桐生「ちょちょちょちょっと!前回に引き続きなんかおかしくねその台本!誰だ用意した奴………っておい琴里!何キョドッてんだよ!お前か?お前だな!」
万丈「まーた騒がしくしてんなー。士道、台本貸してくれ」
士道「ん?ほい」
万丈「おほん!えー、その後、第三の精霊と邂逅した、五河士道と愉快な仲間たちは、彼女をデレさせるためデートを敢行する………」
桐生「なんか主役まで変わってる気がするし!主人公は俺だから!………つか士道、お前デートどうなったの?主に十香と鳶一」
士道「…………あ」
「っつ………こんなの、ただのルーチンワークでしかねーですのに」
どうにか
色々と余計な事を話してしまった気がする。これでは折紙の事も言えない。
だが、何故だろうか。士道には、聞いて欲しかったのだ。
「_____随分とヒステリックだったねぇ、真那クン?」
ふと、近くの茂みから声が聞こえ、白衣の男が姿を現す。
「……覗き見とは、あんまりいい趣味じゃねーですね」
「いやぁ。たまたま近くを寄ったら、君がいたものでね」
「たまたま、ですか………よくも言えたもんですね」
真那にドライバーを与えた張本人たる、神大神魏だ。長い髪を揺らしながら、悪戯じみた笑みを浮かべる。
「それで………何しに来やがったんです?」
「いや、ここに来たのはただの私用さ。ちょっと君に聞きたいことがあってね」
「聞きたい事?」
「感想さ。どうだい?私のリバースドライバーの感想は」
先ほどとは一転して、無邪気な子供のような笑みを浮かべながら聞いてくる。
いっそ清々しさすら感じるその笑みに、真那は嘆息しながらも答えた。そうでもしないと、このまま小一時間は居座るのが目に見えているからである。
「……まあ、それについちゃ本当にすげーです。これが量産されたら、そりゃー恐ろしいことになりやがるでしょうね。変身した後の鈍痛は、たまに傷でいやがりますが」
「ふむふむ。変身後の副作用が問題アリ、と。これは今後の課題だな。ありがとう!お礼にこれを。私からの餞別だ」
そう言って針魏が取り出したのは、変身に使用する【ウルフオルタナティブフルボトル】と、もう一本、見慣れないボトルだった。
真那が変身に使用するこのオルタナティブフルボトルは、出力が高いことがメリットなのだが、欠点として、何度も使用すると壊れてしまうのだ。真那が今使用しているのも三本目。今貰った分を含めると通算四個目である。
「……こっちは分かりますけど、このボトルは?」
オルタナティブボトルは分かる。丁度そろそろ壊れる頃合いかと思っていたからだ。
もう一本手渡されたのは、何か黒く濁った、まるでライオンのような意匠の奇妙なボトルだった。
「今度、ドライバーに挿して使ってみたまえ。きっと、君の望む物が手に入るさ。じゃあ、私はこれで」
そう笑いながら言って、針魏は去って行った。
残された真那はそのボトルをしばらく見つめると、ポケットにしまった。
と、その時。
「ん?」
真那は、先程士道が倒れていた地面の下に不思議なものを見つけた。
「これは………インカム、ですかね?」
それは、耳に装着するタイプの小型通信機のようだった。
「何でこんなものが……」
真那は首を捻ると、何とはなしにそれを右耳に近づけてみた。すると、
『_____士道!応答しなさい、士道!一旦フラクシナスで拾うわ!移動して!』
「………………っ?」
どこかで聞いたような声が、真那の兄の名を呼んでいるのが聞こえてきた。
◆
「……………そんな、事があったのか」
「………………」
近くの公園のベンチまで来た後、士道は戦兎達に先ほど起きた出来事を話した。
狂三が人を殺した事。
真那が狂三を殺した事。
頭の中では、分かっていたはずだった。
それこそ十香や折紙だって、極論すればそんな関係だった事に。
ただ、十香にその気がなくて、折紙にその力がなかっただけで。
一歩間違えれば、士道はもっと早くにその光景を見ていた可能性すらあった。
「戦兎、万丈。俺………心の何処かで、甘えてたんだ。口先で危険だって言いながら、精霊はみんないい奴に違いないって。………ASTに、精霊を殺せる力なんて無いって、都合の良いように思ってた。いざとなったら、自分が戦えばいいって、思い込んでた…………ッ!」
再び拳に力を込める。
きっと、それは自身がライダーになった事も、少なからず影響しているのだろう。
精霊が殺されるようなことになったら、自分が代わりに戦えばいいって。自分はその力を手に入れたんだと、そう思ってた。
それがどうだ。
いざ目の前でその光景を目にした時。自分は、動こうとすら思えなかったではないか。
結局自分は、与えれられた玩具を自慢げに掲げていただけの、子供に過ぎなかったのだろうか。
すると次の瞬間。
士道達は、奇妙な浮遊感に包まれるのを感じた。
「………っ、これは_____」
覚えがある。フラクシナスの転送装置だ。士道達の視界は、人影の無い公園の一角から、フラクシナスの内部へと変貌していた。
「_____無事で何よりよ」
と、士道の背に、そんな声が掛けられる。振り向くと、そこには真紅の軍服を着た琴里が立っていた。
「………琴里」
「まったく。何度も呼びかけたのだけれど?」
言われて士道は右耳に手をやり、力なくつぶやいた。
「………インカム、ねえや」
そこには、いつも任務中に付けていたインカムが無かった。どこかに落としてしまったらしい。______恐らくは、真那によって吹き飛ばされた時に外れたのだろう。
「………あれ、十香と折紙は?」
「十香は後でフラクシナスで拾って、簡単に事情を説明するわ。折紙はまあ____明日学校でフォローすれば、大丈夫でしょう」
「そ、か………」
士道は力無く答えると、そのまま歩み始めた。
「あ、ちょっと、士道!」
「……悪いな。ちょっと、一人にさせてくれ」
士道は制止の声を振り切ると、フラクシナスの自室へと向かった。
◆
天宮市の何処かにある、建物の中。
『……お前さん、あのボトルを嬢ちゃんに渡したのか?』
「あれ、気付いちゃった?」
とある研究室で、二人の男______マッドクラウンと、神大針魏が話していた。クラウンは机に腰かけ、針魏は悪戯じみた笑みを浮かべながら、手元で何かを作っていた。
「いやあ、目の前に可能性があったら、試したくなるのが研究者ってものでしょ。もしかして、怒った?」
『いぃや。寧ろ感謝してるんだぜぇ?これで
愉快そうに笑いながら、クラウンは机から降りた。その様子を見て、針魏も笑いながら手元のパソコンを操作し、とあるデータを引っ張り出してくる。
そして愉悦を滲ませながら、神妙そうな声で呟いた。
「………ハザードレベル
『……研究者ってなぁ神サマは信じねえタチと聞いたがな』
「ハッハッハ!とんでもない。寧ろこの私ほど神を信じる者はいないさ!この才能がそれを示しているのだからね!」
突如今までと打って変わって、高いテンションで笑う針魏。しかしクラウンはさして気にする様子もなく、パソコンのディスプレイに目を向けていた。
『いやぁ〜、俺が言えたことじゃあねえが………こいつぁ、相当マッドってヤツだぜぇ?』
「ハッハ!君がそれを言うとはね。しかし………可能性とは試すからこそ可能性なんだ。手を伸ばさなきゃただの机上の空論でしかないよ」
そう言って一通り笑い終わった針魏は、また椅子に座りなおして作業を再開した。
そこには無数の、武器の意匠が凝らされたボトルが置かれていた。
◆
「………入るぞ、士道」
「……戦兎か」
あれから数十分後。
戦兎は士道の部屋へと出向いた。何時ぞやのように部屋の明かりは落とされていなかったが、士道は仮眠用のベッドに腰掛け、明らかに意気消沈した様子で項垂れていた。
戦兎はそれを見やると、一つ溜息をついて士道の隣に腰掛けた。
「……なあ、戦兎」
「ん?」
士道は、戦兎の肩に声をかけた。
「俺たちのしてる事って_____本当に正しい事なのかな」
士道のその言葉に、戦兎は視線を向けた。
「………どう言う事だ?」
「……俺は、精霊が………自分の意思とは関係無く空間震を起こしちまう存在が、理不尽に襲われるのが許せなくて………だから、ラタトスクに協力してるし、こうして、仮面ライダーにもなった」
話しながら視線を落とし、手に持ったスピリットフルボトルを見つめる。
「………ああ、そうだな」
「でも……狂三は、人を______」
人を、殺していた。空間震ではなく、自分の手で。自分の意思で。
それがどうしようもなく怖くて、悲しくて、恐ろしかった。
「何が言いたいんだよ」
「もういい…………俺には………無理なんだ…………」
士道は_____ついにその言葉を吐き出した。
「今まで上手く行ってたのは、十香達がいいやつで、戦兎達がいてくれたからなんだよ…………。ライダーになったって、俺はあの時何も出来なかった。狂三が殺されて、真那が狂三を殺すのを、ただ黙って見てるしか出来なかった。………結局、俺には、何にも______」
と、そこで士道は言葉を止めた。_____正確には、止めさせられた。
戦兎が鋭い視線を向けながら、士道の襟首を掴んでいたからだ。
「え、あ………」
「何がいいんだよ…………いいわけねえだろッ!」
士道が呆然としていると、戦兎が顔をしかめて言った。その後に続いた言葉は、士道だけではなく、自身に向けられた言葉にも思えた。
「お前がそんな腑抜けて諦めてたんじゃ、狂三はもっと人を殺し続ける!真那はもっと自分の心を殺し続ける!それでいいのか……?それでいいと思ってんのかッ!お前は
「…………っ!」
言われて、士道はごくりと唾液を飲み込んだ。
そうだ。それこそが、士道がライダーになった_____いや、もっと根本的な物。士道が、精霊を救いたいと思った理由、そのものだ。
「そう、だ………俺は………」
「なら決まってんだろ……!?救うんだろ、あいつらをッ!狂三の殺戮を止める事が!真那の心を取り戻すことが!お前のやるべき事なんじゃないのか!?お前にしか出来ない事なんじゃないのかッ!?」
「………………ッ!!」
その言葉の全てが、速やかに脳髄に染み渡って行った。
そう。殺しても死なない狂三が人を殺し、その度に真那が狂三を殺す。
その度に_____真那の、狂三の、誰かの笑顔が、消えていくのだろう。誰かの悲しみが、増えていくのだろう。
そして、それはこれからもずっと繰り返されるのだろう。_____狂三が、精霊である限り。
そして、それを止めることができるのは、士道しかいなかった。
「………そうだな」
言って、ふらふらする足取りで先に進んでいく。
「……答えは、出たかよ」
「………ああ。これ以上、狂三に人は殺させない。真那の心を、奪わせない。そしてそれは………俺がやるしかないんだ。……それが、仮面ライダー、ってものだろ?」
「……もう、大丈夫みてえだな」
戦兎は少し笑ってそう言うと、立ち上がって共に部屋を出た。
そして、その向こう側で。
「……………お兄ちゃん」
琴里が、不安げに士道を見つめていたのを、士道自身は知らない。
◆
その日の夜。士道はリビングのソファで横になり、ぐるぐると思案を巡らせていた。
「……………」
白熱灯の輝きをぼんやりと眺めながら、細く長い息を吐き出す。
恐らく、明日も狂三は登校してくるだろう。
そうしたならば、後は仕事の再開だ。
好感度を上げて、キスをして、力を封印する。
それで全てが解決だ。ライダーの力も使う事なく、全てが終わる。
狂三が人を殺さなくなるし、真那も狂三を殺す必要がなくなる。唯一のハッピーエンドだ。
_____しかし。
「……………」
重りが乗っているかように、全身が重く気怠い。
上に持ち上げたスピリットボトルを見つめながら、士道は陰鬱な空気を肺から絞り出した。
とそこで、廊下の向こうから玄関が開く音が聞こえてくる。
「ん?」
士道は重い身体を持ち上げ、玄関まで向かおうとした。
するとリビングの扉が開き、十香がおずおずと出てきた。
「十香………?」
「……うむ。入っていいか?」
「あ、ああ。もちろん」
既に家に入っているだろう、というツッコミはひとまず置いておいて、士道は十香をリビングに入るよう促した。
すると十香は士道の元まで駆け寄り、ソファと士道の間に入り込んだ。
「何してんだ………?」
「いいから、少し黙っていろ」
十香はそう言うと、士道の身体に手を回し、後方からぎゅうー、と抱きしめてきた。
「と、十香?い、一体何を……」
「………ん。寂しい時や怖い時は、こうするのがいいとテレビで言っていた。………確か、『おかあさまといっしょ』、という番組だったかな」
「…………」
比類なきまでに幼児番組だった。思わず苦笑する。
だけど、その言は正しかったようだ。確かに、少し落ち着いた気がする。
不意に、十香が唇を開いた。
「………令音とセントにな、話を聞いた」
「話、って」
「狂三と、真那の話だ。今日、士道はどこか浮かない様子をしていたからな。理由を聞いたら、話してくれた」
「………っ、そう、か」
「………シドー。私がこの家に厄介になっていた時言った事を覚えているか?」
「え……?」
士道が訊き返すと、十香が続けてきた。
「私と同じような精霊が現れた時は………きっと救ってやって欲しい」
「ああ_____」
士道は小さく頷いた。それは、よく覚えている。
その言葉に、士道は応と答えた。その気持ちに偽りは無いし、その決意は今も変わらない。
「でも、狂三は」
「_____変わらない。私と」
「え?」
十香が士道の背中に顔を押し付けてくる。
「………私にはシドーが、セントが、リューガがいてくれた。シドーが私を救ってくれた。シドーやセント達が、私に生きる喜びを与えてくれた。_____でも、狂三には誰もいなかった。私よりもずっと長く、誰からも手を差し伸べられずにいたのだ」
痛いくらいに、十香が腕に力を入れる。
「もしシドー達がいなくて、私が二ヶ月前のあの状態のまま、ずっとずっと殺意と敵意だけに晒され続けていたなら_____私は、狂三のようになっていたかもしれない」
「………それは」
言いかけて、言葉を止めた。
今から二ヶ月前の十香は、今では想像もつかない程に荒んでいた。絶望し、憔悴し、疲弊し、心が摩滅する寸前だった。
「本当に、もう救いようがない程に狂三が悪い精霊だったなら、私がシドーを守る。シドーが誰かの笑顔を守るなら、私は_____シドーの笑顔を守るだけだ」
「え………?」
「だから………シドー。お願いだ。狂三のことを、もう一度見てやってくれ。狂三に、もう、人を殺させないでくれ。これ以上、心を擦り減らさせないでくれ………」
「…………っ」
言われて。士道は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
十香が、続けて言う。
「………真那の、事もだ。シドー。…………
「え?」
急に、十香がそんな話をする。突拍子もなくて、つい間抜けな声が出てしまった。
「きなこパンを食べたり、シドーの手料理を食べたり……いや、きっと何もしなくても美味しい。何をしなくても、生きるって事は、それだけで凄く嬉しくて、楽しい事なのだ。ああやって心を押し殺して、擦り減らしていたら………不味くなってしまう。それを、分かって欲しいのだ」
「……………っ」
______ああ、ようやく理解した。
士道は、狂三が人を殺すのがたまらなく嫌だった。
真那が、ライダーの力を振るって、狂三を殺す事が絶対に許容出来なかった。
その輪廻を終わらせる為に、狂三を止めるのだと、そう決意していた。
だけど、それには重要なピースが一つ欠けていたのだ。
「………ありがとう、十香」
「む………ぬ?な、何故だ?私は礼を言われるような事は_____」
そう。
狂三にキスをして力を封印しないといけないのに、士道が考えていたのは狂三に殺される人や、真那の事ばかりだったのだ。
あまりにも凄惨な光景を見てしまったがために、『狂三を救う』という当たり前のことが、頭から抜け落ちていたのだ。
確かに、狂三は何人もの人間を殺した。それは、決して許されることではない。
でも。
十香の力を封印するとき。士道は、心から十香を救おうと思っていた。
仮面ライダーに初めて変身した時。士道は、十香達の笑顔を守ろうと心から思った。
だから、士道は動き出せた。
確かに士道は、人智を超えた回復力と、精霊の力を封印できる力を持っている。
だが、戦兎のような頭脳を持っているわけでもなければ、万丈のような体格と筋力を持ったわけでもない普通の男子高校生が、血反吐を吐きながらも手を伸ばすことができたのは、その一心があったからなのだ。
狂三を、救う。
殺しの連鎖と輪廻に囚われた少女を、救い出す。
そして_____真那も。
自らの妹だというあの少女にも、もう狂三は殺させない。これ以上、誤った力の使い方をさせない。あれ以上、心を摩滅させはしない。
妄想だろうが。空想だろうが構わない。
それが出来ると信じなければ、手を伸ばすことなどできないからだ。
そしてそれを現実にするのが______仮面ライダーという、ヒーローのやるべき事なのだ。
戦兎達の背中を少しでも追いかけた士道が見つけた、それは一つの答えだった。
どうでしたか?
今回は他作品の個人的名セリフを織り交ぜてみました。個人的な見解ですが、十香とアギトの翔一くんって、結構似通った点があると思うんですよね。前向きな所とか、ポジティブさとか。いや、二つとも同じようなものか。
それはそれとして、ライダータイム龍騎とシノビ、完結しましたね!
龍騎については…………すごく面白かったんですが、あれをテレビ版のラスト以降の話だと思うと、少し複雑な気分です。描写的に、既にライダーバトルで死んだ世界線の死人のライダー達が集められた感じではありましたが。あと木村ベルデ、とても良いキャラでした。あのキャラを見れただけでも観た価値はあったと思います。
シノビはあれ、もう本気で2022年に本編やるつもりじゃないですか?あんなにラストで続きを匂わせる終わり方して。期待するなって方が無理ですよ!東映さんお願いですからやって下さい!まあやるにしても流石にスーツとかベルトとか諸々変更になるとは思いますが。
あと今後のスピンオフでクイズとキカイ、欲を言えばディケイドをやる事を期待しておきます。………役者さんの負担が…………!
それでは次回、『第27話 チクタク進む危険信号』、をお楽しみに。
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