デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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初投稿です。よろしくお願いしまーす!!


第一章 十香デッドマッチ
第1話 桐生アナザーワールド


『いい加減気付いたらどうだ?桐生戦兎は、地球にとって存在すべき人間ではなかったという事に!』

 

『お前は、俺に創られた偽りのヒーローだったんだよォッ!』

 

『今、どんな顔してるか分かるか………っ?()()()()()してんだよ………俺の顔…………』

 

『……一度しか言わねえぞ。誰がなんと言おうと………お前は俺たちのヒーローだ。だから、生きてくれ………っ!』

 

『俺がこの力を正しい事に使ってこれたのは、掛け替えのない仲間がいたからだッ!』

 

『みんなが、桐生戦兎を、仮面ライダービルドを創ってくれたんだッ!』

 

『愛と平和を胸に生きていける世界を創る!その為に、この力を使うッ!!』

 

『破壊こそ力だァッ!お前の正義など……俺が壊してやるゥッ!』

 

『思ってるさ…………俺と万丈は……!最っ高の………ッ!コンビなんだよぉッ!』

 

『勝利の法則は…………決まったッ!』

 

『これで最後だぁッ!』

 

『この俺が滅びるだとォッ!?そんなことがあってたまるかァッ!人間共がァァァァッ!!!』

 

 

 

 

『万丈おぉぉぉぉぉぉーーッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

野兎が跳ねる草原に、一人の男が倒れている。

まるで長い眠りについているように、顔はどこか穏やかそうにしていた。

 

「ん…………ん?」

 

重い瞼をこじ開ける。頰に柔らかい草の感覚が当たった。どうやら整地されていない草原のようだ。

そよ風に吹かれ、緑の匂いが鼻腔をくすぐる。

ところどころ痛む身体を起こし、辺りを見渡した。

 

どこまでも続く青い空。

 

綿飴のような白い雲。

 

そこまでは、俺の見慣れた光景。唯一違うのは、そこに世界すら両断するような、()()()()がない事。

 

()()()()()()()が、無い…………」

 

日本を三つに分断していた、あの忌まわしい壁が、完全に無くなっていた。

 

 

 

 

 

デート・ア・ビルド(DATE・A・BUILD)

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めた俺_____『桐生戦兎』は、ひとまず街へ出てみる事にした。あの場所にいても仕方無かったし、何よりまず先に確認すべきことがあった。

 

「本当にここは…………スカイウォールの無い、俺が創った『新世界』なのか?」

 

自分たちの運命を狂わせた、火星を滅ぼし、月を消滅させ、あまつさえ地球にも手をかけようとした、『地球外生命体エボルト』のいない新世界を創造(ビルド)する。戦兎の、()の、仲間の、そして父である葛城忍の願いが、叶ったかどうか。

 

街を見渡すと、そこには楽しそうに語らう親子の姿や、腕を組んで歩く恋人達の姿。そして人々が皆、それぞれの生活を営んでいた。

 

「本当に、上手くいったのか………?父さんの、夢見た世界が…………」

 

________そうみたいだね……………

 

 

頭から突如響く、()()()()()声に頷き、戦兎は語り掛ける。

 

「ああ…………本当に、実現したんだ………」

 

戦兎は嬉しそうに、自分の内側にいるもう一人の自分…………『葛城巧(かつらぎたくみ)』に話す。

 

 

_______だが、新世界にいる彼らは、前とは違う十年を過ごした事になる。君の知っている()()じゃない。

 

 

新世界を創造する_____それは、運命の分岐点となった十年前から、世界諸共全てをやり直すという事。

 

戦兎とその仲間との思い出も、戦いも。世界の人たちの記憶も。

何もかも、全てが綺麗さっぱり消える。スカイウォールの無かった世界線の記憶に、全てすり替わる。

 

そしてそこに、『桐生戦兎』という存在は、無い。

 

それはかつての世界で、葛城巧という一人の天才科学者の記憶を消し、佐藤太郎という一人の売れないバンドメンバーの顔を与えた、あの世界だからこそ生まれ出た存在。

 

____全ては、作り物だった。名前も、容姿も。何もかも。

 

 

 

_______本来なら、『桐生戦兎』は新世界に存在しない。こうして創造主として生き残っても………君を知る者は誰もいないだろう。

 

 

 

あくまでも淡々と、事実を語る葛城。

その言葉に、少し目を伏せてしまう。

 

作り物だった空っぽの器に、仲間達が『桐生戦兎』という中身を、溢れるほどに詰め込んでくれた。

そしてその事を覚えているのは、今この世界で自分だけ。

自分一人だけが、古い世界に取り残された。そんな気がした。

 

 

 

_______そろそろお別れだ。

 

 

 

そう言った途端。

葛城巧の意識が、薄れていくような感覚があった。だが、それは当たり前の事だった。

世界をやり直したということはつまり、『葛城巧』の存在も、本来あるべき形へと戻る。

即ち、新世界で過ごした、葛城巧の肉体へと、その魂は帰る。ただ、それだけだ。

 

 

_______楽しかったよ………………

 

 

 

その言葉を最後に。

 

桐生戦兎の中から、『葛城巧』という存在は消えて無くなった。

 

「……………」

 

一瞬目を伏せ、そして、上を向いた。

確かに、寂しくないといえば嘘になる。だが、後悔はしていない。

 

こうして、平和な世界を創ることができた。ヒーローなんて必要無い、望んだ世界に。

恐らく、エボルトとの戦いで死んでいった仲間も、生き返っているだろう。

 

 

仮面ライダーグリス_____猿渡一海(さわたりかずみ)

 

仮面ライダーローグ_____氷室幻徳(ひむろげんとく)

 

そして…………仮面ライダークローズ、万丈龍我(ばんじょうりゅうが)

 

 

「生きていてくれたなら…………それでいい」

 

こうして俺の気分は、最っ高、とまではいかなくても、少なくとも良かった。そう、良い筈…………だったんだ。

 

 

 

 

「最っ悪だ………………」

 

近くの公園のベンチで、頭を抱えながら最悪の気分に嫌々浸る。

 

それは自分の事を覚えている人がいなかったからでも、仲間に覚えてもらってなかったことでも、まだ万丈と再会できてない事でもなかった。

 

「ここ…………新世界じゃないのか?」

 

暗くなりながら、どうにか纏めた思考の中で、その事実を受け入れるしか無かった。

 

本来であれば新世界は、元の世界でエボルトが出現した十年前を分岐点として、『エボルトが存在せず地球にやってこない、平和な世界』を創造するはずだった。

 

つまり、少なくとも十年前までは、戦兎が元いた世界と、時間の流れ方、起きた事象などはすべて同じでなければならない。

 

が、《ビルドフォン》を使って調べても、当時既に議員であった氷室(ひむろ)首相や、その息子である氷室幻徳___げんさんの名前、東都以外の二都の首相である御堂首相や多治見首相の名前が一つ足りとも見つけられなかったのだ。

 

難波重工も見つけられなかったし、宇宙飛行士だった石動惣一(いするぎそういち)の名前、加えて______『葛城忍』、父さんの名前も、見つけることができなかったのだ。

 

「その上______何なんだよこれェ!?」

 

ベンチから立ち上がって、湖の水面まで寄り、堪らず大声を上げる。周囲から何だという視線が送られたが、そんな事気にしてられなかった。

そこにはいつも見慣れた桐生戦兎の姿_____には違いないが、以前よりも若々しい、有り体に言って仕舞えば高校生かそこら辺の歳まで容姿が若返っていたのだ。

 

当初は新世界を創造したことによる影響とも思ったが、この状況ではそれも違うだろう。

 

そして、何より決定的なのが、ネットで見つけたこのワードだ。

 

 

「『空間震(くうかんしん)』………一番の謎が、これだよ」

 

ネットを見てみても、見ない記事はないんじゃないかというくらい取り上げられる、この空間震(くうかんしん)というワード。

 

発生条件、発生時期不明、被害規模予想不可の建物爆発、振動現象、物体消失、etc………といった突発的広域災害の総称が、この空間震らしい。一部では空間の地震とも呼ばれるらしい。

それが発生した爆心地、もとい震源地には巨大なクレーターが作られ、範囲内の建物などはもれなく全てが消失。周辺も爆発によって甚大な被害をもたらす、まさに災厄の被害である。

 

これだけでもどこのSF小説かと、思わず笑ってしまいそうな内容である。

が、これがあらゆる情報で記載されている以上、これは真実なのであろう。事実街を歩いている間にも、家電量販店のテレビなどにこの空間震の警告のような映像が流れていた。

そして次に挙げられることが、この世界が戦兎の創造した新世界とは決定的に違うと、断言できる根拠だ。

 

「初めて空間震が観測されたのが…………今から、()()()前って………」

 

十年どころではない。

もしそんなものが戦兎たちの世界で起きていたとしたら、パンドラボックスやエボルトどころではない。下手すればスカイウォール出現よりも甚大な被害が出ていた可能性すらある。が、当然戦兎はそんな言葉や震災を一度として元の世界で聞いたことはないし、ましてや三十年前など最早なんの冗談かと思ってしまうほどだ。三十年前ときたらスカイウォールどころか、火星の有人着陸の『か』の字も無いような時期だ。

 

もう認めるしかない。俺こと桐生戦兎は、創造した新世界ではなく、どこか別の世界へ飛ばされてしまったのだと。最上魁星(もがみかいせい)のエニグマ、エグゼイドの件もあったので、ありえない話では無いが……………。

 

「万丈の行方も分からねえし………ああもうっ!やめだやめ!どうせ万丈の事だし、そう簡単にはくたばってない筈だ!」

 

思考を切り替え、ひとまず状況を分析することにする。まだ多少混乱しているが、さっきよりは思考がまとまった。

 

取り敢えず目下の問題は金銭だろう。持っている金は元の世界での通貨だったドルクだけだし、仕事をしようにもこの若返った身なりではどうにもならない。

となると、どこか手近な場所でアルバイトでもして稼ぐしかないか。身分証明書の問題は、最悪前と同じく記憶喪失で通せばなんとかなるだろうし。

 

寝床は………しばらく野宿だろうな、と悲しい気分になりながら、ベンチを立って移動しようとした時。

 

 

 

_______ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ________!

 

 

 

どこからともなく、不快なサイレンが響き渡った。地震や津波の警報とも違う、聞きなれない音。

 

「な、何だ?」

 

思わず周囲を呆然と見渡してしまう。サイレンに驚いたのか、鳥が何羽か電線か飛び立っていくのが見えた。

 

『_______これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予想されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難してください。繰り返します______』

 

 

_____これが、空間震!?

 

辺りを見ると、近くにいた人達が我先にと一目散に走るのが見えた。さらに言えば、付近の建物が地面に収納され、巨大な鉄板によって封鎖された。

 

「最っっっ悪だ……………っ!まだ状況も掴めてねえってのに……!」

 

思わず頭を抱えるが、ぼやいていてもしょうがない。近くの人に付いて行って、シェルターへ避難すべきだろう。と、結論を付け、戦兎は走る人達を追ってシェルターへと走った。

 

と、そんな戦兎の前を、

 

 

「…………んで、馬鹿正直に残ってやがんだよ…………っ!」

 

 

と、叫びながら、明らかにシェルターのある方向とは真逆に走る少年が横切った。どこか、鬼気迫るような表情で。

 

「お、おいっ!」

 

「っ!?」

 

思わず呼び止める。空間震がどんなものかはネットの情報でしか分からなかったが、それでも発生したらどんな被害が出るかは容易に想像が付く。嘘だとは信じたかったが、情報にはユーラシア大陸のど真ん中を一夜にして削り取ったとすら書かれている。そんな中シェルターから遠ざかるのは自殺行為だ。

 

「何してんだ!そっちは危険だぞ!」

 

声を張り上げながら、少年の方へと向かう。

すると少年は、今にも枯れそうな声で、

 

「妹がっ、まだあっちにいるんだっ………あいつ、避難しろって言ったのに、馬鹿正直に……………っ!」

 

はぁはぁ、と息も絶え絶えに少年は言う。どうやら妹を探しているようだ。本来ならここから今すぐ逃げるべきなんだろうが…………こうして聞いてしまった以上、見過ごすわけにもいかない。

 

「っ…………あぁ〜!最っっっ悪だっ!」

 

「?」

 

「俺も探すの手伝ってやるから、早く行くぞ!」

 

「えっ?」

 

少年が面食らったような顔になる。

 

「その様子を見るに、妹さんのことが大事なんだろ?だったら早く見つけなきゃ駄目だろ!」

 

「そ、それはそうだけど…………いいのか?」

 

「ああ!ほら、早く行くぞ!」

 

半ば強引に会話を切り上げ、さっきまでとは逆の進路を走る。

 

「あ、あのっ!ありがとうっ!俺、五河士道(いつかしどう)って言うんだ。君の名前はっ?」

 

桐生戦兎(きりゅうせんと)だっ!ほら、行くぞっ!」

 

とまあ、行き当たりばったりではあったものの。

 

 

ここに、桐生戦兎(きりゅうせんと)と、五河士道(いつかしどう)の、本来交わるはずの無かった二人が、出会った瞬間であった。

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ…………桐生、見つかったか!?」

 

「いや、駄目だ。赤髪にツインテールの女子中学生なんて、この辺にはいなかったぞ」

 

探し回ること数分。避難警報が出てから既にかなりの時間が経過しているが、未だに五河士道の妹______彼が言うには、五河琴里(いつかことり)という名前の中学生など、どこにも見当たらない。

赤い髪という特徴ならばすぐに見つかりそうなものだし、向こうだって迷子だったら動いているはずだ。

 

「さっきのサイレンからだいぶ時間も経ってる。もうシェルターに避難したんじゃないか?」

 

「いや、でも携帯のGPSにはまだ…………」

 

と、続きを言おうとした途中、五河がふと言葉を止めた。

 

「?どうした、五河」

 

「いや…………なんだ、あれ」

「《あれ》?」

 

五河が指差した方向を見る。すると、上空に三つか四つの、何か人影のようなものが見えた。

 

あれはなんだ?と、疑問が浮かぶよりも先に、変化が起きた。

 

「うわ…………っ!?」

 

「なんだ………ッ!?」

 

二人揃って、思わず目を覆った。

 

進行方向の街並みが、突如として眩い光に包まれたのだ。ついで、耳をつんざくような爆音と、凄まじい衝撃波が二人を襲う。

 

「んな………っ!?」

 

流石にエボルトの攻撃まではいかないものの、生身の戦兎にとっては台風のような風圧だ。ハザードレベルの補正があるとはいえ、バランスを崩し後方に転げてしまう。

 

「ってえ…………おい五河、大丈夫か!?」

 

「あ、ああ。何とか…………ッ」

 

まだ少しチカチカする目を擦りながら、服を叩きつつ身を起こす。

 

瞬間。

 

「「………………は____________?」」

 

二人の声が重なった。

 

今まで目の前にあった街並みが、目を瞑ったこの一瞬の間に______

 

跡形もなく、()()()()()いたのだから。

 

「な、なんだよ、なんだってんだよ、これは………ッ」

 

「これが…………空間震、なの、か?」

 

呆然と呟いた疑問の声に、応えるのはいない。

 

比喩でも冗談でもなく。

 

そこは隕石が落ちたような、というよりは地面が丸ごと、まるでスプーンか何かで抉り取られたように、すり鉢状に浅く削り取られていた。

 

戦兎にとってそれは、エボルトのブラックホールを想起させるような惨状であった。かつての世界で見た光景と重なり、フラッシュバックする。

 

そしてクレーターの中心部に、何やら金属の塊のような物が、聳えていた。

 

「なんだ………?」

 

「椅子………いや、玉座、みたいだな。でもなんで………」

 

遠目からではよく見えないが、中世の王宮とかにありそうな玉座らしきフォルムの物が、爆心地に聳えていたのだ。それだけでも充分に異常なのだが、何より目を引いたのが、そこに佇む______

 

 

一人の、ドレスを纏った少女だった。

 

 

 

 




デート・ア・ビルド

「お前も、私を殺しに来たのか…………」

突如現れた謎の少女!

「なんで、スマッシュが………!?」

スマッシュが現れた!?

「変身!」

戦兎、変身!

第2話 四月十日のムーンサルト



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