桐生「ちょちょちょちょっと!何勝手に読み始めちゃってんの!」
士道「いや、だって前回お前全然出番なかったじゃん。だから俺が読もうと思って」
桐生「出番が少なかったからこそ、こうしてあらすじ紹介でアピールしなきゃいけないんでしょうが。まったく」
万丈「ちったあ俺の気持ちがわかったかよ」
士道「しかし二人は知らない。この小説の真の主役は、桐生戦兎でも万丈龍我でもない、この俺、五河士道だと言う事を………っ!」
万丈「えっ?マジで!?」
士道「マジの嘘の嘘の嘘のそのまた嘘のホントの嘘」
万丈「マジの嘘の嘘の………ってどっちだよ!」
桐生「どっちでもいいよ!ていうか!主役は俺だから!そこんとこ勘違いしないでよね!あらすじ紹介終わっちゃうから!どうなる第22話!」
「おお、ここが兄様の今のお家でいやがりますか!」
五河家に辿り着くなり、少女が短いポニーテールをブンブンと振りながら、敬語になっているんだかなっていないんだかよく分からない言葉を弾ませた。
自称・士道の妹。名前は崇宮真那というらしい。
胡散臭い事この上なかったが、路上で突然士道に抱きついた後その場にへたり込んで、目に涙を浮かべながら自分がどれだけ士道に会いたかったかを語り始めたため、仕方なしにここへ連れてきたという事である。
無論、琴里には許可を取っている。というか、ここへ連れて来いと言ったのは、他ならない琴里だったのだ。ちなみに、戦兎達に伝え忘れると言うポカをここでしているが、それはまた後のお話である。
「しかし驚いたぞ。まさかシドーにもう一人妹がいるとは……」
「いや……そんな記憶はないんだけどな」
「そうなのか?シドーによく似ていると思うのだが……」
「当然です!妹でいやがりますから!」
真那が自信満々といった様子で腕組みする。
すると、階段を降りる音と共に、リビングに誰かが入ってきた。
「_____おかえり、
リビングに来たのは琴里(黒リボンフォームのまま)だった。妙に『おにーちゃん』の部分を強調して挨拶してきた。
「あ、ああ。ただいま」
士道は言い知れないプレッシャーに汗を滲ませながらも、小さく手を上げて返した。すると、またしても音が聞こえた。
「おお士道。お帰り」
「ん?士道、誰だそいつ」
先に帰ってきていた戦兎と万丈だった。万丈が真那を指して尋ねる。
「あ、ああ………ちょっとそこで出会ってな。なんでも______」
と、士道の言葉の途中で、真那が前に進み出て、戦兎と万丈と琴里の周りをぐるぐると回ってから、満面の笑みを浮かべた。
「お家の方でいらっしゃいやがりますか!?うちの兄様がお世話になっていやがります!」
半ば無理やりに琴里と戦兎達の手を取り交互にわっしゃわっしゃと握手を交わす。戦兎は「お、おう……」と困った反応を示し、万丈は頭に疑問符を浮かべながら握手に応じ、琴里は珍しく辟易したような表情を見せた。
「兄様?士道が?」
「はい!私、崇宮真那と申します!兄様の妹です!」
自信満々にそう言う真那。
すると、戦兎達が士道を手招きし、三人で丸まって小声で話し合いを始めた。
「ちょっと、どーいう事だよ士道。なんで妹一人増えてんだよ」
「分かんねーよ………俺だっていきなり妹なんて言われてビックリしたんだから………」
「おい、なんで妹なのにお前と名字違うんだよ」
「だから知らねーって…………」
「取り敢えずあの子………真那、て言ったっけ。その子から話を聞かないとな」
「____さて、と。じゃあ話を聞きたいんだけど」
「はい!」
三人がコソコソ話した後、真那が琴里と向き合う形で椅子に座る。ちなみに十香は、琴里が現在の住居のマンションへと返した。今晩の夕食のハンバーグに、目玉焼きも乗せると取り付けて。
「真那、って言ったかしら。あなたは………自分が士道の妹だっていうのよね?」
「その通りです」
迷いも躊躇いも一切合切なく、深々と頷き返答する。琴里はチュッパチャップスの棒をピンと立てながら、真那の反応を窺うように言葉を続けた。
「私は五河琴里。____私も、士道の妹なのだけれど」
「………?はっ…………!」
琴里の言葉に真那は一瞬首を傾げながらも、やがて何か答えを見出したようにピンとした。
「と言うことはまさか………姉様っ!?」
「違うわ!」
「あっと、これは失礼。______ごめんね琴里。お姉ちゃんてっきり」
「妹でもないわよ!?」
琴里が、司令官モードにしては珍しく大声を発する。士道達が驚くと、琴里はこほんと咳払いをした。
すると、今度は真那が戦兎達の方を見る。
「するとこっちは、まさか…………」
「ん?どした」
戦兎はなにか察したような表情を見せ、万丈は首を傾げながら訊く。
「______生き別れた、もう二人の兄様でいやがりますか!?」
「ちゃうわ」
「な訳ねえだろ」
二人揃って返答する。
「そ、そうですか______。いやはや、すいません。てっきり私の記憶にねー兄妹がいやがるのかと思いました。しかし_____」
すると、真那が今度は疑問を投げかけるような視線を、戦兎と万丈に向ける。
「____お二方、以前、どこかで会いやがりましたか?」
「はっ?戦兎、知ってるか?」
「知らないよ。今初めて会ったんだから」
今度も否定の意を言う。すると、真那は首を傾げながらも、頭を掻いて苦笑いした。
「そうでいやがりますか…………たはは、すいません。どっかで見たことあると思っていやがったんですが、気のせいだったみてーです」
「?そうか」
「妹、ねえ…………」
戦兎達とやりとりしている間にも、琴里は半眼で真奈を睨みつけていた。
普通に考えれば、突然『私はあなたの妹』だ、なんて言われても信じられない話である。
だが、士道に関しては、絶対にないと言い切れない事情があったのだ。
戦兎達には以前話したが、実は士道は五河家の実子ではない。
幼少期に母親に捨てられて以来この家に引き取られ、今日まで五河家の子として育てられたのだ。
そのため、引き取られる前に士道に妹がいた可能性も、無いわけではない。
まあ、士道さえ記憶の曖昧な幼少期に離れ離れになったとて、それを琴里と同年代の真那が覚えていると言うのも、にわかには信じがたい話であったが。
「ええと………真那。ちょっと質問いいか?」
「はい!何でしょう、兄様!」
士道が声をかけると、真那は心底嬉しそうに、跳び上がらんばかりの勢いで答えた。琴里が何故か不機嫌そうに、フンと鼻を鳴らす。
「その、すまん。俺は君の事を覚えてないんだ…………」
「無理もねーです」
真那がうんうんと頷く。
士道は唾液を飲み下すと、最も気になっている事を口に出した。
「一つ訊きたいんだがが………君のお母さんって、今は」
そう。もし真那が本当に士道の妹なら、それを知っているはずなのである。
士道を捨てた、実の母親。
しかし_____
「さあ」
真那は首を傾げると、あっけらかんとした調子でそう言った。
「え………?」
「実は私_____昔の記憶がすぱっとねーんです」
「………なんですって?」
その言葉に、琴里が不審そうに眉をひそめた。
「記憶喪失、って事か?」
「はい、有り体に言えば」
真那の発言に、元記憶喪失者の戦兎が訊ねる。
「ここ二、三年の事は覚えてるんですが、それ以前となるとちょっと」
「なら………なんで士道が自分の兄だなんて分かるのよ」
琴里が問うと、真那が胸元から銀色のロケットを取り出し、中に収められたやたらと色あせた写真を見せてくる。そこには、幼い姿の士道と真那の姿があった。
「これ……俺か……!?」
士道が驚きの声をあげる。しかし、琴里は怪訝そうな顔を作る。
「ちょっと待ってよ。これ、士道十歳くらいじゃない?その頃には、もううちに来てるはずよ」
「あ………そういえば。不思議なこともあるもんですねぇ」
言われて、真那が頰を掻いた。
「(それに………)」
戦兎は口にこそ出さなかったが、もう一つの不審な点も発見していた。
写真の色褪せ具合である。
いくら、仮に士道がまだ引き取られていなかった十年ほど前に撮った写真だったとしても、この色褪せ方はおかしい。それがこの写真に写っている士道が、十歳くらいだったとしたら尚更である。この写真の色褪せ方はまるで、それこそ二十年とか三十年くらい前に撮られた、と言われた方が余程信じられるレベルだ。
まあ、直射日光などに当たって、写真が褪せるということもある。これだけでおかしいと決めつけるのは尚早だろう。
しかし、琴里は疑念を隠せずにいた。
「……他人の空似なんじゃないの?確かに結構………というか、かなり似ているけれども」
「いえ、間違いねーです。兄様は兄様です」
「………なんでそう言い切れるのよ」
琴里が問うと、真那は自信満々に胸をドンと叩いた。
「兄妹の絆に違えねーです!!」
「………」
琴里は話にならないといった調子で肩をすくめ、息を吐いた。なぜだか、少し安心しているようにも見える。
しかし真那は、感慨深げに目を伏せ言葉を続けた。
「いや、自分でも驚いていやがるのです。本当にびっくりしましたよ。兄様を見たとき、こう、ビビィッ!と、自分の脳裏に、そう、ベストマッチ!したのです」
「え?」
真那の発した単語に、戦兎が思わず声を漏らしてしまう。しかし、どうやら意識している様子も無い。ただ言っただけのようだ。
「何よそれ。安い一目惚れでもあるまいし」
「はっ!これは一目惚れでしたか…………琴里さん、お兄さんを私にください!」
「やるかッ!」
琴里は反射的に叫んだ後、ハッとした様子でわざとらしく咳払いした。
「とにかく、よ。そんな根拠の薄い事で、妹だなんて言われても困るわ。第一、士道はもううちの家族なの。それを今更連れて行こうだなんて_____」
「そんなつもりはねーですよ?」
「え?」
あっけらかんと答えた真那に、琴里が目を丸くする。
「兄様を家族として受け入れてくれやがったこの家の方々には、感謝の言葉もねーです。兄様が幸せに暮らしているのなら、それだけで真那は満足です」
言って、真那がテーブルを越えて琴里の手を取る。
「……ふ、ふん、何よ。一応分かってはいるみたいじゃない」
「ええ。ぼんやりした記憶ではありますが、兄様がどこかへ行ってしまった事だけは覚えています。確かに寂しかったですが、それ以上に兄様が、ちゃんと元気でいるかどうかが不安でした。だから、今兄様がきちんと生活できていることが分かってとても嬉しいです。こんなに可愛らしい
言って、真那がにっと笑う。琴里は顔を赤らめ、戦兎と万丈は満更でもなさそうに苦笑した。
「な、何よ。そんなこと言ったって_____」
「まあ、もちろん」
と、真那が琴里の言葉の途中で口を開く。
「実の妹には敵わねーですけども」
「………」
瞬間。今まで穏やかだった空気が、ピキッと、音を立てて崩れたような、気がした。
「へ、へえ………そうかしら?」
「いや、そりゃーそうでしょう。血に勝る縁はねーですから」
「でも、遠い親戚より近くの他人、とも言うわよね」
琴里が言った瞬間、今度は終始にこやかだった真那のこめかみがピクリと動いた。
そして一拍置いた後、掴んでいた手を離す。
「いやっはっは。……でもまあほら?やっぱり最後の最後には、血を分けた妹に落ち着きやがると言うか。三つ子の魂百までって言いやがりますし」
「……ぐ。ふ、ふん。でもあれよね。義理であろうと、なんだかんだで一緒の時間を長く過ごしてるのって大きいわよね」
だんだんと剣呑な雰囲気になっていく。士道は狼狽し、戦兎は頬杖をつき、万丈は何やら考えていた。
「え〜っと、こういう時、なんて言うんだっけか。知ってる、知ってるぞ。えーっと………分かった!サラダ!」
「…………」
「いや…………お台場」
「『修羅場』な?修羅場」
「修羅場」
「うん」
と、二人がミニコントをしているのを他所に、妹論争はデッドヒートしていく。
「血縁血縁って、もっと他に言う事ないの?義理だろうがなんだろうが、こちとら十年以上妹やってんのよ!舐めるんじゃないわよ!」
「笑止!幼い頃に引き裂かれた生き別れの兄妹が、十年の時を超え再会する!感動的じゃねーですか!真の絆の前には、時間なんてナンセンス!空っぽなら時間をゼロから始めるんですよ!過ごした時間は塗り替えるものでいやがりますよ!」
「うっさい!血縁がなんぼのもんよ!だいたい、実妹じゃ結婚だってできないじゃない!」
『『えっ?』』
士道と真那と、ついでに戦兎達の声がハモる。何か、おかしい事を聞いた気がする。
琴里はハッと目を見開くと、頰を真っ赤に染め、誤魔化すようにテーブルを叩いた。
「と、とにかくよ!今の妹は私なの!」
「何を!実の妹の方がつえーに決まっていやがります!」
「強いってなによ!妹関係ないじゃない!」
「お、おい落ち着けって、二人とも」
士道が汗を滲ませながら二人をなだめようとすると、琴里と真那は同時にバッと士道に顔を向けてきた。
「士道、あなたは!」
「実妹、義妹、どっち派でいやがるのですか!?」
「え、ええッ!?」
「じつ米?ぎ米?おい戦兎、俺は米の種類にこだわりはねえぞ」
「うん、お前これまでの会話の流れ分かってた?」
予想外の問いに、士道が狼狽する。その隣ではまた寸劇が繰り広げられていたのだが。
「え、えっと………」
『…………』
琴里と真那がじーっと見つめてくる。どちらを選んでもこの先ろくなことにならなそうなので、どうにか話題を転換しようと試みた。
「!そ、そうだ真那!お前、今どこに住んでるんだ?」
「はい?」
ポンと手を打って声をかけると、真那がキョトンとした様子で首を傾げた。
「家族と暮らしてるって訳でもないんだろ?もしお世話になった人がいるなら、俺も挨拶するべきかと思ってさ」
「あー………えーっと………」
と、そこで初めて、ハキハキ受け答えをしていた真那が口を濁した。
「ま、まあちょっと、色々ありやがるんです」
「いろいろ……?」
「えーっと、ですね。こう、特殊な全寮制の職場で働いてるというか………」
「職場?………真那、お前歳は琴里と同じくらいだよな?学校はどうしたんだ?」
まあ琴里も秘密組織の司令官なんていうものをやっているわけだが、それでもきちんと学校に通っている。
真那は気まずそうに目を泳がせた。
「そ、その……えーと………ま、またお邪魔します!」
「へ………?、ちょ、待っ_______」
真那はそう言い残すと、脱兎の如く去っていった。
「な、なんだったんだ、一体………」
「……………」
真那の去っていった扉を呆然と見つめる。
戦兎はそこで、彼女の言った『職場』、という単語が引っかかっていた。
あの時の発言はあの狼狽した様子から、でまかせで言った、と言うよりは本当の事をうっかり話してしまった、という印象を受けた。
あれくらいの歳の少女が、入れそうな職場……………
「…………いや、まさかな」
ふと一つ思い当たる節があったが、まさかと思い頭を振る。
流石に中学生くらいの少女を起用するほどではないだろう。それに、あの子がそう言う事をするようにも思えない。
きっと人に言えない何かがあるのだろう、と、深入りするのは避けることにした戦兎だった。
そんな戦兎達の横で、席から立った琴里が、真那の使っていたティーカップを回収していた。
◆
「いやー………危なかったです。危うくバレてしまうとこでした」
五河家から逃げてきた真那は、ほど近い公園で息を吐いていた。
「………兄様に、知られるわけにいきませんからね」
言って、懐からドライバーを取り出す。これを知られたら、きっと士道はやめさせようとするだろう。実の妹がこんな得体の知れないものを持っているのを、士道が黙っているはずがない。
と、その時。
「____感動の再会は、どうだった?真那クン?」
「……………」
後ろから、声が聞こえた。だいぶ前から聞いてきたが、未だに苦手な声だ。
「……何の用でいやがりますか?神大さん」
「それはないでしょ真那クン。折角の兄妹の再会なんだから、もっと喜ばなきゃ」
来たのは、白衣を羽織った長髪の男、神大針魏である。
口元にニヒルな笑いを浮かべながら、真那と遠からず近からずの位置へと歩く。
「それならさっき済ませました。あなたが来たと言うことは、何か指示がありやがりましたね?」
真那がどこかうんざりした様子で訊くと、針魏は「やれやれ」と肩を竦めながら、いつも通りの口調で告げた。
「_____
「………あの男からもでいやがりますか」
針魏から発せられた
「と、いうか………それ、あなたからも、でいやがりますよね?」
「アッハハ!ばれたかー。ま、それもあるけどね」
愉快そうに笑って、両手をわざとらしく広げてみせる。こう言う仕草が真那にとって苦手だ。科学者という人種は、みんなこう言う人なのだろうか。
「試してみたいのさ。
「………ほんと、自分本位でいやがりますね」
思わず嘆息する。正直なところ、このライダーシステムというものを、真那自身もそれほど多く知っているわけではない。
だが、別に知りたいと思わないし、知る必要もない、と思った。
_______あの
それだけで十分だ。その力を与えてくれた目の前の男に、多少なりとも感謝の気持ちだってある。
「まあ、取り敢えずはやってみますよ。ビルドが現れるのって、アンノウンが出現する時ですよね?」
アンノウンの名称がスマッシュであることを、まだ真那は知らない。そして、その目的のビルドもクローズとも、今日五河家で会っていたことも知らない。
「……ああ。タイミングはこちらで指示する。君はいつも通りやってくれればいいさ…………じゃ、グッバイ」
そう言うと、針魏は白衣を翻して去っていった。
それを程々に見送りながら、手元のドライバーに目を落とす。
「……………絶対に、アレは私が倒す。それだけが、私の使命でいやがりますから」
______彼女は、知らない。その、力の代償を。
その力を得た末に、自身がどんな存在になったのかを、まだ、彼女は知らない。
どうでしたか?
今回の戦兎と万丈のやり取りは、できる限り本編のそれに近づけるよう書いたつもりでしたが、どうでしょうか?
活動報告にも書きましたが、今後は投稿も遅くなってしまうかと思われます。この場合は、気長に待っていただけると幸いです。
それでは次回、『第23話
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