デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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今回はあらすじ紹介無しです。
楽しみにしてくれてる人がいたら、ごめんなさい。
手抜きだー!と言って低評価を押そうとしているそこのあなた、まあ待ちなさい。いや待ってくださいお願いします。
まあ前回の最後がアレで、今回から新章なので、あらすじ紹介無しのスタンスにしました。

次回からちゃんとやりますので、あしからず。


第四章 琴里アヴェンジャー
第30話 地獄のファイアは燃え尽きない


来禅高校の屋上は、影に覆われていた。

 

何の比喩もなく、時刻は十七時でまだ周囲は明るいと言うのに、士道達のいるその空間だけが、隔絶されたように薄暗かったのである。

そして今、士道と戦兎、万丈達は、幾人もの少女_____狂三に手足を拘束され、地べたに押さえつけられているのだ。口の中にも指を詰められ、顎と舌までも拘束されている。

 

明らかに異様な光景。

 

同じ顔をした少女が幾人も、十香を、折紙を、士道を、戦兎を、万丈を拘束している。士道の位置からは見えないが、真那も恐らく狂三の壁の向こうで倒れたままのはずである。

 

______しかし。

 

「ぁ………」

 

その状況の中で、士道達は全く別のものに目を奪われていた。

 

身体の周囲に焔を纏わせ、空に立つ少女。

 

天女の羽衣のような、火焔のように燃える和装。

 

側頭部から伸びた二本の角。

 

そしてその、精霊としか思えない姿をした少女の名を、士道達は、よく知っていた。

 

(ほお)()…………」

 

「なんで、琴里が精霊に………」

 

「一体、何がどうなってやがんだよ…………!?」

 

五河琴里。

士道が何年もの歳月を共に過ごした少女であり、ラタトスクの司令官たる少女。

 

そしてその姿を見た時_______士道は、頭の中に電流が流れるような感覚を覚えた。

 

______頭の片隅で覚えてる。俺は、前にも一度見た事がある__________

 

「……どォなたですのォ?」

 

と、そんな士道の思考を遮るように、不意に前方から声が響いた。

巨大な時計を背にして、両手に銃を握った狂三が、不機嫌そうに琴里を睨んでいた。

 

「邪魔をしないでいただきませんこと?折角いいところでしたのに」

 

「悪いけれど、そういうわけにもいかないわね。あなたは少しやりすぎたわ。_____跪きなさい、愛のお仕置きタイムよ」

 

右手に出現させた巨大な戦斧を肩に担ぐようにしてから、琴里が鼻を鳴らす。

狂三はしばしキョトンと目を丸くしながらも、すぐに堪え切れないといった様子で哄笑を漏らした。

 

「く、くひひひ、ひひひひひひひひッ…………面白い方ですわねぇ。お仕置き、ですの?あなたが、わたくしをォ?」

 

「ええ。お尻ペンペンされたくなかったら、分身体と天使を収めて大人しくしなさい」

 

琴里が言うと、狂三はさらに可笑しそうに笑った。

 

「ひひひ、ひひ。随分とご自分の力に自信がお有りのようですけれど、過信は身を滅ぼしますわよォ?私の刻々帝(ザフキエル)は____」

 

「御託はいいから早く来なさい黒豚」

 

琴里が面倒くさそうに言うと、笑っていた狂三の頰がピクリと動いた。同時に屋上にいた無数の狂三が、一斉に琴里を睨んでくる。

そして同時に、前方から苦悶の声が響いてきた。どうやら十香と折紙が延髄を打たれて気絶させられたらしい。

 

「上等ですわ。一瞬で喰らい尽くして______差し上げましてよォッ!」

 

狂三が喉を震わせる。瞬間、屋上を埋め尽くしていた狂三の分身体が一斉に空高く跳躍して琴里に迫った。

 

圧倒的な数の暴力。それはただの突進とか突撃とは違う、無慈悲な機銃掃射や散弾銃の連射のようにも思えた。

 

「_______ふん」

 

しかし琴里は鬱陶しげに鼻を鳴らすと、担いでいた戦斧をゆっくりと持ち上げた。

漆黒の棍の先端に空気を焦がすような焔が蟠り、刃を形作っている。それは琴里の動作に合わせて赤い軌跡を残しながら、さらにその輝きを増した。

 

 

「_______【灼爛殲鬼(カマエル)】」

 

 

そして狂三の大群が目の前に迫った瞬間、琴里は静かに言葉を発し、焔の戦斧を凄まじい勢いで前方に振り抜いた。風を薙ぐ音が士道のところにまで響いてくる。

 

「あッはははははは!無ゥ駄ですわよゥ!」

 

それに応ずるように、狂三も哄笑を上げた。

如何に戦斧が大きくとも、全方位からの攻撃には対応できない。前方の数体を屠ったとて、一瞬後にはその他の狂三に噛みつかれることは容易に想像できた。

だが。

 

「きひひ_____ひィ………?」

 

不意に、狂三の笑みが歪んだ。

琴里が灼爛殲鬼(カマエル)を振り抜いた瞬間、その先端の焔の刃が揺らめき_____同時に琴里に迫っていた無数の狂三の首が、腕が、上半身が、一斉に宙に踊った。

 

『ぁ、ぇ…………?』

 

幾人もの狂三が切り離された自分の部品を見つめ、呆然と声を発する。次の瞬間にはそれら全てが炎に包まれ、地に触れる前に燃え尽きた。

 

そして琴里が無言で視線を士道や戦兎達の方へと戻し、もう一度灼爛殲鬼(カマエル)を振る。すると焔が蛇のようにのたうちまわり、士道に群がっていた狂三達の身体を切り裂いていった。凄まじい断末魔と共に、身体にかかっていた負荷が消え去る。

 

「っつ、かはっ、かはっ………」

 

「やっと解放された……」

 

士道と戦兎、万丈がその場で立ち上がり、士道が幾度か咳き込む。

 

「って熱あっ!?ちょっ、熱いんすけど!熱っつって!?」

 

すると、万丈が狂三の身体を包んでいた炎に当たってしまい、その場でジタバタする。見ると、士道達の制服にも火の粉がかかっていた。

 

「うおっ、熱っつ………」

 

「おーい万丈、大丈夫かー?」

 

「熱っつぅ………おい士道、何がどうなってんだよ?あれ、琴里だよな?なんであんな炎に包まれてんだよ」

 

「いや………俺にも、何が何だか…………」

 

と、そんな士道達の前に、琴里が空からゆっくりと降り立った。灼爛殲鬼(カマエル)を構えて、士道達を守るように立つ。

 

「おい琴里、これは一体……」

 

「大人しくしてなさい、士道。可能なら狂三の隙をついて三人でこの場から逃げて。今のあなたは_____簡単に死んじゃうんだから」

 

「は…………?それってどういう………」

 

しかし士道の問いは、前方から響いた狂三の声でかき消えた。

 

「ひひ、ひひひひひひひひ………ッ!やるじゃあありませんの。でェもォ、まさかこれで終わりだなんて思ってはおられませんわよねえ?」

 

言って、狂三が二丁の銃を構える。狂三にはまだ______時を操る刻々帝(ザフキエル)がある。

 

「琴里、気をつけろ!あれは…………!」

 

「ふふッ、士道さん。無粋ですわ_____よッ!」

 

言うと狂三は、刻々帝(ザフキエル)の『Ⅰ』の文字盤の影を装填した短銃で、自身のこめかみを撃った。

瞬間、狂三の姿が搔き消える。と同時に、琴里が灼爛殲鬼(カマエル)を頭上にやった。すぐに、その位置から甲高い音ともに灼爛殲鬼(カマエル)が震える。

先刻の戦いで見た光景だ。刻々帝(ザフキエル)一の弾(アレフ)】。撃った対象の動きを早める弾である。

凄まじい速度で狂三が琴里に猛攻撃を仕掛けてくる。しかし琴里の灼爛殲鬼(カマエル)は焔の刃を俊敏に蠢かせると、その目にも留まらぬ攻撃を悉く防いだ。

 

「あッははははは!素晴らしいですわ!素晴らしいですわ!さすがは天使を顕現させた精霊______ッ!高鳴りますわ、高鳴りますわッ!」

 

「ふん、鬱陶しいわね。レディなら少しは落ち着きを持ったらどう?」

 

棍を薙ぐように振り抜き、琴里が言う。空中に躍った狂三は不安定な姿勢のままケタケタ笑うと、銃を構えた。

 

「では、ご要望に応えして淑やかに殺らせていただくとしましょう。刻々帝(ザフキエル)______【七の弾(ザイン)】!」

 

すると刻々帝(ザフキエル)の『Ⅶ』から影が飛び出し、狂三の銃口に吸い込まれた。

そして狂三が引き金を引くのと同時に、漆黒の弾丸が琴里に迫った。

 

「ッ!琴里、それは_____!」

 

士道の制止を聞かず、琴里がその凄まじい速度の弾丸を灼爛殲鬼(カマエル)で引き落とした。

しかし、防ごうが落とそうが関係ない。なぜならその弾は、対象に触れた時点で_______

 

「ふふ、あははははははははッ!」

 

狂三の笑い声とともに、琴里の身体がピクリとも動かなくなった。

手足どころか和装や髪の毛の先、戦斧に纏っていた焔もその場で静止している。

 

「ふふふッ、如何に強大な力を持っていようと、止めて仕舞えば無意味ですわよねェ?」

 

狂三が言うと同時に、周囲にいた無数の狂三が一斉に銃を構え、琴里に向かって引き金を引いた。

 

「やめ_______」

 

士道の制止が間に合うはずもなく、狂三の放った弾丸が無慈悲に琴里へと吸い込まれていき、弾痕が刻まれていく。

 

「それでは、ごきげんよう」

 

そして最後に、【七の弾(ザイン)】を放った狂三が琴里の前に立ち、琴里の眉間へ何の逡巡も無く引き金を引いた。

次の瞬間、琴里の身体が動き出す。

 

「…………ッ!」

 

琴里の全身の傷から一斉に血が噴き出し、眉間に撃たれた最後の一撃によって、反応する暇すら与えられずに体をその場に倒した。

 

「琴里………ッ!」

 

「てっめぇ…………ッ!!」

 

「…………ッ!」

 

士道が駆け寄ろうとし、万丈が憤った声を出す。戦兎も歯を食いしばり怒りを堪えていた。

 

「うふふ、ふふふふふふッ、ああ、ああ、終わってしまいましたわ。折角見えた強敵でしたのに。無情ですわ。無常ですわ」

 

狂三が芝居掛かった調子でくるくると回りながら、可笑しそうに嗤う。

 

「さあ、さあ、今度こそ士道さんの番ですわ。わたくしに_______」

 

と、そこで狂三は言葉を止め、訝しげに琴里の方を見つめた。士道達もまた、琴里に対して目を見開いていた。

 

「これは_____」

 

呆然と声を漏らす。琴里の身体に刻まれた無数の弾痕から焔が噴き出し、全身を舐めるように広がっていたのである。

 

「これ、士道の______」

 

「まさか………」

 

その光景を、戦兎と万丈は見たことがあった。そして士道は、体感したことがあった。

 

「……まったく、派手にやってくれたわね」

 

琴里が事も無げに身を起こす。そこには傷も、血痕も、霊装の綻びも一切が無くなっていた。今しがた攻撃を受けたことが嘘のようにすら思えてしまう。

 

「な_____」

 

流石にこれには驚いたらしい。狂三が一歩後ずさった。

 

「私としては、このままあなたが恐れおののいて戦意を喪失してくれるのがベストなのだけれど」

 

「………ふん、戯れないでくださいまし______【一の弾(アレフ)】!」

 

狂三は叫ぶと、両手の銃の引き金を連続で引き絞った。屋上に残った狂三達に弾が吸い込まれる。その数十発の【一の弾(アレフ)】を撃ったのち、狂三は自らに銃口を押し当て引き金を引いた。

 

「ッ、まずい。万丈、士道!」

 

戦兎が危険を察知したように声をあげ、二人を連れて後方へと飛びのく。

 

「おい、何が____」

 

士道がその声を最後まで吐くことはできなかった。

何せ、恐ろしい速度で何人もの狂三達が、琴里を囲うようにびゅんびゅんと飛び回り、拳打を、脚蹴を、弾丸を浴びせかけていたからだ。

 

「切り裂け______灼爛殲鬼(カマエル)ッ!」

 

琴里が吼えると、灼爛殲鬼(カマエル)はその刃を何倍にも膨れ上がらせ、さらに広範囲へと伸ばした。

次々と無数の狂三が焔の刃に薙がれ、裂かれ、貫かれ。その体を灰と化された。狂三本体も攻撃がヒットしたらしく、あちこちに火傷のような切り傷のような、奇妙な傷跡が出来ていた。

 

「一体、なんなんですの………あなたはァッ!」

 

「通りすがりの精霊よ_____覚えときなさい………。とでも言えばいいかしら?」

 

琴里がそう言うや、狂三がすぐに短銃を掲げ叫ぶ。

 

刻々帝(ザフキエル)______【四の弾(ダレット)】!」

 

刻々帝(ザフキエル)の『Ⅳ』の文字盤から狂三の銃へ影が放たれ、収束する。

そして狂三が自らに向かって引き金を引くと、時間が巻き戻ったように、狂三の身体の傷が消える。

しかし同時に、琴里の周囲を飛び交っていた狂三の分身体が、悉く燃やされ、灰になって風に消える。

 

「あら、もう打ち止めかしら?案外少なかったわね。もう少し本気を出してもいいのよ?」

 

琴里が戦斧を担ぎながら、ふふんと鼻を鳴らす。

その物言いに狂三は顔を凄絶に歪ませ、歯をかみしめた。

 

「その言葉_____後悔させてあげますわッ!刻々帝(ザアアアアアアフキエエエエル)…………ッ!!!」

 

瞬間、狂三の左眼が、先程よりも速く回り始めた。

 

「ッ!させるかっての………!」

 

その不穏な様子に、琴里が灼爛殲鬼(カマエル)を振りかぶる。だが______

 

「_______ぁ」

 

小さな、本当に小さな声を喉から発して、その場に膝をついた。

灼爛殲鬼(カマエル)を杖代わりにして身体を支えながら、苦しげに頭を押さえる。

 

「く………こ、これは…………」

 

「こ、琴里!?」

 

「おい、大丈夫かよ!?」

 

一体何が起こったかは分からないが、琴里が窮地にある事は理解できた。思わず、叫んでしまう。

 

「あッはははははははははははは!悪運尽きましたわ・ねェ!」

 

狂三が高らかに笑い、刻々帝(ザフキエル)の弾が込められた銃を琴里に向ける。

 

「おい、琴里!」

 

士道が叫び、やむなく盾になろうか、と、駆け寄ろうとした瞬間。

 

「…………」

 

琴里が、すっとその場に立ち上がった。

 

静かに_______爛々と光る真っ赤な瞳で、狂三をジッと睨みつける。

 

見慣れたはずのその顔は、なぜだろうか、全く士道達の知らない少女に見えた。

 

「琴、里………?」

 

「お、おい、どうしたんだよ、あいつ…………」

 

琴里は灼爛殲鬼(カマエル)を天高く掲げ、叫んだ。

 

 

「灼爛殲鬼《カマエル》________【(メギド)】!」

 

琴里の声に応えるように、戦斧が刃を失い棍のみとなる。

灼爛殲鬼(カマエル)が蠢動し、柄の部分が本体に収納され、琴里の右手を包み込むように着装される。

琴里はそれを構えると、先端を狂三に定めた。その姿はまるで、巨大戦艦の大砲を思わせた。

 

灼爛殲鬼(カマエル)がその体表を展開させ、赤い光を放つ。

 

そして琴里の周囲に纏わりついていた焔が、先端へと吸い込まれていった。

 

「___________!?」

 

その様子を見て、狂三が恐怖と戦慄に染まった、今までに見たことのない表情をした。

 

()()()()()()!!」

 

狂三が叫ぶと同時に、狂三の分身体が這い出てきた。

琴里が、静かに口を開く。

 

「_____灰燼と化せ、灼爛殲鬼(カマエル)

 

その声は、戦兎も万丈も、そして何年も共に暮らしてきた士道ですら一度も聞いたことがないような、冷たく平坦なものだった。

 

次の瞬間、琴里の構えた灼爛殲鬼(カマエル)から、凄まじい炎熱の奔流が放たれた。

大火山の噴火を数十センチの範囲に凝縮させたような圧倒的な熱量が、一本の線を引く。辺りが一瞬、一足早い夕日に彩られたかのように赤く染まった。

 

「ぐ………」

 

「うおっ………」

 

「くぅっ………」

 

士道と戦兎、万丈は思わず腕で顔を覆った。わずかに空気を吸っただけでも、焼け付くような熱気が容赦なく呼吸を阻害する。琴里の背後にいるにも関わらず、肌が炙られたようにちりつき、目を開けられなくなった。

 

そして数秒後______炎熱の光線は段々と小さくなり、ついに消滅した。

 

「けほ……っ、けほ………っ」

 

軽く咳き込んでから視線を上げる。

視界を覆う煙が晴れ______見えた光景に、三人は絶句した。

床やフェンスが凄まじい熱によって融かされ、砲が通った後には何も残らなかったが_____そこには、未だ狂三と刻々帝(ザフキエル)の姿があった。

だが先まで狂三を守るように展開していた分身体は一人残らず灰燼と化し、狂三自身もまた。左腕を失っていた。恐ろしい熱量であったためか、傷口は黒ずみのように煤けて、血一つ流れていなかった。

また背後に浮遊していた刻々帝(ザフキエル)も、その巨大な文字盤の四半を貫かれており、『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』の数字があった場所が綺麗に抉り取られていた。

 

「く______ぁ………」

 

狂三が絞り出すように息を吐き、その場にがくりと膝をつく。

誰がどう見ようと、戦闘続行は不可能な状態。

しかし。

 

「……銃を取りなさい」

 

琴里が、低い声で唱えながら、再び大砲の灼爛殲鬼(カマエル)を狂三に向けた。

 

「まだ闘争は終わっていないわ。まだ戦争は終わっていないわ。さあ、もっと殺し合いましょう、狂三。あなたの望んだ戦いよ。あなたの望んだ争いよ。______もう銃口を向けられないというのなら、今ここでその命、天に返しなさい」

 

「琴里………?」

 

「お、おい、あいつ何言ってんだ………?それ以上やったら、本当に死んじまうぞ!」

 

戦兎と万丈が疑惑の声を上げ、士道もまた琴里の元へと駆け寄り、その肩を掴んだ。

 

「おい!どうしたんだよ琴里!精霊を殺さず問題を解決するのが、ラタトスクじゃなかったのかよ!?」

 

しかし、琴里は士道の言葉に聞く耳を持たず、再び灼爛殲鬼(カマエル)の砲門へと焔を引き込んだ。

 

「………!お、おい、琴里!」

 

士道は琴里の前に回り_____息を詰まらせた。

 

「な………」

 

冷たく歪んだ双眸に、怪しく光る紅玉(ルビー)の眼。そして口元に浮かんだ______嗜虐と愉悦、恍惚に満ちたような笑み。

それを見て、士道は確信した。

 

 

______違う。これは、いつもの、自分の知っている琴里では無い。

 

 

瞬間、士道は駆け出していた。_____力なく膝をついた狂三の元へと。

 

「狂三!」

 

「士______道、さん………?」

 

「おい、士道!」

 

「何してんだ!巻き込まれるぞ!」

 

狂三を連れて逃げられる状況ではない。ならば、せめて少しでも狂三のダメージを減らそうと、狂三の前にバッと立ちはだかった。

 

「ッ、士道!」

 

「クソッ、どうとでもなりやがれッ!」

 

戦兎と万丈が駆け寄るのと同時に、灼爛殲鬼(カマエル)から、再び万象を焼き尽くす紅蓮の咆哮が放たれた。

瞬間______

 

「っ!」

 

灼爛殲鬼(カマエル)を構えた琴里が、ハッと目を見開いた。

 

「避けて、おにーちゃんッ!」

 

叫び、灼爛殲鬼(カマエル)を上空へと向ける。

しかし、その軌道は完全には変えきれず______

 

「うおわぁッ!?」

 

「ぐぅッ!?」

 

戦兎と万丈が、その爆風によって背後へ吹き飛び_______

 

「ぁ____________」

 

士道は、視界が真っ赤に染まったところで、意識が途絶えた。

 

 

 

 

あれから数時間後、誰もいなくなった屋上で。

 

「おーおー、どんな戦争跡地だよ、これ」

 

白衣を着た長髪の男______神大針魏が、呆れたような楽しそうな声を発して現れた。

針魏は現場を一通り見ると、何かを探すように視線をあちこちに移した。

 

「しっかし残ってるかな………ん?」

 

とそこで、針魏の視線がある一点に留まる。

そこは数時間前、真那が倒れていた場所。

 

そこに、一本のボトルが、いくつか壊れたパーツとともに、置かれていた。

 

「お、あったあった……っと」

 

針魏はそのボトルを手に取り、ボトルに着いた汚れを手で払う。

 

そこには、色がどこか明るい色に滲んだ獅子と、十六個の小さな点が、線を結びながら小さく光っていた。

 

「んー、まあ、これなら大丈夫かな。あとはこっちでやれば………」

 

と呟きながら、針魏はそのボトルを白衣のポケットに仕舞い、懐からタブレットを取り出した。

タブレットのパネルを操作し、十二個の項目が書かれた画面へと飛ぶ。

 

そして、その中の一項目に、チェックを入れた。

 

「これで、あと十一か………思いの外、早く集まりそうだねぇ………あ、と、は………」

 

針魏はくつくつと笑いながら、まるでマグマに焼かれたような焼け跡を見つめる。

 

「あの少年次第、ってとこかなぁ………ま、それなりに期待しとくかね。それに………」

 

そこで一つ区切って、針魏は懐からあるものを取り出す。

 

それは、()だった。

 

そしてタブレットを仕舞い、ポケットから黄色い試験官の形をしたボトル______【オルタナティブボトル】を取り出し、しばし見つめた。

 

 

「……そろそろ、私も動く頃合いだね」

 

 

針魏は不気味な笑みを浮かべながら、その場を立ち去った。

 

 

 

 




どうでしたか?
ほぼ原作まんまの展開になってしまったのは、すいません。まあ、今回は前座みたいなものですので。
次回からは原作の琴里の話などについては、大幅にカットさせていただきます。分からない!って人のために簡単に纏めはしますが。
そしてカットした部分で、オリジナルを入れていきます。琴里編と書いてありますが、新章はだいぶビルドやクローズ、たまにアライブの戦闘シーン多目のバトルものになるかと思われます。未定ですが。

ビルドのフォームチェンジも色々したり、デートもしたりする予定(あくまで予定と保険を打っておく)ですので、過度な期待はせずに楽しみにしていてください。

それでは次回、『第31話 そのベルトが告げるもの』、をお楽しみに!

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