デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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士道「はぁっ、はぁっ……!精霊にして、アイドルのっ、誘宵美九と……!仮面ライダーアライブの、五河士道………って、なんで逃げ回りながらあらすじ紹介してんだよ!」

戦兎「仕方、ねえだろ!今色々、追い詰められてんだから!ハッ、ステージ対決の結果、来禅高校が美九率いる竜胆寺学院に、総合で勝利を収める。だが、それを納得しない美九は、天使を顕現させるのであった。そしてそんな中、崇宮真那が変身して………って、なんであいつ勝手にあのベルト使ってんだよ!俺確か令音さんに渡したよな?まさか…………いや、とりあえず第64話、どうぞ!」


第64話 奪われたヒーロー

「仮面ライダー………ファング………」

 

折紙は、半ば呆然と呟いた。

突如目の前に現れ、バンダースナッチを一掃した真那が、今度は見たことのないベルトで変身したのだ。そうなるのも必然であろう。

 

『一体、どういう事ヨ………タカミヤ・マナ………!?』

 

そして真那_____否、ファングの眼前にいたレッドトルーパーが、驚愕に染まった声を発する。

 

「おおその声、誰かと思えばジェシカじゃねーですか。なんで日本になんていやがるんですか?」

 

『あなた、一体なぜ、それにそのベルトは_____いえ、それよりも、今自分が何をしたのか分かっているノ!?』

 

「それはこっちの台詞です。一人相手にこの大人数なんて、しばらく見ねー間に随分とやり口がセコくなったんじゃねーですか?」

 

『そういう問題じゃないでしょウ!なぜ私たちを攻撃するノ!答えなさい、アデプタス2!』

 

レッドトルーパーが金切り声を上げて叫ぶ。ファングはやれやれと肩をすくめた。

 

「昔のコールサインで呼ぶのはやめてくれねーですか?社長に伝えといてください。______わりーですけど、私DEM辞めます。退職金は貴様の首で勘弁してやります、って」

 

『な______』

 

ファングの言葉に、レッドトルーパーと、他のデウストルーパー達が声を詰まらせる。

 

『貴方_____ウェストコット様を裏切るつもリ!?栄えあるアデプタス・ナンバーの次席に名を連ねられた貴方ガ!」

 

「まあ、有り体に言うとそういう事です」

 

ファングが右手をスナップさせる。

 

「この場は、貴方達が私に恐れをなして引いてくれやがるってのが一番理想的なパターンなんですけれども、どうですかね?」

 

『………っ!ふざけるナ!ウェストコット様の命令に背く事なんて______』

 

「まあ、そーですよね。でも」

 

そう言った瞬間、ファングの姿が稲妻のように掻き消えた。

 

「………!?」

 

 

【ファングクラッシャーッ!】

 

 

そして驚愕を隠し切れないレッドトルーパーの背後に現れると、電子音とともに右手に奇妙な、まるで狼の頭部のような形をした武器を構え、一閃する。

 

 

【エッジ・ファング!】

 

 

「この………っ!」

 

ジェシカが身をよじるも____遅い。ファングの専用武器、【ファングクラッシャー】の下部から展開されたブレード、【エッジファング】は、レッドトルーパーに装備されていたユニットとスラスターをバターのように切り裂いた。

 

どうやら刀身の表面に生成魔力で作った細かなレーザーエッジを蠢動させているようだ。見てくれは剣のそれだが、構造はチェーンソーのそれに近いようだった。

 

大きくバランスを崩されたジェシカは、しかし戦意を失う事なくベルト側部のハードポイントからデュアルスレイヤーを引き抜くと、ファングに向かって振り抜いた。

 

 

【ブラスト・ファング!】

 

 

だが悲しいかな、技量とユニット、そしてベルトの性能に差がありすぎる。

しかしベルトに関していうならば、無理からぬ事だろう。何故ならばそれは______崇宮真那がかつて使用し、今正にレッドトルーパーが装着している、【リバースドライバー】の設計データを基に開発され、性能、そして変身者への安全性を昇華させたベルト____【モデライズドライバー】なのだから。

 

ファングはレッドトルーパーの一撃を一度エッジファングで受け止めると、すぐさまモードを変更。

刀身をファングクラッシャー下部に折り畳むと、狼の頭部を模した先頭が開き、内部からエネルギーを撃ち出した。

 

『ぐ………ッ』

 

短い苦悶と共に、レッドトルーパーが下へ飛ばされ、地上との距離が近くなる。

しかしファングはそれを見逃すつもりなどないように、すぐさまドライバーを操作し、レッドトルーパーへ急降下する。

 

 

【CHARGE GO NOW!!】

 

 

「ハァァァァ______ッ!!」

 

アップテンポな音に合わせて、ファングの右脚にエネルギーが溜められる。

そしてレッドトルーパーを眼前に捉えると、背面スラスターを噴射させる。そしてその勢いのまま、敵へ空中回転キックを放つ必殺技_____

 

 

ハウンディング フィニッシュ!!

 

 

「ウォォォォ______ッ!!!」

 

レッドトルーパーに、空中の位置エネルギーも利用した渾身のキックを放つ。キックを放った右脚には蒼色の狼の頭部のようなエネルギーが形成され、叩き込まれた瞬間にレッドトルーパーを噛み砕く勢いで大口を開いた。

 

『くハ…………ッ』

 

「_____言ったでしょう?私の牙は、荒っぽいと」

 

ファングが、そう捨て台詞を吐く。

レッドトルーパーは苦悶の声を上げると、地面へと落下し、下で土煙を巻き起こした。どうやら落下の衝撃は随意領域(テリトリー)とライダーシステムの恩恵によって防ぎきったようだが、ダメージは酷いようだった。随意領域(テリトリー)はその衝撃を防いだ後にすぐさま解除され、アーマーも粒子となって消え失せた。

地上に一度降り、ぐったりとしたレッドトルーパー_____ジェシカを片手で持ちながら、ファングがふうと息を吐いた。

 

「………ふむ、これがモデライズドライバーでの変身ですか______初使用にしちゃ悪くない………ていうか寧ろ、前と比べたら良すぎて癖になりそうですね」

 

次いで空中へと飛んで戻り、残った四体のデウストルーパーに目を向ける。

 

「さあ、あなたたちの親分はご覧の有様です。DEMの魔術師(ウィザード)でありトルーパーなら、今の戦いで私に_____仮面ライダーファングに勝てるかどうかくらいは分かりやがったでしょう?」

 

ファングの言葉に、トルーパー隊が緊張した様子になる。ファングは再び一瞬のうちに残ったトルーパーの背後に移動すると、気絶したジェシカの身体を乱雑に放った。

 

『わ………っ』

 

急にジェシカを預けられたトルーパーは、慌てながらも随意領域(テリトリー)を操作し、その身体を支える。

そんな様子を確認してから、ファングがさらに言葉を続けた。

 

「見逃してやるって言ってんです。これが最後の警告です。そいつを連れてとっとと消えやがりなさい」

 

しかし、そんな警告で矛を収められるほど、トルーパー隊も物分りが良くはなかったらしい。複眼を光らせ、ファングを取り囲むように展開する。

 

「やれやれ………そんなにこの牙が欲しいなら、いくらでもくれてやりますよ」

 

ファングは黄色の複眼を光らせると、ファングクラッシャーを構えてそう呟いた。

 

 

 

 

「琴里!聞こえないのか、琴里!!」

 

今士道達を取り巻く環境は、最悪と言って良いほどに逼迫していた。

士道はインカムに手を当てながら、必死にフラクシナスとの通信を試みている。だが小突いてみてもノイズが走るばかりで、一向に通信が取れない。

そしてそんな士道に______辺りの温度が急激に下がったかと思うと、氷の柱が形作られ、襲いかかってきた。

 

「このッ!」

 

だがそれを、ビルドに変身した戦兎が、ドリルクラッシャーで打ち砕いた。

そしてその氷柱を作り出した張本人_______霊装を限定解除した、四糸乃に向き合い、叫ぶ。

 

「四糸乃!しっかりしろ、目を覚ませッ!」

 

「お………お姉様は、私が……守り、ます」

 

「四糸乃……!くそっ……!」

 

しかし四糸乃はなおも冷気を発生させ、ビルドに襲いかかる。

そしてそのすぐそばでは、凄まじい風の奔流が吹き荒れていた。

 

「おい!どうしちまったんだよ!耶倶矢!」

 

「くそっ、どうなってやがんだよ一体……!」

 

そこではクローズに変身した万丈、グリスに変身した一海が、暴風に抗うように必死に耐えていた。

 

「くく………愚かな。我らが姉上様に盾突こうとは、総身に知恵が回り兼ねておると見える」

 

「くそ、刺身だか香味だが知らねえが、正気に戻れ耶倶矢!」

 

クローズが叫ぶも、相手______限定解除した霊装の拘束具に身を包んだ耶倶矢は、巨大な槍を携え軽やかに空を舞っていた。

 

「俺から_____離れないんじゃなかったのかよ!!」

 

だが、クローズが言い放ったその言葉が、耶倶矢の動きを止めた。

 

「何を………ぐっ、うぅっ…………!?」

 

何やら頭を押さえ、苦しむ様子を見せる。

 

「くっ…………面妖な、事を。その口、すぐに閉じてくれる………!」

 

すると耶倶矢が苦悶の表情を浮かべながらも、風に乗りながら槍を構えてクローズへと迫る。

あと少しで槍の穂先がクローズを貫かんとした、その時。

 

 

______ガキィンッ!!

 

 

「何……?」

 

その槍を、ペンデュラムのような武器が弾いた。

そしてクローズ達に吹いていた風とは対照の方向に風を吹かせ、耶倶矢を吹き飛ばす。

 

「く………どういうつもりだ、()()よ」

 

「呼掛。正気に戻ってください、耶倶矢!」

 

耶倶矢の半身である夕弦は今____耶倶矢に敵対するように、その風を吹かせていた。

 

 

_____事の発端は、美九があの巨大なオルガンピアノを顕現させた事だった。

 

何故あそこまで人を恐れていたのかは士道達に分からない。考える暇すらないが、少なくとも分かったのは、美九が天宮スクエアにいた全ての人間を操った事であった。

例外は、精霊の加護を持った士道、戦兎、万丈と、幸いにもイヤーモニターを両耳につけていた十香、そして______美九が以前使っていた力からその能力を推察した戦兎が、咄嗟にポケットのイヤモニを付けさせた夕弦、そして何故か一海_____ハザードレベルによる影響だろうか______のみであった。

それらを除く全ての人間は、観客として来ていた四糸乃や、共にステージにいた耶倶矢も例外なく美九の支配下となった。

 

更に最悪な事に、あの能力が発動した直後に士道の女装が美九に露呈してしまったのだ。

それにより、操られた観客が一斉に士道に迫り、美九の元へ向かおうとしても、四糸乃と耶倶矢は美九を守るように構えていた。

 

士道は十香の助けもあってキャットウォークにどうにか逃げられたが、まだ下に戦兎達が残されている。どうにか変身する事は出来たようだが、四糸乃達の容赦の無い攻撃に追い詰められている。更に戦兎達からは四糸乃達を攻撃する事など出来ない。やられ放題だ。

 

「くそっ!やめろ四糸乃!」

 

「おい耶倶矢!どうしちまったんだ!正気に戻れ!」

 

「呼掛。もうやめてください、耶倶矢!」

 

戦兎、万丈、夕弦が叫ぶも、四糸乃と耶倶矢は攻撃を止めようとしなかった。

 

「何を……言っているんですか?戦兎さんこそ……なんでお姉様に酷い事を………するんです?」

 

『そーだよー、君たちがいけないんじゃないのー。ちょーっとお灸を据えなきゃいけないでしょーこりゃー』

 

「お主らこそどうしたのだ。龍我、夕弦よ。何を酔狂な事を申しておる」

 

四糸乃と氷結傀儡(ザドキエル)と化したよしのん、そして耶倶矢が口々に言ってくる。

言動を見るに、どうやら彼女らは戦兎達の事を忘れたり、人格が変化させられた訳でもないようだ。ただ彼女らの価値観の最上位に、誘宵美九という存在が刷り込まれているといった様子だった。

 

「戦兎!万丈!一海さん!夕弦!くそっ……」

 

士道が四人に叫ぶも、観客に囲まれて身動きが取れない。

すると側にいた十香が、顕現させた鏖殺公(サンダルフォン)を握り、キャットウォークの手すりを蹴って美九に迫っていった。

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

裂帛の気合と共に空中で放たれた斬撃が、美九に向かって伸びていく。

だがその一撃は美九に届く寸前で四糸乃が構築した氷壁に阻まれた。次いで、十香に向かって烈風が放たれる。

 

「く_____!」

 

咄嗟に剣で防御するも、風圧そのものを殺す事は叶わなかったらしい。十香の体が軽々と吹き飛ばされ、ステージの壁に叩きつけられた。

 

「ガハッ………!?」

 

「十香!!………もう、こうなったら…………!」

 

最後の手段______変身して止めるしかない。

懐からリビルドライバーを取り出し、腰に当てがおうとした、その瞬間______

 

「え…………?」

 

「何だ………?」

 

士道、戦兎達は眉をひそめて上空を見遣った。ステージの天井が十字に引き裂かれ、そこから、機械の鎧を纏った金髪の少女が会場内に入ってきたのである。

 

「あ、あれは_______」

 

「くそっ、このタイミングで…………!」

 

その姿には見覚えがあった。全身に白銀のCR-ユニット、そして腰には注射器のようなベルト____リバースドライバーを装備した少女______或美島で戦ったDEMの魔術師(ウィザード)にして、仮面ライダーマイティ。エレン・メイザースであった。

 

「ベイリー達は結局失敗しましたか。………まあ良いでしょう、想定の範囲内です」

 

「な………あやつがなぜこんなところに………」

 

十香も苦々しく顔を歪め、立ち上がって鏖殺公(サンダルフォン)を構える。

 

「最っ悪だ………よりによって、あいつが……」

 

「おい、あれ………前に島で俺たちを襲ったやつじゃねえか!」

 

「マジかよ………」

 

ビルドとクローズ、グリスも武装を構え、エレンに向かう。

 

「_____目標、夜刀神十香に、仮面ライダービルド、クローズ、グリス、そして____仮面ライダーアライブ変身者、五河士道………の反応がある女生徒を発見。これより捕獲に移行______と、言いたいところですが」

 

するとエレンが急に言葉を止め、誰かを探るように視線を動かした。

そしてやがて、ステージに通る声で、言う。

 

 

「_____そろそろ出てきたらどうですか…………マッドクラウン

 

 

「何………!?」

 

エレンの口から語られたその名に、士道は顔を歪ませる。

マッドクラウン。その名は嫌でも覚えている。忘れるはずがない。これまで何度も士道達の前に現れ、邪魔をしてきた、蠍男の名だ。

 

「まさか、あいつもここにいるのか………!?」

 

ビルドも戦慄したように、苦い声を発する。

 

「おい、マッドクラウンって誰だよ」

 

「………前の世界の、スタークみてえなやつだ」

 

「成る程。______要は、敵って事だな」

 

唯一マッドクラウンの事を与り知らないグリスが、クローズに質問する。

そしてクローズが応えた単純明快で分かりやすい答えに_____グリスは臨戦態勢を取った。

 

そして、皆の緊張が高まっていた、その時_______

 

 

 

「_____おいおい、そんなに期待されちゃ、かえって出づらいだろー?なぁ?()()

 

 

 

その、ステージの奥から聞こえた声に。

 

「え…………?」

 

士道は思わず、呆然とした。

それは、その声の主が、全く聞き覚えのない人間のものだから______では無い。寧ろその逆。

普段から、聞いていた声だったからだ。

 

「ぬ……?」

 

「何………?」

 

「呆然。今の、声………」

 

「おい、今の声って………」

 

そしてその声に反応を示したのは、士道だけでは無い。

十香、ビルド、夕弦、クローズも又、その声に動揺を隠せなかった。

 

そう。普段から学校で、聞いていた声________

 

 

「…………殿、町…………!?」

 

「よう! 五河、さっきのライブ見てたぜ。結構可愛いじゃんか」

 

 

そう。士道の悪友_____殿町宏人、その人だった。

いつも通りの学生服に、逆立った髪型。そして____美九の洗脳が、全くかかっていないように、いつも通りのおちゃらけた調子。

 

「どう、したんだよお前……こんなとこにいちゃ、危ないぞ……」

 

まさか。

 

そんな訳がない。

 

そう思えば思うほどに、脳内で一つの可能性が強く思わされる。

そしてそんな士道の思考を決定付けるように、殿町が何かを取り出した。

 

右手に握られた、深紫色に光る、見覚えのある銃_______リバースチームガンだった。

 

「そんな……」

 

「嘘だろ……!?」

 

ビルドとクローズが呆然と呟く。

 

そして殿町はさらに左手に何かを掴むと、シャカシャカと数回振り、その銃に装填した。

 

 

 

SCORPION ALTERNATIVE…………】

 

 

 

低い音声とともに、待機音が流れる。

殿町は手に持ったリバースチームガンを顔の横まで持っていくと、ニヤッと口元を歪め引き金を引いた。

 

 

「凝装」

 

 

【LIQUID MATCH………】

 

 

銃を自身の手前で、十字を切るように動かす。

銃口から噴出した蒸気が殿町の周囲に()縮され、全身を巡り回ってアーマーと化し()着した。

 

 

 

MAD……SCORPION……MAD………】

 

 

 

【REBIRTH!!】

 

_____毒のような瘴気と共に、その姿が露わになる。

嫌という程に見慣れた______見慣れてしまった、その姿を。

 

 

『俺が______マッドクラウン

 

 

殿町の声から_____聴き慣れてしまった、その嫌な声に変えて。

 

士道は_____残酷な真実を、突き付けられた。

 

「殿町…………お前だったのか……!?なんで、お前が…………!」

 

士道が未だに現実を受け止めきれない様子で呆然と呟く。

だが、それも無理のない事だ。ついさっきまで悪友だった人が、これまで士道達を搔き回し、暗躍し続けた敵の正体だと、眼前で突きつけられたのだから。

 

そんな士道にクラウンは、やれやれと首を振って答えた。

 

ま、よくある話だよ。今まで友人だと思ってた奴が、実は正体不明の敵の正体でした………なんて、何十年も前から使い古された設定さぁ。ゲームや漫画でも見たことあるだろう?

 

などと大仰に手を振り上げた、芝居掛かった仕草でクラウンが語る。

だが士道にとっては、到底信じられない内容だった。

 

殿町は親友とまで言えずとも、士道にとって大事な友人だった。馬鹿だけど憎めない、良い奴だった。____その筈なのに。

 

その事実は士道の心に、まるで槍のように深く突き刺さった。

 

「馬鹿な………シドーの友人が、あのサソリ男だったというのか………?」

 

「驚愕。………そんな」

 

十香と夕弦も、士道の友人が今まで自分達を襲ってきた敵の正体と知り、士道程では無いにしろ、動揺を隠せない様子だった。

 

「…………」

 

そして戦兎はその光景を見て、自身の記憶がフラッシュバックしていた。

 

 

_______かつて自分を偽りのヒーローとして仕立て上げ、裏切り続けた………ブラッドスタークを。

 

 

DRAGON IN MIGHTY

 

 

そしてクラウンの前に、マイティへの変身を済ませたエレンが来る。

 

『____クラウン。無駄なお喋りはそこまでにしてください。早く任務を終わらせますよ』

 

はいはい、分かったよぉ

 

そう言ってクラウンがブレードを構えると、美九達には目もくれず、一直線に士道と十香の方に向かってきた。

 

「シドー!!」

 

「ッ!」

 

するとそれを遮るように、十香が前に出てクラウンの攻撃を防ぐ。

 

へぇ〜、やるねぇ、十香ちゃん

 

「………シドーの友人よ。お前が本当に、今まで私達を襲ってきた敵だというのなら………もし、今までシドーを裏切って来たと言うのなら_______」

 

顔を伏せ、十香が鏖殺公(サンダルフォン)を握る手を強める。

そして顔を上げると、鋭い眼光で言い放った。

 

「私が______お前を斬るッ!!ハァッ!!」

 

言い終えるや、十香は鏖殺公(サンダルフォン)を薙ぎ払い、クラウンを詰める。

 

そんな限定解除しただけの状態で、俺に勝てると思ってるのかァ?

 

一方のクラウンもブレードをスチームガンに装備させると、十香へと迫って行った。

 

「十香ッ!」

 

『余所見は____危険ですよ』

 

「ッ!」

 

十香に駆け寄ろうとするも、その行方をマイティが塞ぐ。

漆黒の龍を象った装甲に身を包み、マイティが手に携えたレーザーブレードを振りかざさんとした、その時。

 

「ハァッ!」

 

「オーラァッ!!」

 

『ッ……!』

 

ビルドとクローズが、割り込むようにマイティに攻撃を仕掛けた。

ビルドは【ラビットタンクスパークリング】となっており、ドリルクラッシャーを回転させていた。

クローズはビートクローザーを構えており、いつでも攻撃できるよう構えていた。

 

「戦兎!万丈……!」

 

「士道。………気持ちは分かる。でも今は、変身しろ」

 

「………ッ!ガルーダ………っ!」

 

そうだ。今は敵の眼前。変身しなければ、命の保証は無い。

未だに胸に残る嫌な感覚を無視して、士道はガルーダを手に取った。スピリットフルボトルを振り、装填する。

 

 

【Get Up!ALIVE-SPIRIT!!

 

 

【Are You Ready?】

 

 

「変身…っ!」

 

 

【Dead Or ALIVE-SPIRIT!!イェーイッ!!】

 

 

アライブへの変身を完了させ、改めてマイティへと向き合う。

 

『ほう。三人がかりですか……。戦法としては、悪くないですね』

 

「うるせぇっ!てめえに褒められても……嬉しくなんてねえよッ!!」

 

『そうですか』

 

クローズが手にしたビートクローザーを振り抜き、マイティへと迫る。

マイティは短く言うと、手にしたレーザーブレードを構えて、クローズの攻撃を防いだ。

 

『成る程____聞いた通りの、短絡的思考ですね』

 

「ああっ?意味わかんねえ事言ってんじゃねえ!それに……ドラゴンっつったら、俺だろうがよ!」

 

『誰に決められたわけでもないでしょう』

 

クローズの言葉に冷静に返しつつ、マイティは周囲を確認するように視線を巡らせた。

眼前にはビルド、クローズ、アライブ。キャットウォークにはクラウンと対峙する【プリンセス】、夜刀神十香。何千という数の観客。そして、ステージ上に天使を顕現させた精霊【ディーヴァ】と、それに付き従う【ハーミット】、【ベルセルク】のうちの一体。そして残り一体と仮面ライダーグリスが、ハーミットとベルセルクの片割れに向かっている_______なんとも奇妙な光景であった。

 

これだけ揃うのは非常に稀である。ついでに何人か………という考えが頭を掠めるが、マイティはすぐに思い直して首を振った。

 

『………いえ、やめておきましょう。慢心は敵です。_____作戦が変わりましてね。プリンセスはクラウンに任せるとして_____今日用があるのは、あなた達です。仮面ライダーアライブ、五河士道。そして………()()()()()()()()()

 

「な……っ」

 

「何……!?」

 

マイティから指名されたアライブとビルドが、困惑の声を上げる。

十香を狙うのは、まだ分かる。だが何故、戦兎や士道までも狙おうとするのか、その真意が分からなかった。

するとクローズが、再びマイティに攻撃を仕掛けてきた。

 

「俺を_____無視すんじゃねえ!戦兎に、一体何の用だ!!」

 

『_____今の貴方は、これで十分です』

 

そう呟くと、マイティは腰部のデュアルスレイヤーを引き抜き、クローズの剣撃を容易く弾き、更に連続攻撃を仕掛けた。

 

「ぐっはっ………ッ!」

 

『これで詰みですね』

 

そう言うと、マイティはドライバーからボトルを引き抜き、デュアルスレイヤーに装填した。

 

 

【STAND BY DRAGON BREAK】

 

 

『ハッ___!』

 

「ガァァァアッ!!?………あっ………」

 

マイティの必殺をもろに食らったクローズは装甲から火花を散らせ、壁に吹き飛ばされた。

煙が晴れると、そこには変身を解除され、意識を失っているのか、ぐったりとした様子の万丈の姿があった。

 

「万丈ッ!!」

 

「てめえ……ッ!!」

 

ビルドとアライブが、マイティに向かっていく。

ビルドがドリルクラッシャーを振り抜き、刃のドリルを回転させた。

 

『【カレドヴルフ】』

 

しかしマイティは、一度デュアルスレイヤーを腰に仕舞うと、背に携えた大型レーザーブレードを引き抜き、ビルドに叩きつけた。

 

「何……!ぐあッ!!」

 

「戦兎!」

 

ビルドはどうにか防いだものの、その衝撃までは消せなかったらしい。地面へ叩きつけられ、土煙を巻き起こした。

 

「ッ!危険。戦兎ッ!」

 

「来ちゃダメだ!夕弦!」

 

ビルドが攻撃された事を見たのか、夕弦がこちらに向かおうとするのを、アライブが止める。

今ここにきては、夕弦まで餌食になってしまう。それこそ、一番最悪なパターンだ。

 

 

【ALIVE-LUSTER!】

 

【SLASH VERSION!】

 

 

「ハァッ!」

 

アライブラスターを構え、マイティへと向かっていく。振り抜いた剣先が、マイティ目掛けて飛んできた。

 

『甘いですね』

 

だがマイティは慌てることもなく、再び大型レーザブレードを振り抜き、アライブを斬り裂いた。閃光の刃がアライブのアーマーを引き裂き、粒子と霧散させる。

 

「ガハッ………ガァッ!?」

 

レーザーブレードの威力故か、一瞬で地面に叩きつけられ、変身解除される士道。

全身から血を流し、その傷を灼爛殲鬼(カマエル)の炎が癒さんと燃える。

 

『攻撃が直線的ですよ。先ほどのクラウンの言葉で、動揺しましたか?』

 

「ッ!……だ、まれ_____!」

 

歯を食いしばり、なおも立ち上がろうとするが、力が入らない。

それを見るとマイティは、つまらなさそうにブレードを仕舞い、ベルトに手をかけた。

 

『カウントをするまでもありませんでしたね。_____チェックメイトです』

 

 

【STAND BY】

 

 

MIGHTY FINISH】

 

 

『ハッ_____!』

 

マイティが空中に舞い上がり、右脚にエネルギーが充填される。

黒い龍の影を帯びながら、空中で回転。闇のライダーキックが、士道の眼前まで迫っていた。

 

「ッ!逃げろ士道!!」

 

「あッ………!ぐっ………」

 

ビルドが叫ぶも、先ほどのダメージによって士道は動けず、動けたとしても到底避けられない。

一撃必殺のキックが、今まさに士道を屠らんとした、その時_____

 

 

______ビルドが、士道を庇うように身を呈した。

 

 

 

「ぐっ…………!ガァァァァァッ!?」

 

 

そのキックの威力は、スパークリングで強化されていた筈のビルドの装甲を抉り、余波でマスクを破砕させるほどであった。

戦兎が苦悶の声と共にその場の地面に激突し、変身が解除される。

 

「ッ!戦兎ぉぉッ!!」

 

「がはッ………ぐっ………あっ…………」

 

士道が叫ぶも、戦兎は苦しみの声を上げるばかりで、立ち上がれそうになかった。

 

「ッ!そん、な………!」

 

そしてその光景を目撃した耶倶矢と交戦中の夕弦が、青ざめた表情をして、一直線に戦兎の元に向かう。

 

「ッ!呼掛。そんな……しっかり、しっかりしてください!戦兎!戦兎ぉっ!!」

 

「ゆ、づる………」

 

夕弦の姿を認識してか、戦兎が短く名前を呟く。

すると、その時。

 

「ぐっ………ぐぁぁぁッ!?」

 

奥から声が聞こえ、いきなり周囲の温度が下がったかと思うと、大量の氷柱と共に、変身を解除された一海が吹き飛んで来た。

 

「っ、一海さん……っ!」

 

バトルジャンキーの一海と言えども、流石に操られてしかも生身に近い状態の四糸乃や耶倶矢と、まともに戦えるはずがなかった。ほぼ一方的にやられ、吹き飛ばされたのだ。意識を失ったのか、ぐったりとしている。

 

すると、そこに。

 

おーいお嬢さん。そろそろ時間だぜぇ?戻らねえと

 

マッドクラウンが現れた。しかもその腕には______

 

「十香…………!?」

 

苦労したぜぇ。随分抵抗したからなぁ

 

霊装を解除した、十香が抱かれていた。

十香は意識を失っているのか、ぐったりとしたまま動こうとしなかった。

 

「……!十香を、返せ………ッ!」

 

やだね。そんじゃ、バイナラだ。()()

 

「ッ………!」

 

十香を取り戻そうと、士道が立ち上がったが、クラウンは十香を抱えて、霞のように消えていってしまった。

だがそれを塞ぐように、マイティが再び近付いてきた。

 

『好都合です。このまま全員、私と付いてきてもらいますよ』

 

「くっ………」

 

マイティが全員を見下ろし、冷酷に告げる。

と、その時。

 

「士、道………!これを……っ!」

 

「えっ………?」

 

戦兎が何かを取り出すと、士道の方に投げてきた。慌ててそれを受け取る。

投げ渡されたのは、何やら玉座のようにも見える、何かのガジェットだった。しかし色は塗られていないのか、鉄色のままだった。

そして戦兎が立ち上がり、夕弦の手を掴み懇願するように言う。

 

「夕弦………!あいつらを連れて、逃げろ……!こいつらは、俺が止める………!」

 

「ッ!………拒否。駄目です!それでは、戦兎が捕まります!それに、今の状態じゃ………」

 

「時間を稼ぐくらいはできる!それに、今この状況で士道達を逃がせるのは、風の精霊であるお前しかいない」

 

「っ………何言ってんだ!戦兎!」

 

戦兎が放ったその言葉に、思わず反論する。

戦兎の言った提案は、この場にいる士道達を逃す代わりに、戦兎が捕まる、言うなれば自殺行為だ。そんな事を、士道が、夕弦が、容認できる筈がない。

 

「………ッ!否定……!駄目……駄目です!戦兎!」

 

「頼むッ!!ここでお前らを守れなきゃ、愛と平和なんて語れないッ!!」

 

「ッ!」

 

戦兎が夕弦にそう言い放つと、マイティ達を見据え、ビルドドライバーを構えた。

やがて再び夕弦の方を向き、叫ぶ。

 

「………いいから行けッ!!早く逃げろッ!!」

 

「ッ……………!!!」

 

夕弦は暫く葛藤した後、振り切るように士道達の元へと向かった。

一海と万丈を抱えると、次いで竜巻を発生させ、士道の身体を浮遊させる。

 

「そんな………!戦兎ッ!」

 

「ッ、阻止。駄目です士道!」

 

「離せよ夕弦ッ!!十香も助けられちゃ………!」

 

「逃げるんだ士道ッ!!」

 

「ッ!」

 

夕弦の風から逃れようとした士道を、戦兎が一喝する。

そして一瞬こちらを向き、微笑むと、マイティ達へと顔を向けた。

 

「っ……………脱出。行きますよ、士道」

 

「そんな………戦兎ッ!戦兎ッ!!」

 

夕弦が風を操り、ステージ上空に空いた穴へと舞って行く。

士道が叫ぶも、戦兎と十香の姿は、どんどんと遠ざかっていき_____やがて建物の外へと、脱出した。

 

 

 

 

______これでいい。

 

 

一人残された戦兎は、士道達が無事脱出した事を確認すると、笑みを浮かべた。

これでどうにか、全員が捕まると云う最悪の展開だけは避けられた。

あとは十香を______

 

『賢明な判断ですね。賞賛に値します』

 

「ま、そりゃあ天才ですからね」

 

マイティの言葉に、表面上は軽口で返す。

だが、戦兎も窮地に立たされていることは間違いなかった。無論ただで捕まる為に、こんな所に残った訳じゃない。

戦兎はコートを探ると、在るものを取り出した。

 

 

______赤色に光る、禁断のトリガーを_______

 

 

『………あれは、プロフェッサー・シンギが言っていた…………』

 

戦兎が取り出したそれを見て、マイティが呟く。

そして戦兎はそのトリガーの上部に備えられた薄青いカバーを開き、警戒線で縁取られたボタンに手をかけた。

 

「後は…………知らないぞ」

 

 

 

【HAZARD ON!!】

 

 

 

_____ステージに、危険信号が鳴り響いた。

 

 

 

 

「くっ………うぅっ…………」

 

会場から夕弦の力で脱出した士道達は、近くの公園の一角に着地していた。先ほどの戦闘のダメージで、士道の全身を鈍痛が苛んでいた。

 

「………無事。どうやら、追手は来てないようです、ね…………」

 

万丈と一海を下ろし、周囲を見回した夕弦がそこまで言うと、徐々に言葉を小さくした。

 

「夕弦………?」

 

「………くっ、うぅ……………ッ!」

 

そして地面に膝をつき、両手で顔を覆う。

 

「…………戦兎っ…………戦兎がっ………………」

 

「………………くっ………………」

 

やがて夕弦の顔から、一筋の雫が落ちる。

そして天もポツポツと、雨を降らせていった。次第に雨は大きくなり、士道達の身体を、地べたを容赦なく濡らしていく。

そして士道も、先ほど起こった出来事が、次第に脳にしみ込んでいき、意識を揺さぶった。

 

 

 

_____友達だと思っていた、殿町に裏切られ。

 

_____十香をその裏切った敵に連れ去られ。

 

_____万丈と一海もやられ、意識を失い。

 

_____戦兎は自分達を逃がす為に、一人囮になった。

 

 

 

「くっ____________うあァァァァァァァァァァァっ!!!!」

 

 

_______雨が降りしきる空の下、士道の悲痛な慟哭が虚しく響く。

 

 

これ以上ない程に______士道達は、完全な敗北を喫した。

 




どうでしたか?今回ちょっと長かったですね。

というわけで、序盤はファングの初戦闘。
いやーここのシーン、書いてて楽しかったですね。必殺技のエフェクルに関しては、アサルトウルフのキックをイメージしていただけると近いと思います。

そして夕弦が戦兎の機転で洗脳されずに済みましたが、今回そんなのが瑣末なレベルでやばい事になってしまいました。(自分で言うか)

クラウンが遂に、その正体を明かしましたね。
正直ここまでの話でちょいちょい匂わせてたんで、原典での事から感づいてた読者の方も少なくないと思いますが。これも全てエボルトってやつが悪いんだ。
ただ正直言うと、殿町くんをクラウンにするっていうのは、結構当初から構想してた案でした。全く別キャラにするか、とかで悩んでたんですが、結局殿町くん案に。殿町ファンから苦情が来ますねクォレは。

そしてクラウンである以上、彼の設定もちょっと大きく変わる事になります。ある意味原作からの一番の乖離かもしれない。
今後の彼の動向にも注目していてください。

そしていよいよ次回から、原作で言うところの【美九トゥルース】に突入していきます!乞うご期待!

それでは次回、『第65話 再会のナイトメア』をお楽しみに!

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