万丈「元気に正義のヒーローしてたって何だよ、聞かねえぞそんなの」
桐生「細かい事は気にすんなって、ハゲるぞ」
万丈「はぁ!?は、禿げてねえし!は、はげっ、ハゲてなんかねーし!」
士道「んな露骨に反応するなって………ていうか、例によって前回の事には触れないスタイルなのな」
桐生「そりゃ今回から新章アンド第二期突入だから!過去は振り返らない主義なのさ………!」
万丈「そのセリフ、お前が言うとすげーダメな感じするぞ」
士道「ああ。よく分かんねーけど、何か『キャラ崩壊』って五文字が頭に浮かんだ」
桐生「うるさいよ!……コホン。と、言うわけで!第40話を、どうぞ!」
第40話 嵐を呼ぶトラベル
「全くもう……余計なことは言うものじゃないわよ」
「……………」
自衛隊天宮駐屯地を、二人の影が歩いていた。
一人は、鳶一折紙一曹。そしてもう一人は彼女の上司、日下部燎子である。
「あんたね、下手なこと言って、また懲戒処分になったらどうするのよ」
「……困る」
折紙が言うと、燎子は頭をくしゃくしゃとかいてはぁと息を吐いた。
つい先程まで二人がいた場所では、先日の折紙の不祥事に対する査問が行われていたのだ。
そして最初に出た処分は、懲戒____即ち、隊を除隊し、二度と
とはいえそれは、当然の判決とも言えた。
秘匿技術の結晶たるDEM社の実験機と、次期量産予定の新型兵器を無断使用し、多くの一般人に目撃されてしまったのだ。事の重大さを考えれば、それが至極当然の結論である。
折紙とてそれに異論は無かったし、それを覚悟の上で行ったのだ。
だがその時______一人の男が介入した事で、事態は思わぬ方向へと動いた。
なんと折紙は懲戒処分を撤回され、二ヶ月の謹慎処分のみで済んだのだ。
折紙のした事から考えるなら、信じられない程甘い処分である。
折紙は異議を唱えようとしたのだが、燎子が慌てて連れ去られて、現在に至るのであった。
「いいじゃないの。偶然でも何でも。神様が強面のエンジェルでも遣わしてくれたとでも思っときなさい。………親御さんの仇、取るんでしょ?」
「…………」
燎子の言葉に、折紙は拳を握って頷いた。
燎子が頬を緩ませ、応ずるように首を前に倒す。
すると。
廊下の先から、二人分の靴音が響いてくる。
視線をそちらに向けると、漆黒のスーツの男と、サングラスをかけた少女の姿が確認できた。
男の名を、サー・アイザック・レイ・ペラム・ウェストコットという。
世界中に
歳はせいぜい三十代半ば程だが、その雰囲気はどこか歳を経た老練さを感じさせた。
そして先の査問にて、折紙を謹慎処分に済むよう場を流したのも_____この男である。
「………」
二人で、ぺこり、と頭を下げる。
「____ああ」
ウェストコットはこちらに気付いたように眉を動かすと、折紙の脇を通る瞬間、その肩にポン、と手を置いた。
「期待しているよ、若き
「…………っ………!」
折紙は、ごくりと唾液を飲み下した。
敵意を感じるわけでも、殺意を感じる訳でも無い。だが、折紙の心臓は、普段からは考えられないくらいに、激しく収縮していた。胸中が謎の緊張感に支配されるのが分かる。
まるで_____今しがた隣を通り過ぎた男に、得体の知れない恐怖を感じているかのように。
「ああ、どうぞ」
ウェストコットが胸ポケットから小さな紙を取り出すと、それを折紙に手渡してきた。
無言でそれを受け取る。そこには『I.R.PWestcott』の名と、電話番号と思しき数字の羅列、そしてメールアドレスが書かれていた。
「何か困ったことがあれば、いつでも言ってくれたまえ。_____デウス・エクス・マキナは、君への
「……感謝します」
名刺を受け取り、静かな声で返す。だが結局、その目を見返すことはできなかった。
そんな様子に気づいているのかいないのか、ウェストコットは小さな笑みを浮かべてから、秘書を伴って歩み去っていった。
手の平に残された名刺。そこに書かれた数字と文字の羅列を睨むように見つめ______折紙は、もう一度喉を唾液で湿らせた。
◆
ウェストコットがカツカツと廊下を歩いていた最中、目の前に一つの影が現れた。
『早速ツバ付けかい?Mr.ウェストコット?』
「やあクラウン。君も相変わらず急に現れるね」
急に現れた男_____マッドクラウンと、まるで偶然会った友人と話すような感覚で、ウェストコットが会釈する。しかしウェストコットの隣に控えていた少女_____エレンは、少し不機嫌そうな顔になった。どうやら彼女は、クラウンの事をあまり好意的に思っていないようである。
『お前さんがそんな風に動くたぁ、ひっさしぶりだな。気に入っちゃった?あの子の事』
「はは、それもそうだね。____誰も彼も、事の重大さに気づいていないんだ。そんな無能者が雁首を揃えて、天才を糾弾している。これ程嘆かわしく、可笑しい事は無いだろう?」
ウェストコットが肩を竦めながら言う。
『そうだなぁ。神大のやつも驚いてたぜぇ?量産タイプの代物とはいえ、改造手術なしでリバースドライバーを起動させて、あまつさえお宅んとこのホワイト………えぇっと、何だったか?』
「……リコリスです」
『おお!それだ!そのリコリスを動かしたってんだから、大したもんだよなぁ。サンキュー、お嬢ちゃん』
「その呼び方はやめてください」
クラウンが上機嫌に言うと、エレンは益々不機嫌そうな様子で言った。クラウンはそれを見ると肩を竦めて、ウェストコットの方を向く。
『あらら、嫌われちったかぁ?』
「はは、すまないね。_____それにしても、彼女をASTに残してしまうのは、少し惜しかったかもしれないな。キリタニが折れてくれなかったら、我が社に迎え入れても良かったかもしれない」
「DEMに、ですか」
ウェストコットの発言に、エレンが聞き直す。
「ああ。丁寧に魔力処理、及び改造手術を施せば、マナやアルテミシア………それこそ、世界最強の
「…………」
ウェストコットがそう言うと、世界最強の
その様子を見て、クラウンがまたからかう。
『おぉやぁ?ジェラシー感じちゃったかぁ?』
「……感じてません」
『まぁたまたぁ、ハハハッ。………っと、そういやあんたらに、一つ良いこと教えてやるよ』
と、クラウンの雰囲気が、先程までとは一変した。
愉しげな調子はそのままに、彼を中心に取り巻く雰囲気が、一瞬にして冷たくなったかのようだった。
『____日本の、都立来禅高校に、【プリンセス】が現れた。今は華の女子高生として、元気に通ってるぜ』
「何?……どういうことだ」
クラウンが放ったその一言に、ウェストコットが眉をひそめる。
『ほらよ』
そう言ってクラウンが放った写真には、折紙と同じデザインの制服を身に纏う、美しい少女が写っていた。
間違えない、間違えようがない。
それは、精霊・【プリンセス】だった。
◆
「終わったー………」
聞き慣れたチャイムが校内に鳴り響くと同時に、五河士道は力を使い果たしたように机に突っ伏した。多分頭から煙が立っててもおかしくないだろう。事実、近くの席に座っている万丈は、まるで生気が抜かれたように机に横たわり、本当に頭から煙を立てていた。
だが、それも仕方ない事だ。何しろ士道たちは今、学校生活における難敵の一つ、期末試験を終えたばかりなのだから。
生徒達はゾンビのような挙動で身を起こすと、順にテストを前の席へと送っていった。
いつもよりクラスメートのゾンビ率が高い気がしたが、それも当然だろう。
ただでさえ範囲の広い期末考査だというのに、つい数日前に起こった、生徒・職員一斉昏睡事件によって、生徒達は集団で病院送りになっていたのである。
徹底的なガス管や建材、ガスを発する異物等の検査の末、休校は解除されたものの………無慈悲な事に、期末試験の日程は一日も動かなかったのである。
「なんだよ、情けないなぁ二人とも」
と、そんな士道と万丈に、他のクラスメートの面々と違い余裕そうな様子の戦兎が話しかけてきた。
「戦兎……お前、よくそんな元気だな」
「そこはほれ、天っ才物理学者ですから!テストなんか朝飯前ってやつだよ」
自信満々に胸を張る戦兎。若干イラっとくるが、実際それほどの頭脳なので何も言い返せない。
「………ん?」
と、ふと横を向いた際に、右隣に座った十香の姿が目に入った。一瞬前の士道と、現在進行形の万丈と同じように、机にびたー、と突っ伏している。
「十香、大丈夫か?」
「う、うむ……」
士道が話しかけると、十香がゆらりと顔を上げた。
「どうだった?」
「む ………むう、まあまあだ。セントが勉強を教えてくれたしな」
十香が疲れ果てた様子でひらひらと手を振ってくる。
前の中間試験では答案用紙に落書きしていただけ(点数は令音が赤点にならぬよう手を回していた)の彼女だったが、士道達にテストの意味を聞いてからは、自分でも勉強を頑張ろうと、始めていたのだった。
十香の行動はラタトスクとしても望むところらしく、テスト前に戦兎が勉強を教えてくれたのだが………分かりやすいとはいえ、やはり慣れない勉強は相当に彼女の体力を奪っていたようだった。実際、十香は、勉強会を始めて一時間で熱を出し、ついでに万丈は国語の問題で熱を出し、数学の問題で吐き気を催してトイレに駆け込んでいた。戦兎が頭を抱えていたのは言うまでもないことである。
「はい、ではこれで、一学期末テストは全教科終了です。皆さんお疲れ様でした」
タマちゃんが声を上げると、教室中から歓声と放念の息が漏れた。
「でも、今日はまだ決めることが残ってますから、帰っちゃだめですよぉ?」
タマちゃんが念押しするように言うと、答案の束を整え、教室を出て行った。
と、それに合わせるように、カッサカサになった十香と万丈がゆらゆらと椅子から立ち上がる。
「シドー、セント………少し、水を飲んでくる」
「あ、俺も………」
「お、おう。大丈夫か?」
「うむ………心配するな」
「あ、ああ……ちと、疲れただけだ」
言うと、十香と万丈はフラフラした足取りで教室を横切り、扉を開けて廊下へと出て行った。
「はは……まあ、頑張ったもんな」
「まあ十香はともかく、一応大の大人(精神年齢)のあいつがダレてんのもどうかと思うけど」
「そこはほら、万丈だし」
「それもそうだな」
はははは、と二人で笑う。
そのまま士道は椅子の背もたれに身を預け____ようとしたところで、ぴくりと眉を動かした。
理由は単純。視界の端に、左隣に座った女子生徒の姿が映り込んだからだ。
鳶一折紙。士道のクラスメートにして、精霊を狩るASTの隊員である。
「………ぅ」
「ん?士道、どうかしたか?」
「いや、少しな……」
戦兎との話を区切ると、士道は席を立った。
先月の一件以来、士道は折紙と一度も会話を交わしていなかったのだ。
なんとなく、この機会を逃すとまた話すチャンスを逸してしまう気がしたので、意を決して唇を開く。
「お、折紙」
「_____なに」
士道が名を呼ぶと、折紙は一瞬肩をピクリと動かしてから、いつものように抑揚のない声音で言ってきた。
士道は、あの一件について話を聞こうと思った。だが、この教室内でそんな話をするわけにもいくまい。帰りのホームルームまでには少し時間があるし、十香も席を外している。戦兎達には、後から事情を説明すればいいだろう。
士道は一瞬の沈黙の後、再び口を開いた。
「折紙、ちょっと、二人きりになれる場所に行かないか?」
「…………っ」
士道がそう言ったところで、折紙が眉を動かした。
「
そして何故か、一言ずつ区切るように言ってくる。
「ああ。ほら、前話をした階段の上とかでも____」
「_____来て」
折紙はすっくと立ち上がると、そのまま士道の手をむんずと掴んで歩いて行った。
「お、おい、折紙?」
「し、士道?」
「わ、悪い戦兎!ちょっと、後でな!」
「お、おう……」
戦兎の少し引きつった表情を見ながら、士道は折紙に連行されて廊下へと出て行った。
◆
「何だったんだ……?」
戦兎は士道達が去っていった廊下の方を少しの間見つめてから、やがて何かを思い出したように、ビルドフォンを開いた。
「そういえば東都のフルボトルは、もうコンプリートしたんだよな」
ビルドフォンに映し出された画面には、二十個のフルボトルと、その種類が記載されていた。ラビットフルボトルを始めとして、元の世界で東都が所持していたボトルはほぼ全てが戦兎達の手の元にある。これでビルドの強みとも言える、ハザードレベルでは測れない強さ、即ち戦略の幅や引き出しの多さがある程度は盤石になったと言えるだろう。
しかし画面を移動させると、戦兎の表情が少し曇る。
「……とはいえ、西都と北都のフルボトルはほっとんどゲット出来てねーんだよなぁ」
そう。
これまでのスマッシュとの戦いで、東都のボトルはゲットできた。そう、
西都と北都のボトルは、狙ってるんじゃないかと思うくらい、殆ど入手できていないのである。これまでの戦闘から、ある程度はあのクラウンが持っているようだが。
確かにボトルの本数自体は多いが、同じものばかりを使っていれば、いずれ対策もされる。やはりまだ、安心できるとは言い難い状況だ。
「エンジェルフルボトルもなー……使うとスッゲー疲れるし、相変わらず出来る原理が不明だし………ここまで分からないなんて、最っ悪だ………」
これまで士道と戦兎が生成したエンジェルフルボトルは、合わせて三つ。
一つは十香の霊力が込められた、玉座と剣が施された【サンダルフォンエンジェルフルボトル】
もう一つは四糸乃の霊力が込められた、白兎と雪の、【ザドキエルエンジェルフルボトル】
最後に、先月士道が生成した、琴里の霊力が込められた、戦斧と炎の【カマエルエンジェルフルボトル】
これらのボトルは、どれも解析した結果恐ろしい力を秘めていることが分かったが、同時に欠点もあった。
まず第一に、使用する際の消耗が激しいという事。
これは実際に戦兎も経験した事だが、エンジェルフルボトルを使用して変身すると、通常のベストマッチフォームや強化アイテムでの変身など比にならない程の体力の消耗が発生するのだ。現に先月のあの戦いの後、戦兎は無理がたたってあえなく医務室のベッドに放り込まれてしまった。
そしてもう一つが、応用性が低いという事だ。
調べた所、あのエンジェルフルボトルには相性の良い組み合わせ_____例えば【ザドキエルエンジェルフルボトル】なら、【ラビットフルボトル】と相性がいい_____と言うような、組み合わせが存在するのだ。
しかしその組み合わせ以外で変身した場合、そのエネルギーを制御出来ずに変身が解除されてしまう。実際に試してはいないが、シュミレーターに繋げて観測した結果、そのデータが出てきた。
要するに組み合わせが決まってる上に、消耗が激しくおいそれと使うことも出来ない。しかし代わりにパワーは強力、という、言ってしまえば諸刃の剣のような代物なのだ。
今後も使用には留意するべきだろう。取り敢えず、余程の状況でもない限り、使用を自粛するべきだ。
そう思いながら、戦兎はポケットから先日入手した、数少ない北都のフルボトル______【ロボットフルボトル】を取り出し、士道達が戻ってくるまでの間、見つめていた。
◆
それから、暫く時間が経った頃___七月の半ば。
伊豆諸島と小笠原諸島の中間に位置する、或美島という島。
その島の一端の、ある海岸で。
「…………………」
ボロボロの服、海水に濡れた肌、そして______赤、黄色、青のドッグタグを手に持った、一人の男が、静かに倒れていた。
どうでしたか?
また更新遅れてすいません。ついでにタイトル詐欺してすいません。
ディケイドコラボの構想、というか脚本?を考えてたら遅くなりました。八舞編や美九編が終わったら、アンコールと同時に冬映画的な立ち位置で書くと思います。
今回から八舞編がスタート、アニメで言うところの二期が始まりました!
そしてすいませんが、原作序盤にあった、真那の下りは次回冒頭で語らせていただきます。
そして_____あの男の登場フラグが立ちました。皆さんご存知、世界一カッコいいドルヲタのアイツです。
それでは次回、『第41話 テンペストと再会、友よ』、をお楽しみに!
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