万丈「ひとーつ!修学旅行に来た俺たちは、二人の精霊、耶倶矢と夕弦に遭遇する!」
士道「ふたーつ!そして戦兎達はその最中、かつての仲間である、猿渡一海と再会を果たす!」
桐生「そして三つ!なんだかんだで耶倶矢と夕弦を攻略する事になった俺と万丈は、デートに挑むのだった!」
万丈「なあ、なんかいつもとあらすじ紹介が違うくね?」
桐生「気分だよ気分。いっつも同じ挨拶じゃつまんないだろ?」
士道「あれ、戦兎この前『いつものやり方だとネタが無くなる』ってぼやいてなかった?」
桐生「ちょ、そういう裏の話を表でするんじゃないの!と、というわけで、第47話をどうぞ!」
「………ま、まったく、酷い目に遭いました………」
来禅高校修学旅行のカメラマン____もとい、DEM社第二執行部部長兼、代表取締役秘書の、エレン・メイザースは、辟易した様子で、海岸近くの林の影にいた。
本来であれば
その後、小一時間の格闘の末にどうにかこうにか砂の中から這い出し、息も絶え絶えになりながら、ここまで避難したというわけである。
「………随分と面白い事になってたようだねぇ。エレン・メイザースくん」
とその時木の上から、この苛立たしい精神の琴線に思いっきり触れてくるような声が、響いてきた。
声の主は誰だか分かりきっている。エレンは込み上げてくる苛立ちをどうにか抑えて、声の主に話しかけた。
「……何の用ですか?プロフェッサー・シンギ」
「あらら、怒り心頭と言ったところかな?その声音は」
相変わらず物腰丁寧に嫌な口調で話しかけてきた相手____神大針魏は、肩をすくめると座っていた木から、地面に降りた。
「いやぁ、最強の
「っ!待ってください。その不愉快なあだ名は誰から聞いたんですか!?」
その言葉を聞いた途端、エレンが物凄い形相で、神大の襟元を掴んでくる。あまりに必死すぎる様子に、珍しく神大も面食らった顔になった。
「こらこら、服に皺が付くだろう?それにそんなに怒ってたら、君の顔にも皺が付く」
「………大きなお世話です………!というか、何ですかこのふざけた服装は」
「ふざけただって?心外だな。これは私の趣味だよ」
そう言われた神大の服装は、ハイビスカスの花がプリントされた半袖シャツに、『ブルルラァッ!!』と厳ついフォントで書かれた水着、そしてサングラスにキャップ、極め付けは袖が切られた白衣という、どこからどう見ても胡散臭い服装だった。白衣さえなければギリギリ辛うじて普通の観光客にも見えたかもしれないが、その長い黒髪が全て台無しにしていた。
これ以上は藪蛇だと思ったエレンは深く追求せずに溜息をつき、再び口を開いた。
「………それで、本当の用件はなんです?」
「おっと、そうだった。学校を辞めてしまったから、ここに来るまで割と苦労したんだ。用件を済ませないと、苦労が水の泡になっちゃうね」
そう言って半袖の白衣の襟を直すと、さっきまで上に座っていた木の下へ行き、何か銀色に光る物を取り出した。
よく見るとそれは、銀色のアタッシュケースだった。パッと見た限りは、普通のケースに見える。
「____以前から依頼されていたものが、完成したよ」
神大はそれを持ち上げると、エレンの元まで持って行き、ケースを開けた。
「っ、これは………」
そこに入ったものを見て、エレンは小さく息を漏らした。
そして神大はその反応を見て、ニヤリ、と、まるで
「____君専用に調整した専用のリバースドライバーと、擬似ボトルだ。CRユニットとの並列稼働も可能にしている。ドライバーの副作用を君のために排する事に成功した、私の功績を褒めてもらいたいね」
そこに入っていたのは、黒光りする注射器型のベルト、リバースドライバーそのものだった。その横にはそのドライバーに装填するための、試験官のような形をしたボトルが収められていた。
「………」
エレンはそのドライバーを手に取ると、少しの間、それを見つめた。
無駄な装飾のない、洗練されたフォルム。人を超人足らしめるための、まさに悪魔の道具である。エレン自身、何度かこのベルトを使用した事があるし、実際に訓練も行なった。
当然の結果として訓練の結果は他を圧倒し、寄せ付けないほどだった。彼女自身の、最強と呼ぶに伊達ではない強さと、そのベルトの性能が、彼女をさらに強化したのだ。
「………今回の君の任務は、確か『プリンセス』の確保、だったかな。………そのベルトを使うには、もってこいの舞台だと思わないかい?」
「……なるほど、そういう事ですか」
その意図を察したエレンは、不敵な笑みを浮かべて応じた。
それを見た神大も、満足そうに笑い、踵を返した。
「では、私はこれで失礼するよ。他にやる事もあるしねぇ」
ヒラヒラと手を振り、姿を消す神大。
エレンはそれを見やることもなく、再び行動を開始したのだった。
______それから十分もしないうちに、再び女子高生達の毒牙にかかって砂の中に埋められたのは、また別の話である。
◆
十香が来た後、戦兎達は当初の予定を変更し、ビーチバレーをする運びになった。
十香が来たから、というのもあるが、一緒のチームで戦う事により、結束や仲間意識を高めよう、という魂胆らしい。
ちなみにチーム分けは、
Aチーム……耶倶矢、夕弦、戦兎。
Bチーム……十香、万丈、令音。
耶倶矢と夕弦が不満を残すチーム編成ではあったが、令音の『勝ったチームにはシンやセイ、バジンの誰にも知られたくない秘密を教えよう』という一言のもとに、試合は開始された。戦兎と万丈は冗談じゃないと抗議したが、無慈悲にも受け入れられなかった。
「よし!では行くぞ!」
そして十香の威勢の良い声と共に、試合は開始された。
が______
「いッ!?」
ボヒュゥッ!!という音と共に、ボールがネットを容易く突き破り、そのまま弾丸のごとく伸びてくる。戦兎は咄嗟に身体を横に移動させた。
ボールはさっきまで戦兎がいた場所を刺し穿つと、ギャギャギャギャァッ!と浜辺上でベーゴマのように踊ってようやく停止した。
「令音!今のは何点だ!?」
「……0点だ」
「むう、技術点は追加されないのか……」
「十香、多分だけどお前、なんか別の競技と勘違いしてるぞ。あと殺す気か!?」
そんな十香の一撃を見てか、耶倶矢が低い笑い声を上げた。
「くく……やるではないか。どうやら我も本気を_____」
「出さんでいい出さんでいい!」
こんな球の応酬をされては、命とハザードレベルがいくつあっても足りない。戦兎は全力で首を横に振った。
「ふん、まあいい。次は我々のサーブだな」
言って、耶倶矢がボールに手を伸ばし、存外綺麗なフォームでもって、相手のコートにボールを放った。
「おお、来たぞ!」
十香が声をあげ、ボールをレシーブする。
するとその後方に立っていた令音が、綺麗なトスを上げた。その時に令音の胸が上下に揺れ、一瞬だけ目が移ってしまう。
「警告。危険です」
「やべっ!」
夕弦に言われ、ハッと気づく。すると目の前には、ネットを超える勢いでジャンプした万丈の姿があった。
「オーラァッ!!」
裂帛の気合と共に、万丈がボールを手のひらに叩きつける。普段から筋肉筋肉言うほどの力はあるのだろう、その威力は確かに凄まじかった。
「くっそ、舐めんなッ!」
しかし、ここでタダでやられる戦兎ではない。
素早く後方にジャンプし、耶倶矢と夕弦の方向に、ボールを受け流す。
「よっし、今だ!」
「心得た!」
「同意。行きます」
戦兎がボールを受け流した方向に、耶倶矢と夕弦が滑り込む。
だが、二人同時に同じ位置に走り込んだためか、二人は頭をゴツンとぶつけてその場に倒れ込んでしまった。その間に、ボールはコート内でバウンドし、コロコロと砂の上を転がっていった。
「くあっ!な、何をしているのだ夕弦!」
「反論。こちらの台詞です。邪魔をしないでください」
耶倶矢と夕弦が額を押さえながら睨み合う。
「……十香。今のようにコートに入れれば、一点だ」
「おお、なるほど!やったな、リューガ!」
対して、反対のコートは賑やかだった。十香と令音、万丈がハイタッチをする。すると万丈が戦兎の方を向き、
「(悪いな、秘密を暴かれるのは、お前だ)」
と、ドヤ顔で戦兎に意思を伝えてきた。
「……あンっの野郎、後で絶対泣かせてやる」
と、戦兎がカチンときたが、それに構わず二人は言い合いを続ける。
「今のはどう見ても我の領分ぞ。出過ぎた真似をするでない!」
「反論。うすのろな耶倶矢では間に合わないと思いました」
「な、なんだと貴様!」
「応戦。何ですかこのやろー」
「って、おい落ち着け二人とも」
と、戦兎が間に入るのと同時に、向こうのコートで令音が、十香に耳打ちをした。
すると、
「_____ほう、そういうものなのか」
なんて言いながら、十香が踏ん反り返るように耶倶矢と夕弦を見下ろしてくる。
「ふっ、なんだ。耶倶矢と夕弦も大したことがないな!」
『………!』
「あ?急に何言ってんだ十香?」
見え透いた挑発に、しかし耶倶矢と夕弦はピクリと反応した。
万丈は何を言ってるんだか分からない様子で、首を傾げた。
と、令音がまたもひそひそと十香に耳打ちする。
「耶倶矢は弱虫で夕弦はへたっぴなのだ!二人揃ってへっぽこぴーだな!」
『…………』
やたら幼稚な悪口だったが、十香のその煽りに、耶倶矢と夕弦は静かに目を細くした。
「……ねえ夕弦」
「返答。何でしょう」
「……やっちゃう?」
「同調。やっちゃいます」
二人が、ちらと視線を交じらせ合う。
次のサーバーである令音はボールを手に取ると、ちゃんとしたフォームでコートの隅にボールを放ってきた。
「夕弦!」
「返答。わかっています」
だが、夕弦がすんでのところで滑り込み、そのサーブをレシーブする。
そしてそのボールを、耶倶矢が打ち上げる。先ほどの醜態が嘘かと思えるほどの連携プレーである。
「くっ、令音!」
「……ああ、分かっている」
すると次いで、令音がそのボールをトン、と軽やかにトスした。すると、今度は十香が高く飛び上がるのが見えた。
「おおッ!」
叫び、はるか上空から鋭いアタックを放ってくる。
「戦兎、止めろ!」
耶倶矢の声が響き、戦兎も慌てながら十香の一撃に備えた。
が、ボールは戦兎の手ではなく、一直線に顔面に突き刺さり、そのまま激しくバウンドして天高く舞い上がった。凄まじい衝撃と共に、視界がチカチカと眩む。
「ぐはァッ!?」
「す、すまんセント!狙いを見誤った!」
「賞賛。ナイスです戦兎」
しかし朦朧とする意識の中で、夕弦が声をかけてきた。
「設営。耶倶矢」
「おうとも!くく、後は知らないぞ!」
夕弦がその場に片膝をつき、両手を組み合わせて手のひらを上に向ける。そして走ってきた耶倶矢がそこに片足を乗せると同時、夕弦が耶倶矢の体を軽々と天高く放り投げた。
「な………!」
「うっそだろ!?」
十香と万丈の声が、敵コートから聞こえてくる。次の瞬間______
「______ハァァァァァァッ!!」
天高く舞い上がった耶倶矢が、上空のボールを矢の如しスピードで叩き落とし_______
「_______ン何でッ!?」
______軌道上にいた、万丈の顔面にクリーンヒットした。そのままボールはバウンドし、砂浜の上を転がっていった。
後に残ったのは、ひとしきり二人で喜んだ後に啀み合う双子の姿と、砂浜に倒れる二人の野郎、それを気遣う二人の女性という、なんともおかしな光景だった。
◆
見回りを続けること、かれこれ十数分。
現在士道と一海は、別行動を取っていた。周辺を回っていたのだが、二手に別れた方が良いと判断したのだ。
「戦兎たち、上手くやってるかな……」
思わず、不安になってしまう。いや、戦兎に関しては、そこまでではない。
不安なのは、万丈の方だ。今回が初めて、と言うのもあるが、戦兎の話では、万丈にはどうやら複雑な事情があるらしい。敢えて踏み込まなかったが、大丈夫だろうか。
「……いや、信じなくてどうする、俺」
そんな弱気な考えを、頭から振り切る。
今の自分が考えていても、どうにもならない事だ。確かに心配だし、不安ではある。が、それを無闇に掘り返すのは、精霊たちにしている事とはまた違うだろう。
今の士道に出来るのは、二人を信じて、自分の仕事をやる事だけだ。
「………て言ってもなぁ。ここら辺回ったら、また元の場所に戻って______」
「おやおや、久し振りだねぇ、士道クン」
その時、聞き慣れた、慣れてしまった、嫌な声が聞こえた。
「………ッ、お前は、神大…………!」
神大______数週間前に来禅高校を去った、士道達の_____敵だ。
「どうやら君の仲間の戦兎クンや万丈クンが、面白いことになってるようだったからねぇ。少しばかり、引っ掻き回そうと思ってさ」
そう言うと、神大は懐から銃_____リバースチームガンを取り出した。
「ッ、戦兎たちの邪魔はさせない!ガルーダ!」
手を上に掲げ叫ぶと、上空に赤い鳥型ガジェット______【アライブガルーダ】がやってきた。上空で変形し、士道の手中へと収まる。
そして握りしめたボトル_____スピリットフルボトルを振り、成分を活性化させた。活性化させたそれを、変形したガルーダへと挿し込む。そしてそのまま、装着した【リビルドライバー】に装填した。
一方の神大も、取り出したビーオルタナティブフルボトルを取り出し、軽く振り、リバースチームガンへと装填する。
互いに待機音声が鳴り、神大は銃を顔の横へ持っていき構える。士道は【ボルテックチャージャー】を回して、エネルギーを充填し、自身の前後に高速ファクトリー、【スナップリアライズビルダー】を展開した。
「変身ッ!」
「凝装」
声と共に、神大は引き金を引き、士道はファイティングポーズを取り、アーマーを纏った。
仮面ライダーアライブと、ナスティシーカー。
二人は相対すると、その場で構えた。
「ハァッ!」
アライブラスターを取り出し、アライブがナスティシーカーへと迫る。
『ふん……』
しかし、シーカーはミストブレードを取り出すと、スイッチを操作し、リキッドスマッシュを呼び出した。アライブの行方を阻むように、数体が立ちはだかる。
「クッソ……!」
『さぁて、どうする?』
シーカーの煽るような言葉を無視し、アライブラスターで敵を切り裂く。しかしリキッドスマッシュの特性により、斬りつけても透けて避けられ、簡単にダメージを通すことができない。
「だったら………」
_____透けて避けきれないほどの、ダメージを与えればいい。
アライブはブラスターを地面に刺すと、ボルテックチャージャーを軽く回し、エネルギーを溜めた。
そして中腰になり、拳に力を込める。
「ハァァァア…………ッ!」
瞬間、拳に熱を伴ったエネルギーが循環し、拳諸共炎の塊と化す。
「オリャァーッ!!」
『ァグァグァァァァー…………ッ!!』
そのまま突き刺すように拳を打ち、エネルギーを前方へと飛ばす。
巨大な炎柱状のエネルギーは、前方にいたリキッドスマッシュ数体を巻き込み、消失、或いは深手を負わせることに成功した。
しかし。
『アグァゥゥ………』
「くっ、まだこんなに…………」
周囲のリキッドスマッシュは、依然数を増やしている。奥にいるシーカーが、ミストブレードから消失分を増加させているからだ。
地面からアライブラスターを引き抜き、再び構える。
と、次の瞬間。
「______オラァッ!」
突然横から出てきた人影が、リキッドスマッシュの一体を殴りつけた。
「痛ってえ………これ絶対折れてるってぇ…………と思ったら、折れてねえ」
拳を抑えながらそう言い、顔を上げたのは______一海だった。
「一海さん!?」
『何?』
突然の登場に、アライブもシーカーも、動揺した様子を見せる。
一海は周囲を見回すと、鋭い目を向け、口を開いた。
「_____よぉ、俺に内緒で何楽しんでんだ」
そう言い、一海はサングラスを外し、地面へ放った。
そして右手に持った水色のベルト_______【スクラッシュドライバー】を腰にあてがう。
「_______
そして_____右手に持ったのは、ゼリーパック状の、万丈が持っていたものと、形は同じだが絵柄が違うアイテム_____【ロボットスクラッシュゼリー】だった。
「_____心火を燃やして………てめえらを、ぶっ潰す」
口元に、僅かな愉しさを滲ませながら、一海がそう言う。そして手に持ったゼリーを、スクラッシュドライバーへと挿し込んだ。
蒸気のような待機音が鳴り響くと共に、一海が人差し指を前方へと向ける。そしてそのまま指を上へ向けると同時に、【アクティベイトレンチ】を勢いよく下げ、ゼリーが
「_____変身!」
レンチが押されると同時に、ドライバー右側のゼリータンクへ、スクラッシュゼリーが
一海の周囲にビーカー状のファクトリーが形成され、内部を黒と金が混ざったゼリー状の______まるで
音声と共にビーカーが一海へと集中し、黄金のスーツを生成する。
そして頭部から
______仮面ライダーグリス。
かつて、仮面ライダービルドらと共に、世界を救うため戦った、黄金のライダーが蘇った瞬間。
その瞬間は_____
「______さぁ、
_____
ライドウォッチ風に
・仮面ライダーアライブ
『アライブ!』
『魂を燃やせ!精霊の力で戦う、炎のライダーは………アライブだ』
『アーマータイムッ!!Get Up Strike!アラーイブッ!!』
『スピリット!ターイムブレークッ!!』
・ビルド ラビットザドキエル
『ラビットザドキエル!』
『スペシャルマッチ!吹雪の力と超スピードッ!ビルド!ラビットザドキエル!』
『アーマータイムッ!!バッキィーンッ!!ラビットザドキエールッ!!』
『ハーミット!ターイムブレークッ!!』
・仮面ライダーデモリッシュ
『デモリッシュ!』
『災厄を殺す者!ナイトメアを追うライダーは………デモリッシュだ』
『アーマータイムッ!!WOLF ALTERNATIVE デモリーッシュッ!!』
『デモリッション!ターイムバーストッ!!』
ふと思い付いたので。
これからもやるかもしれません。
また一週間くらい遅れてすいませんでした。
それでは次回、『第48話 生かすことと戦うこと、ジレンマは終わらない』を、お楽しみください!
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