万丈「大丈夫なのかよ。実行委員なんてやった事ねえだろ」
桐生「どこかのお馬鹿さんと違って、こちとら天っ才ですから!実行委員だろうがなんだろうが、この俺にかかればパパっとしてサッ!なもんですよ」
士道「どうでもいいけど擬音の語呂悪いな」
桐生「あ!出たな諸悪の根源め!お前のせいで実行委員に任命されちゃったじゃん!」
士道「わ、悪い……ていうか、お前結構楽しそうだったじゃんか!」
桐生「そ、それは………ちょっとやる気出してやろうかなーって思っただけだから……か、勘違いすんなよな!」
士道「ツンデレ?」
琴里「男のツンデレは需要ないわよ」
桐生「うるさいなぁ!ツンデレじゃないよ!ていうか琴里急に出てきたな」
琴里「最近あらすじ紹介じゃ出てなかったしね。とゆーわけで、第55話、どうぞー」
桐生「あ、言われたっ!?」
時は少し遡り、陸上自衛隊天宮駐屯地。
「_______鳶一折紙一等陸曹。今日付で君に課せられていた謹慎は解除となる。ASTの一般任務、及び訓練に復帰してもらうよ」
「は」
基地の一室で上官に告げられた言葉に、折紙は敬礼を以て返した。
六月の致命的な不祥事の件で課せられていた、
無論その間も基礎トレーニングを欠かすことは無かったが、
とはいえ、本来であれば懲戒免職の上に刑事罰が適用されてもおかしくなかった状況。こうして復帰できるだけでも奇跡のようなものだろう。
「次は無いぞ。もしまた同じことがあれば、二度と復帰はないと肝に銘じたまえ」
「承知しています」
と、折紙が短く答えたところで、部屋の扉がノックもなく開かれた。
「………日下部一尉?」
折紙がその犯人の姿______ASTの隊長、日下部燎子の姿を認めると、怪訝そうに眉をひそめた。苛立たしげにのしのしと歩を進めると、上官の机に手にしていた書類束を叩きつけた。
「これはどういう事ですか!?」
「な、なんだね、一体………」
塚本三佐も剣幕に押され、非礼を注意することもせずに身を逸らした。
「どうかしたの?」
問うと、燎子はようやく折紙の存在に気付いたらしかった。
「ああ……折紙。そういえば今日で復隊か。______丁度いいわ。これ、どう思う?」
言って、今し方叩きつけた書類束を放ってくる。折紙は紙面に視線を落とした。
「これは…………」
そこに記されていた信じ難い内容に、眉根を寄せた。
「こんな編成無茶苦茶過ぎます!外国籍隊員を十名………しかもその独立分隊に非常時における特別裁量権を付与………!?一体上層部は何を考えているんですか!」
言って再び燎子が机をバン!と叩き、塚本三佐がビクッと肩を震わせた。
その書類に書かれていたのは、ASTへの補充要員の情報だった。
それ自体には、別にそこまで問題がある訳ではない。
問題は、その補充要員が十名にも渡り_______剰えその全てがDEMインダストリー社の出向社員、しかも全員が外国人であると言うことだった。こうなると話は変わってくる。
その上、必要に応じて隊長の指揮下から自由に外れることが出来る権限を有するというのである。こんなもの、株を買い占められて会社が乗っ取られるようなものだ。
「ASTは野球チームじゃないんですよ!?外国籍の人間が入隊できるはずがないでしょう!?その上こんな権限を与えるなんてどうかしているとしか思えません!」
「そ、それは………」
塚本が口籠もる。燎子は焦れたように頭を掻くと、話にならないとばかりに踵を返そうとした。
するとそこで再び、部屋の扉がゆっくりと開かれる。
そして_______十名程の外国人が次々と部屋の中に入ってきた。
「______あラ?」
と、先頭にいた赤毛の女が燎子と折紙の姿を見て、唇を歪めてくる。歳は燎子と同じくらいだろうか。釣り目の双眸が、どことなく狐を思い起こさせた。
「資料で見た顔ネ。ASTの隊長さんに_______そう、トビイチオリガミだったかしラ?」
独特のイントネーションでそう言い、さらに笑みを濃くする。
「………あんたは?」
「今日付でASTに配属になったジェシカ・ベイリーでス。以後よろしク」
「………ふん」
燎子は不快そうに顔を歪めると、手を弾くように押し付け、握手を交わした。
「一体あんたらがここに何しに来たのか知らないけど、ここで好き勝手な真似はさせないわよ。ASTに所属する以上、私の命令に従ってもらうわ」
言うとジェシカは目を丸くし、背後の部下達と目を見合わせてから肩を竦めた。
「あなたの命令に従えば、精霊は倒せるのかしラ?」
「なんですって?」
「
「な______」
ジェシカが眉を歪める燎子から、折紙の方に視線を移してくる。
「アナタのことも聞いてるわヨ?何でも勝手に精霊を殺しに行って、謹慎を食らったそうじゃなイ。あはは、アナタは少しだけ私達に近いかもネ。そういうの、嫌いじゃないワ」
折紙が無言でいると、ジェシカがずいっと顔を寄せてくる。
「でも、駄目ヨ。お話にならないわ。【ホワイト・リコリス】なんて欠陥品を無理に使って、あまつさえライダーシステムを適合手術無しで使おうとして、結局何の成果も上げられなかったんでしょウ?ふふ、無様ねェ」
ジェシカがニヤニヤしながら言うと、後方の隊員達が含み笑いを漏らし始めた。
「隊長、いくらなんでも可哀想ですよォ」
「極東の木っ端隊員を、私達の基準で測っちゃいけませんってばァ」
「そうですよ。彼女だって好きで弱いわけじゃないんですから」
「それにこっちのただのCRユニットと、ライダーシステムを併用した最新のユニットじゃ、レベルが違いますってェ」
四人の隊員が、順に嘲るように言う。折紙は表情を変えぬままギリと奥歯を噛み締めた。
「あら、怒っちゃっタ?きゃはは、怒ったらどうするノ?精霊すらまともに倒せないのに、ライダーシステムという新しい力を得た、私達DEMのアダプタス・ナンバーに敵うとでも?」
「………ちょっと、あんた大概に_______」
と、燎子がジェシカを止めようとしたところで。
辺りに、甲高い警報が鳴り響いた。
「………!折紙、出動準備よ!腕は鈍ってないでしょうね!?」
「当然」
折紙が答えて駆け出そうとすると、またもジェシカ達が笑みを浮かべてきた。
「鈍っていようがいまいが、精霊を殺せないのであれば同じ事なんじゃないノ?」
「……………」
「やめなさい折紙。今はそんな場合じゃないでしょ。私達は出動するわ。この街を守らなきゃいけないものでね。………あんた達はどうするのよ」
「ああ、私たチ?そうねェ………いいわ、丁度いいタイミングだし、私達も出撃しましョ。戦い方を、教えてあげるワ」
そう言ってジェシカが取り出したのは、黒光りする、注射器を模したベルト_______【リバースドライバー】だった。
「ッ、それは真那の………ライダーシステムって、まさか………」
「そんなに驚く事かしラ?まあ、あなた達にとっては珍しい物かもねェ。ああ、それと______」
ジェシカが指を一本立ててから、言葉を続けてくる。
「私達は特別な任務を帯びてるノ。場合によってはそちらを優先させてもらうワ」
「………特別、任務?」
折紙は言いながら眉を歪めた。
何故だろうか、その言葉から、不穏な響きを感じ取ってしまったのである。
◆
その場にいる四人_____順に士道、万丈、戦兎、一海は、仄暗い艦内から夜の街へと変貌した大地を踏みしめた。
フラクシナスの移動装置によって、半ば瞬間移動のような転送をしたのだ。酩酊する意識をどうにか保ちながら、四人は改めて周囲を見回す。
四人が降り立ったのは、天宮アリーナが最寄りにある、天宮市南部の立浪駅前広場だった。ライブやイベントがある日などは人で埋め尽くされる場所であるが、今は人の姿が全く見受けられなかった。
それもその筈である。四人の視界に広がる景色は、その大部分がすり鉢状に抉られ、クレーターと化していたのである。
「これが空間震ってやつか………初めて見たけど、凄えなこりゃ」
一海がその光景を見て、息を呑む。
元の世界の戦争で見た光景とはまた違う、人類を蝕む突発性災害である。
『無事現場に着いたみたいね』
ラタトスク司令官の琴里は、フラクシナスから四人の様子をモニタリングしている筈だった。
『精霊の反応は空間震発生地点から南の方に移動しているわ。急いで向かってちょうだい』
「了解。……あ、そうだ」
戦兎が答えた後、何かを思い出したようにトレンチコートのポケットを探る。中から四角い物体を取り出し、万丈へと放った。
「ほれ」
「へ?うわっ……これ、ビルドフォンか?」
万丈に渡されたそれは、戦兎がいつも使っているスマートフォン兼移動手段の【ビルドフォン】に似たものだった。
しかし、カラーリングが青く、他にも何処と無く形状が異なって見える。
「お前用のバイクだよ。俺のだけじゃ何かと不便でしょうが。そこにドラゴンボトルかロックボトル挿してみ?」
「マジか!よっしゃ……!」
聞いた万丈はドラゴンボトルを取り出し、装填用のコネクタに挿し込んだ。
【CROSS-Z CHANGE!】
音声が鳴るとともに、携帯が万丈の手元を離れ、バイク形態へと変形する。
「お、おぉ〜!」
変形後のバイクはマシンビルダーと違い、青いドラゴンを象ったシルエットとなっていた。所々に金色のラインが入っており、クローズのカラーリングである。
「お前専用の、【マシンクローザー】だ。大事に使いなさいよ?作るの大変だったんだから」
「カッケェじゃねえか!サンキュー!」
万丈はひとしきりはしゃいだ後、ヘルメットを被ってバイクへと跨った。
戦兎もマシンビルダーを取り出し、同じく跨った。
「さて。そんじゃ士道は俺の後ろに、一海は万丈の後ろに乗り込んで。一気に飛ばすから、ちゃんと掴まってろよ」
二人は頷き、それぞれマシンビルダーとマシンクローザーの後ろに乗る。
エンジングリップを握り、その場から走り出した。
周囲の破片をうまく避けながら、精霊の反応を追う。
「うわっと!おい龍我、もっとマシに運転しろよ!」
「仕方ねえだろ!新車なんだから!」
後ろでは一海と万丈の揉めてる声が聞こえたが、それはともかく。
地面を見てみると、下にはカラフルなチラシやらうちわやらが散乱していた。一瞬マナーの悪い客かと思ったが、急に空間震警報が鳴れば、手にしたチラシなんか放って逃げざるを得ないだろう。
「琴里!精霊の反応はどこだ!?」
『ちょっと待って、今正確に位置を_____』
と、琴里が言いかけた瞬間。
「っ、おい待て!万丈も一旦バイク止めろ!」
戦兎は突然バイクを止め、万丈にも止めるよう促した。
そしてヘルメットを外してバイクを降り、耳を澄ませる。
すると士道も何かに気付いたように、続いてバイクを降りた。
「おい戦兎!何だってんだよいきなり」
「………歌、か?」
「は?」
「いやだから、向こうから歌が聞こえてこないか?」
そう。前方______天宮アリーナの方から、微かに、だが紛れも無い、『歌』が聞こえてきたのだ。
「まさかこの惨状で、一人残って歌い続けてるってのか?」
「………とにかく、行ってみよう」
「ああ」
「うっし」
四人はアリーナへと向かい、大きな扉を押し開け、中に足を踏み入れた。
そして、ステージが一望出来る位置まで歩みを進める。
瞬間_______士道は、身体を射られるような感覚とともに、歩みを速めた。
「っ、おい、士道………?」
戦兎の声も無視し、アリーナの中央へと目を向ける。
恐らく出演者やスタッフが舞台装置を放置したまま避難したのだろう、暗い会場の中、櫓のようにせり上がった舞台だけが、下方から幾つものスポットライトに照らされ、光溢れている。
その、真ん中に。
光の粒子で縫製されたかと見まごうような煌びやかな衣を纏った少女が立ち、会場中に声を響かせていた。聞きなれない言語で構成された、まるで子守唄のような静かな曲調が、四人の鼓膜を震わせる。
「ぁ________」
「………すっげぇ_____」
「……………」
「………おぉ…………」
意図せず、四人の口から感嘆の声が漏れる。
楽器の演奏や、マイクや拡張器を使っているわけではない。完全な無伴奏の独唱。
しかしその声のみで形作られた曲調は、まるで耳を通って脳幹に染み渡るかのような錯覚を覚えるように、圧倒的な力を有していた。
『あれはまさか_______【ディーヴァ】………!?』
「………!」
不意に右耳に響いた琴里の声に、四人の意識は取り戻させられる。そうだ、今は歌に聞き惚れている場合では無い。
何しろこれから、非常に困難を極める大仕事が待っているのである。
「【ディーヴァ】……それがあの子の識別名なのか?」
『ええ………半年前に一度だけ出現が確認された精霊よ。一応データベースに存在は登録されているけど、性格や気性を始め、能力や天使の詳しい情報もほぼ無いに等しいわ。十分注意しながら接触を試みてちょうだい』
「わ、分かった」
四人は顔を見合わせると、顔を再び少女に向け、足を踏み出した。
と、そこで会場内にカーン、という乾いた音が響き渡る。
「あ、やっべ」
万丈は一歩足を前に出した状態のまま、そこに固まった。三人も万丈の足元に視線を向ける。
どうやら床に放置されていた空き缶を蹴飛ばしてしまったらしい。
少女もその音に気づいたのか、不意に歌声を止める。
「_______あらー?」
そして、今まで響かせていた歌声とはまた違う、間延びしたような声音をこぼす。
「馬鹿、何やってんの」
「し、仕方ねえだろ、足元が暗くてよく………」
しかし、万丈が弁明の言葉を最後まで発する事なく、舞台上の少女が会場を見回すように視線を巡らせながら、言葉を継いできた。
「お客さんがいたんですかぁ。誰もいないと思ってましたよー」
優しげな、のんびりした声を響かせてくる。どうやら客席は暗い為、四人の姿を見つけられていないらしい。
「どこにいるんですかー?私も一人で少し退屈をしていたところなんですよぉ。もしよろしければ少しお話をしませんか?」
「………どうする?」
「どうするって………琴里」
『ん………どうやら、問答無用で攻撃を仕掛けてくるような精霊ではないみたいね。会話はこっちでサポートするから、直接会話が交わせるくらいの位置に行ってみてくれる?』
「了解。行ってみる」
「よし………」
四人は頷き合うと、舞台上に上がるための階段を上っていった。が、舞台に上がる寸前で、右耳に琴里の制止の声が聞こえてくる。
『ストップ。選択肢が出たわ。______ふむ、登場と同時に声をかけるパターンみたいね』
◆
「______目標はここね。総員、突入準備」
燎子はライフルを構え、隊員達に命令を出した。隊員達が武装を構え、アリーナ上空を浮遊している。
すると、その中に混じった欧米人の一団_____ジェシカを始めとするDEMの出向社員達が、不敵な笑みを浮かべた。
「ここねェ…………それじャ、見せてあげるワ。私達の戦い方を____ネ」
「………どういう事?」
「ふふ、分かるわヨ………ねェ?」
ジェシカが振り返り、DEMの隊員達が同じように笑みを浮かべる。
アリーナを一度見据え、黒光りするベルト_____【リバースドライバー】を取り出し、腰に当てがった。
そして取り出したのは、武装の意匠が施された試験管型のボトル______【アームズオルタナティブフルボトル】である。
それを数回振り、内部の【トランリバースリキッド】を活性化させる。そしてキャップを閉めて_____ジェシカが告げた。
全員が一糸乱れぬ動作で、バックルの左側部へと挿しこみ、右側部のハンドルレバー、【アブソーブチャージャー】を引いた。
十人分のドライバーの重低音が鳴り響き、そのまままたも統制のとれた動きで、レバーを押し込んだ。
オルタナティブボトルの成分が、エネルギー変換装置【アブソーブリアクター】へと送られ、
ジェシカを始めとした十人の周囲にはフラスコ瓶状の小型ファクトリーが展開され、内部に成分を充填、全身の細胞を
しかしジェシカ達は苦しむ素振りなど見せずに、余裕の笑みを浮かべながら、その顔をマスクで覆った。
「あぁ_____はァ………ッ!」
快楽の嬌声にも似た声をあげながら、ジェシカを始めとした十人は、兵隊ライダーたる【デウストルーパー】への変身を完了させた。
ジェシカのみ赤黒いカラーリングだが、他は黒と灰、銅色で統一された、戦闘用マシーンとも形容できる様だった。
腰に下げた武装_____【デュアルスレイカー】をライフルモードで装備し、準備を整える。
その様子を見たAST隊員達は、一瞬呆然としたものの、すぐさま自分達も武装し、アリーナを見据えた。
そしてジェシカ扮する赤黒いトルーパーが一度燎子の顔を見やり、早く行くように促す。
「ッ………総員、突撃ッ!」
燎子はそれを見て歯噛みしながらも、隊長として命令を下した。
真っ先に降下したのは、ジェシカ達十人の、トルーパー達だった。
◆
少し時間は遡り、アリーナ内では。
「______え?なんでしがみついてるんですかぁ?なんで落ちてこないんですかぁ?なんで死んでないんですかぁ?可及的速やかちこのステージからこの世界からこの確率時空から消え去ってくださいよぉ」
「「「「………は?」」」」
舞台上の少女の、養豚場の豚を見るかのような視線と、石動美空や五河琴里が可愛く思えるほどの罵詈雑言を浴びながら、士道、戦兎、万丈、一海の四人は、ステージの端にしがみつきながら呆然と声を漏らした。
事の発端は、四人がステージに上がり、この少女に話しかけたところからだった。
『やぁ、こんばんは。盗み聞きするつもりは無かったんだが、綺麗な歌声で_______』
と、士道が話しかけた瞬間に、少女の好感度が株価暴落を思わせるスピードで急降下したのである。
その後も挽回しようと四人が言葉を発するだけで好感度は下がり続け、ゴキブリの方がまだ良い、というレベルにまで下がり切ってしまったのである。
すると眼前の少女はギロリと四人を睨みつけたかと思うと、突然。
と、凄まじい大声を発し、四人はまるで台風に見舞われたが如く吹き飛ばされ、舞台から落ちる寸前でどうにかステージの縁にしがみついた。
そして、現在に至る。ステージは思いの外高い位置にあり、四人のハザードレベルでは骨折とまでいかなくとも、確実に痛いだろうなぁ、というくらいは分かった。
だが、今はそんな事を考えるよりも先に、目の前の少女に対しての困惑が、四人の脳内を埋め尽くした。
「え、えと………今なんて?」
「何喋りかけてるんですかぁ?やめて下さいよ気持ち悪いですねぇ。声を発さないでくださいよぉ。唾液を飛ばさないでください。息をしないでください。あなた達がいるだけで周囲の大気が汚染されてるのがわからないんですかぁ?分からないんですねぇ?」
「「「「……………」」」」
その語彙力はどこから来てるんだと言わんばかりの罵詈雑言に、四人は思わず絶句した。これが無声映画ならどれほど良かっただろう。と、馬鹿げたことを考えるくらいには、キツかった。
「え、えっと、君は………」
「人の言う事を聞かない人ですねー。一刻も早く消えてくれませんかぁ?あなた達の存在が不快なんですぅ。何故私があなた達の手を踏みにじってステージから落とさないか分かりますかぁ?たとえ靴底であろうとあなた達に触れたくないからですよー?」
優しい雰囲気と歌のような語調。言葉と内容だけがモーニングスターだった。普段はある程度の悪口も笑って受け流す戦兎や、すぐカッとなる万丈も、流石に言葉が出てこないようだった。
と______その時。
『ッ!四人共!すぐ近くにスマッシュの反応あり!しかも________』
「ッ、どうした!?」
「!お前ら、あれ!」
「何喚いてるんですかぁ?気持ち悪いですね_______」
と、少女の言葉が出るよりも先に、アリーナの天井が一瞬ベコッとうねったかと思うと、凄まじい炸裂音と衝撃を伴って爆発し、天井の照明装置がバラバラと崩壊した。
さらに戦兎達が通ってきた入り口方向からも爆発音が聞こえ、ドアの板が吹き飛ばされて観客席の近くにまで飛んでくるのが分かる。
「う、うわ…………ッ!?」
「くそっ、こんな時に_____!」
「あらー?」
「おい戦兎!どうなってんだよこれ!」
「決まってんだろ!スマッシュと______ASTだ!」
微かな振動が伝わり、四人は振り落とされないようにステージにしがみついた。
そして上を見やると、そこには既に天井と呼べるものはなく、代わりに月明かりに彩られた夜空が顔を覗かせていた。
否_______それだけではなく、闇に紛れて、機械の鎧と、黒灰と銅の鎧を身に纏った幾人もの人間が、確認できた。
そして十人程度確認できる、全身アーマーの存在を、戦兎達は知っていた。
「あれは______デウストルーパー!?」
「なんでこんなとこに!?」
それを考える暇も与えられずに、間髪入れず奇襲しに来たものがいる。
入り口付近から湧き出てきた、歪な人型のモンスター_____スマッシュだ。
「マジかよ………ッ!?」
「何ですかぁ?あの気持ち悪いモノ?」
少女はその表情を歪ませ、心底嫌そうにスマッシュを見た。
そしてAST隊員達が軽やかに空を舞い、アリーナ内に舞い込み、四人とディーヴァのいるステージを囲うように展開する。
「あ、あいつら、室内なのに何で!?」
「こうも広かったら、室内もクソもあるか!こうなったら…………ふッ!」
「ちょ、あなた、何を_____」
戦兎は意を決したように腕に力を入れると、思いっきり体を跳ね上がらせ、ステージへと舞い上がり、すれ違いざまにAST隊員の一人を振り払うように、蹴りをお見舞いする。
「キャっ!?」
「ちょっと、何勝手に上がってきてるんですかぁ?早く落ちてくださいよぉ」
「うるせぇ!今はそんな場合じゃない!」
「ッ、何ですか、急に叫んで、気持ち悪い」
戦兎はディーヴァを守るように立ち、AST隊員達を見据えた。
「戦兎、俺も!」
「スマッシュは俺たちに任せろ。おら行くぞ龍我!」
「は?ちょおい、落とすなってぁぁぁぁぁぁぁ______!」
続けて士道も上がってきて、互いに肩を並べる。
一海はステージをつかんでいた手を離すと、万丈を引っ張って下へと降りていき、スマッシュと交戦し始めた。
『四人とも!ここは撤退よ!』
「でも!スマッシュまで出てきてる!どの道脱出は_____」
インカムから聞こえる琴里の声に反応し_____戦兎がそこで違和感に気付いた。
「おい士道____さっきから鳴ってたアラームが、止んでないか?」
「え?………そういえば、聞こえない」
そう、先ほどまで引っ切り無しに鳴っていたアラームが、ピタリと止んでいたのである。
「え………?」
不審に思い、ディーヴァを見やる。するとそこには______
「まぁ、まぁっ!」
先ほどとは打って変わり、手を組みながら目を輝かせるディーヴァの姿があった。
「いいじゃないですかー。素晴らしいじゃないですかー。そうですよぉ、お客様といったらこうじゃないとぉ!ああ、そうですねー、特に______」
と、耳鳴りのような音を残して、ディーヴァの姿がそこから消える。
次の瞬間、ディーヴァはAST隊員の一人_____折紙の背後に出現し、まるで仲睦まじい恋人のように、肩に手を置き耳元で囁いた。
「ああ………いい、いいですー。ねえあなた、私の歌を聞きたくないですかー?」
「…………ッ!」
折紙がハッと肩を揺らし、レイザーブレイドを振るう。
「ああん、いけずぅ」
ディーヴァが折紙の一撃を避けながら、甘ったるい声を発する。
そのリアクションが折紙の気分を害したのか、追撃をかけるように斬り付ける。だが、それらの攻撃は全てディーヴァに届く前に見えない壁のようなものに阻まれていた。
『あらあラ、ご苦労な事ねェ。本来なら加勢したいところだけド………』
すると、ステージを隔てた反対側に浮遊していた赤黒いトルーパーがそう言い、士道たちの方へと顔を向けた。
一瞬戦場に紛れ込んだ一般人を保護しようとしているのかとも思ったが______違う。
「ッ、避けろ士道!」
「………ッ!」
二人で左右に散る形に避け、トルーパーの攻撃を何とか躱す。
『あら、やるじゃなイ』
「くそ、何だよあいつ…………」
「分かんねえけど_____このままタダで帰しちゃくれねえみてえだな」
士道と戦兎は立ち上がり、上空に浮遊する赤黒いトルーパーと、取り巻くように現れた数体のトルーパーを睨みつける。
二人ともドライバーを巻き、それぞれフルボトルを取り出して振った。
『キュルッキュイーッ!』
士道の手元には赤い鳥型ガジェット、【アライブガルーダ】が変形し収まる。
そして降ったボトルをドライバー、ガルーダに装填し、ドライバーへとセットした。
【フェニックス!スマホ!】
【Get Up!ALIVE-SPIRIT!!】
待機音声が鳴り、ボルテックチャージャーを回す。
士道の前後には【スナップリアライズビルダー】が展開され、二人でファイティングポーズをとる。
【Are You Ready?】
「「変身ッ!」」
掛け声とともに、戦兎の体には左右から赤のフェニックスアーマー、青のスマホアーマーが装着され、士道の体は前後をアーマーが挟み、最後に鳥形の胸部装甲が包んだ。
【Dead Or ALIVE-SPIRIT!!イェーイッ!!】
士道はアライブに戦兎はビルド、【フェニックススマホ】のトライアルフォームへと変身し、眼前のトルーパー隊へと向かっていった。
どうでしたかね?
祖父母の家に行っていたため、更新が出来ませんでした。あと、ヒロアカにハマり始めてしまいました。
あと今回、前半と後半で書く間隔が空いてしまったため、文章に違和感があるかもしれませんが、申し訳ありません。
あと二週間ほどでゼロワンドライバーの一般販売開始ですね!自分はそもそもお金無くて応募をやめたので、せめて発売日に買いたい………!
それでは次回、『第56話 アリーナの戦い』をお楽しみに!
よければ高評価や感想、お気に入り登録よろしくお願いします!