真那「いやー、まさかあの人がシーカーだったとは……。にしても、登場回でいきなり正体を現すのって、どうなんでいやがりますか?」
士道「まあ分かりやすくていいんじゃないか?つーか真那、またここにいるんだな」
桐生「もしかしてこのままあらすじ紹介のレギュラーに入ろうとしてる?」
真那「あ、バレやがりましたか?いやーこの後本編での出番が少なくなりそうでいやがりますので、せめてあらすじ紹介だけでもと思いましてー」
万丈「どうする戦兎ぉ?」
桐生「まあ準レギュラーくらいだったらいいけどねー。どうなるかは読者さん次第かなー」
士道「そこで読者に媚びるのかよ」
桐生「ほらやっぱ需要と供給は大事にしないとじゃん?」
万丈「そうだぞ。供養と給食は大事にしねーとな」
桐生「需要と供給な?さて、そんな言い間違えるバカな万丈は置いておいて、日常回?な第33話をどうぞ!」
六月二十一日は水曜日。にも関わらず、士道達の通う来禅高校は今日、臨時休校となっていた。しかし、それも無理からぬことである。何しろ学校にいる生徒、職員全員が倒れ、意識不明状態に陥っていたのだから。
幸い症状の重い生徒はいなかったものの、学校側がガス管などの検査のために、今週いっぱいは臨時休校になったらしい。
そして今日、士道達は琴里とのデートに向けて、訓練を兼ねて準備のために街へと向かっていたのであった。
明日行く場所はオーシャンパークという、プール施設なので、水着を調達しに行く、という訳だ。
士道と戦兎と万丈、十香と四糸乃、よしのん、そして何故か鳶一折紙も付いたメンバーで、ツインビルにある水着売り場まで行った。道中の十香と折紙はそれはもう険悪なムードだったが____よくよく考えれば普段の学校生活とそう変わらなかった。
「そういえば、シドー、セント、リューガ」
「ん?どうした」
「水着とは、一体何なのだ?」
「え?」
三人揃って目を丸くした。が、そういえば学校でもまだプールは始まっていないため、知らないのも仕方ないことかもしれなかった。
「………ほら万丈、説明してやりなさいって」
「なんで俺なんだよ。士道やれよ士道」
「え、俺?」
改めて女の子に水着のことを説明する、という事が気恥ずかしい為か、三人で説明のなすり付け合いが始まろうとする。とはいえ説明しないと駄目なので、士道が唇を開いた。
「ん、そうだな、水着っていうのは______」
「_____Mi-Zu-Gi。新型の対精霊用殲滅兵装の一つ。発動と同時に搭載された
と、折紙がつらつらと言葉を並べ立て、十香が「ひっ」と息を詰まらせた。
「な………ほ、本当かシドー………!?」
「いや、そんなわけないだろ」
「おい戦兎………本当なのか?」
「お前まで騙されてどうするんだ万丈バカ」
再び折紙が言葉を続ける。
「本当。まさか彼らが、Mi-Zu-Giの存在を知っているとは思わなかった」
「な、なぜシドー達はそんな物を………」
「それは至極明快かつ単純な理由。対精霊殲滅兵装は、精霊に向ける他ない。きっとあなた達二人が油断したところで、二人掛かりで後ろから奇襲を仕掛ける算段」
『………っ』
十香が顔を青くして身を固くし、折紙から隠れるように戦兎の陰に立っていた四糸乃が小さく息を詰まらせる。
「う、嘘を吐くな!シドー達がそんなことをするはずがない!」
「………っ、わ、たしも………そう、思い、ます………」
十香が叫び、滅多に声を上げない四糸乃もまた、そう言ってきた。
「そ、そうだろうシドー、セント」
士道と戦兎が首肯しようとしたところで、折紙が鼻をつまみ、唇を動かした。
『いや、折紙の言う通りだ。いつお前らを殺してやろうかと思っていたのだー』
「ま、まさかシドー、本当に………!?」
「いや全然似てねえだろ騙されんなよ!」
『当然だ。この正義のヒーローが巨悪を見逃すわけがないだろう?』
「戦兎!まさかお前、そういう腹積もりだったってのか!」
「いやだからお前まで騙されてどうするんだよ!」
士道が叫ぶと十香がハッと肩を揺らし、戦兎が頭を小突くと万丈が同じようにハッと肩を揺らした。どうやらようやく騙されたことに気付いたらしい。十香はともかくなぜ万丈まで騙されたのか。そうか
「「おのれ卑劣な!」」
「何のことかわからない」
「お前ら店内では静かになー」
言い合いを始めたいつもの二人+万丈を何とか二人で宥めすかし、はあと息を吐く。慣れてるといってもやはり、疲れるものは疲れるのだった。
「水着ってのは名前の通り、水に入るときに着る服だよ」
「水に………?それだけのためにわざわざ着替えるのか」
「ああ。水に濡れたら服がビショビショになって気持ち悪いだろ?」
「おお、なるほど!シドー、さてはお前天っ才だな?」
「いや俺が考えたわけじゃねえけども」
「ガタッ」
「お前じゃねーよ」
士道が頰を掻きながら苦笑し、戦兎が天才のワードにつられて反応し、万丈がそれに突っ込んだ。
エレベーターから降りるとすぐに、カラフルな水着が陳列されたスペースが視界に入り込んできた。もう六月も後半である。水着を売るには丁度いいシーズンなのかも知れない。
水着売り場に足を踏み入れると、「いらっしゃいませー」という店員の甲高い声がどこからか響いてくる。
まず駆け出したのは十香だった。不思議そうに店内を見回し、首をかしげる。
「それで、シドー。水着というのはどれのことなのだ?」
「ん、そこら中にかかってるのが全部そうだよ」
「!な、なんだと………?」
士道が言うと、十香は目を剥いて両手をわななかせた。
恐る恐るワンピースタイプの水着を手にとって眺め回し、手触りを確かめてから、何かに気付いたようにハッと顔を上げてくる。
「なるほど、そうか。これの上に何か着るのだな?」
「いや、それだけだ」
戦兎が言うと、十香は戦慄に染まった顔を向けてきた。
「こ、これでは隠し切れないぞ!なぜこんなに面積が小さいのだ………!?」
「まあ、その方が動きやすいからだな。水中だと抵抗が強いから、寧ろその方がいいんだよ」
「ぬ、ぬう……確かにそうかも知れんが、これではまるで鳶一折紙のナントカスーツではないか………流石に少し恥ずかしいぞ」
「……………」
戦兎の説明を聞いた十香の言葉に、折紙がじとっとした視線を送る。何を言ったわけでもないが、何となく憮然としている感じがした。
「(まあ普段着てるやつを恥ずかしいもの呼ばわりされたからな〜。流石に気には触るか)」
「じ、じゃあ、とりあえずどれか気に入ったのを試着してみてくれ」
士道が言うと、折紙が即座にこくんと頷き、四糸乃も恥ずかしそうに首肯した。二人の様子を見てか、十香も頰を染めながら「特別だぞ……」と唇を動かす。
そしてぐっと拳を握り、四糸乃に向かってファイティングポーズを取ってみせた。
「よし………では頑張るぞ!四糸乃!」
「は、はい………えと、頑張り、ましょう………!」
そんな二人のやりとりを見て、士道と戦兎が首を傾げた。
「二人ともどうかしたのか?」
「なんかやるのか?」
「うむ。今日私がシドーを、四糸乃がセントをドキドキさせたら、それぞれデェトをする権利をくれるらしいのだ」
「な………!?」
「に?」
士道が目を剥き、戦兎が呆けた顔になる。士道がインカムを小突くと、こちらをラタトスクからモニタリングしている令音の眠そうな声が聞こえてきた。
『……ん、どうせなら少し難易度を上げておこうと思ってね』
「そ、そんな____」
「ところでシドー、セント!」
と、途中で十香が声を上げてきて、士道達の会話を中断させた。
「な、なんだ、十香」
「シドー達は一体どうやったらドキドキするのだ?走るのか?いっぱい走るのか?」
「……それは、うん、ドキドキしそうだなあ」
「……まあ、うん。ドキドキはするな」
士道達が苦笑して答えると、四糸乃の左手のよしのんがカラカラと笑い声をあげる。
『あーはは、違うよー。男の子をドキドキさせるって言ったら、一つしかないじゃない』
「ぬ?ではどうするのだ?」
『んーとね、十香ちゃん。ちょっとこっち来たんさい』
言って、よしのんが手招きをする。そして十香が顔を寄せると、士道達に聞こえないくらいの小さな声で、何かひそひそと話をした。そして。
「な………ッ!?」
話が終わるのと同時に、十香の顔がボンッ!と赤くなった。
『ほいじゃ、せいぜいがーんばってねー』
『よしのん』が、四糸乃を引っ張って店の奥へと歩いていく。十香は呆然とした様子でその背を見送っていた。
「お、おい十香?一体何を______」
「はふん!」
士道が肩に手を触れると、十香がへんちくりんな叫びを上げて身体を震わせた。
「と、十香?」
「ぬ………いやすまん。何でもないぞ。しかし……困ったな。シドーはああしないとドキドキしてくれないのか……」
「いや、だから何を聞いたんだよ!」
と、士道が叫んでいると、背後から音もなく折紙が現れた。
「____ルールは把握した。士道とのデート権は私が貰う」
「な………っ!き、貴様は関係ないだろう!」
十香が顔を険しくして折紙を睨みつけるも、折紙は意に介すことなく水着を数着持ってそそくさと試着室に入っていった。
「ぐ………あ、あの女にだけはデェト権を渡すわけにはいかん………ッ!」
十香は拳を握ると、手近にあった水着を手にとって折紙の隣の試着室に入っていった。
「………ええと」
なんだか勝手に話が進んでしまい、士道はぽりぽりと頬をかいた。
と、そこで万丈が何かに気づいたように、ポンと手を打った。
「あ、そういや戦兎。俺たちの水着どうすんだよ」
「え?」
「プール行くってんなら必要だろ?でも、俺たちそんなん持ってねえだろ」
「あー、確かにな。折角だし買ってくか」
戦兎達が思い出したように会話する。そういえば忘れかけていたが、戦兎達は元々違う世界から来たのだ。水着を所持していなくても仕方ないだろう。
「というわけだから士道。俺たちちょっと水着見てくるわ。すぐ帰ってくるから、ちょっと待っててくれ」
「え?ああ、うん………ってちょっと待て。俺一人でこの場を乗り切れと?」
「じゃあそういう訳で!」
「あとよろしくなー!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
士道の悲痛な叫びは届かず、戦兎達は逃げるように男性用の水着売り場へと駆けて行った。
◆
水着売り場に着いた戦兎達は、適当に水着を物色していた。が、なまじ種類は豊富にあったため、年甲斐もなく(見た目は高校生だが)少しテンションが上がってしまった。
「こう見ると色んな種類あるんだなー。お、これちょっとかっこいいかも」
「お!戦兎、これどうだ!?」
そう言って万丈が取り出した水着には、後ろにでっかく厳つい字体で『マッスルフィーバーッ!』と印刷されていた。
「………悪いことは言わねえからやめとけ。つかどこから引っ張り出したんだそんなもん」
「えーそうかぁ?んじゃ………」
戦兎があまりに露骨に嫌そうな顔をしたためか、それとも私服のセンスが致命的だった幻さんを思い出したためか、万丈は持っていた水着を戻して別の物を探し始めた。
戦兎も移動して、どれにするか悩んでいると。
「んー、悩むねぇ」
「そうだなー」
と、横から話しかけられた。水着を見ながら、適当に相槌を打つ。
「私としてはどれでもいいんだけどね。なまじ種類が多くて困るよ」
「あー、それ同感だ。俺も適当に選ぶはずだったのに、結構熱中しちまってさ」
「そうか。君とは意見が合いそうだねぇ」
ハハハハ、と顔を合わせずに会話をする。そこで相手の声に聞き覚えがある気がしたので、思わず相手の顔を見た。
膝までかかりそうな長い長髪に、半袖半ズボン、トドメにクロックスのラフな格好。
気のせいだろうか。その容姿はまるで、先日遭遇したばかりの_______
「って、神大………ッ!?」
「ん?おお、誰かと思えば、戦兎クンじゃあないか」
そう。戦兎達にとっては因縁の相手とも言える、神大針魏だった。何故か長い髪で、ラフな格好をして水着売り場にいた。
表情を険しくて、針魏を睨みつける。
「………何しに来た」
「何って………水着を買いに来たんだが?」
至極当然、何を今更、とでも言わんばかりの表情でそういう針魏。
言っていること自体は真っ当なのだが、相手が彼だと違和感この上無い。
少し調子を崩されたものの、警戒心を解くことなく質問を続ける。
「それだけじゃないだろう。偶然だなんて言わせないぞ」
「ハハハ、運命感じちゃったかい?………と、冗談は置いておこうか」
と、笑った顔は変わらず、しかし纏う雰囲気を変え、針魏が立ち上がった。
そして唇を開き、戦兎に話しかける。
「_____君達に一つ、警告をしておこうと思ってね。【鳶一折紙】には、気をつけた方がいいよ?」
「ッ、警告?鳶一だと?」
思わぬワードに、戦兎は眉をひそめる。
「彼女は親を精霊に殺されていてねぇ。その所為で精霊に、かなり恨みを持っちゃっているのさ。特に_____
「……何の事だ」
「………こっちの話だよ。ま、とにかく。彼女には気をつけておいたほうがいいよ、ってことさ。もしかしたら、何かの間違いで彼女が君の仲間達をうっかり殺しちゃう〜、なぁんて事になるかも知れないからねぇ」
「ッ!お前………!」
「無いと言い切れるのかい?そもそも彼女は精霊の排除を目的とするAST所属だ。ああやって彼女達と水着を選んでいること自体が、そもそもにして異常だと思わないかい?」
「………」
確かに、その通りだ。
彼女はそもそもAST隊員であり、精霊を排除しようとするのは至極当然のことだ。ある程度の警戒は、本来しておくべきなのだろう。彼女が十香を、執拗なまでに毛嫌いする理由の一端も、彼の発言で少し分かった。
しかし同時に、ある疑問も浮かんだ。
「……どういうつもりだ。俺たちに、そんな情報を流して、警告なんかして。何が目的だ」
そもそもとして針魏は、今のところ戦兎達と敵対しているのである。さらには真那にリバースドライバーを渡したり、まだ明らかにはなっていないが、マッドクラウンも精霊との邂逅を妨害したりと、AST側に肩入れしているのだ。それが何故、敵に塩を送るような真似をするのか。
「大した理由は無いさ。ただ、君たちに今死なれちゃうと、こちらとしても望ましくなくてね。だからこうして、水着を買いにくがてら、君たちにお節介を焼きに来たというわけさ」
そこで一つ言葉を区切り、「……まあ」と、小さく呟いた。
「______あの少年なら、あるいは」
「?あの少年?」
「何でもないさ。お、これいいね。うん、これにしよう」
と、手に取った水着を選び、手に持ってその場を去ろうとした。
「それじゃあね、戦兎クン。君の仲間達にも、よろしく伝えておいてくれたまえ」
手をヒラヒラと振り、カウンターまで歩いていく。その様子を見やりながら、戦兎は思考を振り払うように頭を振った。
そして、近くにかけられていた水着を選ぶと、万丈の元へと向かったのであった。
◆
数分後。水着を買い終えた戦兎達の目の前には。
「戦兎、万丈!助けてくれ!こいつら止めてくれ早く!」
「早く!早く私でドキドキしてくれ、シドー!」
「先の話についての説明を求める。どういう事、士道」
眼前には、黒髪の女の子とその胸を揉む(というか無理やり揉まされている)男子高校生、それに詰め寄る銀髪の女の子という、非常にシュールな光景が広がっていた。
「……………士道、俺たち、外で待ってるから」
「……………じゃ、そういう訳だから」
「放置!?ちょっと待って!置いてかないで!」
面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだと、心の中で士道に詫びながらその場を立ち去ろうとした、その時。
「戦兎………さ______ん………!」
蚊の鳴くような声が、どこからか響いてきた。
「え………?」
「今の声って……」
十香と折紙も気づいたらしく、ピタリと動きを止めて、怪訝そうに眉をひそめた。
「む………今の声は」
「………」
「四糸乃、だよな」
士道と戦兎が耳を澄ますと、再び小さな声が聞こえてきた。
「戦………兎さん…………!た、たす………けて………ください…………っ」
どうやらそれは、三つ目の更衣室から聞こえてきているもののようだった。
______たすけて。その言葉を認識した瞬間、戦兎は急いでそちらに駆け寄り、カーテンに手をかけていた。
「………っ、四糸乃!大丈夫か!?開けるぞ!」
勢いよくカーテンを開け放つ。と_____そこには。
「せ、戦兎さん…………」
服がはだけ、半裸状態になった四糸乃が、ビキニタイプの水着に腕を通した状態で、胸元を押さえながら涙目になっていた。
何と言うのだろうか。その様は、四糸乃の小さな肢体と相まって、戦兎にアブノーマルな禁断の性癖を______
「(いやいやちょっと待て!俺はいつからロリコンになった!俺はノーマルだ!)」
と、心の中で即座に言い訳を放つと、四糸乃が弱々しく言ってきた。
「か、片手だと………上手く、着られません……………」
「…………」
戦兎は黙って、四糸乃の着替えを手伝ってやった。
そしてその時、耳元でブザーが鳴った。四糸乃が、戦兎と一日デート権を獲得した瞬間であった。
ちなみにこの件で万丈から、しばらくロリコンと弄られたのは後の話である。
どうでしたか?
今回は割と平和です。次回はちょっと不穏なスタートからです。
ところで、あらすじ紹介でも書きましたが、あらすじ紹介のレギュラー枠で真那さんは、どうでしょうか?読者さんからの意見待ってます。
それでは次回、『第34話 その胸に宿り続けるトゥルース』、をお楽しみに。
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それでは、良いゴールデンウィークを。私は二日から名古屋に行ってきます。