万丈「おいややこしいぞその説明!さっぱりわかんねえよ!」
桐生「いやだって俺もどう説明すりゃいいかわかんねえよ!いまあらすじ紹介の原稿渡されて戸惑ってるんだから!」
十香「セント!狂三がやられたとはどういう事なのだ!?」
桐生「だから俺に聞くなっての!ほら!知らない間に真那が大変なことになってっから!尺も無いし、早く本編に行って!第29話、どうぞ!」
『さぁ________行け、ファングオーバースマッシュ』
『_______Y_____s_______ir_______』
クラウンのその呼び声に、聞き取れない声で呼応した真那_____ファングオーバースマッシュは、そのままビルド達へと襲いかかった。
「ぐあッ!おい、どうしたんだ真那ッ!!」
ビルドが懸命に訴えかけるも、真那は何の反応も示さない。ただ牙を振るい、爪を振るい、持てる破壊の力を全て相手へとぶつけていた。
『さてと。あとはこいつに任せて、俺はお暇しようかねぇ』
するとクラウンが、間の抜けた様子で銃を取り出した。
「ッ、待て!」
『待たない☆バァーイナラァ』
そう言うと、クラウンはまたも溶けるようにいなくなった。
士道が歯噛みするも、その後ろでは依然、ビルドとクローズが、ファングオーバースマッシュを止めようと必死だった。
「やめろ、真那ッ!!」
士道が堪らずそこへ飛び出す。リビルドライバーを装着し、アライブガルーダとスピリットボトルを握る。
【Get Up!ALIVE-SPIRIT! Are You Ready?】
「変身ッ!」
【Dead Or ALIVE-SPIRIT!!イェーイッ!!】
アライブへの変身が完了すると同時に、ファングオーバースマッシュを羽交い締めにする。
「やめろ!どうしちまったんだ真那ッ!おい、真那ッ!!」
『_______A_______d_____te』
しかし目の前のファングオーバースマッシュは、短く断片的な単語を口にするだけだった。
アライブの拘束を解除し、すぐさま連続攻撃を決めてくる。
「ぐはぁッ!!ぐぅっ…………」
扉の方向へ吹き飛ばされ、地面に膝をつく。
と、そこでアライブの後方から、バン!と扉を開け放つ音が響き______
「シドー!」
「_____士道」
士道を呼ぶ声が二つ、屋上に現れた。
「十香、折紙………!?」
振り向き、名を呼ぶ。
なぜ結界内で動けたのかと思ったが、十香は霊装を、折紙はワイヤリングスーツを身に纏っていた。
そしてアライブの姿を見た瞬間、折紙が怪訝そうな表情を浮かべる。
「………士道?どうして、あなたが…………」
折紙は士道がライダーになっている事に、戸惑っているようだった。しかし、それも無理からぬだろう。折紙は士道の変身した場面を見ておらず、アライブに関しても要注意対象となった、三人目のライダーという認識でしかなかった。
そのライダーに、自らが大事と思っている士道が変身していたら、混乱もするだろう。
「話は後だ………とにかく、今は………」
と、士道が言ったところで、二人とも目の前にいたファングオーバースマッシュと、交戦状態にあるビルドとクローズに気がついたようだった。
「な、なんなのだアレは………」
「アンノウン……………なら」
十香は戸惑いながら眉をひそめ、折紙はスマッシュ目掛けて攻撃を仕掛けようとした。
それをアライブが、慌てて制止する。
「ッ!やめろ折紙!あれは真那なんだ!!」
「っ………どういう事?」
折紙が聞き返した後、すぐに別の笑い声が聞こえてくる。
「あら、あら、あら。皆さんお揃いで」
先程から静観をしていた狂三だ。十香と折紙が、ほぼ同時に口を開く。
「狂三…………!いきなり逃げたと思ったら、こんなところにいたか!」
「あなたの行動は不可解。一体何の真似」
「えっ?」
アライブはマスクの下で眉をひそめた。一体二人は何を言っているのだ。
「狂三が邪魔をしに現れたのだが………先ほどの爆発の後、どこかへ逃げていったのだ」
「それはおかしい。時崎狂三は、私と交戦していた」
「何だと?」
二人が噛み合っていない様子で話をする。しかしすぐに首を振ると、二人揃って狂三に視線を向けた。
「……残念だ、狂三。だがお前がシドー達に危害を加えようとする以上、容赦はしないぞ」
「一部にだけ同意する」
狂三が、またも楽しげに身体を回転させた。
「うふふ、ふふ。ああ、ああ。怖いですわ、恐ろしいですわ。こんなにもか弱いわたくしを相手に、こんな多勢で襲いかかろうだなんて」
微塵もそんな事は思っていない様子で、くすくす、くすくすと笑う。
「シドー!ここは私たちに任せろ!」
「あなたは早く、崇宮真那を」
「お前ら………でも……」
「いいから早くッ!」
十香が強く念押しする。その声に後押しされ、アライブは立ち上がり、翻った。
「すまない………頼むッ!」
アライブはそのまま、暴れ続けるファングオーバースマッシュへと向かった。
「あら、あら。士道さんが行ってしまわれましたか。残念ですわ」
「大人しく観念しろ!狂三!」
「これ以上抵抗するなら、容赦なく破壊する」
十香が
「あらあら、怖いですわね______でも、今日はわたくしも、本気ですの」
そう言うと、狂三は後ろを向いた。
「______ねえ、そうでしょう?
『な…………っ!?』
その瞬間、屋上を覆っていた狂三の影から_______無数の狂三が、姿を現した。
◆
「はぁぁぁーーッ!!」
ファングオーバースマッシュの元へと戻り、交戦を続けるアライブ、ビルド、クローズ。
ビルドは【ニンジャガトリング】フォームとなり、四コマ忍法刀とホークガトリンガーによる近遠距離攻撃を仕掛けている。
クローズはビートクローザーで攻撃し、アライブは肉弾戦で戦っていた。
だが。
『_______A________!!!』
ファングオーバースマッシュの、右拳がビルドの胸を打ち据え。
脚がクローズの腹を蹴り。
左爪がアライブの顔面を引っ掻いた。
「ぐあッ!!」
「ガハッ………!」
「ぐッ………!」
三人揃って、距離を取ってしまう。そしてクローズはその一撃が決定打となってしまったのか、壁に激突して変身が解除されてしまった。
「クッ、ソ……………」
「万丈!くぅっ………!」
ビルドが万丈を見やるも、立て続けに繰り出される攻撃に、倒れた万丈を気遣う余裕がない。攻撃を仕掛けようにも相手からの追撃が激しく、防御か回避に徹する他手段が無くなっていたのだ。
「オーリャァーーッ!!」
そこで、アライブから大声が出た。
見ると、オーバースマッシュの背中を狙って、炎のエネルギーを纏った拳が繰り出されようとしている。今のうちに、少しでもダメージを与えようとしているのだろう。
あと数センチの距離まで、その拳が届きそうになった、その時。
『____兄______様________ッ!』
「ッ!」
アライブの脳裏に、助けを乞うかのような、真那の悲痛な声が響いた。
その瞬間、アライブの拳が止まる。
『______Ga______a______』
その隙に、オーバースマッシュがビルドの防御をかわし、後ろにいたアライブを殴り付ける。
「ガハッ………!」
そのまま後方へと吹き飛ばされるアライブ。
「どう、して…………」
そんな呟きが、ふと漏れる。
本当は、分かっているのだ。
______自分に、アレを倒すことはできないと。
何せ相手は姿形が変わったとはいえ、真那だ。
自分を兄と慕い、悲しすぎる宿命を背負わされてしまった、救わなければならない相手なのだ。
そんな相手に、必殺の拳を放つなど______アライブには、士道には出来なかった。
◆
「士道!くそっ…………」
ビルドは先の攻撃によって吹き飛ばされたものの、なんとか立ち上がり、オーバースマッシュへと攻撃を続ける。
しかしその攻撃を相手は物ともせず、そのまま淡々と攻撃を続ける。
「グハァッ!ぐッ…………」
鳩尾に攻撃をくらいかけるも、どうにか防ぐ。しかし衝撃までは殺しきれず、アーマー越しに多大な負荷が戦兎の肉体を襲う。
「くそっ、どうすればいい…………」
攻撃を受け止めながら、ビルドは必死に考える。この状況を打開する策を。
相手は真那なのだから、殺してはならない。ならば殺さずに、動きを止める方法。
______動きを、止める?
「!…………そういえば、さっきからの攻撃といい、淡々としている感じといい…………」
______似ている。ハザードフォームと。
ハザードフォーム。
ビルドドライバーに機能拡張用強化アイテム、【ハザードトリガー】を挿し込むことで変身可能になる、ビルドの形態の一つだ。
そのスペックはラビットタンクスパークリングをも上回り、能力の高さには息を呑むものがある。
しかし、そのフォームには致命的な欠点が一つ、備わっていた。
それはトリガーに装填された万能強化剤、【プログレスヴェイパー】が装着者の身体を侵食し、戦闘開始後一定時間が経過することで、脳が負担に耐えきれなくなり自我の一切を失うという物だ。
その状態になった瞬間、目に映るもの全てを敵とみなし、周りに居るもの全てを破壊し尽くす殺戮マシーンと化してしまうのだ。
事実その機能によって戦兎はかつての仲間、猿渡一海をカシラと慕っていた_____青羽を殺めてしまっている。
二度とその悲劇を生まぬよう、その後戦兎は制御装置を開発することになるのだが、ここで本題となるのは前述にあったデメリット、【
今の真那の暴走ぶりは、まさしくハザードフォームの暴走状態そのものと言っても過言では無い。目に映るもの全てを破壊対象と認識し、ただ淡々と敵を倒す感じになっている。
そしてハザードトリガーは、本体を攻撃することでその動きを停止することができた。つまり______
「そうかッ!______士道、万丈ッ!!」
一つの結論に至ったビルドは、二人に聞こえるように大声を出す。
「
そう。ビルドが出した結論。
それは本体を狙うのでは無く、その腰に巻かれたままのドライバーを狙うと言うものだった。
もし仮に今の状態がドライバー_____もっと言うなら、先ほど装填したあの黒いボトルによるものだとしたら、ドライバー本体を破壊すれば、その機能を停止できるのではと踏んだのである。
無論、リスクが無いわけではない。しかし今の状態では、それ以外に正解が考えられなかった。
アライブと万丈も納得したように、立ち上がって頷いた。
「分かった!」
【ALIVE LASTER!!】
【SLASH VERSION!!】
アライブはそう返事をし、専用武器であるアライブラスターをブレードモードで呼び出す。そのままオーバースマッシュへと進んでいった。
そして、万丈は______
「………分かった。戦兎ォッ!!」
威勢良くビルドを呼びかけると万丈は、懐から
「これ、使わせて貰うぞッ!」
「ッ!………ああッ!!」
ビルドからの返事が返ってくると、万丈はソレを、腰に巻きつけた。
それは、戦兎が先日修理を終えた、万丈のもう一つのドライバー_____【スクラッシュドライバー】だった。
今日、家を出る前に戦兎から託されたものである。かつての戦いによって破損状態だったものを、戦兎が修理したものだ。
そして万丈は取り出したゼリーパック状のアイテム_____【ドラゴンスクラッシュゼリー】を、スクラッシュドライバーへとセットした。
【ドラゴンジュゥエリィー!!】
やたら威勢のいい音とともに、蒸気のような待機音声が鳴り響く。万丈はファイティングポーズを取ると、勢いよくドライバーの【アクティベイトレンチ】を押し下げた。
「変身ッ!!」
レンチが押されると同時に、容器が
【潰れるゥッ!流れるゥッ!!溢れ出るゥッ!!!】
音声とともに、内部成分が【CXCエンハンスメントスーツ】を生成する。
そして、頭部からゼリー状の物質、【ヴァリュアブルゼリー】が
【ドラゴン・イン・クロォーズチャァージィィッ!!ブルルルルゥゥゥラァァァアッ!!!】
溢れ出た成分が、スーツの上から半透明な水色のアーマーである【CZCヴァリュアブルチェストアーマー】、ゼリーパック状の肩アーマーである【ドラゴパックショルダー】などの装甲、【クロスアーマー】を生成した。
「今の俺は______負ける気がしねぇッ!!」
______仮面ライダークローズチャージ。
クローズの強化形態たるライダーが、再び降り立った瞬間だった。
【ツインブレイカァーッ!】
変身を終えたクローズチャージは、右手に専用武器であるツインブレイカーを出現させ、ファングオーバースマッシュへと向かっていった。
「オラ!オリャァッ!!」
『______G______a______!?』
先程までとは戦闘力の違うクローズに、僅かに戸惑う様子を見せるオーバースマッシュ。そんな様子に構わず、クローズはドライバーを狙いながらも動きを止めるため、オーバースマッシュへと攻撃を仕掛けていった。
「はぁッ!」
「オリャァッ!」
そこで、ビルドとアライブも加勢に入る。攻撃は防がれるも、ビルドとアライブは必死に声を出した。
「待ってろ…………ッ!」
「真那………っ!絶対に助け出す!」
『ッ!
オーバースマッシュは先ほどとは違う、どこか懇願するかのような声を上げ、ビルドとアライブの攻撃を退けた。
しかし。
「ッ、今だ、万丈!」
ビルドが声をかけると同時に、クローズチャージがツインブレイカーにクローズドラゴンを装填する。
【レディグォォッ!!】
音声と共に、クローズチャージの後ろにクローズドラゴン・ブレイズが出現する。そのエネルギーを溜めたまま、クローズチャージはツインブレイカーの【レイジングパイル】を突き出した。
【レェェェッツブゥレイクゥゥッ!!】
「オーーーーリャァァァアアッ!!」
『ッ!_______aa______aaa!!!』
クローズドラゴン・ブレイズが、オーバースマッシュめがけて襲いかかる。それをもろに受けたオーバースマッシュだが、まだドライバーは破壊されていなかった。
「くそ、頼む!戦兎、士道!」
「おう!」
「任せろ!」
クローズチャージの声に応え、ビルドとアライブが出る。
【BLAST VERSION!!】
アライブはアライブラスターをブレード形態からブラスター形態へと変形させ、スロットにスピリットフルボトルを装填した。
【FEVER TIME!!】
そしてブラスターの銃身に搭載されたギター弦状のパーツ、【ビートストリンガー】を思いっきり弾き鳴らす。弾き鳴らすと、まるで本物のエレキギターのように、軽快な音が聞こえる。
【ONE BEAT!TWO BEAT!!THREE BEAT!!!】
三回弾き鳴らすと、アライブの後ろにはエネルギー体のアライブガルーダ・ライジングが現れた。
その間にビルドはドリルクラッシャーにハリネズミフルボトルを装填し、ブレードモードに差し替えた。
待機音が流れ、二人揃ってドライバーの一点を狙い構える。
そして。
【HERMONICS BURST!!】
【VOLTEC BREAK!!】
アライブラスターの銃口から、炎雷のエネルギー弾と共にアライブガルーダ・ライジングが。
ドリルクラッシャーからは一点を研ぎ澄ました針のようなエネルギーが、リバースドライバーへと向かった。
「ハァァァーーッ!!」
「ダァァァーーッ!!」
『aaaaaaa_____aa___a_______!!!』
二発放たれたエネルギーは、消耗したオーバースマッシュのドライバーに撃たれ、そして_______
『aaaaa_________あっ……………」
______ドライバーは破壊され、オーバースマッシュの肉体が元に戻っていく。
そして、姿が元に戻った、まごう事なき士道の妹_____崇宮真那の姿が、そこにあった。
「真那ッ!」
変身を解除し、急いで士道達が駆け寄る。
真那は顔中に汗を滲ませながら、苦しげに笑った。
「ご迷惑………かけ、ちまいましたね。兄、様………戦兎さん………万丈さん…………助けて、くれ、て…………」
そう言うと、真那は眠ったように目を閉じた。
一瞬死んだか、とも思ってしまったが、胸が上下している。どうやら眠りについてしまったようだ。
「真那…………そうだ、十香達は!」
真那の身体を横たわらせ、十香達の元へ向かおうとした、その時。
「な______」
「嘘、だろ…………」
「なんだよ、あれは……………」
士道たちは、戦慄した。顔が、酷く歪む。
しかし、他の誰がこの光景を見ても、同じように歪んでいただろう。
______何故なら、そこでは大量の狂三が、十香達に襲いかかっていたのだから。
◆
「あらあらあら」 「驚きまして?」
「さあ、どうしますのォ?」 「あはははははははッ」
「いひひひひ」 「美味しそうですわねえ」
「さあ、さあ」 「遊びましょう?」
「如何でして?」 「ふふっ」 「ひひひ」
無数の狂三が、思い思いと笑いを、声を発する。
「これは、なんだ………っ」
「くっ、これは…………」
無数の狂三に囲まれた十香と折紙が、困惑の声を発する。
「十香!」
「ッ!シドー、セント、リューガッ!」
「くそっ、どうなってんだよ戦兎!」
「お、俺に聞くなよっ!」
士道達がその場へと向かうも、十香達の元までの道は、無数の狂三が阻んでいて向かえそうもない。
「あらあら、士道さん達_____うふふ、ふふ。如何でして?美しいでしょう?これはわたくしの過去。わたくしの履歴。様々な時間軸のわたくしの姿達ですわ」
「な______」
「うふふ____とはいえあくまでこの
「______っ」
その場の全員が、息を詰まらせた。
十香も、折紙も、士道も、戦兎も、万丈も。
狂三が、くるりと回って笑う。
「さあ______終わりに、いたしましょう」
その声とともに、無数の狂三が十香を、折紙を、士道達を襲いかかる。
「十香______!」
「くそ、こうなったら____うぉわっ!!」
「ちょっ、何しやがるっ……離れろってうわッ!?」
士道達は声をあげ、思わずドライバーに手を伸ばしそうになるも、もはやどうにもならなかった。
無数の狂三によって、交戦していた十香と折紙はとっくに抑えられていた。
士道や戦兎、万丈もドライバーを取り上げられ、左右から取り囲まれて両手両足を拘束される。なんとか抵抗を試みたが、数に差があり過ぎた。
そうなってしまったら、もう士道達に為す術はなかった。時間にして、オーバースマッシュとの戦闘終了から僅かに三分と経たず、士道達は制圧された。
「十香____折紙!」
両腕を取られ、地面に押さえつけられながら、士道はなんとか言葉を発した。
「くっ、くそ………」
「この、離せ、よっ…………!!」
近くには、戦兎や万丈、十香たちも取り押さえられている。全員身体の至る所に傷を作り、苦しげに呼吸を漏らしていた。ただでさえ戦兎達は先程苦しい戦いを終えたばかりなのだ。その状態ではまともに脱出もできない。
「うふふ、ふふ」
その中にあって、狂三は悠然と微笑みながら、銃を握って士道に近づいてきた。
「ああ、ああ、長かったですわ。途中邪魔も入りましたが____ようやく、士道さんをいただくことができますのね」
「や………っ、やめろ狂三!シドーに近づくな!」
「………っ、放して____!」
「士道………ぐっ………!」
「やめろぉッ!狂三………ガフッ………!」
十香達がもがくも、拘束から逃れることは叶わなかった。
と、そこで狂三はなにかを思い出したように眉をピクリと動かした。
「ふふ、そうですわ」
言って、左手に銃を預け、右手を掲げる。
すると先ほどと同じように、空間震警報が街に鳴り響いた。
「な………っ、狂三、お前何を_____」
「うふふ、ふふ。先ほどできなかったことをして差し上げますわ。まだ皆さん目覚めておられないでしょうし_____うふふ、きっとたくさん死んでしまいますわねえ」
「や、やめろ………ッ!そんなことしやがったら俺、舌噛んで_____ふぐ…………ッ!?」
そう言いかけた瞬間、士道を押さえつけていた狂三達が、左右から士道の口に指を入れ、顎と舌を押さえつけた。
「舌を………どうするんですの?」
狂三が笑い、右手を握る。すると先ほどのように、耳障りな高音が響き始めた。
「ふふ、ひひひ、ひひひひひひひひッ!!さぁ、もう二度とわたくしを誑かせないよう、絶望を刻み込んで差し上げますわ!」
「
「くそッ…………!!!」
「てめえ、待ちやがれ…………ッ!!」
狂三はそんな懇願を無視し、右手を振り下ろした。
狂三が、笑う。まるで、死神のように。
「あ__________ッははははははははははははははははははははははは________ッ!!!」
______だが。
「あ_____はァ?」
数秒の後、その笑い声は疑問符に取って代わった。
狂三が、怪訝そうに辺りを見回す。
それもそうだろう。確かに、空が震えたような嫌な音が続いた。近くで爆弾が爆発したかのように、空間も震えた。
だが____それだけだったのだ。
「…………?」
「ん…………?」
「…あ?………おい、何も起きてねーぞー?」
その場にいた全員が、眉をひそめた。
来禅高校の周辺には、空間震が起きた跡など見受けられず______いつもと変わらぬ、街並みが広がっていた。
「これは………どう言うことですの?」
狂三が不審そうに眉を歪める。すると。
「____知らなかった?空間震はね、発生と同時に同規模の空間の揺らぎをぶつけることで相殺できるのよ」
頭上から、凛とした声が響いた。
「っ、何者ですの?」
狂三が頰をピクリと動かし、右手に銃を握り直して顔を上に向ける。
そして士道達も同様に顔を見上げ______揃って目を見開いた。
空が、赤い。
屋上の、さらに上。士道達の頭上に、巨大な炎の塊が浮遊していた。
そして_____その炎の中に、一人の少女の姿があった。
和装のような格好をした女の子である。風になびいている袂は半ばから炎と同化しているように揺らめき、腕や腰に絡みつく炎の帯は、さながら天女の羽衣のようだった。
そしてその頭部には、角が二本生えている。その様はお姫様のようであり______そして、鬼のようでもあった。
だが、士道達が目を奪われた理由は、それだけではなかった。
「どういう………」
「事、だよ……………」
「
そう。士道の妹にして、《ラタトスク》司令官。
炎を纏った少女の姿は______五河琴里にしか見えなかったのである。
琴里が、徐々に高度を下げ、士道の方にちらりと視線を落とし、なにかを取り出す。
「______
「え…………?」
琴里の言った意味がわからず、眉をひそめる。
「………っ、あ、れは_____」
と、何故だろうか。折紙が、士道も見たことがないくらい顔を驚愕に染めていた。
そして、琴里が取り出したもの_____士道が持っていたもう一本のボトル、灰色のボトルを取り出し、振った。
______パキッ、パキッ、パキッ……………
まるで燻った火種のような音が、徐々に徐々に大きくなっていく。そして振られたボトルもまた、何かヒビが入ったようになっていく。
______ボウッ、ボウッ、ボゥゥウウ_______
そのまま、ヒビは大きくなっていき_______ボトルの表面を覆っていた、灰色を割った。
そしてそこから現れたのは、真紅のボトルだった。
燃え盛る炎のような真紅の色の、大砲と斧が描かれたボトル。
琴里はそのボトルの、水晶のキャップを回すと、ボトルが突如光った。
「____焦がせ、【
ボトルから聞こえたと思しき絵 声とともに、琴里がその名を口にする。
すると再び彼女の周囲に炎が生まれ、巨大な棍のような円柱形を形作った。
そして、琴里がその棍を手に取った瞬間、その側部から真っ赤な刃が出現する。
それは、あまりに大きな戦斧だった。まるで、先の真紅のボトルに刻まれていた物のような。
士道達が言葉を失っていると、琴里がその斧を軽々と振り、狂三に向けた。
「さあ_____私たちの
どうでしたか?
この作品は基本原作準拠なので、今回で第三章 狂三デモリッシュ編は終了となります。
そして次回から第四章の琴里編です!そして次章は、かなりオリ要素多目になると思います。予定は未定ですが(保険)
と言うのも、原作通りの内容で進めてしまうとどうしても戦兎達を主役として絡めづらくなってしまうのです。ここ大事。
まあどうなるかはまだ分かりませんが、楽しみにしていてください!
それでは『第四章 琴里アヴェンジャー』 『第30話 地獄のファイアは燃え尽きない』、をお楽しみに!
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