デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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耶倶矢「兎と戦車の力を持った仮面の戦士ビルド、桐生戦兎は、蒼き龍戦士クローズ、赤き不死鳥の戦士アライブ、金の機械戦士グリスと共に、精霊ディーヴァとの邂逅を果たしてしまう。しかし、そこに待ち受けていたのは、背筋が震えるような邪悪を内包した_____」

戦兎「オイオイオイ!何勝手にあらすじ紹介した上にあらすじ改変してんの!なんかこの作品がスッゲーホラーな感じになっちゃってんじゃん!」

万丈「まあ夏だしいいんじゃね?」

戦兎「良くないわ!子供に悪影響が出たらどうするの!最近そういうのうるさいんだから!」

耶倶矢「悪影響とはなんだ!我好みに世界を書き換えただけだぞ!?」

戦兎「なお悪いわ!つか、今回のあらすじ紹介夕弦も一緒じゃなかったか?夕弦どこよ」

夕弦「呼掛。ここです戦兎」

戦兎「ああ、いたいた。というか前回のあの子、スッゲー怖かったんだけど。今回大丈夫かな」

万丈「ホントだな。つーかあいつ、あんなに喋って口疲れねえのかな?」

戦兎「気になる所そこ?それよりもスマッシュやら何やらで大変なことになってるから!第56話ちゃんと見て!」





第56話 アリーナの闘い

「ハァッ!」

 

ALIVE-LASTFR!

 

「オリャァッ!」

 

天宮アリーナ内部。

そこでは今、ASTとスマッシュ、精霊【ディーヴァ】、そして仮面ライダー達の混戦状態になっていた。

 

ステージ下では侵入したスマッシュ相手に、グリスとクローズチャージが戦っている。数は向こうの方が多いが、今更ただのスマッシュに遅れを取る彼らでは無い。

 

「へっ、前のカニ野郎に比べたら、こんな奴ッ!」

 

シングルッ!シングルブゥレイクゥッ!!

 

「ゥグァァァァァァア________!!」

 

クローズがツインブレイカーにドラゴンボトルを装填し、エネルギーを込めたパイルでスマッシュを穿つ。スマッシュはその衝撃に耐えきれず、呻き声を上げながら爆散した。すぐさま、次のスマッシュへと向かっていく。

一方のグリスは、まだ一体目を撃破しきれていなかった。スロースターターであるために、立ち上がりきれていないのだ。

 

「こンの野郎ッ!!」

 

シングルッ!シングルフィイニッシュゥッ!!

 

ビームモードに変形したツインブレイカーにロボットゼリーを装填し、連射攻撃でスマッシュ数体を仕留める。

まだクローズ、グリス対スマッシュの戦いは続きそうだった。

 

 

一方のビルド、アライブもまた、数の不利を強いられていた。

 

「ハァッ!!」

 

『アハハッ!緩いわァッ!』

 

ビルドがフェニックスハーフボディ背部の【エンパイリアルウィング】を展開し、掌から無数の炎弾を放つ。

しかし赤いデウストルーパーはその攻撃を軽々交わし、その隙を他のデウストルーパー隊達が、【デュアルスレイヤー】のガンモードで突き、射撃する。

 

「くっそ………!」

 

毒付きながらも、スマホハーフボディの左腕に装備された【ビルドパッドシールド】で光弾をガードする。 そして身を守りながら、ドリルクラッシャーをガンモードで構えて射撃する。しかし、苦し紛れの攻撃は牽制にしかならず、一瞬射撃が止んだ後に、再び赤のデウストルーパーがこちらへ攻撃を仕掛けてきた。

 

レーザーブレードを構え、上段に斬り込んでくる。すかさずパッドシールドを頭上に構え、ブレードの一撃を辛うじて防いだ。

しかしシールドは徐々に押され、ビルド自身もウィングで姿勢を保つ事が難しくなっていた。

 

『ハハハ、流石のビルドでも、この数相手には不利かしラァ?』

 

「こいつら、この前の奴より強い………ッ!」

 

『当たり前でしょウ?私達は………アデプタスなのよォッ!!』

 

「ぐッ!」

 

そして遂に振り抜いたブレードの一撃がパッドシールドの表面にヒビを入れ、ビルドもステージの上へと叩き落とされてしまった。

 

「ッ、戦兎!クソ……!」

 

『余所見をする暇があるのかしらァ?仮面ライダーアライブゥ?』

 

アライブがビルドを見やるが、トルーパー隊は追撃の手を緩めない。

連携が取れているのもあるが、このトルーパー達は、かつて或美島で交戦したトルーパー達よりも明らかに数段強かったのだ。一人一人のスペックだけを見るならば、ビルドやアライブ達の方が確実に強いだろう。しかし彼らの知り得ぬ事だが、彼女らは【アデプタス】_____DEM内でもトップクラスの腕を持つ魔術師(ウィザード)であり、またドライバーの性能も、真那や或美島での戦闘データの解析により、さらなるスペックアップが施されている。

 

その結果が、今ビルド達が立たされている窮地だった。

 

 

 

 

「……士道ッ!く、邪魔をしないで……!」

 

「嫌ですよぉ。もっと私と遊びましょお?」

 

鳶一がアライブが窮地に立たされた光景を見て、歯噛みしながらブレードをディーヴァへ向けて振るう。向かおうとしてもディーヴァにより妨害され、思うように行けないのである。

 

そしてそれ以上に、鳶一にはある疑問があった。

確かに彼ら仮面ライダーは、AST内部でも危険視され、攻撃対象となっている。

が、しかし彼女らトルーパー隊の攻撃は、それとはどこか違う_____何か、別の目的があるように思えてならなかった。現に先程燎子から【ディーヴァ】への攻撃を優先するよう指示があったのだが誰も加勢せず、ビルドとアライブにのみ攻撃し、アンノウンはおろかディーヴァにも興味が無いようではないか。

 

「くっ………!」

 

そんな思考をしつつ、なんとかアライブの元へ行こうと、攻撃の手をやめない。

だがディーヴァは、一向に退こうとしなかった。

 

 

 

 

ONE BEAT!SWEEP ATTACK!!

 

「ハァッ!!」

 

アライブラスターを構え、炎の羽根型エネルギー弾をトルーパーへと放つ。

が、一人に命中したのみであり、すぐに他のトルーパーが攻撃を再開した。

 

「ぐあッ!くそ、どうすりゃ………!」

 

アライブはブラスターで応戦しながら、周囲を見回す。

鳶一と他のAST隊員は、ディーヴァ相手に戦っているが、ハッキリ言って弄ばれている。

 

「くっそ!」

 

「ンの野郎……ッ!」

 

クローズとグリスは出現した複数体のスマッシュと戦っており、動きにどこか疲労が見受けられる。

 

Ready Go!VOLTEX BREAK!!

 

「ハァッ!!」

 

『ぐっ……!ふ、フフ、やるじゃなイ』

 

ビルドも応戦しているが、赤のトルーパーとその指揮によって追い詰められている。

 

アライブは数秒の逡巡の後、顔を上げ決めた。

 

「こうなったら……!ハァッ!」

 

ブラスターの光弾をトルーパーに撃ち、怯ませる。

その隙にブラスターを放り、腰のフルボトルホルダーから赤のボトル______カマエルエンジェルフルボトルを取り出した。

 

ドライバーから一度ガルーダを外し、内部のスピリットフルボトルを抜く。

そしてカマエルボトルを勢いよく降り、ガルーダへと装填。そのまま力強くドライバーにセットした。

 

 

激焦ゥッ!

 

 

アライブカマエルッ!

 

 

炎の様に燃える待機音が鳴り響くや、力任せにレバーを回す。アライブの前後には、燃え盛る炎を纏ったアーマーが形成された。

 

 

Are You Ready?

 

 

「ハァッ!」

 

両手を下に広げ、アライブの前後から、アーマーが挟み込むように装着された。

 

 

Get Up Flame!!Dead Or ALIVE-KAMAEL!!イェイイェーイィッ!!ブゥアアァァッ!!

 

 

「_____ウォォォォ……ハァッ!!」

 

「ッ、士道、お前それ……っ!」

 

アライブカマエルへの強化変身を終え、灼爛殲鬼(カマエル)を手に持ちトルーパーへと向かう。ビルドがそれを見て、声を上げる。

 

「ッ、お前、分かってるだろ!?エンジェルフォームは負担が………!」

 

「分かってるけど、今はこれしかないだろッ!?ハァァァッ!!」

 

アライブが強く言い返し、カマエルを振りかざしてトルーパー達へと向かう。

横薙ぎに振るわれたカマエルは、その風圧と炎だけでトルーパー達を軽く吹き飛ばした。そして斬り込まれた刃はトルーパー達に直撃し、吹き飛ばされた奴らの一部は、変身が解除された者もいた。

 

「っ、士道、それは…………!?」

 

その光景を見た折紙が困惑の表情を浮かべたが、今のアライブにはそれに構う暇はない。

 

『くそ………何なのよ、コイツ………!』

 

『いきなり、強ク…………』

 

まだ変身解除には至っていないトルーパー達が、困惑と怒りに満ちた声を漏らす。

その中でビルドと交戦していた赤のトルーパーが、興味ありげに視線を巡らせた。

 

『あラ………確か、報告にあった【精霊の力を操る形態】、かしラ?どれほどのものか………』

 

「っ、まずい!」

 

ビルドが声をあげるも、赤のトルーパーは高速でアライブの元へと飛び、ブレードを振るった。

 

『試させてもらうわァッ!』

 

「ッ!ハァッ!」

 

赤のトルーパーがブレードを振り下ろした瞬間、アライブはカマエルで咄嗟に防御し______

 

「ぐ……………だぁぁぁぁッ!!」

 

『ッ、何!?』

 

力任せに薙ぎ、赤のトルーパーの攻撃を弾いた。

CR-ユニットによってどうにか姿勢を保ち、そこまでの飛距離は飛ばされなかったものの、その衝撃はかなり強かったらしい。

赤のトルーパーは、マスクの下で表情を歪ませた。

 

『こノ、餓鬼…………ッ!!』

 

と、更なる追撃を加えようと構えていた、その時________

 

 

「わッ!!」

 

 

『ッ!?』

 

突如、アリーナに大声が響き、全員が吹き飛ばされた。

周囲を飛び回っていたAST隊員達は勿論、アリーナにいたビルド達もアリーナ下まで飛ばされてしまったのだ。

 

「うわっ!?」

 

「ぐあっ!?」

 

更にそれはスマッシュとの戦闘を終えたばかりだったクローズ達にも直撃したらしく、二人揃って耳を塞ぎながら飛ばされていた。ビルド達も思わず怯んでしまい、衝撃と爆音の余韻で目を閉じてしまう。

 

そして音が静まり、次に目を開けた時には______

 

「え……?」

 

「な………」

 

さっきまでASTと交戦していたデーヴァは、そこから姿を消していた。まるで最初から誰もいなかったように、綺麗さっぱりと。

 

消失(ロスト)………チッ、ここまでネ』

 

赤のトルーパーが舌打ちながら言うと、上空を浮遊し始めた。見ると他のAST隊員達やトルーパー隊も、次々と撤退していく。変身解除された数名は、悔しげに表情を歪ませながら、CR-ユニットを着装し直して飛び去っていった。

 

『覚えてなさイ………仮面ライダー…………!』

 

憎々しげに吐き捨てながら、赤のトルーパーも飛び去っていく。

 

「……行ったか………」

 

「ああ………」

 

やがてアリーナには四人以外誰もいなくなり、全員が変身を解除する。

その瞬間。

 

「!……ぐっ…………!?」

 

「ッ、おい士道!大丈夫か!?」

 

「はぁッ、はぁッ…………」

 

変身を解除した士道が、全身に力が入らなくなったように膝を地に着き、荒々しく呼吸をする。その顔面からは玉のような汗が吹き出ており、アリーナの床へと滴った。

 

「おい、どうしたんだよ士道!」

 

「大丈夫なのか!?」

 

その様子を見た万丈と一海も、心配そうに寄ってくる。

士道は辛そうに見上げると、無理やり笑みを作った。

 

「だ、大丈夫………ちょっと、疲れただけ、だからさ………」

 

「……エンジェルフォームは大きく体力を消耗する。これからは無闇矢鱈と使わないほうがいい。ほら」

 

戦兎が忠告と共に、手を伸ばす。士道はそれを聞くと、すまなそうに苦笑して、戦兎の手を取った。

 

「ああ………わり、サンキューな」

 

戦兎の手を借り、なんとか立ち上がる。

その後スマッシュの成分を回収した後、四人の視界はフラクシナスの艦橋へと戻っていた。

 

 

 

 

ディーヴァの姿が消えてから、およそ一時間後。

結局いつも通りに精霊を倒す事も捕まえることも出来ず逃げられ、ASTの面々は駐屯地に舞い戻っていた。

 

「………士道、あれは、一体」

 

折紙は先程見た、アライブの姿______まるで、()()()()()のような姿となった士道の事を、考えていた。

いや、ような、ではないだろう。彼の手に握られていた戦斧は、間違いなくイフリートが使っていたそれだった。

 

さらに、あの戦闘力。変身前は苦戦を強いられていたというのに、あの姿になるやたちまち形勢が逆転した。

確かに彼がイフリートこと、自身の妹である五河琴里の霊力を封印したという事を聞いたし、その力が封じ込められたというボトルも目の当たりにした。

そのボトルを使って変身したのだろうが_____折紙は、ほんの少しだけ、恐怖を感じずにいられなかった。

 

相手が人間から精霊に入れ替わったような、あの戦力差の逆転。

 

それがなんだか、士道が段々と人間から遠ざかっていくようにも思えてしまったのである。

 

だが。折紙はそんな思考を振り払うと、視線を鋭くした。

 

今はそれよりも、もっと重要な事があるのである。

 

そもそも、士道かその姿になった原因______赤のトルーパーの変身者である、ジェシカの元へと向かった。

 

「一体どういうつもり?」

 

ジェシカが片眉を上げ、折紙に視線を返してくる。

 

「どういうつもりって言うト?」

 

「とぼけないで。何故あの時士道を攻撃しようとしたの」

 

「あラ。お知り合いだったのかしラ?」

 

「答えて」

 

折紙が詰問すると、ジェシカは大仰に肩をすくめた。

 

「どうもこうモ、仮面ライダーアライブは、ASTでも危険視されているでしょう?だから攻撃しようと思っただけヨ。何か問題でモ?」

 

「精霊が出現した場合、優先すべき対象は精霊。けどあなた達はディーヴァへ向かおうともせず、仮面ライダーのみを攻撃していた」

 

「その精霊を庇おうとしているんでしょウ?彼らは。だから不安要素を排除してあげようとしただけヨ」

 

「…………」

 

折紙は射貫くような視線でジェシカを睨み付けた。それが嘘である事は明白だった。

実際、ジェシカも折紙に自分の言葉を信じて貰えるだなんて最初から思っていないのだろう。だが、そう言いさえすれば、折紙はそれ以上ジェシカを追求できないことを分かっている様子だった。

実際、仮面ライダーはAST内で危険対象である事に変わりはなく、後から交戦動機などいくらでもでっち上げられる。

 

「話は終わりヨ。消えなさイ。私たちは忙しいノ」

 

ジェシカが鼻を鳴らしながら言ってくる。しかし折紙はそのまま言葉を続けた。

 

「あなた達が帯びている特殊な任務に関係があるの?」

 

「…………」

 

折紙が言うと、ジェシカとその部下がぴくりと表情を動かした。

そして鬱陶しげに舌打ちをし、ぐいと折紙の前髪を掴んでくる。

 

「く………」

 

「______小娘ガ。今の私は気分が悪いノ。小賢しい知恵を回そうとすると、長生きできないわヨ?」

 

吐き捨てるように言って、折紙を突き飛ばす。疲労が抜け切っていない折紙は、その場に尻餅を付いてしまった。ジェシカの部下達がクスクスと笑う。

 

「あんたら!何してんのよ!」

 

そこで騒ぎに気づいた燎子が、泡を食って駆けつけてくる。

ジェシカはとぼけるように顔を逸らすと、部下を伴って歩き去って行った。

 

「ちょっと、大丈夫?折紙」

 

「………問題ない」

 

折紙は差し出された燎子の手を取って立ち上がると、小さくなるジェシカの背中を憎々しげに睨み付けた。

 

一方のジェシカも、不機嫌そうな表情を隠そうともせず、苛立たしげに吐き捨てた。

 

「………仮面ライダァー………次は、必ズ…………!」

 

 

 

 

「なんで土曜に、こんな………」

 

十香と折紙に挟まれ、士道は連行されるように歩みを進めた。その後ろには昨日入手したボトルを眺め、やたらと上機嫌な戦兎と、その付き添いで付いて来た万丈がいた。

 

先日の精霊【ディーヴァ】との遭遇、及びトルーパー隊との戦いで、士道は全身を激しい倦怠感に襲われていたのだ。

あのあとフラクシナスでは不可解な好感度低下についての会議が行われたようなのだが、士道は帰ってからすぐに寝た。だから休息は充分には取ったはずなのだが……。

 

やはり、エンジェルフォームの使用は予想以上に士道の体力を消耗していたらしく、翌日も倦怠感は拭えなかった。

さらにその日の朝に急に亜衣から電話があり、今日は天央祭の各校合同会議があるからよーろしーくねー!と告げられたのである。休むと言う暇もなく、結局行く羽目になってしまった。

 

「おい貴様。シドーに寄りすぎだぞ。今シドーは身体が辛いのだ」

 

「あなたこそ離れるべき。あなたの体臭は耐え難いレベルとなっている」

 

「な、なんだと!?」

 

「二人とも、静かにしてくれ…………全身に響く」

 

「む、す、すまないシドー。その、身体は大丈夫なのか?」

 

「ああ……大丈夫。こんなの、今日一日乗り切ればへっちゃらさ」

 

「む、むう。そうか………あまり、無理をするでないぞ?」

 

「はは、ありがとう」

 

「………」

 

十香の思いやりに、笑顔で応える。正直全然大丈夫ではなかったが、せめて十香の前くらいでは大丈夫なように振る舞おう。折紙はそれを見て、申し訳なさと恨めしさが混ざったような、複雑な視線を送っていた。

 

ちなみに今、合同会議会場に向かっているのは士道、十香、折紙、戦兎、万丈の五人のみであり、亜衣麻衣美衣の姿はない。どうやら一日目のステージ部門でバンド演奏をする予定らしく、その練習で来られないのだという。その代役として、十香と折紙がいたというわけだ。ちなみに万丈はこれと言ってやる事も無かったということで、ただの付き添いとして来ている。

 

「ボトルがこんっなに………最っ高だ!」

 

「おい、スマッシュ倒したの俺なんだから、なんか言うことあるだろ?」

 

「ちょっと太った?」

 

「違えだろ!つか太ってねえよ!寧ろちょっと痩せたわ!」

 

戦兎が両手にボトルを持ち、万丈とまたいつものやり取りをしたあたりで、合同会議の会場である学校が見えてきた。

 

赤煉瓦の荘厳な校門から鉄製の飾り格子が左右に広がり、その合間から青々とした生垣を覗かせている。

そしてそこから、これまた赤煉瓦が敷き詰められた道が一直線に伸び、その先にまるで城と見まごうかのような立派な校舎が見て取れた。天央祭準備や部活動のためか、生徒の姿も見受けられる。

 

私立竜胆寺女学院。名家の子女達も数多く通う、天宮市屈指の名門校である。

 

「すっげ……これ学校かよ」

 

「ブルジョアみてえだな」

 

万丈と戦兎も、感嘆の声を漏らす。元いた世界でもあまり目にしたことがないのだろう。

 

「おお、凄いなシドー。これも学校なのか?」

 

「ああ、そうらしいな。とりあえず入ってみようぜ」

 

「おお。行くぞーみんな」

 

「あ、ちょっと待てよっ」

 

「うむ!」

 

「……………」

 

五人で生徒手帳を見せてから、敷地内に入った。

来賓用の昇降口から校舎内へと入り、事務局で入校許可証を受け取り、目的の会場へと向かう。

 

「第二会議室はここだな」

 

戦兎が言い、扉を開ける。部屋の中には既に様々な制服の生徒達が何人も揃っていた。会議までまだ時間があるからか、席に着かずに談笑している生徒も多い。

とはいえ、昨日就任したばかりの士道と戦兎達に顔見知りがいるはずもなく、手早く自分たちの席を探して椅子に腰掛ける。

 

と、それからすぐに、コンコン、と会議室の扉がノックされた。

 

「ん?」

 

士道が首をひねっていると、部屋にいた生徒達が一斉に顔を上げた。

 

「な、なんだ、一体」

 

士道が思わず身構える。が、扉の向こうから聞こえてきたのは、拍子抜けするような優しげな声だった。

 

『失礼しまぁす』

 

そんな一言が聞こえてから、ゆっくりと扉が開いていく。

静々と入ってきたのは、濃紺のセーラー服に身を包んだ少女達の一団だった。そして、まるで大名行列を出迎えるように、二列に並んで頭を垂れていく。

 

「へー、結構な美人さん達じゃないの。竜胆寺の生徒か?」

 

「でも、なんか様子が変だぞ……?」

 

士道が訝しんでいると、その少女達が作った道の真ん中を、一人の生徒が女帝の如く悠然と歩いてきた。

 

紫紺に輝く髪を纏め、銀色の瞳を持った少女である。少女達と同じセーラー服を着ていたが、その身から放つ圧倒的な存在感が、彼女の輪郭をくっきりと浮かび上がらせていた。

 

「な………」

 

「………うっそーん………」

 

「マジかよ………」

 

「……………っ!」

 

その姿を見て、十香を除く四人は息を詰まらせた。

確かに美しい少女だった。町中でこんな美人とすれ違ったなら、誰でも思わず振り向いてしまうだろう。

だが、問題はそこじゃない。

 

「_______こんにちわー。よく来てくれましたねー、皆さん」

 

少女がのんびりとした口調でそう言って、ぺこりとお辞儀をする。

その声を聞いて、士道と戦兎は確信した。

その、少女は。

 

「竜胆寺女学院、天央祭実行委員長、誘宵美九(いざよいみく)ですぅ」

 

昨日彼らが遭遇した精霊_______【ディーヴァ】だった。

 

 




どうでしたか?
ここでちょこっと解説。

・レッドトルーパー(デウストルーパー隊長格)

変身者:ジェシカ・ベイリー
ベルト:量産型リバースドライバー(隊長用)、アームズフルボトル

デウストルーパーの隊長に相当する。
隊長用にスペックの向上した量産型のリバースドライバー(見た目は同じ)で変身する。
単純なスペックは他のデウストルーパーよりも当然高く、また隊を指揮する為、通信機能や索敵レーダーなどの性能も強化されている。
元はジェシカの趣味で赤い色になったが、後に隊長のトルーパーは全て赤いカラーリングになる。
ちなみに赤いからといって他より三倍も性能が高い訳ではない。


こんな感じです。イラストは後々。

それでは次回、『第57話 生まれ変わるジェンダー?』をお楽しみに!
ちなみにジェンダーの意味は『性別』です。そのタイトルが指すものは………?

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