耶倶矢「くっくっく、我ら八舞の前に平伏せ!人間どもよ!」
桐生「うわぁびっくりしたぁ!ていうか急に出てくるんじゃないよ」
夕弦「謝罪。申し訳ありません戦兎。耶倶矢がどうしてもあらすじ紹介に出たいと泣きながら駄々をごねるもので」
耶倶矢「ちょ、泣いてないし!ていうか、駄々もこねてないし!」
夕弦「嘆息。『私もあらすじ紹介にでーたーいー!!』と、龍我に子供のようにひっついていたのはどこの耶倶矢ですか」
耶倶矢「ち、違うから!あ、あれは!ああすれば、龍我があの竜騎士の秘密を暴露してくれると思ったから…………か、勘違いしないでよねっ!」
戦兎「わっかりやすいツンデレセリフだなぁ……。万丈今いねえけど」
夕弦「解説。それでは、私達が出演する、第43話を、どうぞよろしく見てください」
戦兎、耶倶矢「「ああ!言われた!」」
戦兎と万丈は絶望的な居心地で、全身に注がれる生徒達の視線を一身に浴びながら、十分程前の出来事を思い出していた。
「………なあ、戦兎」
「………何だ、万丈」
「……………どうして、こうなったんだ?」
「……………俺が一番訊きてえよ」
戦兎と万丈は左右にくっ付いた二人の美少女_____耶倶矢と夕弦を見やりながら、もう一度遠い目をして深く溜息をつき、肩を落とした。
◆
「_______さあ、さあ、我に話すが良い!貴様が変身したあの竜騎士は、如何なる存在か!この颶風の巫女たる耶倶矢に包み隠さず曝け出すのだ!」
「い、いやー、それはだなー………」
「質問。教えて下さい。あの半分こ仮面は何なのですか?途中姿が変わったことにも、興味があります」
「半分こ仮面ってなんだよ、あれは______」
リキッドスマッシュとの戦闘後、戦兎たちを襲ったのは、耶倶矢と夕弦からの質問攻めだった。どうやら耶倶矢はクローズを、夕弦はビルドに物凄い興味を持ったらしく、先程からこうして身を乗り出して聞いてくるのだ。
最初ははぐらかそうとしたのだが、一歩も引く気配がなく、しまいには自分が変身しようとすらしたため、仕方なく話そうとした、その時。
「_____いや、待て夕弦」
耶倶矢が急に質問をやめ、夕弦を片手で制した。
「質問。何でしょうか、耶倶矢」
「くく………夕弦よ。我はあの
「へ?桐生戦兎だけど…………」
「万丈、龍我だ………」
「ほう、戦兎に、龍我か。贄にしては中々勇ましい名ではないか。………と、それはさておき。この二人、あの装束の秘密を、頑として話そうとはせぬではないか。このままでは埒が開かん」
「肯定。確かにそうです。このまま質問責めを続けても、口を割りそうにありません」
夕弦が耶倶矢の意見に同調し、戦兎の方を見やる。
「そこで、だ。夕弦よ。我と貴様は様々な勝負をしてきた。それこそ、もう思い当たる勝負が無くなるほどにな」
歌劇でも演ずるかのように大仰な身振りをしながら、耶倶矢が続ける。
「だが………まだ、勝敗を決していないものがあるとは思わぬか?」
「疑問。勝敗を決していないもの、とは?」
夕弦が首を傾げると、耶倶矢はくくく、と含み笑いを漏らし、戦兎と万丈を一瞥した。
「へ?」
「はい?」
そして、再び夕弦の方へと身体の向きを戻す。
「______それ即ち………『魅力』!」
バッとカッコいいポーズを決めながら、耶倶矢が高らかに宣言した。
「真の精霊、颶風の巫女・八舞には、力や頭脳だけでなく、森羅万象をも嫉妬させるほどの美が、色香が、必要とは思わぬか?」
「思案。………確かに、一理あります」
夕弦が一瞬押し黙り、答える。
「疑問。ですがそれは、彼らの正体を暴く事と、どう関係があるのですか?」
「くくく。
「反論。耶倶矢は想像力しか脳がないではありませんか」
「う、うっさいし!そんな事言ってられるのも今のうちだけだ………。よく考えてもみよ、夕弦」
一瞬口調を乱しながらも、耶倶矢はまたも大仰な身振りで、戦兎と万丈を交互に指差す。
「この者ら………戦兎と万丈が、それぞれ我らに魅了されれば…………身も心も委ね、あの装束の秘密もポロっと話すと………そうは思わんか?」
耶倶矢が、これ以上の名案はない、とばかりの得意げな表情で、そう言い切った。
「得心。なるほど、耶倶矢にしてはよく考えてますね」
「くくく、そうであろう、そうであろう?我らの神聖なる決闘を再開し、なおかつ勝者には求める真実が約束される。まさしく一石二鳥、というやつだ。_____戦兎、龍我よ」
「へ?あはい」
「お、おう」
「貴様らを、今より裁定役に任ずる」
「ああ、うん…………て、え?」
「あん?何わけわかんねえこと言ってんだよお前」
戦兎は思わず聞き返し、万丈は言ってる意味どころか言葉の意味すら理解していなような顔で目を点にする。
だが耶倶矢には二人の意思などどうでも良いらしく、嘲るように顎を上げ、挑発するような口調で続ける。
「どうだ夕弦。この勝負、応ずる勇気が貴様にあるか?くく、まあ万象一切をひれ伏せさせる我の魅力を以ってすれば、勝敗など見えたようなもの。今尻尾を巻いたとて、卑怯者の謗りを受ける事などあるまいよ」
「否定。そんな事などはあり得ません。耶倶矢が勝つ道理はありません。夕弦の方がずっと魅力的です。男なんてイチコロです」
「くく、威勢だけは一人前よ」
「宣言。夕弦の方が可愛いです。耶倶矢はぶっちゃけ下の上くらいです」
「んだとこらぁぁぁぁぁぁッ!」
耶倶矢が芝居掛かった調子を一瞬で忘却の彼方へ放り去り、物凄い剣幕で叫ぶ。ちなみに戦兎達の主観ではあるが、耶倶矢は普通に相当美人な部類に入るだろう。
「……これで下の上なら、世の女性たちはさぞ苦しい戦いになるだろうなぁ」
「あ?何の話してんだよ戦兎」
「いや、何でもない」
と、そこで戦兎達が居ることを思い出したらしい。耶倶矢がハッと肩を揺らして、コホンと咳払いをする。
「と、とにかくだ!そこまで言うのなら異論はあるまい!」
耶倶矢はビッと夕弦に指を突きつけた。
「_____これが最後の決闘だ!この勝負の勝者こそが、相手を取り込み真の八舞となる!勝負の方法は単純明快!この我、耶倶矢が万丈龍我を。夕弦が桐生戦兎を_______相手より、
「承諾。______その勝負、受けて立ちます」
「「いやちょっと待てぇぇぇぇッ!!」」
◆
………そして現在に至る。
「………ああ、思い出した。こんな経緯だったな」
「………そういやそうだったな。………かずみんのやつ、大丈夫かな?令音さんに預けてきたけど」
「後で様子見に行こうぜ」
「………そうだな。あの馬鹿には一度キッチリ話してやらねえと」
ハハハハ、と二人で仲良く現実逃避をして、そして再び深い溜息をつく。あの後、令音との協議の結果、一海はフラクシナスの機材が持ち込まれたホテルの一室で、応急的にではあるが治療をし、二人については無理に突っぱねるのも危険ということで連れてきたのだが………やはり、学友達の視線が痛かった。
「ば、万丈、くん?そ、その子、どちら様、なの?な、なんかやけに、仲好さそう、だけど………」
「いけない!亜衣の霊圧が急激に下がっていく!」
「気を確かにして亜衣!まだ決まったわけじゃないわ!」
ざわざわざわと、生徒達がどよめき出す。何故か亜衣麻衣美衣の亜衣が、死にそうな顔で万丈の方を見ていた。だがそれも当然だろう。何しろ、はぐれたはずの戦兎と万丈が、いきなりそれぞれ女の子を連れて帰って来たのだから。
ちなみに令音の指示で、二人は霊装を解除し、来禅高校の夏服を着てもらっている。十香の時のように、視認情報で衣服を生成してもらったのだ。ただでさえ異常事態なのに、先ほどのような拘束具を着られたままでは、二人揃って特殊な性癖があると誤解されかねない。
すると、クラスの面々を掻い潜るように前に来た士道が、パントマイムで二人に意思疎通を図った。
↓以下、パントマイムでお送りします。
「(なあ・その子達・もしかして)」
「(想像の・通り・精霊・だよ!)」
「(なんで・連れて・来るんだよ!)」
「(仕方・ねえだろ!・くっついて・来たんだから!)」
「(これから・どうすんだよ!)」
「(どうも・こうも・ねえよ!ノープラン・だよ!・ノープラン!)」
「(てか・さっき・連れてきた・あの人・誰!?)」
すると、そんな三人の意思疎通をストップさせるように、後方から眠たげな声が響き渡った。
「……ああ、待っていたよ。
そこには二年四組の副担任・村雨令音が、ゆらゆらと頭を揺らしながら立っていた。
「転入生?」
「……ああ。本来なら休み明けに転入してくるはずだったのだが、ぜひ修学旅行に参加したいというものでね、現地で合流する手筈になっていたんだ。先程空港に到着したと連絡があったので、彼らに迎えに行ってもらっていたのさ」
そんな令音の言葉に、隣に立っていた珠恵がキョトンと目を丸くする。
「え?て、転入生?村雨先生、私そんなの聞いてないんですけど………」
「……急な話でしたから、きっと連絡が間に合わなかったのでしょう」
「は、はぁ………」
珠恵が困惑した顔を作りながら引き下がる。まあ副担任の方が先に転入生の事を知らされていたなら、そんな反応にもなるだろう。
「そ、そうなんだよ!いやー風が強くてさぁ、空港行くまで大変だったぜ。なぁ万丈?」
「お、おう!全くもってその通りだな!」
戦兎と万丈も慌てて言い繕う。すると、それに合わせるように、戦兎と万丈にピトッと張り付いた耶倶矢と夕弦が首肯した。
「くく………その通りだ。颶風の御子たる我を迎えられる事を光栄に思えよ、人間」
「肯定。彼らの言っていることに間違いはありません」
一応ここに来るまでに、戦兎と万丈が決闘とやらの裁定に協力する条件として、話を合わせるように言い含めてあった。
生徒たちはまだどこか訝しんでいたものの、教諭と当人達に肯定されてはそうと受け取るしかない。一先ずは納得した様子で、疎らに散っていった。亜衣も多少ダメージが回復したのか、未だにちょっと沈痛そうな面持ちではあったが、立ち上がって歩いて行った。
◆
令音に案内され、資料館奥の事務室に入った戦兎と万丈は、ソファに深く座り込み、ふうと息を吐いた。士道には後で令音から話をつけるようである。
「すんません。一海の事といい、助かりました」
「……いや、構わないよ。それより______」
言って、令音は戦兎と万丈______正確には、その腕にそれぞれ絡みついた二人の少女に目を向けた。
「さあ龍我よ。貴様はただ、我に身を委ねればいい。この八舞耶倶矢に忠誠を誓い、その身その心、その秘密までも捧げると言えばそれで良いのだ」
「誘惑。戦兎、この夕弦に全て捧げれば良いのです。その身に秘めた事も全て、夕弦に話せば良いのです。そうすればきっと、貴方にとって最上の悦びになるでしょう」
令音など眼中にないように、二人してそれぞれ戦兎と万丈の耳元に息を吹きかける。その度に戦兎は顔に脂汗を流し、万丈は顔を強張らせた。
「……厄介な事になったようだね」
「…………はい」
「全くその通りだ」
重苦しい声で首肯する。令音はぽりぽりと頰を掻いた。
「くく……むしろ役得であろう?我に見初められ、僅かとはいえこの我の寵愛を一身に受けられるのだ。幸運に咽び泣きこそすれ、嘆く必要などあるまい」
「懐疑。夕弦はまだしも、耶倶矢に言い寄られて喜ぶ男性がいるのでしょうか」
「ふ、ふん………いくら斯様な挑発をしようと無駄だぞ。全ては決闘の決着を見れば明らかになる。さあ龍我よ、言うが良い。我を愛していると。そして我にかの竜騎士の全てを、話すが良いのだ」
「質問。夕弦は可愛いですか?戦兎」
二人がそれぞれ戦兎と万丈に迫ってくる。万丈はただひたすら顔を強張らせ、戦兎は二人を宥めるように手を振りながら言った。
「二人ともちょっと待ってくれ。気になったんだが、さっきから言ってる、その決闘ってのはそもそも何なんだ?」
「………ん?ああ、言ってなかったか」
戦兎が問うと、耶倶矢が大仰に顎を上にやり、話し始めた。
_____そもそも耶倶矢と夕弦は、元々は【八舞】という一人の精霊であり、幾度目かの現界の際に、今の二人へと分かれてしまったのだという。理由は二人にもよく分からないようだが。
そして二人は互いの顔を見た瞬間、やがて一つに戻ることが分かったのだという。否、正確に言うのなら、知っていた、と言うべきか。存在が分かれた瞬間、自分たちの身体がどうなるのかを、本能的に理解したのだという。
しかし、既に本来の八舞の人格は失われており、一つになった際、主人格となれる、即ち、
そこで始まったのが、八舞の主人格の座をかけた、果てなき決闘だった。耶倶矢によれば現段階では九十九戦を終え、戦績は二十五勝二十五敗四十九分け。そしてちょうど100戦目となるのが、先刻のあの戦いであったという事である。そこに予想外の闖入が入った事で、この決闘へと変わったのだという。
「_____と、言うわけだ。最初こそアレだったがな、今は寧ろ感謝しているぞ。貴様らのお陰で今までにない戦いをする事ができるのだからな」
「肯定。確かに最後の決着が、今まで何度も引き分けてきた殴り合いというのもどうかと思っていました。この勝負であれば異存はありません」
言って、二人して戦兎と万丈を誘惑するように腕に絡みついてくる。
「いや、んな事言われても…………」
「急に言われたってよ………」
戦兎達は困惑するのを感じながら、令音に助け舟を求めるよう視線を送り、そしてポンと手を打った。
「そ、そういや令音さん。一海の容体、どうなったんですか?」
ひとまず今は宿泊予定の旅館の、万が一の事態になった際の治療用機材が持ち込まれた一室にて、安静にしているという報告だったが。
「……ああ、君たちが連れてきた彼か。大丈夫だ、容体は安定した。じきに眼を覚ますと思う」
「そ、そうですか………良かった」
海岸に倒れ、傷も負っていたのでもしかしたら、と思ったが、大丈夫なようだった。しかし令音はそんな彼らとは対照的に、難しげな表情でふうむと唸っていた。
「……しかし、困った事もある。フラクシナスとの通信が、途絶えているんだ」
「え?フラクシナスとの通信が?」
「そんなん今まで無かっただろ?」
「……ああ。現状では理由が不明だ。少し調べてみるよ」
言ってから端末を閉じ、椅子から再び立ち上がる。そして二人に迫る耶倶矢と夕弦をジッと見つめた後、静かに唇を動かした。
「……耶倶矢と夕弦、と言ったね。君達は、己が真の精霊・八舞となるため、セイとバジンをどちらが先に落とすか勝負をしている。………そうだったね?」
令音がそう言うと、耶倶矢と夕弦が初めて令音に目を向けた。
「ああ、その通りだ。見物は構わぬが、邪魔立てをするようなら容赦はせぬぞ」
「質問。あなたは?」
「……ただの学校の先生さ」
令音は適当に誤魔化すよう言った後、くるりと踵を返し、一枚のメモ用紙を戦兎達に手渡した。
「……セイ、バジン。君達は先に戻っていてくれたまえ。______耶倶矢、夕弦。君たちに少し話がある。付いてきてくれ」
「っ、おい、令音さん」
危険だ、という意思を込めて令音に視線を送る。仮にも二人は精霊だ。
しかし令音は、問題ない、というように手を上げてきた。
「くく……何を言うかと思えば。何故この我が、人間風情の言葉に従わねばならぬのだ」
「拒否。夕弦は戦兎と一緒にいます」
だが二人は頑として動こうとしない。しかし令音はそれすらも予想のうちとばかりに肩をすくめると、思わせぶりに言った。
「……セイとバジンは見かけによらず難物だ。話を聞いて損は無いと思うがね」
「何………?」
「……彼らの反応を見れば一目瞭然だろう?私の目から見ても、君たちは非常に可愛らしく、魅力的に少女だ。だというのに彼らは、未だ君達に心を寄せていないように見える」
『…………』
耶倶矢と夕弦が、目を丸くして顔を見合わせる。
「……どうするかね?私としては、別にどちらでも構わないのだが」
言って、事務室の扉を開ける。
二人は再び顔を見合わせると、名残惜しそうに戦兎と万丈から手を離し、令音の後を付いていった。
◆
時は過ぎ、十八時五十分。
日も落ち、日中の茹だるような暑さが改善され、響いていた蝉の声がキリギリスのそれに変わっていく。
あの後旅館へと移動した一行は、部屋に荷物を運び込み、夕食を済ませて自由時間を満喫していた。
そう____戦兎と万丈以外は。
「ここ、だったか?かずみんがいる部屋」
「ああ。令音さんの言う通りだったら、ここだな」
戦兎と万丈は、旅館のとある一室の前に来ていた。そこは令音の話の通りならば、
一度ノックをしてから、部屋の扉を開ける。
そこには、身体を起き上がらせ、こちらを見やる______
「_______戦兎………、龍我……………!?」
猿渡一海の、姿があった。
どうでしたか?
ごめんなさい、最後のシーンで一海とのやりとりも入れたらだいぶ長くなってしまうので、次回に持ち越させていただきます。
ま、まあでも一応、
そういえば仮面ライダーグリスの同時上映でドルヲタ、推しと付き合うってよ、が上映決定しましたね。あれほんと驚きました。絶対劇場で観に行きます。
それでは次回、『第44話 気まぐれなベルセルク』、をお楽しみに!
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