万丈「しっかし琴里のやつ、やっぱ何か素っ気ねえよなー。つーか、俺前回寒がってただけじゃねえか!」
桐生「まあまあ、それを喜ぶ人もいるんだし、良いんじゃないの?」
万丈「良くねえよ!もっと俺に活躍くれよ!俺に活躍くれたらあれだぞ!アレ並みだからな!えーっと………」
桐生「ド忘れしてる時点でたかが知れてるけどな」
万丈「だぁーもううるっせえよ!自分一人だけ堪能しやがってよー!」
桐生「また今度行きんしゃい。と、言うわけで!久しぶりの第36話?、どうぞ!」
「ちょっと、何があったの?」
陸上自衛隊天宮駐屯地のCR-ユニット格納庫に作業服姿で足を踏み入れた燎子は、庫内の騒然とした様子に怪訝そうな声を発し、近くにいた整備士に話しかけた。
「何だよ、後にしてくれ!今はそれどころじゃ______て、隊長!」
鬱陶しげに眉をひそめた後、それが燎子だと確認した整備士は敬礼を示した。
「敬礼はいいから。何があったか教えてちょうだい」
「その…………【ホワイト・リコリス】と【リバースドライバー】が、ありったけの弾薬と一緒に丸ごと無くなってるんです」
「なんですって!?」
燎子は目を見開くと、顔を右方に向けた。
整備士の言っていた通り、大型討滅兵装【ホワイト・リコリス】が、安置されていた箇所から消え、試作量産型の【リバースドライバー】諸共無くなっていた。
「誰かが持ち出したっていうの………?」
「さ、さあ………詳しいことは私も」
燎子は庫内の様子を見回した。詳しく調べなければ分からないが、他に変わった様子は見受けられない。扉を破った後も、搬入車を動かした形跡もなかった。
要するに、犯人はあの巨大な兵装を、搬入車無しで動かしたということである。
燎子は暫し黙ると、再度整備士に話しかけた。
「_____今、緊急着装デバイスの保管状況はどうなってる?」
「緊急着装デバイス……ですか?ちょっとお待ちください」
言って、整備士が手に持っていた小型端末を弄り始める。
緊急着装デバイスは、一時的に
これは一つの可能性であり、疑念に過ぎなかった。
心の中で、該当コードが出ないよう祈りながら、整備士の言葉を待つ。
_____だが。端末からピー、という音が発されると同時、整備士が声を詰まらせた。
「隊長、ひ、一人、デバイスを携行している隊員がいます」
「………っ、誰?」
燎子が問うと、整備士は震える声を発してきた。
「と、
◆
「よっしゃぁぁッ!琴里!次は何に乗る!?」
あの一件から数十分か一時間程経過した後。
士道は琴里を連れ回し、アミューズエリアの絶叫アトラクションを堪能していた。
「ちょ……ちょっと待ちなさいよ!」
「ん、どうした琴里」
「どうしたじゃないわよ………っ!ちゃんと説明しなさい、説明を!」
琴里が興奮した様子で叫びを上げてくる。
まあ、無理もないだろう。何せ士道は着替え終わった琴里をアミューズエリアに連れて来るなり、有無を言わさずにアトラクションへと吶喊したのだから。
「説明?さっきしただろ。お兄ちゃんは実は遊園地大好きなのです」
「説明になってないわよ!そんな理由で私連れ回してるっての!?」
「ばっかお前、そんな理由とか言うんじゃねえよ。高校生にもなるとな、男は遊園地なんてそうそう行けるもんじゃないんだぞ?家族連れだと気恥ずかしいし、男友達だけだと悲しい。結局遊園地に行けるのなんて、彼女持ちくらいなんだよ!遊園地に来たくても来られない男子高校生が何万人いると思ってんだ!」
「知るかッ!だいたい_____」
すると、琴里が言葉の途中で何かに気づいたように声を窄ませた。
「か、かのじょ_____」
何やら小声でボソボソ呟きながら、顔を赤くする。
「ん?どうした琴里。______あ、もしかしてお前」
「!な、なんでもないわよ!気に______」
「フリーフォールが怖かったのか?何だよ、先に言ってくれればいいのに」
口元を押さえて笑うと、琴里が顔を真っ赤にして手を振り回してきた。
「いたたっ、や、やめろって」
「るさいッ!くぬっ、くぬッ!」
士道が何とかそれから逃れると、今度はジェットコースターの方を指差した。
「よし、琴里。今度はあれ乗ろうぜ」
「だから、人の話聞きなさいよ!」
「あ、そうか。琴里の身長じゃ乗せてもらえないかー」
士道がニヤニヤしながら言うと、琴里が再び顔を真っ赤にしてきた。
「馬鹿にすんじゃないわよ!流石にそんな小さくないっての!」
「ええー?でも怖いんだろー?」
「舐めるんじゃないわよ!むしろ士道の方がおしっこ漏らさないか心配ね!」
「言ったな?じゃあどっちが怖がるか勝負しようじゃねえか」
「望むところよ!」
琴里が鼻息荒く頷くと、士道と共に搭乗口に上っていった。
琴里が「は………っ」と士道の口車に乗せられたことに気づいたのは、ジェットコースターの安全バーが下がってきた時だった。
◆
そして、そのジェットコースターからほど近い休憩エリアにて。
「ほい、風船だぞー」
「わー!ありがとう!」
と、にこやかに風船を子供に配るピエロと、
「むぎゅー!」
『…………』
子供に抱きつかれる無言の熊の着ぐるみがいた。
やがて子供達が去った後、着ぐるみが無言で頭を外し、ピエロが風船を近くの留め具に掛けて腕を振る。
「……っはーッ!暑っつ!」
「ずっと立ちっぱなしも辛いな。万丈、なんか飲み物買ってきてくれ」
「いや俺だろそれ言うの!さっきからずっと暑いんだぞこれ!」
「だったらお前もピエロでいいだろ!前散々着てたんだから!」
ピエロに扮した戦兎と、熊の着ぐるみを着込んだ万丈である。
口論を終えた戦兎は双眼鏡を取り出すと、ジェットコースターの方を見つめた。見つめた先には、絶賛ジェットコースターで降下中の士道と、涙目になっている琴里の姿が見えた。
「よしよし、二人は順調そうだな」
「つか大丈夫なのか?あいつら置いてきちまって」
「まあジャングルクルーズから戻るまでに帰れば、大丈夫でしょ」
「………でも四糸乃、すっげえ残念そうだったぞ」
「………それを言うな。後でまた埋め合わせをするって言ったから、大丈夫のはずだ」
戦兎たちが心に深い罪悪感(主に戦兎)を背負ってまでここに来た理由。
それは士道と琴里のデートが上手くいくかどうかのため、外部からの妨害に対応するためである。要はいつもとやっている事は同じである。
とはいえそのままの服装では、士道たちに悟られる可能性がある。今回は琴里の心情も考慮して、士道たちに気づかれないことが好ましいのだ。そのために戦兎達はラタトスクの手引きのもと、遊園地にあった服を拝借して今ここにいるのだが、万丈が選んだのは着ぐるみであったため_____
「ママ〜!あの熊さん頭が無いよ〜っ!」
「見てはいけません!」
と、万丈、もとい頭のない熊さんを見た子供が泣きかけているのだが。
「うわっ、おい万丈頭付けろ早く!」
「あ?ってうわっ!やっべぇ!」
「早くやんないとあの子供泣き出しちゃうから!ハリーハリー!」
「ちょっと、待てって……!よし、これでどうだ!」
と、万丈が頭をつけた瞬間。
「ビェェェエーーッ!!」
子供が盛大に泣き出した。_______前後逆になった、熊の頭部をみて。
「おい馬鹿!前後逆だ!直せ早く!」
『へ?うわ本当だ!道理で前が見えねえと思った!』
_____などと、士道たちのデートの背後で、このような寸劇が繰り広げられていたことを、士道たちは知らない。
◆
「はふぅ………っ」
そんな息を吐いて、琴里が中央広場のベンチの上に身体を投げ出す。時刻は既に五時を回っていた。
あの後ジェットコースターを終えた士道と琴里は、お化け屋敷やゴーカート、その他アミューズエリアのアトラクション全てを制覇する勢いでとにかく遊んで遊んで遊びまくった。お陰で二人とも疲れたのも無理はなかった。
「あー……ちょっとやべえわ。遊園地舐めてた。超楽しかったわ」
「ふん、子供なんだから。高校卒業までにはおしめが取れるといいわね」
「スプラッシュコースターではしゃいでたお前に言われたかねえ」
「な、なんですって!?」
琴里は不満気に声を上げたが、すぐに吐息をして姿勢を元に戻した。
「ふん……いいわ、疲れたし。それに……まあ、つまらなくはなかったし」
「ん、そか」
士道は目を伏せると、もう一度大きく身体を伸ばした。
「しっかし……遊園地なんて来たのどれくらいぶりだったっけか。父さんも母さんも殆ど家にいないから、随分……」
「五年前よ」
「え?」
即座に琴里が答えてきたため、素っ頓狂な声を発してしまう。琴里は一瞬ハッとした様子になったが、言ったものはしょうがないといった様子で言葉を続けた。
「家族みんなで遊園地に行ったのは、五年前が最後。それからは一度も行ってないわ」
「よく覚えてるな。そっか……もう、五年も前になるのか」
士道はその言葉を口にしながら、頰を掻いた。
五年前。ここ最近の間に、随分とその単語を耳にした気がする。
五河家が最後に遊園地に行った年。琴里が精霊になった年。士道によってそれが封印された年。そして______折紙の両親が、死んだ年。
士道は無言でベンチを立つと、隣に座った琴里と向かい合う位置に足を落ち着けた。
一昨日、士道は思い出した。五年前の天宮市で起こった火災の日の出来事を。
その顔を覚えている。霊装を纏った琴里が、泣きながら自分を呼んでいる姿を。
だからこそ、その疑問は士道の胸の底に澱のように蟠っていた。
______折紙の両親を殺したのは、本当に琴里なのだろうか、と。
「………何?」
琴里が小首を傾げてくるが、数秒の後に何か気付いたように肩を小さく揺らし、何を考えたか頰を赤く染め、目をキョロキョロと動かした。
「え、あの、その……もしかして」
「琴里」
「ふぁ、ふぁい………っ!」
士道が静かに名前を呼ぶと、琴里が間の抜けた声で返答してきた。
「し、士道………?その、うん、まあ確かにそろそろ頃合いだとは思うんだけど………その、せ、せめてもう少し、ひとけの無い場所に行かない?」
「………?なんでだ?」
「な、なんでって………」
琴里が辺りを見回すように首を動かす。確かに辺りには数名の人が見受けられたが、話が聞こえるような距離ではない。そこまで気にすることではないと思うのだが。
「別にいいだろ、ここで」
「………っ!」
士道が言うと、琴里がまた更に顔を赤くして、声にならない叫びをあげた。
そんな琴里を不思議そうに眺めながら、小さく口を開く。
「そのだな、琴里」
「…………!な、なに……?」
「訊きたいことが………あるんだ」
「!き、キスしたいとかそんなはっきり……て、え?」
「え?」
士道と琴里は、キョトンと目を見合わせた。
「え、えっと?悪い、琴里は今______」
「う、うるしゃい!気にするな!何よ、訊きたいことって。早く言いなさいよ!」
「え?あ、ああ……」
琴里に圧され、士道は一歩後ずさった。琴里の用件も気になったが、まあそこまで言うのならこちらから訊ねよう。
士道は咳払いをしてから、琴里の目をジッと見つめ直した。
「あのだな、琴里。お前は、五年前______」
と、言いかけた瞬間。
士道は周りの音が、どこか遠くなるのを感じた。
そして気付く。士道の周りには今、目に見えない壁か膜のような物が張られていた。まるで、ASTが使う
「え_____?」
次いで、上方から前方______琴里のいる場所に、何かが落ちてくるのが見えた。
そして次の瞬間、凄まじい爆発音とともに、周囲に展開した景色が炎に包まれる。
「な…………」
一瞬、目の前で起こったことが理解できず、しばしの間身体が硬直する。
士道には傷一つ付いていなかった。周囲に展開された壁が爆風を完全に遮断していたのだ。
しかし、琴里がいた外側の景色は、一瞬前とは全くの別物へと変貌していた。
煙に包まれた外に出ようと足を踏み出すが、見えない壁は生身の士道の力ではビクともしなかった。
「琴里!」
叫び_____士道は上方からの視線に気付いた。
士道はバッと顔を上げ______そこにいたモノを見て、またも息を詰まらせた。
黒と白のボディに、まるで兵隊のような、バイザーマスク。そして腰には______鈍銀色の、注射器のようなベルト。
そしてその身体を包み込むような形の、巨大なユニット。背には幾つものミサイルポッドやコンテナのようなパーツがずらりと備え付けられ、そこから延びた両腕パーツから、巨大な光刃を顕現させた大型レーザーブレードが、そしてさらにその外側に戦艦の主砲のような巨大な砲門が二門、見受けられた。
そしてやがて、眼前のソレから、声が聞こえてくる。
『______士道。ここは危険。離れていて』
「っ………まさか…………」
それは、多少加工されてはいたものの。
今の士道にとって、判別するには十分すぎる材料だった。
「折、紙…………っ!?」
______間違いない。今琴里を撃ったのは、この折紙だった。
◆
『う______わぁぁぁぁぁあぁぁッ!?』
「おい、どうしたんだよあれ!」
一方その頃。戦兎達がいた近くのエリアでも、先の爆発によって、周囲の客がバタバタと逃げ去っていた。
「ッ……あそこにいるのは………!」
そこで戦兎が、爆心地の近くで浮遊する、一つの巨大な物体を見据えた。まるでロボットアニメにでも出てきそうな巨大な武装ユニットだ。あんなものを浮かせられるその技術力に興味が湧いたが______戦兎が注目したのは、それに乗った者が、身につけていた物だった。
「あれは………!」
間違い無い。それと同じ物を、戦兎は先日に何度も目撃し、昨日もその目で間近に見た。
「リバースドライバー………!」
そう。
かつて崇宮真那を異形のスマッシュへと変貌させ、戦兎達を苦しめた、まさしく【悪魔のドライバー】。
そこで、インカムから通信が入ってくる。
『……セイ、バジン。至急現場へ向かってくれ。あの爆心地に、シンと琴里がいる』
「ッ、何ですって!?」
『……しかも、敵の狙いは琴里のようだ。今行かないとまずい状況になる』
インカム越しに、令音のどこか悲痛な声が響く。
「……分かりました。行くぞ万丈!」
「おうッ!」
そして戦兎達は、互いにピエロ姿のまま、現場へ向かおうとした。
その、まさにその時。
「おおっと!ここから先は、行かせないよ」
『悪いなぁ!』
前方に人影が現れると同時に、足元に無数の光弾が飛んできた。
「うわっちょ、いたたた!」
どうやら万丈の靴に数発当たったらしい。右足を押さえて跳ねた。
そして、その弾を撃った、現れた人物______神大針魏と、マッドクラウンに、戦兎は鋭い視線を向けた。
「………お前ら、また邪魔をしに来たのか……!」
戦兎は胸の中で燻る激しい怒りを堪えきれずに、憤った声音で二人を睨みつける。
「おぉーおぉー、怖いなぁ。ま、その通りなんだけどね。君たちに今行かれたら、困るのでね」
そう言って神大は、ポケットから蜂の意匠のボトル_____【ビーオルタナティブフルボトル】を取り出し、数度振った。
そして、成分を活性化させたそれを、右手の銃_____【リバースチームガン】へとセットする。
【BEE ALTERNATIVE……】
「
【LIQUID MATCH……】
音声とともに、銃口から水蒸気のような成分が噴出される。それらは神大の周囲へと
【BEE……NASTY……BEE……】
やがて蜂の羽音と共に、その姿を現した。
【REBIRTH!!】
______ナスティシーカー。
前にビルド、クローズチャージと戦い、そして追い詰めてみせた、宿敵とも言える相手だった。
「……行くぞ、万丈」
「ああ……上等だ」
その姿を確認すると、戦兎はビルドドライバーを、万丈はスクラッシュドライバーをセットする。
そして戦兎はフルボトルを取り出し、振って成分を活性化させ、ドライバーに挿入した。
【ハリネズミ!消防車!】
【BEST MATCH!】
そして万丈はスクラッシュゼリーを取り出し、ドライバーへとセットした。
【ドラゴンジュゥエリィー!!】
それぞれの待機音が流れ、二人でファイティングポーズをとる。
【Are You Ready?】
「「変身ッ!」」
【レスキュー剣山ッ!ファイヤーヘッジホッグ!!イェイッ!!】
【潰れるゥ!流れるゥ!!溢れ出るゥ!!!ドラゴン・イン・クロォーズチャァージィッ!!ブルルルルゥゥゥラァァァアッ!!!】
ビルド ファイヤーヘッジホッグフォームと、クローズチャージ。
二人のヒーローと、二人の悪が、今衝突した。
更新遅れてすいません!
諸事情で一週間ほど投稿できませんでした!
すいません許してください!何でもしますから!(なんでもするとは言っていない)
そして待たせたくせして、クオリティが低いのも許してください!次回ちゃんと面白くしますから!するよう努力しますから!
と、謝罪を済ませたところで。(オイ)
これからまたペースが戻っていくと思いますので、安心していただけると幸いです。
あ、あとこれ、ザドキエルエンジェルフルボトルのイメージです。一緒に作ったコブラ、バットのブラックロストフルボトルとキルバススパイダーフルボトルを添えて。
【挿絵表示】
このボトルの上の人参の部分が雪の結晶になって、キャップ部分が水晶色、上下のカバーパーツが白銀色になったやつが、完全なザドキエルフルボトルになります。イメージしていただければと。自分の技術ではこれが限界でした。
それでは次回、『第37話 硝煙と白兎のスノーフィールド』、をお楽しみに!
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