デート・ア・ビルド(更新休止中)   作:砂糖多呂鵜

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士道「DEMに捕らえられた十香、戦兎を救出する為、アイドルにして精霊、誘宵美九と対話をする為、美九の元へと向かう、仮面ライダーアライブこと、五河士道と、万丈、夕弦、一海さん、そして狂三の五人。そして狂三は自身の力によって、誘宵美九の過去を知ったようだった……」

狂三「今回からわたくしもあらすじ紹介に参加しますわー!」

万丈「うわぁびっくりしたぁ!影から急に出てくんなよ!」

狂三「あらあら、そんな寂しいことを言わないでくださいまし、龍我さん」

一海「てか前回思ったけどよ、時間操ったり分身したり人の過去を覗き見たり……色々ズリィなお前!」

狂三「うふふ、褒め言葉として受け取って……」

「………何をしていますの、わたくし」

狂三「ぎくっ、ですわ!?」

万丈「う、うわっ!狂三が二人!」

士道「これ、どっちかが分身体………てか、後から来た方が本体だな、これ」

狂三(本体)「わたくしがご迷惑をお掛けしましたわ。ほら、戻りますわよ」

狂三(分身体)「い、良いではありませんの!わたくしだって一回くらいあらすじ紹介に出たいですわ!」

狂三(本体)「問答無用、ですわ!」

狂三(分身体)「あーれー、ですわー!?」

狂三(本体)「……それでは皆さん、御機嫌よう」

三人『…………』

一海「……何だったんだ、今の」

万丈「……さあ」

士道「……と、とりあえず、第67話、どうぞ!」





第67話 仲間達とのシージゲーム

天宮市の中心に位置する、天央祭の舞台にして、天宮市大暴動の舞台、天宮スクエア。

そして今は_____誘宵美九の居城と化した場所。

 

その一室に、一連の事件の発端たる誘宵美九が、憎しみと怒りを混ぜたような様子で腕を組んでいた。

 

「あの男は……まだ見つからないんですかぁ?」

 

美九が怒気の篭った声で言うと、側に控えていた少女_____四糸乃がビクッと肩を震わせた。

 

「は、はい………その、まだ連絡は入ってきて……いません………」

 

「そうですかぁ………引き続き捜索を続けさせて______」

 

と、美九が指示を出そうとした所で、部屋の扉がバタン!と開かれ、四糸乃と同じようにメイドの姿をした三人の少女が走ってきた。

 

「失礼しまッす!お姉様!」

「緊急事態です!お姉様!」

「マジ引きます!お姉様!」

 

と、少女たちが身長順に叫んでくる。

士道と共にバンド演奏をするはずだった少女たち、亜衣麻衣美衣のトリオである。

 

「どうしたんですかぁ、そんなに慌てて」

 

美九が問うと、三人は一瞬顔を見合わせてから言葉を続けてきた。

 

「た、大変なんです!五河くん達が見つかったんですよ!」

 

「………なんですってぇ?」

 

美九はその報告に一瞬視線を鋭くし______

すぐに喉の奥からくつくつという笑いを漏らし始めた。

 

「ふふ、ふふふふふふふふふ………ッ!そうですかー、ようやく見つかりましたかー」

 

言いながら、椅子からゆらりと立ち上がる。

 

「思ったよりも粘りましたねぇ。______一体誰が発見してくれたんですかぁ?見つけたのが女の子なら、特別に可愛がってあげます。あとで部屋に呼んでください。男だったら………まあ、金平糖一粒くらい与えても良いでしょう」

 

だが、美九がそう言うと、亜衣麻衣美衣は困惑した様子で口を開いた。

 

「え、ええと………見つかったのは見つかったんですが………」

 

「その、発見者が多すぎるというか………」

 

「この近く………てか、天宮スクエアのど真ん中にいるんですけど…………ど、どうしましょうか……」

 

「………へ?」

 

美九は目を見開き、素っ頓狂な声を発した。

 

 

 

 

「______おーおー、結構なもてなしじゃねーか。だが悪いな、俺ぁみーたん以外に靡くつもりはねーんだ」

 

「……改めて見ると、すげえ数だな」

 

「同意。そうですね………」

 

「あらあら、怖気ていらっしゃるのですか?夕弦さん」

 

「否定。……これは、武者震いです」

 

「みんな、そこまでだ。………知ってたけど、あいつら本気だぞ」

 

気楽な応酬だと、正気で聞いている人は思うだろう。しかしそこにいた五人_____一部の例外を除く______は、皆汗を滲ませて平静を保つのに精一杯だった。

それもそうだろう。何せ士道達五人の周囲には、夥しい数の人々が殺意の篭った眼差しで、こちらを見据えて包囲網を張っていたのだから。筋骨隆々の男や、拳銃を持った警察官達が、半円形を作るようにして士道達ににじり寄る。スマッシュと相対する時とは毛色の違う圧に、士道は己を奮い立たせて何とか踏みとどまった。

と、そこで。

 

『_____わざわざ私のお城に戻って来るだなんて、随分と余裕があるんですねー。士織さん………いえ、五河士道………ッ』

 

天宮スクエア前に、そんな声が響き渡った。スピーカーを通して入るものの、間違いない。美九の声だ。どうやらもう、士道たちが現れたことは伝わったらしい。

 

「………美九」

 

士道は思わず美九の名を呟く。

すると美九は、声のトーンを変えることもなく言葉を続けてきた。

 

『一体何のつもりかは知りませんけどぉ、こうなった以上はもう逃げられませんよー?』

 

「………こっちだって、逃げるつもりなんかないさ」

 

再び士道は言うと、懐からベルト_____リビルドライバーを取り出し、腰にあてがった。【アジャストバインダ】が巻きつき、ベルトが固定される。

そして同じようにして、万丈と一海はスクラッシュドライバーを取り出し、装着した。夕弦は限定解除した霊装をその身に纏っており、狂三はその側で不敵に笑っている。

 

「……ガルーダ」

 

『キュルッキュイーッ!!』

 

士道が呼ぶと、ガルーダは士道の上空へと舞い戻り、ガジェットモードに変形して士道の手元へと収まる。

万丈と一海もそれぞれ【ドラゴンスクラッシュゼリー】、【ロボットスクラッシュゼリー】を取り出した。

 

『______さあさ、皆さん、捕まえちゃってください。少しくらいなら痛めつけてもいいですけどぉ、できるだけ丁重に扱ってくださいねぇ?_____でないと、私がやる分が減っちゃいますしぃ』

 

底冷えのするような声を残して、プツッ、と音声が切れる。瞬間____地面を揺るがすかのような轟声が鳴り響いた。

 

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお_______ッ!!』

 

 

そして五人が背中を合わせるようにして立ち直し、士道はボトルを、一海と万丈はスクラッシュゼリーを装填する。

 

 

【Get Up!ALIVE-SPIRIT!!

 

 

ドラゴンジュゥエリィー!!

 

 

ロボットジュゥエリィー!!

 

 

信者達が士道達に襲いかかってくるも、周囲に展開した【スナップリアライズビルダー】、【ケミカライドビルダー】によって阻まれ、後ろに吹っ飛んでいく。

 

 

【Are You Ready?】

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

【Dead Or ALIVE-SPIRIT!!イェーイッ!!】

 

 

ドラゴン・イン・クロォーズチャァージィィッ!!ブルルルルゥゥゥラァァァアッ!!!】

 

 

ロォボット・イィン・グゥリィスゥゥッ!!ブルルルルゥゥゥラァァァアッ!!!】

 

 

変身を終えた三人は、改めて周囲の人波を見渡す。人々は変身した三人の姿に少し戸惑っている様子だったがしかし、再び雪崩のように襲いかかってくる。

するとグリスとクローズチャージは、アライブを庇うように先立ち、人々が傷を負わない程度に応戦した。

 

「民間人に手は出せねえがっ、足止めするくれえは出来る!」

 

「士道、お前は美九を!」

 

「二人とも!だ、大丈夫なのか!?」

 

囮を引き受けた二人に、アライブが声をかける。グリスとクローズチャージは振り返り、アライブに返した。

 

「へっ、俺たちを誰だと思ってやがる!」

 

「これくらい、どうって事ねえ!お前は早く行くんだ!」

 

そのような心配など無用、とばかりに、二人は人々を極力傷つけないように、アライブに近づけさせまいと奮闘していた。

二人とも前の世界では、三国の戦争やエボルトとの戦いなど、数々の死地をくぐり抜けた熟達の戦士達だ。いくら美九の声によって洗脳されているとはいえ、所詮は民間人。傷つけぬ様手加減して戦うなど、これまでに比べれば簡単なものである。なまじ全員が怪我を恐れず突撃してくる為、少々手こずる事は手こずるが。

 

「………分かった!」

 

その姿に信頼し、二人に返事をする。

そしてアライブは背面から赤い翼、【ソレスタルファイアーウイング】を生成し、天高く舞い上がった。するとそれに付いてくるように、ペンデュラムを手にした夕弦と、狂三が隣に飛んでくる。

 

「追従。お伴します、士道」

 

「さ、士道さん」

 

「夕弦、狂三……すまない、行くぞ!」

 

二人に礼を言うと、アライブは翼をはためかせ、セントラルステージへと一直線に飛んで行った。その後ろを、狂三と夕弦が追従する。

途中、上空を飛んでいたヘリが妨害しようと目の前に飛んできたが、ルートを旋回してこれを回避する。眼下に広がる人々の群れを見下ろしながら、程なくして三人はセントラルステージの入り口まで辿り着いた。背中のウイングを消し、地面に着地する。

 

「さ、士道さん」

 

「おう……!」

 

アライブは狂三が促すのに頷き、一気に扉を押し開ける。

するとその眼下には、異様な光景が広がっていた。

 

「っ、なんだ、これ…………!?」

 

セントラルステージ内部の観客席は、少女たちで埋め尽くされていた。

その時点で既に異様と言えるのだが、問題はその少女たちの様子である。その場の全員が倒れ、苦しげに呻いているのである。そして辺り一帯の地面には、ステージの暗さとは明らかに違う、黒々とした、吸い込まれそうな闇が広がっていた。

 

この光景には覚えがある。そう、今からおよそ三ヶ月前_____狂三が、高校に通っていた頃に一度だけ体験していた。

 

「戦慄。これは………!?」

 

「まさか、【時喰みの城】………!?」

 

「_____きひっ、ひひひッ。よく覚えていましたわね、士道さん。外の方は龍我さんたちに任せましたが、保険をかけておいて正解でしたわね」

 

狂三がニィと唇の端を歪め、アライブに顔を向けてくる。金色の文字盤が描かれた左目の上を、時計の針が高速で回転していた。

【時喰みの城】は、天使の能力で自分の【時間】を消費しなければならない狂三が、外部から【時間】を補充する手段である。自らの影を踏んでいる人間を昏睡状態にさせ、その【時間】______即ち寿命を吸い上げるのだ。

 

「狂三、お前………っ!」

 

「きひひ、大丈夫ですわよ。これはあくまでも保険として仕掛けて置いたものです。それに一人ひとりから頂いている時間は大したことはありませんわ。今から摂生に勤めれば十分お釣りが来るレベル_____と、お喋りしている時間は無さそうですわね」

 

狂三が会話を切り、最奥を見据える。

 

そこに、彼女はいた。

 

パイプオルガンの形をした巨大な天使を背に、煌めく霊装を身に纏った少女_____誘宵美九が、悠然と立っている。

そして彼女に付き従うように、メイド服の上に霊装を限定的に顕現させた、各々天使を携えた四糸乃と耶倶矢の姿が見て取れた。

 

「美九!」

 

アライブが名を呼ぶと同時、美九が大きく溜息を吐く。

 

「何ですかぁ、その声。汚らわしい音声で私や、私の精霊さんたちの鼓膜を汚さないでくれませんかー?本当に不愉快な人ですねぇ。無価値を通り越して害悪ですねぇ。例えその身が粉になって地に還っても、新たな生命を育む事なくその地に永遠に消えない呪いを振りまくレベルの醜悪さですねぇ。ちょっと黙ってくれませんか歩く汚物さぁん」

 

「……ぐ」

 

間延びするような口調で絶える事なく繰り出される罵詈雑言に、仮面の下で思わず眉を歪めてしまう。

そしてもう一度口を開こうとした_____その時。

美九の視線が、夕弦に注がれていた。

 

「あらー、貴方………精霊さんの一人にそっくりですねぇ。そういえば、ライブの時に一緒にいましたよねー」

 

「…………」

 

「うふふ、良いですねー。害悪と言いましたけどー、こんな可愛い子を連れて来てくれるなんて、無価値以下の害悪なりに生かした甲斐はありましたねー」

 

「美九、お前ってやつは………ッ!」

 

美九のその言葉に、再びアライブの怒りに火が付く。

自分への罵倒に対する怒りなどはどうでも良い。問題は、彼女が夕弦を自分の思い通りに動く、玩具や道具のように見ていた事だった。元からこうではなかったかもしれないとはいえ、改めて彼女の歪んだ心に憤る。

 

「ふふ、じゃあこうしましょうかー。あなたが私に心から従って、好きになってくれるなら、そこの無価値で害悪なミジンコ以下の劣等種の話も、聞いてやらなくもないですよー?」

 

「美九!ふざけんのも大概に______」

 

だが、アライブが言い終えるより先に。

 

「_______憤怒。大概にして下さい」

 

夕弦が、続けた。

それも、眼前に見据えた美九に対する、明らかな怒りを滲ませた表情をして。そしてすかさず、続けて言い紡ぐ。

 

「私の半身を______耶倶矢を奪った敵にそんな事を言われて、従うと思いましたか。それに………」

 

普段の冷静沈着な様子からは想像も付かない、憤怒の声音。

そしてその中に含めた_____確固たる決意の意志。

 

 

「______私が心から好きになったのは、桐生戦兎______私のヒーロー、ただ一人です。貴方にくれてあげるほど、安い想いではありません」

 

 

「______宣言。貴方に従うつもりはありません。貴方から耶倶矢を取り戻し、戦兎も助け出します」

 

 

夕弦が、断固たる意志を以って、その愛を、決意を表明する。

揺るぐことの無い半身への絆と、想い人への恋慕を。

 

「……あらあら、戦兎さんも幸せものですわね」

 

「そうだな。……というわけだ、美九」

 

仮面の下で視線を鋭くし、改めて美九を見据える。

すると美九は唇を噛み、我慢できないとばかりに口を開いた。

 

「______何ですか、それ………。ヒーロー?想い?ハッ、馬鹿馬鹿しい。全く、反吐が出ます…………ッ!!」

 

美九が憎しみの意思を剥き出しにして、両手をバッと広げる。

するとその手の軌跡を辿るように、虚空に光り輝く鍵盤が現れた。

 

 

「【破軍歌姫(ガブリエル)】______【行進曲(マーチ)】!!」

 

 

そして両手の指を、激しく鍵盤に走らせていく。

すると会場中にその名の通り、勇気を奮い立たせるかのような曲が響き渡った。

瞬間、ぐったりしていた観客席の少女たちが、まるで糸を引かれた人形(マリオネット)のように、急にこの場に立ち上がる。

 

「驚異。これは………!」

 

「ッ…!」

 

ふと狂三の方を見やるも、彼女が時喰みの城を解除した様子はない。即ちこれは、美九の力によるものだ。

そして美九が勝ち誇ったように笑い、さらに演奏を激しくする。

 

「さあ______もう捕まえろなんて悠長なことは言いません。私のことを好きにならない子も邪魔です!私の可愛い女の子たち!私の目の前で!その三人を殺しちゃってくださぁいっ!」

 

美九の声と共に、数千人はいようかという観客席の少女たちが一斉にアライブ達の方に顔を向ける。

 

「く……っ!」

 

アライブは身構え、もう一度ウイングを出現させようとした。

______だが、その少女たちが士道たちに襲いかかるより先に。

 

「きひひ、駄ァ目、ですわよ。そんなふうに勝ち誇ってしまっては」

 

狂三が唇を三日月型に歪めたかと思うと、影が、会場全体を真っ黒の闇に塗り潰した。

 

「だって、あなた方が今から相手取るのは_______()()()()では済みませんものねェ」

 

「な…………!?」

 

美九が狼狽の声を響かせる。だが、それも無理からぬ事だった。

美九によって支配された領域であるステージのあらゆる場所から、突如として幾人もの狂三が現れ、観客席の少女たちの手を、足を、身体を拘束していったのだから。

 

「______ッ!」

 

「狼狽。これが狂三の…………」

 

その異様な光景に、美九だけでなくアライブ、夕弦も半ば呆然としてしまった。

だが、すぐにアライブはハッとして狂三の方を向いた。

 

「狂三!」

 

「わかっていますわよ。殺しはしません」

 

狂三は、アライブが言うよりも先に、その意図を察してやれやれとかぶりを振った。

 

「な、何ですかこれはっ!一体何が…………!」

 

床から、壁から、座席から()()()幾人もの狂三たちが一斉にくすくすと笑う。

その光景は、さながら気の触れた画家が描き上げた絵画のよう______まさしく、悪夢(ナイトメア)と呼ぶに相応しい違和と不条理に溢れていた。

しかし、これで美九側の陣営を全て抑えることができたかと言えば_____決してそんな事はなかった。

 

 

「【颶風騎士(ラファエル)______【穿つ者(エル・レエム)】!」

 

 

そんな声と共に、上空から轟音と共に突風が襲いかかってくる。

 

「くっ………!」

 

アライブは圧倒的なその風圧に、全身をウイングで包み込み、力を入れる事でどうにか踏み止まった。これがもし生身であったなら、間違いなく向こうの壁に叩き付けられていただろう。

そして姿勢を戻すと、ステージ上から空に飛び上がった一人の少女を見上げる。

 

「耶倶矢………!」

 

「呼掛。耶倶矢………」

 

メイド服の上に拘束衣のような霊装を着込み、背には片翼を顕現させ、アライブを見下ろしながら巨大な槍を構えている。

 

「また性懲りもなく来よったか、赤き不死鳥の戦士(アライブ)よ!姉上様に危害を加えようとするものは、誰が相手でも容赦せぬ!煉獄に抱かれたくなくば、鳥らしく飛んで疾く去ね!」

 

耶倶矢が空中に静止しながら、アライブに鋭い視線を浴びせてくる。冗談でも悪ふざけでも無い。今の彼女はその気になれば、本気でアライブを殺しにかかるだろう。

 

「お、お姉様には……指一本、触れさせません………!」

 

同じように、ステージ上では【氷結傀儡(ザドキエル)】の背に張り付いた四糸乃が冷気の結界を張り、美九に狂三の分身体が群がるのを防いでいた。

それを見てか、顔を強張らせていた美九が再び顔に余裕を取り戻し始める。

 

「ふ、ふふ……そうですよぉ。私には今、可愛い可愛い精霊さんが二人付いているんです………!負けるはずがありません!」

 

すると、会場内の狂三が、またしても至る所からくすくす、と笑った。

木々の生い茂る森を風が吹き抜けていくかのように、そこら中から声がこだました。流石に四糸乃や耶倶矢も気味悪がってか、不快そうに顔を歪める。

狂三が___悠然と片手を挙げ、謳うようにその名を呼んだ。

 

 

「______さあ、さあ、御出でなさい、【刻々帝(ザフキエエエエエエル)】。不遜で身の程を知らない精霊さんに、少しお灸を据えて差し上げましょう」

 

 

瞬間。ステージの入り口を遮るように、地面から金色の時計が姿を現す。狂三の身の丈の倍はあろうかという巨大な文字盤の上で、古式の歩兵銃と短銃がそれぞれ時計の針のように時を指し示していた。

狂三がバッと両手を広げると、その動作と共に時計から二丁の銃が外れ、狂三の手に収まる。

そして狂三が囁くように、アライブに言葉を向けてきた。

 

「さあ、士道さん。準備はよろしいですの?」

 

「え?準備って……」

 

「今から美九さんと二人きりにして差し上げますわ。何とか説得を試みてくださいまし。改心させられるのであれば良し。それが不可能ならば、十香さんと戦兎さんの救出を邪魔したいことだけでも約束させてきてくださいまし」

 

狂三はそう言って、ウインクをしながら短銃の銃身に口づけをした。

 

「【刻々帝(ザフキエル)】_______【一の弾(アレフ)

 

狂三が言うと同時、時計の文字盤のの部分から影が滲み出て、狂三の短銃に吸い込まれていく。

そしてその引き金を、アライブの背中へ向けて引く。【一の弾(アレフ)】の力、それは______

 

「く………っ!」

 

_____撃ち込んだ対象の、時間を加速させる能力。

 

アライブはその加速した時間の中で、ウイングをはためかせ、耶倶矢の下をくぐり抜け、美九のいるステージの元へと一直線に向かった。

 

「なぬっ!?くっ、させるか!」

 

そして一瞬の隙をつかれた耶倶矢が、アライブを追撃しようとする。

 

「阻止。させません」

 

だがその耶倶矢の前に、夕弦が立ちはだかった。ペンデュラムを構え、己の半身と向かい合う。

 

「夕弦……なぜ我の邪魔をする!何故姉上様に従わぬのだ!」

 

「宣言。______耶倶矢を、取り戻す為です。その為に、ここから先へは行かせません」

 

二人の鋭い視線が交差する。

それはまるで、かつて互いを生かすために戦った時のような、そんな緊張感に溢れていた。

 

そして夕弦が耶倶矢を足止めした事により生じた隙で、アライブは既にステージ上に辿り着いていた。狂三もそれに追従するように、ステージへと舞い降りる。

 

「………!」

 

『わっ!わわっ!』

 

ステージ上に控えていた四糸乃と【氷結傀儡(ザドキエル)】も、突然の事態に慌てたようだった。いきなり目の前に現れた敵から美九を守ろうとしてか、ステージ上に氷の壁を形作っていく。

しかしその瞬間周囲から幾人もの狂三がミサイルの如く【氷結傀儡(ザドキエル)】に飛びかかった。

 

「きひひひひひひひひッ!」

 

「き、きゃっ………っ!」

 

『のわー!なんなのよさ君たちはー!』

 

四糸乃がぐいと両手を引き、【氷結傀儡(ザドキエル)】が身を反らす。それと同時に、彼女らの周囲に空気中の水分が凝結した、氷柱のような氷塊が生まれた。それらが四方八方に弾け、迫り来た狂三たちを迎撃する。

だが、それによって結界の生成に数秒のラグが発生した。氷壁が完成する寸前に、アライブが高く飛び上がり、狂三と共に目にも留まらぬ速さで美九に肉薄する。

 

そして、美九がアクションを起こすより先に、美九の足元に漆黒の影が広がり、中から飛び出した狂三の分身体が背後から美九の口を塞いだ。

 

「な…………っ!む、むぐっ!?」

 

美九が目を白黒させ、拘束から逃れようと手足をジタバタと動かす。

しかしすぐに、影から狂三たちが這い出、美九の手足を絡め取った。そしてそのまま、ゆっくりと美九を影の中に引きずり込んでいく。

 

「んぐーっ!むんんんんんんん___________っ!?」

 

必死に抵抗するも、美九に何人もの狂三に抗えるほどの膂力はないらしかった。徐々にその身体が、闇に飲み込まれていく。

 

「なっ!?く、狂三!何してるんだ!話が違うじゃ_______」

 

アライブは言葉の途中で息を詰まらせた。

狂三の前に立っていたアライブの身体もまた、ゆっくりと足元の影に沈み始めたのである。

 

「な………!狂三!?」

 

驚愕に目を見開き、なんとか逃れようともがくも、狂三の手はアライブを離そうとしなかった。いくら変身していようが、こんな大人数に掴まれては意味が無い。エレベーターのように視界が段々と下がっていく。

 

「く______あ………っ」

 

「きひひ、ひひひひひひひ」

 

狂三の甲高い笑い声を聞きながら______アライブの、士道の視界は、真っ黒に染まった。

 

 




どうでしたか?
夕弦をヒロインとしてもっと立たせたい………!という事で今回あのシーンを入れました。
ただそれによってなんか四糸乃と耶倶矢の不遇感が………だ、大丈夫!今回の章も後半で活躍する予定だから大丈夫!(自分と読者に向けて)

この七巻の範囲は後半に向けて行くにつれてどんどん書くのが楽しくなってきますね!これからどんどんと書いていきますよ!

それでは次回、『第68話 闇の中のダイアログ』をお楽しみに!

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