デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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十香「仮面ライダービルドにして、天……才?物理学者の桐生戦兎は………おーいシドー、ここはなんと読めばいいのだ?」

士道「え?ああここはこう読めば………」

十香「おお!なるほど!」

戦兎「『なるほど!』じゃないよ!どうして十香があらすじ紹介してるんだよ」

士道「大人気ないこと言うなよ天才?物理学者」

桐生「『天っ才物理学者』だから!疑問符を挟まないで!」

十香「む、むう………駄目だったか?セント………」

琴里「あー。中身おっさんの高校生が十香を泣かせたー」

桐生「ちょ!そんな言い方やめて!分かった分かったから!十香、続けて!」

十香「ッ!うむ、分かったのだ!しかし………もう殆ど時間がないぞ?」

桐生「あ、しまった!じゃあ後半の方を少し読んでくれればいいから!」

十香「そ、そうか?なら………絶体絶命のピンチに見舞われた、セントとリューガは果たしてどうなるか!第45話、是非見てくれ!」




第45話 ベルセルクと呼ばれた姉妹

三人揃ってたっぷり混乱し、十香が慌てて胸元と下腹部を覆い隠す。

 

「な、なななななななななななぜこんなところにいるのだ!セント、リューガ!」

 

「い、いやいやお前こそなんでここ入ってるんだよ!」

 

「こ、ここここ男湯だぞ!」

 

「何を言っている!ちゃんと皆に教わった通り、赤い方に入ったぞ!」

 

「は……!?」

 

「何言ってんだよ!」

 

そこで戦兎はハッと身体を揺らした。嫌な予感が全身を通り抜ける。

 

「まさか、お前ら……………」

 

言って左右に目をやると、耶倶矢と夕弦がキョトンとした様子で返してきた。

 

「うむ、戦兎と龍我が入る前に暖簾(のれん)を変えておいた。さすが我。策士よの」

 

「質問。何か問題でもありましたか?」

 

「最っ悪だぁぁぁぁぁぁあ………ッ!」

 

戦兎は盛大に頭を抱え、二人を怨嗟の篭った目で睨みつけた。

恨み言の一つでも吐きたいところだが、今はそれどころではない。万丈の頭をつかみ、十香に向かって湯船に下げるような勢いで頭を下げる。

 

「すまん、十香!信じてくれ!俺たちは誓ってこんなことするつもりじゃなかったんだ!」

 

「ゴボッ、ゴボ、ゴビ、ゴボブバンバヨゼンボ(おい、どうしたんだよ戦兎)!」

 

「お、おお…………!?」

 

戦兎達が必死に訴えかけると(約一名は湯に頭が浸かった状態で)、十香は面食らったような顔になった。

 

「で、では何故こんな所にいるのだ………?」

 

「騙されたんだよ!すまん、すぐ出てくから!ほら、行くぞ万丈!」

 

「ゴボァッ!ケホッ、ケホッ、おいちょ、説明しろよ戦兎!」

 

「あ………セント、リューガ!」

 

戦兎が万丈の頭を強引に掴み、なるべく十香の身体を見ないようにして湯船から上がろうとすると、不意に十香が手を取ってきた。

 

「ど、どうした十香」

 

「いや………そちらはまずいと思うぞ」

 

「へ?」

 

「あん?」

 

戦兎と万丈が目を点にすると同時、またも引き戸が開き、女子の御一行様が入ってきた。

 

「っ、まずい_____」

 

「あ?おい、なゴボァッ!?」

 

慌てて万丈を引きずりながら湯船に身を沈め、岩陰に隠れる。

よく考えれば当然の事だ。入浴時間になって十香が入ってきたという事は、他の女子達も一斉に入ってきたという事である。

 

「やー、広いじゃなーい!」

 

「あ、転入生さん、もう入ってたんだ。ハヤイーッ!」

 

「海すぐそこじゃーん!いーじゃーん!いーじゃんスゲーじゃん!」

 

女子達の甲高い声が聞こえてくる。戦兎の脳内にさながらハザードトリガーのような、ドンテンカンな危険信号が聞こえてきた。

 

「さ、最っ悪だ…………!ど、どうすりゃいいんだこれ…………!考えろ、考えろォォォ……!!」

 

かつて見舞われたことのないピンチに、戦兎は盛大に頭を抱えた。脳内で『ヤベーイッ!』という警告音が何度もリピート再生される。

それでもどうにか自身の天才としての頭脳をフル回転させるが、極限状態の今ではネガティブな未来のイメージだけが無駄に克明に映し出される。

 

もしこんな所に潜んでいるのがバレた時には、間違いなく袋叩きにされるだろう。いや、それだけならまだいい。いや良くはないが。

最悪の場合二十六歳のおっさんが十六、七歳の女子高生の風呂に白昼堂々忍び込んだと大々的に報道され一生消えることのない性犯罪者のレッテルを貼られた挙句に残りの高校生活がまるで指名手配犯だった頃のような逃亡生活になり、変態とか性欲の塊とかロリコンとか言われ続けながら残りの人生を過ごしていくんだ。ああさようなら俺の第二の人生________

 

と、戦兎が半ば悟りを開いたような状態でガタガタ震えたところで、十香が戦兎達の陰を隠すように移動してきた。

 

「と、十香………!」

 

「セント達が悪いのではないのだろう………?なら、私の陰に隠れて早く逃げるのだ」

 

「…………!す、すまん。この借りは必ず返す………!」

 

幸い湯気と赤褐色の湯のお陰で、戦兎達の陰は見えづらくなっている。十香という隠れ蓑があれば、女湯の外くらいには逃げ出せるかもしれなかった。

 

「よし………では行くぞ」

 

「あ、ああ。良いな?万丈」

 

「は?お、おう!」

 

万丈は一瞬戸惑ったようだが、何となくの状況は察したらしく頷いた。こういう時は察しのいい奴である。

十香が湯船に浸かりながら、ゆっくりとカニ歩きを始める。その陰に隠れながら、二人で湯の中を進んでいく。

こんな時に消しゴムボトルがあればな、と心中思っていた、その時。

 

「あー!十香ちゃんはっけーん!」

 

「どしたの?そんな端っこで」

 

「ていうかうっわ、肌キレー。揉ませろコラー!」

 

十香の前方に、亜衣麻衣美衣トリニティが現れた。戦兎の脳内の警告音がマックスハザードオンになる。

 

「ひ………っ」

 

「い、いや、何でもないぞ!気にするな!」

 

十香がそう言うも、亜衣麻衣美衣は興味津々の様子だった。このままでは、十香の背後にいる戦兎と万丈にも気づかれてしまうだろう。

 

と、そこで。

 

 

『キュルッキュイーッ!キュルッキュルゥ!』

 

 

頭上から、聞き覚えのある鳥のような鳴き声が聞こえた。

 

「あ!飛行機の時の鳥ちゃん!」

 

「こんなところまで来たのねー!」

 

「マジ引くわー」

 

アライブガルーダだ。鳴き声を鳴らしながら、右往左往して飛んでいる。見たところ、迷い子のようだ。

しかしその鳴き声によって、三人の意識が逸れる。

 

よし、今だ万丈!

 

「は?って、うわぁぁぁぁぁぁあ……………ッ!?」

 

その一瞬の隙を逃さず、戦兎はハザードレベルに任せて万丈を担ぎ上げると、岩縁から海へとダイブした。

 

 

 

 

一方その頃、旅館の一室では。

 

 

「ガルーダどこだよーッ!?」

 

 

士道が部屋中のカバンを漁って、ガルーダを探していた。

なお数分後、窓の外から無事(何故か所々濡れた状態で)発見できたようである。

 

 

 

 

「…………ん?」

 

「あん?」

 

部屋で小型端末を操作していた令音と、座椅子に座りながらケータイを弄っていた一海は、不意に首を捻った。扉の外から二人分の、ペタペタという足音が聞こえてきたのである。

次いでその音が部屋の前で止まったかと思うと、コンコン、と扉がノックされた。

 

「おう、誰だー?」

 

一海が立ち上がって出ると、扉がゆっくりと開き、タオル一枚を腰に巻きつけただけの戦兎と万丈が、全身びしょ濡れで肩を抱いてガタガタ震えていた。

 

「なっ!?ちょ、お前らなんだよその格好!」

 

「ど、ドライヤーを、もじぐば、ドライヤーボドルを…………」

 

「べ、べや、上がらぜて…………」

 

「うおいちょこっち来んなおいやめろ濡れてっからあーッ!あー!!」

 

戦兎と万丈が何か縋るような様子で一海に近づき、一海が全力でそれを引き剥がそうとする。

令音はその様子を見て、数秒考えを張り巡らせ_____ポンと手を打った。

 

「……夜這いには、少し早いのではないかな?」

 

 

 

 

どうにか海から上がって令音の部屋まで辿り着き、予備の浴衣を借りた戦兎と万丈は、湯呑みに注がれたお茶を飲み干して大きくため息をついた。

 

「すいません、助かりました………」

 

「ったく、本当に死ぬかと思ったぜ………」

 

「……いや。災難だったようだね」

 

「全身びしょ濡れでくっから何かと思ったじゃねーか」

 

言って、令音と一海が肩をすくめる。

 

「_____それで、【フラクシナス】との通信は回復したんですか?」

 

戦兎が訊くと、令音が無言で首を振った。

 

「……いや、駄目だ」

 

「そうっすか………じゃああの二人______耶倶矢と夕弦は何なんですか?」

 

令音か。小さく首肯し、テーブルの上に置かれた小型のノートパソコンを操作する。すると画面に、望遠で撮影された、風の中に踊る二つの人影と、細かな数値や文字列が表示される。

この画像では人相までは判別できないが______

 

「これ、耶倶矢と夕弦ですか?」

 

「……ああ、恐らくね」

 

戦兎が画面を指さすと、令音は小さく首肯した。

 

「……実は、彼女らは我々の間ではちょっとした有名人でね。風の中で二人組の精霊を見たと聞いた瞬間から、何となく目星は付いてたんだ」

 

「有名人………て、いうと?」

 

「そりゃお前、テレビとかに出てるって事だろ」

 

「いや違ぇーだろ」

 

万丈の言葉に、一海が反論する。

 

「あ?じゃあ何だってんだよ」

 

「へっ、想像力の乏しい人間はこれだからよー。いいかぁ?こいつらはこうやって目立って現れてる。ご丁寧にこんな台風まで伴ってな。つまり、こいつらは誰かに自分を見てもらいたい……………即ち、アイドル志望って事だ!」

 

一海がさも名推理と言わんばかりの調子で言い、万丈と「イェーイ!」と手を叩いた。

 

「な訳ねえだろ」

 

しかし戦兎がその手を小突き、「ガーン!」と二人が突っ伏する。………なんか、美空がベルナージュに意識乗っ取られた時にも似たような光景を見たような。

すると令音がさして気にする様子もなく、説明を始めた。

 

「……彼女らは【ベルセルク】と呼ばれている。君達も見た通り、風を伴う精霊だ」

 

「【ベルセルク】…………」

 

「……ああ。世界各地で現界が確認されている二人組の精霊だ。こちらに現れては、常に二人でじゃれ合っているだけなのだが………その規模が問題でね」

 

「………なるほど」

 

戦兎は頭を掻きながら昼間の事を思い出した。木々を薙ぎ海を荒らす凄まじいほどの大嵐。あれを何度も起こされては堪ったものではない。

 

「……各地で起きている突発性暴風雨の何割かは、彼女らのせいだろう。その上目撃情報が非常に多いときている。アメリカではゴシップ誌に写真が撮られ、天使かUFOか、はたまた空飛ぶスパゲッティ・モンスターかでちょっとした議論になっているらしい」

 

「目撃………って、そういうことか」

 

「………なあかずみん。スパゲッティモンスターって何だ?」

 

「あぁ?そりゃお前、スパゲッティモンスターなんだからスパゲッティのモンスターだろ」

 

「いやスパゲッティのモンスターってなんだよ。訳わかんねーよ」

 

「いやだからよ、こう、スパゲッティがあるだろ?そこからこう、腕とか脚がだな」

 

と、一海と万丈がスパゲッティモンスター*1について話している傍で、戦兎が気付いた。

そう言えば、あんな近くに精霊が現れたというのに、空間震警報が鳴っていなかったのである。

 

「まさか、あの二人は静粛現界を?」

 

戦兎が訊くと、令音が首を横に振った。

 

「……いや、予兆は確認されていたようだ。______太平洋沖の遥か上空で、だがね」

 

戦兎は思わず目を丸くした。

 

「太平洋沖の上空、ですか?」

 

「……ああ。【ベルセルク】の二人の空間震規模はAランク………十香たちとは比べ物にならない大爆発だ。だがどういうわけかその多くは、何もない空中で確認されている」

 

「という事は______この島まで、空中から移動してきた、という事ですか?」

 

「……流石に勘がいいね、その通りだ。空中で現界した後に、まるで移動性大気圧のように二人で組んず解れつしながら、数百キロという距離を、僅か数分で移動してきたのさ」

 

「……マジかよ………」

 

「……世界を悩ませる意思ある台風さ。人間への明確な敵対行動を取るわけでも、世界を憎むでもなく、二人で争う余波だけで山河や街を壊滅させる。気まぐれな狂戦士だ」

 

令音がそう言いながら、キーボードを叩く。すると画面には、滅茶苦茶に破壊された街の様子が映し出された。

 

「……彼女達による被害は甚大だ。加えてその姿を衆目に晒しているというのも、精霊の存在を秘匿しておきたい組織にとっては悩みの種だ。故に耶倶矢と夕弦は、ラタトスクからもASTも、優先目標に入っている。……だが、今まで彼女らに接触できたものはいない」

 

「いない?………そうか!移動範囲と速度が………」

 

「……そう。速すぎるのさ。現界してからでは、誰も彼女たちに追いつけない。だからこそ君たちが二人に接触出来たのは、僥倖中の僥倖とも言える」

 

「なるほど………」

 

令音は頭をゆらりと動かし、続けてきた。

 

「……確かに今はフラクシナスとの連絡が途絶え、ラタトスクからのサポートが受けられない状況だ。私も今手元にある機材では、十分な解析は行えない。今までのように、スマッシュやマッドクラウンなどからの妨害を受ける可能性もある。このまま攻略を行うのはリスキーだろう。だが____悪いことばかりではない」

 

「と言うと………」

 

「……彼女らは今、向こうから君たちの気を引こうとしているじゃないか」

 

「ああ………」

 

戦兎は頬に汗を掻いた。そのせいで先程はえらい目に遭ったのだ。

 

「……てか万丈、お前も聞いとけよ。今回はお前も関係ある話だからな」

 

「いやだからそこは醤油じゃなくて味噌バターでって、戦兎?どうした?」

 

「どうしたじゃないよ。いつまで訳の分からない話してるの」

 

一海とずっと話していた万丈をこちらに向けさせ、話を再開する。

 

「……極めて遭遇率の低いベルセルク相手に、これは願ってもないチャンスだ。この機を逃すと、何の冗談でもなく、耶倶矢と夕弦にはもう二度と会うことができないかもしれない。だからこそ、二人の気が変わらないうちに封印を施してしまいたいんだ」

 

「てことはラタトスクのサポート無しで、攻略するって事か…………」

 

言ってから、戦兎はほんの少しの緊張感を感じた。

戦兎自身封印能力を持ってはいるものの、自分で攻略した精霊は、今のところ四糸乃一人である。ラタトスクによるバックアップ無しで、果たしてどこまでやれるか、と言うところだ。

 

「……そうなるね。これがシンだけでの攻略だったら、問題が生じていたが………幸いと言うべきか、二人はセイとバジンを、それぞれ気を引かせようとしている」

 

「あん?ちょっと待ってくれ令音さん。聞いた話じゃその霊力を封印する力ってのは、その五河士道ってやつと、戦兎しか持っていなかったんじゃないか?」

 

一海が疑問を問いかけると、令音は小さく首を振った。

 

「……ああ。その通りだ。_____つい先月までは、ね」

 

「あ?どういう事だよ」

 

「……備わっているのさ。______バジンにも、精霊の霊力を封印する力が」

 

「…………」

 

令音がそう言うと、万丈はほんの少し視線を逸らした。戦兎はそんな万丈を、黙って見つめている。

 

先の琴里の一件で起こった、マッドクラウンとナスティシーカーとの戦い。

 

あの戦闘に於いて、万丈はクローズチャージに変身して、マッドクラウンと戦ったのだが____戦兎が発見した時には既に変身が解除され、気絶した状態だったのだ。

それからフラクシナスに搬送され、精密検査を受けたところ______大きなダメージなどはなく、特に問題はないかと思われた。

 

_____だがしかし、その代わりに万丈の身体に、一つの変化が確認されたのだ。

 

 

それこそが、霊力の封印能力。まるで眠っていない力が覚めたように、突如として確認されたのだ。

令音ですらも想定していなかったようで、当然フラクシナスでは騒ぎになった。その後は万丈も攻略する事態に備え、一応訓練はして来たのだが_______

 

「………」

 

万丈の顔は、どこか浮かない様子だった。

 

「あ?おい龍我、どうしたんだよ」

 

「………別に、何でもねえ」

 

「なんだ、緊張してんのか?」

 

「…………まあ、そんなとこだ」

 

万丈がいつもより何処か投げやり気味に返事をする。その顔は事態を理解はしていても、どこか割り切れなさを感じているような、そんな表情だった。

 

「………まさか」

 

思い当たる節があった戦兎は、ハッとしたように顔を上げる。

しかし令音は三人を少し見やると、再び説明を始めた。

 

「……それでは、当面の予定だが_______」

 

 

 

 

「_____ふッ、はッ!」

 

その夜。

万丈は夜の海岸で、一人パンチングの練習をしていた。先ほどまでは砂浜で座っていたのだが、居ても経ってもいられずに、身体を動かし始めたのである。

しかしこうして身体を動かしていても、万丈の胸中にあるモヤモヤは晴れなかった。それどころか、どんどんと増しているような気がする。

 

「____あー、くっそ」

 

やがて拳を止め、その場に座り込む。どんなに動かしていても、身が入らないのだ。

先程令音に言われた言葉が、ずっと頭の中で繰り返されているのである。

 

 

「(………今回、セイは夕弦を、バジンは耶倶矢を相手にすることになる。バジンは今回が初めてだが、私としても精一杯のサポートをするつもりだ)」

 

 

精霊とデートをして、デレさせる。

 

言葉にすれば阿呆らしいそれは、世界を救うための数少ない方法だ。

 

その事の重大さや責任が分からぬほど、万丈は馬鹿ではない。彼とてその目で今までも十香や四糸乃など、多くの精霊達を______世界から拒絶され、自身の意思に関係なく世界を破壊してしまう彼女らを、何度も見てきた。

 

だが________

 

 

 

「『あぁ、こんな事になっちまったか。でも、困ったなぁ。攻略やデートをすると言っても、俺には最愛の彼女が_____』」

 

「………後ろで人の気持ちを捏造してナレーションしてんじゃねえよ」

 

 

万丈が投げやり気味に声をかけると、後ろの木の陰から戦兎がひょっこりと出てきた。

 

「………見てたのかよ」

 

「まあな。あの後お前、ずっと浮かねえ顔してたからな。伊達に付き合い長いわけじゃねえよ」

 

戦兎が隣に座り、「バナナ食うか?」と聞いて、どこからかバナナを取り出す。

いらない、と答えると、戦兎はもう一度聞いた。

 

 

「_______お前の恋人の事で、何か思うところがあるんじゃないのか?」

 

 

「…………っ!」

 

戦兎の核心を突く質問に、万丈は分かりやすく動揺した。

その様子を見て、戦兎がやはり、と言わんばかりの表情になる。

 

「やっぱりな。お前はすーぐ顔に出る。だから分かりやすいんだよ」

 

「……うるせぇ」

 

指摘されたことが何となく悔しかったのか、万丈が地面の砂を掴んで遠くに投げる。砂は潮風に煽られ、遠くへ霧散していった。するとその砂つぶの一つが、万丈の顔元に来たのか、万丈がむず痒そうな顔になり、「ハックショイッ!」と大きくくしゃみを出した。

 

「………バカだな」

 

「クシュンッ………うっせえよ」

 

万丈は鼻を擦ると、真面目そうな顔になり、口を開いた。

 

 

「_______俺と戦兎がやんなきゃ、あいつらも、世界も、何も救えねえのは分かってる。俺のこの気持ちが、只の我が儘だって事もな」

 

 

けどよ、と、まるで抑え込んでいたものを吐露するように、再び言葉を紡いだ。

 

 

「______デレさせて、キスするって方法が…………いまいち、乗り気になれねえ。なんつーかよ…………香澄(かすみ)を、香澄を大事に想ってた、自分の気持ちを裏切るようで、嫌なんだよ…………ッ」

 

 

そう言い、再び砂を掴み投げる。その答えを聞いた戦兎は、考えていた通り、という様子で顔を伏せた。

 

 

_____小倉香澄(おぐらかすみ)

 

かつて元の世界で死んだ、万丈の、最愛の恋人。

悪の組織、ファウストによって捕らえられ、スマッシュへと変えられ、その身体の病弱さ故に倒さざるを得なかった存在。

 

 

『______私と出会わなければ………もっと…幸せな人生が有ったはずなのに…………ごめんね………』

 

『ふざけるな………ッ!これ以上の人生が有ってたまるかよ!俺は………お前に会えて…………最高に、幸せだった…………ッ!』

 

『_____ありが、とう……………』

 

 

_____共に見ると約束した、桜の花を見ることすら許されず、その手の中で消えていった感触を、万丈は忘れたことがない。

 

そしてその後悔は、助けられなかった戦兎にも残っていた。責任を感じ、戦兎も目を伏せてしまう。

 

 

「…………万丈、俺は______」

 

「………いや、それはもういいんだ。あん時お前がいなかったら、香澄に別れを告げる事も出来なかったからな。それは、感謝してもし切れねえよ」

 

万丈はそれだけ告げると立ち上がり、砂を叩いた。

 

「………悪いな。俺の愚痴に付き合わせちまってよ。明日は早えんだろ?早く寝ないとなー」

 

と、わざとらしく言い、旅館の方へ戻っていく。

戦兎はその後ろ姿を、しばし見つめ、やがて自身も旅館へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

*1
アメリカ合衆国のボビー・ヘンダーソンという人が作った宗教と、そのシンボルのモンスターの総称。見た目はカタツムリみたいな目とミートボールみたいな物体が二つあり、その周囲に白い触手が生えているらしい。(Wiki参照)




どうでしたか?
また…………また更新が遅れた……………すまない…………すまない…………。

申し訳程度ですが、こちらアライブのイメージイラストです。第五章にしてようやくお見せできました。


【挿絵表示】


まあこんなもんです。…………誰が支援絵描いてくれないかな?チラッチラッ。(読者にわざとらしく媚びる作者の屑。ほんとすんません)
次回はもっと早く更新したいです……

それでは次回、『第46話 デレさせなければ生き残れない!』をお楽しみに!

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