。
「_____四糸乃ォーーーッ!!!」
その後の戦兎の耳と視界には、凄まじい吹雪しか存在しなかった。
◆
「ぅ、ぇ………っ、ぇ…………っ」
結界の中心部で、四糸乃は
外で氷弾が吹き荒れているとは思えないほどに、内部は静かな空間だった。ただただ、四糸乃の嗚咽と鼻をすする音だけが、いやに大きく反響するだけである。
外には、怖くてとても出られない。でもここは______この上なく、寂しかった。
「よ、し、のん…………っ…………」
涙に濡れた声で、友だちの名前を呼ぶ。
答えてくれるはずがないのは、四糸乃も分かっていた。それでも、呼ばずにはいられなかった。
『は・あ・い』
「……………ッ!?」
四糸乃はビクッと肩を震わせると、バッと顔を上げて辺りを見回した。
「_______!」
そして、涙を拭って目を見開いた。
なぜなら結界中心部と外縁部のちょうど境目に、見慣れたパペット_____『よしのん』が確認できたからである。
「!よしのん…………っ!?」
四糸乃は叫ぶと、
だが______
「…………ひっ…………!」
バタン!と。
『よしのん』の後ろから、誰かが倒れこんできて、四糸乃は思わず足を止めてしまった。
否、正確に言うなら、よしのんを手につけた人が、倒れこんできたようだった。
容貌は、はっきり言うと異常だった。
赤と青の体に、所々トゲトゲのような意匠がある。その身体はすでにボロボロで、何故か割れ目のようなものも入っていた。
「…………っ!?」
すると、いきなりその人が仰向けに回転し、大の字になった。
そして、赤と青の体_____否、正確には身に纏っていたものが、粒子になって消えた。
そして、仮面に覆われていた、その容貌が見て取れるようになる。
「…………!?戦兎さ…………っ」
四糸乃は、驚愕に染まった声を発した。
マスクの下もボロボロで、所々から血が流れ、それでも笑顔を浮かべたその人間は、あの桐生戦兎だったのである。
その場で寝ながら、ふぅぅぅぅ………と、深ぁく息を吐き出した。
「っあーーっ!疲れたぁーーっ!!ほんっとに死ぬかと思った…………!!」
あの後、戦兎の放ったスパークリングフィニッシュは、結界内部ギリギリのところまで行き、その効力を無くした。そのまま傷だらけのアーマーで、内部へと到達したのである。お陰ですっかりドライバーも、ついでに生身もボロボロになってしまった。帰ったらメンテナンス必至である。
外部はさながら機銃掃射のようだったのに、中心部は実に静かだった。なんとも奇妙な空間である。ここまで音を遮断するとは。
「_____四糸乃」
戦兎は名前を呼ぶと、ウサギのパペットを掲げるように立ち上がった。
「約束通り、お前を助けに来たぜ………痛ってて………」
まだ痛む身体を押さえていると、四糸乃は目を丸くした後、
「う、ぇ、ぇぇぇぇ…………」
目に涙を溜め、泣き出してしまった。
「えっ?ちょ、泣くなって!なんか俺、ダメだったか………?」
戦兎が慌てると、四糸乃がふるふると首を振った。
「違………ます、嬉し………て………来て………くれ、て…………っ」
そう言って、再び泣き出してしまう。
そんな様子に苦笑しながら、右手で四糸乃の頭を優しく撫でる。
そして、左手のパペットをピコピコの動かしてみた。
『やっほー、元気だったかい?お久しぶりー』
などと、口をもごもごさせて見よう見まねで腹話術をする。
拙過ぎる芸だったけど、四糸乃は嬉しそうに首を何度も前に倒した。
「ありが、とう………ござ、ます……」
「え?」
「………よしのんを、助けて、くれて」
戦兎は一瞬を頰をかき、くしゃっと笑って「ああ」と頷いた。
「今度は_____お前を助ける番だ」
「え………?」
四糸乃が、不思議そうに返してくる。戦兎は四糸乃と合わせるように、その場に膝をついた。
インカムからは何も聞こえてこない。大方、結界を通る際にマスクも欠損してしまったから、その際に一緒に壊れてしまったのだろう。
しかし_____いざ自分がするとなると、緊張してくる。
ただでさえ実年齢二十六だと言うのに、そこで幼い女の子とキスをすると言う行為が_____なんと言うか、とてつもなくいけないことにしか思えないのである。
しかし、やるしかないのだ。腹を決める。
パペットを失った時の四糸乃との触れ合いと、今この会話で。四糸乃が戦兎に最低限の信頼を得ていると信じて。
「ええと、それでだな。四糸乃。お前を助けるには、その_______キスを、しなきゃいけないんだ」
「キス………?」
四糸乃が不思議そうに聞いてくる。キスの意味を知らないのだろうか。
頭を掻きむしってから、改めて四糸乃に向き帰り、説明をする。
「あー、キスってのはな。こうやって、唇と唇を近づけて_______」
と、戦兎が説明を始めた途端。
「_________は?」
四糸乃が、ふっと目を伏せ、戦兎の唇にちゅっ、てと口づけをした。
瞬間、身体の中に、何か温かいものが流れる感覚がする。これが、前に士道が言っていた事だろうか。
「よ、四糸乃………お前…………っ?」
「違い………ました、か…………?」
「い、いや………合って、るぞ?」
戦兎が言うと、四糸乃がコクリと首肯した。
「戦兎、さんの………言う事なら、信じます」
と、その瞬間_____四糸乃の後ろに佇んでいた
そして、その解け消えた光の粒子が、戦兎の手のひらで一点に集まり______やがて、一本のボトルを生み出した。
ボトルの色は水色で、白いウサギが描かれたボトルだ。手に握ると、しんと冷たさが伝わった。
「これは_____」
そして……戦兎と四糸乃を囲っていた吹雪の結界もまた、急激に勢いをなくして掻き消えていった。
四糸乃の肩が、驚いたようにビクッと震える。
「………………っ、せ、戦兎さ…………、これ_______」
四糸乃は何が何だか分からないといった様子で、目をぐるぐると回した。そして、半裸になった自分の身体を隠すように、身をかがめる。
「あー、えっと、その、なんだ。と、とりあえずは、これ着とけ」
「は、はい………」
目のやり場に困った戦兎が、上に着ていたトレンチコートを渡し、顔が真っ赤になった四糸乃にかける。さっきの猛吹雪のせいでボロボロだが、無いよりかはマシだろう。
と、そこで。
「ん………」
四糸乃が、眩しそうに目を細めた。雲の切れ目から_____太陽と光が、注いで来ていた。
「暖か______い」
「………青空を見たのは、初めてか?」
「はい………………」
「そっか。_____綺麗だろ?」
「はい。とても………きれい、です…………」
ぼうっと、呟くように。
四糸乃が、天を見上げて言う。
戦兎も、それにつられて顔を上にやった。
そして、四糸乃が見ていたものを見つける。
灰色の雨雲が掻き消えた空には______この上なく綺麗な、虹がかかっていた。
どうでしたか?
今回で第二章『四糸乃チェンジング編』は終了です。
士道の初変身だったり、戦兎の初攻略だったり、路線変更だったり、個人的にだいぶゴタゴタして難しかった印象のある章ですが、だいぶ楽しくやれました。
さて、次回からはいよいよ、あの問題の精霊と、ナイトメア絶対殺すウーマンが現れます!
そして_____次回、最初も最初から原作改変が起こります。
仮面ライダービルドが来たからこそ、起こる改変とも言えますね。次回をお楽しみに。
それでは____『第3章 狂三デモリッシュ』『第20話 転校生はナイトメアにやって来る』、をお楽しみに!
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あ、狂三は変わらず士道攻略路線で行きます!ここは変更しません!