士道「少女しか出てきてねえじゃねえか」
桐生「仕方ないでしょーが。そういう小説なんだから」
万丈「おい、仮面ライダーデモリッシュって何だよ」
桐生「知らないよ。多分これからの本編で明らかになるでしょうよ」
士道「そんな適当でいいの!?」
桐生「ここで俺らが知ってたらネタバレになるでしょーが。と言うわけで、多分今までで一番タイトルの長い第23話を、どうぞ!」
天宮市にある林の中。
「よし、これで終わりっと」
真那の一件から翌日。戦兎は早朝から、スマッシュの反応を受け現場へと向かい、そして勝利したのであった。いつも通りにボトルを取り出し、いつも通りに成分を抽出する。
「それにしても、こうやってスマッシュ倒してても、元の世界に戻る手がかりが全然無いんだよな………」
ボトルをスマッシュに向けながら、独りごちる。
もうこの世界に来てから半月近くが経とうとしているが、未だに元の世界へと戻る糸口が見えてこない。
スマッシュの出現場所はバラバラだし、それらしい証拠もない。手詰まりというやつだ。
「いや………一つだけ、あるか」
そこで、一つの証拠に思い当たる。
______マッドクラウンだ。
どういうわけかボトルのシステム_____恐らくは、トランスチームシステムか、それに類似したシステム______を持ち、何度も戦兎達の前に現れては邪魔をしてきた、イカレ道化師。
あの男にはできる事なら会いたくないが、今のところ戦兎達の元の世界への鍵を握っているのも男だけであるのもまた事実。何故ならボトルのシステムは、戦兎達のいた世界でなければ実現不可能なのだから。それこそ、この世界にパンドラボックスでも無い限りは。
「まあ、今更全てほっぽり出して、元の世界に戻るって訳にもいかないけどなぁ。ふぁ〜………お、ボトル出来た………」
欠伸をしながら、浄化済みのボトルを見る。
今回のボトルはハリネズミフルボトルだ。元の世界では割と早く手に入ったが、今回は少し遅く手に入ったな。
「さて、帰って学校に行く準備しないと。あぁ〜、眠い………」
変身を解除しようとした、その瞬間。
______ガガガガガガッ!!
「ッ!誰だッ!?」
ビルドの足元に、無数の弾丸が浴びせられる。咄嗟に回避行動をとり、ドリルスマッシャーを構えて弾丸の飛んで来た方向を神妙に睨む。
『……外しましたか。流石でいやがりますね』
すると、向こう側からどこか音割れしたような声が聞こえてきた。その声の特徴に、どこか引っかかるものを覚えたものの、ひとまずはそれを置いておく。
そして、銃を構えたその姿が映る。
「ッ!まさか________!」
その姿を見て。ビルドは、戦慄した。
青い複眼と、まるで狼のようなマスク。
全身の、それそのものが武器であるかのように鋭利に尖った、アーマー。
そして何より______その腰に巻かれた、ベルト。
「______
異なる世界の、大元は同じ技術で以って生まれた二人の仮面ライダーが、出会った瞬間であった。
『____悪いですが、こっちも仕事でいやがるんです。上からの命令で、あなたと戦わなきゃいけねーことになりました』
【MODE:BREAK】
「くっ………」
口調が丁寧なんだか汚いんだか分からない、変な喋り方をしながらも、白のライダーはゆっくりと迫ってくる。手に持った銃を変形させ、光刃を出現させる。
対してのビルドも、ドリルクラッシャーを構え、臨戦態勢に入った。
一瞬の緊張感。
そして、その次には、二つの影が交差していた。
「っ!速いッ!?」
『あめーです』
敵の光刃を受け流し、第一撃を阻止する。が、すぐさま相手は右足で蹴り上げ、守りを崩そうとしてくる。
「くそっ……!」
それをラビットアーマーの【ホップスプリンガー】で飛び避け、すぐさまボトルを装填し直す。ラビットタンクのままで、あの相手には不利だからだ。
【ニンジャ!ガトリング!】
【Are You Ready?】
「ビルドアップ!」
掛け声とともに、ビルドの姿がトライアルフォーム、【ニンジャガトリング】フォームへと変化する。
武器をドリルクラッシャーから四コマ忍法刀、ホークガトリンガーに変え、牽制をしつつ接近する。
『むっ、さっきより速えーですね。姿が変わるってのは本当でいやがりましたか』
相手が厄介そうな声を出しながらも、ホークガトリンガーの攻撃を躱し、あるいは剣で弾いていく。
「っ………!」
凄まじい反応速度だ。誰かは分からないが、驚嘆に値する。
しかし、ビルドもやられてばかりではない。すぐさま四コマ忍法刀のトリガーを引く。
【風遁の術!竜巻斬りッ!】
「はぁッ!」
『くっ……!【ムラクモ】、
四コマ忍法刀から、竜巻の斬撃が繰り出される。しかし相手は肩に設置された謎の武装を展開すると、竜巻斬りを防ごうと試みた。
『うわっぷ!?』
しかし、どうやら全ては防ぎきれなかったらしい。幾ばくかはどこかへ飛んでいき、一部は周辺の木を斬り倒したが、残り一部はアーマーへと当たった。その衝撃で、少し後ろへと下がってしまう。
「よし、今だ!アバヨ!」
【隠れ身の術!ドロンッ!】
これ以上の交戦は望ましくないと判断し、すぐさま忍法刀のトリガーを四回素早く引いて、煙幕とともに撤退する。
その時ビルドは、白のライダーと同じような口調を、何処かで聞いたような気がしていた。
◆
『あっ………ちっ、逃げられちまいましたか。まあ、大体のデータは取れたでしょう』
ビルドの去った後。
白のライダー______デモリッシュは毒づきながら、バックルからボトルを取り出し変身を解除する。アーマーが粒子となり、各ハードポイントに接続されていたCR-ユニットが収納された。
「ッ…………相変わらず、慣れねーですね………」
その瞬間、一瞬全身を激痛が襲う。
そのベルトの使用後に、いつも起こる現象だ。まるで
とは言え一瞬なのでそこまででもないのだが、戦闘後の疲労や実際の痛みが割と馬鹿にできないレベルであるため、
「まあ、それでこんだけ戦えるなら、いいんですけどね」
先のビルドとの戦闘にしても、先日の模擬戦やナイトメアとの戦いにしても、CR-ユニットのみでは負担を強いられていた場面がいくつかある。それがこのドライバーを使用してから、大分軽減されてきたのだ。
「しっかし、こんなボトル一本とドライバーで変身出来るなんて、ほんと信じらんねーです」
言いながら、手に持った小さい試験管状のボトルを手に取る。それはビルドが使用していたものと、些か形状などが異なっていた。
あの神大針魏は【擬似ボトル】とかなんとか言っていたが、真那にはよく分からなかった。
「さてと。やる事も終えたし、私も帰りますかね」
ボトルとドライバーをしまい、ポケットに手を入れて翻る。
と、そこで一瞬足を止めた。
「………そういえば、ビルドの声…………どっかで、聞いたような気がしなくもねーんですが…………」
妙に頭に引っかかるビルドの声を数秒反芻して、しかし考えるのをやめて真那は歩いて行った。
◆
「_____見た事ねえライダーに襲撃された?」
五河家へ帰宅後、学校へと向かった戦兎は、万丈に廊下でその話をした。
「まっさか。お前の見間違いとかじゃねーか?俺たち以外にライダーがいるかっての」
「いや。間違いなく見たことのないライダーだった。それにそれを言うなら、マッドクラウンの例だってある」
それを言うと、万丈も押し黙り、難しい表情になった。
「なら………何だ?俺たち見てーに、その、この世界に便意してきた奴がいるのか?」
「いや便意じゃなくて転移な?折角のシリアスムードなんだから台無しにしないでよ」
「それお前が言うことかよ。…………で、結局の所どうなんだ?」
「ああ。……確かにその可能性もある。けど、あまりに情報が少なすぎる。そもそも、俺ですら知らないライダーシステムを、どうやってこの世界で創り出したか、だ」
「そこはほら、ウィーンウィーンのガシャンガシャーンって、やったんじゃねえの?」
「あのな。ライダーシステムってのはネビュラガスやパンドラボックスがなきゃそもそも創られなかった代物だぞ?………いや、創ったの俺と父さんだけれどさ」
正確には元人格の葛城巧や、父の葛城忍が、であるが。
「………けどそう考えると、これまでのスマッシュの出現も何か裏があるとみて間違い無いな」
「ん?どうしてだよ」
「思い出せよ。あのマッドクラウン、ブレードから新型のスマッシュを作り出してたろ?」
「………あ、そうか。えーっと…………何だっけ、薪ッドスマッシュ?」
「リキッドスマッシュ」
ポンと手を叩いて言った万丈に突っ込む戦兎。
あのスマッシュにしても、戦兎に覚えのない物だ。それを創り出した奴がいるのだろう。
「つまり………今日俺が会ったライダーと、クラウン。スマッシュの出現を関連付けて紐解いていけば…………俺たちの元の世界への帰り方も分かるかもしれない!」
「はぁ!?お、おい!マジかよ!」
「ああ。つっても、まだ全然手がかりがないのが現状だけどさ。取り敢えずの希望は見えてきたって事だ」
ライダーシステムやその類似品があると言うことは、それも戦兎達の世界から少なからず持ち込まれたものである可能性が高い。即ち、それが戦兎達の帰り方にも繋がっている可能性があるのだ。
______キーンコーン、カーンコーン
と、ここでチャイムが鳴る。予鈴だ。
「おっと。この話はまた後でだな。取り敢えず教室戻るぞ」
「あ、ちょっと待ってくれ!」
教室に戻ろうとしたところを、万丈が肩を掴んで止める。
「何だよ」
「………仮に元の世界に戻れるとしてよ………士道や十香、それにお前が封印した四糸乃は、どうすんだよ」
「…………」
そう。士道たちとて、最早無関係で済まされない。
既に戦兎達の身の上を知っているし、士道に至っては仮面ライダーとして変身しているのだ。四糸乃も戦兎が封印しているのである。
まだ戦兎達が必要される場面もあるだろうし、四糸乃たちを放って帰るのはあまりに無責任だ。
しかし、戦兎達が仮に戻る場合_______彼らと別れるのもまた、道理であった。
「……別に、今すぐってわけじゃない。少なくとも、あいつらをこのまま放っておいて、帰るなんて真似はしないよ」
「……そうだな」
その返答に万丈も納得したのか、手を離してともに教室へと向かう。
その答えは或いは、やがて訪れる事への逃げなのかもしれなかった。
◆
結局戦兎達はホームルームの開始ギリギリに教室へ辿り着き、なんとか間に合った。
「あれ?そういや狂三は?」
そこで、士道が小さく首を傾げた。
チャイムが鳴ったのに、狂三の姿が見えなかったのである。
「ん?そういや、いないな」
「むう、転校二日目で遅刻とは」
と、戦兎と十香がそう言うと。
「_____来ない」
士道たちの左隣から、そんな声が聞こえてきた。
折紙だ。視線のみを十香に向けて唇を開いている。
「ぬ?どう言う意味だ?」
「そのままの意味。時崎狂三はもう、学校に来ない」
「え?それってどういう______」
「はい、皆さんおはようございまーす」
とそこで、担任のタマちゃん教諭が入ってきた。すぐさま学級委員が起立と礼の号令をかける。
折紙の言っていたことも気になったが、取り敢えずは礼をして席に着いた。
「じゃあ、出席を取りますね」
タマちゃんが出席簿を開き、生徒の名前を順に読み上げていく。
「時崎さーん。あれ?時崎さん?」
そして時崎の順番になったが、返事がなかった。
「あれ?時崎さんお休みですか?もうっ、欠席の時はちゃんと連絡入れてくださいって言っておいたのに」
タマちゃんがぷんすか!と頬を膨らませながら、出席簿へとペンを伸ばした、その時。
「____はい」
「狂三?」
教室の後方から、よく響く声が聞こえた。そこに立っていたのは、紛れもなく時崎狂三だった。
「もう、時崎さん。遅刻ですよ」
「申し訳ありませんわ。登校中に少し気分が悪くなってしまいましたの」
「え?だ、大丈夫ですか?保健室行きます……?」
「いえ、親切な先生がここまで送ってくださりましたし、今はもう大丈夫ですわ。ご心配をかけてすみません」
狂三はぺこりと頭を下げると、軽やかな足取りで自分の席へと戻って行った。
「なんだ、ちゃんと来たじゃないか」
ほうと息を吐き、何やら不穏な事を言っていた折紙に視線を向ける。
「え………?折紙?」
しかし当の折紙は、その狂三を凝視していた。
表情にそこまで変化があるわけではないが、明らかにそれは驚愕のものだった。
「…………ん?」
その時、戦兎はふと、狂三が入ってきた半開きのドアの向こうを見た。
そこには、長い髪を揺らしながら、一人の男性教諭が、歩いて行った。
前に聞いた名前は確か______
親切な先生とは、きっと彼の事だろう。
◆
そして、昼休み。
「………それで、用件ってのは何だ?」
「おい戦兎、なんだよこの部屋」
「そういや万丈は初めてだっけか」
「早くして。時間が惜しいわ」
いつもの物理準備室に、士道たちは呼び出されていた。琴里から急にインカムに通信が入り、急いで来るよう言われたのである。
「……ん、来たね。シン、セイ、バジン」
部屋の最奥部の椅子には、ラタトスク解析官兼来禅高校物理教諭の村雨令音が座っていた。
令音の隣にある長椅子に座るよう促し、三人で座る。万丈は初めて来たからか、物珍しそうに部屋を見渡していた。
「それで、見せたいものってのは何ですか?」
士道が聞くと、琴里が机の上のディスプレイを示した。
そこには、二つのウィンドウにカラフルな髪の色をした美少女たちがそれぞれ映し出され、一つには【恋してマイ・リトル・シドー 〜接吻編〜】。もう一つには、【愛してマイ・ジーニアス・セント 〜発情編〜】のタイトルが映し出された。
「続編、だと…………ッ!?」
「ちょっと待て!今さらりと俺の正式バージョン無かったか!?」
しかもサブタイトルがなんか成人向けのそれっぽかった気がする。いや、興味が無いためあまりというか全然知らないが。
「……あ、間違えた。こっちだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!何ですか今の!」
「もう嫌だ!アキレス腱決められてゲームオーバーになるゲームは嫌だ!」
「お、おい落ち着け戦兎!何があった!」
「はいはい落ち着きなさい。細かい事を気にしてるとハゲるわよ」
「えマジで?」
「おい反応すんな実年齢二十六歳」
と、そこで士道たちも押し黙った。暗転した画面に、別の映像が映し出されていたのである。
______狭い路地裏に、狂三と…………
「ッ!これ、今日俺が会った!」
………今日の朝、戦兎が出会った白のライダーが映し出されていた。
そしてその次の瞬間、狂三がバッと手を広げると、足元の影が狂三に纏わりつき、ドレスを形成していった。
頭部のヘッドドレスに、胴部をきつく締め上げるコルセット。装飾の多いフリルとレースのスカート。それら全てが、深い闇を思わせる黒と、血のように赤い光膜で彩られる。そして最後に、左右不均等に髪が括られた。
「霊、装…………」
士道が、呆然と呟いた。
狂三が、右手を頭上に掲げる。すると影が再び彼女の身体を這い上がり、右手に収束していった。
だが、そこで。狂三の身体が宙を舞った。
「え_______?」
「これは…………!」
士道よりも冷静な戦兎が、画面をよく見る。
そこにはエネルギーを纏った拳で、狂三の腹を打ち穿いた白のライダーの姿があった。
そのまま、ライダーは腰のドライバーを操作し、狂三へと近づく。
そこからは、一瞬だった。
苦しがる狂三の前まで来た瞬間、ライダーは狂三の髪を無造作に掴み、そのまま宙に放り投げ、エネルギーの篭った回し蹴りをその場で、地に足を付かせたまま繰り出した。
その次に、さして広くもない路地に、真っ赤な血が撒かれた。
そして、地面に仰向けに横たわり、完全に動かなくなった狂三の首に、ライダーが手に持った光刃を突き立てる。
一切の抵抗も許さず。
狂三の命は、摘み取られた。
「………ッ!!」
瞬間、手元の机を、ガン!と叩く戦兎の姿があった。その顔には、許しがたい蛮行を見たような、怒りの表情が見えた。
「………戦兎?」
「いや………何でもない」
しかし士道が声を掛けると、戦兎は落ち着いた様子で画面に視線を戻した。
「………問題なのは、ここからよ」
琴里が言うと、画面に変化があった。
白のライダーがドライバーに手を伸ばし、そこから何か小さな物体を取り出す。
瞬間、ライダーのアーマーが粒子となり、その素顔が見えた。
「え………………?」
その、素顔を見て。
「なっ……………!」
士道は、戦兎は、万丈は。
「どういう、ことだ…………?」
戦慄した。
そこに映った、白のライダーは_______士道の妹の、
◆
一方、ほぼ同時刻。
「ええと………何か、ご用ですの?わたくし、まだお昼を食べていないのですけれど………」
狂三は、折紙に呼び出されていた。困惑した様子で、折紙に聞いてくる。
「あなたは、なぜ生きているの」
「え…………?」
しかし折紙はそんな様子に表情をピクリとも動かさず、応じた。
「_____あなたは昨日、殺されたはず」
そう。昨日折紙は確かに、この目で見た。
狂三が真那の変身したライダー_____デモリッシュによって、腹を穿たれ四肢を断たれ頭を潰され、完全に絶命されたのを。
真那としては不服だったそうだが、燎子の命令によって万が一仕留め損なった場合に備え、折紙含む数名のAST隊員が固めていたのである。
そして狂三は折紙の質問に、ぴくりと眉の端を動かした。
そして。
「_____ああ、ああ。あなた。あなた。昨日真那さんと一緒にいらっしゃった方ですの」
「…………!」
狂三がそう言った瞬間、折紙はその場から飛び退いた。
ただ、根拠の無い得体の知れない何かが、脳内に危険信号を発してきたのだ。
「きひひ、ひひ。駄ァ目ですわよぅ。逃げようとしても無駄ですわ」
その様子に、狂三が、笑う。
見やると、いつの間にか折紙の足元には狂三の影が伸び、そこから白く細い二本の手が、生えていた。
しかし影はじわじわと面積を増やしながら、どんどん手の数を増やし、壁まで登って、折紙を拘束した。
「くっ…………」
もがこうとするも、拘束した細い腕は折紙を離そうとしない。
「きひっ、きひひひひ」
数刻前の狂三からは想像できないような歪んだ笑みを貼り付け、聞いているだけで腹の底から冷たくなるような声を発しながら。
「昨日はお世話になりましたわね。きちんと片付けて下さいまして?わたくしのカ・ラ・ダ」
狂三が折紙に近づく。
一瞬、前髪に隠された左目が見えた。おおよそ生物器官とは思えない、無機質な金色と、十二の文字と二つの針。まるで_____時計のようにも見える。
「わたくしのことを知りながら、一人で接触を図ろうとは、少々迂闊なのではございませんこと?しかもわざわざ、人目のつかない場所まで用意して下さって」
「…………っ」
確かにその通りだ。昨日の幕切れを見たからか分からないが、心の何処かに油断があった。いずれにせよ、折紙のミスである。
「あなた、は………何が、目的」
喉を締め付けられながら、声を発する。
「うふふ、一度学校というものに通ってみたかった、というのも嘘ではございませんよ?でも、そうですわね。目的は_____」
そして一拍置いてから、息がかかるくらいの距離まで顔を近づけてくる。
「_____士道さん、ですわね」
「_______ッ!!」
士道の名を出されて、折紙は声を詰まらせた。
その様子を見て、狂三が堪らなそうに笑みを濃くする。
「彼は素敵ですわ。彼は最高ですわ。彼は本当に____
_____戦慄。まさか精霊が、特定の一個人を狙って現れるなんて、予想だにしていなかった。
しかし、そこで疑問が生まれた。
狂三が発した、彼の
「…………っ」
その思考は、狂三によって妨害された。
「折紙さん。鳶一、折紙さん。あなたも、とても、
頰を上気させ、息遣いを荒くしながら、左手を胸元に這わせ、右手で足をなぞって、スカートの中をまさぐるようにしてくる。
と、その時。
『おぉいおい、そこらへんにしときなって。これ以上は良い子に見せられないぜぇ〜?』
まるで全身にへばりつくかのような、声が聞こえた。
「あぁらあら、そう言うあなたこそ、わたくしと折紙さんの逢瀬を邪魔するなんて無粋ではありまして?」
『おぉってこりゃあ失礼。でも、このままだとR18展開になりそうだったしなぁ』
「あなた、は……っ」
折紙は少し霞んだ目で、その男を見つめた。
まるでサソリのような意匠の、奇妙な男だ。まるで、仮面ライダーのような______
『お楽しみってなぁ最後に取っとくもんだろぉ?清楚なイメージが台無しだぜぇ?』
「うふふ、それもそうですわね」
狂三が唇に手を当てながら笑うと、折紙の拘束が解かれた。
狂三は大仰に首を振ると、折紙の首筋に口づけを残し、去っていった。
「あなたは、士道さんのあとに。_____もっと、もっと美味しくなっていてください」
『おぉーおぉー怖いねぇ〜、女ってなぁ。んじゃ、嬢ちゃんも元気でなぁ?バァイナラ〜』
そのまま狂三は去って行き、男も、まるで溶けるかのようにその場からいなくなった。
「………っ、けほっ、けほっ」
床にうずくまるような格好で咳き込む。
廊下に広がった影は、すっかりいなくなっていた。
「士、道_____」
何故かは知らないが、狂三は、士道を狙っている。
そして、あの謎の男。あいつも、恐らく。
早く本部に知らせないといけない。例えそうしたとしても、信じてもらえるかは分からなかった。
_____もしその時は、私が、士道を守らなければ。
折紙は奥歯を噛み締め、くっと拳を握った。
どうでしたか?
ちなみに朝の戦闘では、戦兎も真那も互いの正体を分かっていない状態です。真那サイドは声にノイズが走ったような加工音声になっているので。
ちなみに折紙は士道が仮面ライダーと知ってません。四糸乃戦では遠い位置にいたので。
さて、何気にクラウン出したの久しぶりな気がする。ただ、お陰で謎が多くなった気がする。
今回だいぶ勢いで書いたので、例のごとく誤字があるかもしれませんが、ご容赦ください。
それでは次回、『第24話 トリニティデート始めました!』を、お楽しみに!
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