龍我「お前、ほんとあいつの事嫌いなのな」
真那「当たり前じゃねーですか!あんな性悪で、人の事を舐め腐った態度で見下して、挙句兄様を誑かそうとして…………!」
夕弦「指摘。後半は貴方の想像も含んでいませんか?」
真那「含んでねーです!こうなったら、こんなことしてる場合じゃねーです!一刻も早くあの女を切り刻まなければ………!」
龍我「落ち着けって!今は戦兎達助けんのが先だろ!つーわけでこいつが暴走する前に、第68話を見てくれよな!」
夕弦「感謝。お気に入り登録者800人越え、有難うございます」
龍我「このタイミングでそれ言うか!?」
「………あれ?」
闇の中で、士道はぱちくりと目を瞬かせた。
今、確かに士道は狂三の影に飲まれたのだが_____少なくとも士道には未だ、意識も身体の感覚も残っている。
と、そこでふと自分の身体を見回すと、そこで初めて自分の変身が解除されているの分かった。恐らくは呑まれた時に解除されたのだろう。ベルトが装着されたままだったのは気にかかったが。
士道は眉をひそめて辺りを見回した。が、そこにはただ茫洋とした闇が広がるのみで、他にも何も見当たらなかった。
「ここは……狂三の影の中なのか?」
「ああっ、何なんですかもうーっ!ここはどこですかー」
と、背後から聞き覚えのある声が響いてくる。士道は振り向き、そちらに目をやった。
「美九!?」
「………むっ」
美九も士道の姿を認めてか、一瞬驚いたように目を丸くしてから、すぐに忌々しげな顔を作り、大声を発そうとして大きく身体を反らす。
が、その動作は寸前で止められた。辺りに溢れていた影が美九に絡みついたのである。
「ひ………っ!?」
美九が身を竦ませる。すると何処からともなく、くぐもった声が聞こえてきた。
『きひひ、おいたはいけませんわよ、美九さん』
そしてそれと同時、小さな、しかし何人もの笑い声が辺りから響き渡る。
『_______さぁ、一つ目の約束は果たしましたわ。あとは士道さん、あなたにお任せします。とはいえ、あまり時間はありません。お急ぎになってくださいまし。ああそうそう、変身は今解除させていただきましたが、戻る際には元どおりですわ。安心してくださいまし』
「は、は……」
士道は力無く頰をぴくつかせた。『士道と美九を二人きりにする』……確かにその約束は果たされているのだが、少々やり方が強引な気がしないでも無かった。ていうか、実行前に説明の一つでもあっても良かったのではないのだろうか。
だが、あの夥しい軍勢に加えて、四糸乃や耶倶矢といった精霊に守られた美九と一対一になるには、確かにこれくらいしか方法はなかっただろう。士道は気を取り直して美九に向き直った。
_______対話を、する為に。
◆
_____一方その頃。
天宮アリーナ内部には、猛烈な風が吹き荒れていた。
「____く……っ!夕弦よ!何故だ!何故姉上様に逆らうのだ!!」
「耶倶矢……!」
裂帛の勢いで突き出される槍を、ペンデュラムで組んだ方陣のような盾で防ぐ。そして役割を終えると、ペンデュラムは再び元の鎖に戻って夕弦の手元に戻った。
耶倶矢は、夕弦が何故敵対しているのか心から分からないという様子で、夕弦に向かっていった。
「姉上様の寵愛を受ける事こそ、至上の祝福であるはずだ!なのに何故!」
「警鐘。それは誘宵美九によって、そう思い込まされているだけです!いい加減、目を覚まして下さい!耶倶矢!」
耶倶矢と夕弦。
お互いの得物である、高速回転する槍と、剣のように編まれた鎖が打ち合わされる。まるで、かつて互いの存在を、生死を掛けて戦った時のような、互いに一歩も引かぬ戦い。
だが______
「ふん、緩いわ!」
「くっ______!」
耶倶矢の槍が、夕弦より一手早く繰り出され、風圧によって吹き飛ばす。
そう。美九の洗脳によって容赦が無い耶倶矢に対し、夕弦はあくまでも耶倶矢を取り戻す為に戦っているのだ。これまでとは状況が違う。つまり、本気で戦えていないのだ。
その為どちらが今優勢かは、火を見るよりも明らかだった。壁に叩きつけられた夕弦が、ふらふらと飛び上がり、痛む腕を押さえる。
「どうした、夕弦よ。お主の力は、その程度ではあるまい!」
耶倶矢が再び槍を構え、手負いの夕弦へと突撃する。
避けようとする夕弦だが、消耗が激しいのか、満足に風を操れず、その場から動くことができない。
槍の穂先が夕弦に向かわんとした、その時_______
『_______私が心から好きになったのは、桐生戦兎_______私のヒーロー、ただ一人です。貴方にくれてあげるほど、安い想いではありません』
先ほど、美九に夕弦が言い放ったその言葉が、耶倶矢の脳裏を掠めた。
瞬間、耶倶矢の頭にズキンと、痛みが走る。
「くっ______なんだ、一体______」
「っ!耶倶矢………?」
突如苦しみだした耶倶矢に、夕弦が心配そうな声音で尋ねる。
しかし耶倶矢はそれに意を介せず、頭を押さえる。
先程思い出した夕弦の声に続けて、再び脳裏に声が響く。しかしそれは、夕弦の声ではない。
『______耶倶矢は、夕弦の事を夕弦自身よりもずっと大切にしてるって事だッ!』
『______もう、生かし合わなくて済むな』
『そこまで言うんなら、俺を振り向かせてみろよ』
『今の俺は、負ける気がしねェッ!!』
「これ、は…………っ!?」
まるで頭の中で反響するように、幾度となくその声が響く。
煩わしい。鬱陶しい。なのに何故か、暖かい。
不器用だけど、優しくて。誰よりも熱くて。
この声の、主は_______
「呼掛。耶倶矢……!」
と、夕弦が耶倶矢に近付こうとした、その時。
「よしのん…………!」
『オッケー!危ないよ耶倶矢ちゃーん!』
「ッ!」
突如耶倶矢と夕弦の間を破るように、地面から巨大な氷塊が突き出るように生えてきた。
そこでハッとなった耶倶矢が、夕弦から距離を置いて、再び槍を構える。
「懸念。四糸乃………」
「お、お姉様を傷つける人は、許しません……!」
『やっはー、危なかったね耶倶矢ちゃーん。でも、もう大丈夫だよー!』
「く…………!」
四糸乃達の到来により、形勢は不利になった事を感じ、夕弦は歯噛みした。
一方でその頃、士道の対話も進んでいた。
◆
狂三の影の中。
今は二人きりの空間で、士道は美九との対話に臨んでいた。
士道は当初美九に対し、『天央祭一日目自分達がで勝った場合、霊力を封印させる』という約束を持ち出し、十香と戦兎の救出を邪魔させないようにした。
が、美九はそれを断固として拒否し、子供のように駄々を捏ねたのだ。
とはいえ士道も、これで美九をやり込む事が目的では無い。これ以上美九を追い詰めては、態度を硬くするだけだ。
士道は美九を落ち着けるように片手を広げた。
「美九、一つ取引をしよう。お前の霊力を封印するって約束を、別のものに変更してもいい」
「別のもの………?」
「ああ。______一つ、俺の言うことを聞いてくれればそれでいい」
士道が人差し指を立てながら言うと、美九は嫌悪感を隠すこともなく渋面を作った。
「何言ってるんですかぁ………?そんなの、結局何も変わらないじゃ______」
「______
「……………………へ?」
士道の言葉に、美九は目を丸くした。先まで浮かべていた拒絶と軽快に溢れた表情から一気に力が抜ける。
「な、なんですか、それぇ………?」
「………恥ずかしながら、今の俺たちで、十香と戦兎を救って脱出できるか分からない。向こうの戦力は強大で、確実とは言えないんだ。でも、お前さえいてくれれば、何とかなるかもしれない」
「でもぉ……あなたの目的は私の霊力を封印することだったんでしょう?何でそこまでするんですかぁ?」
「決まってるだろ。______それくらい、二人が大切だからだ。仲間を助けるのに、それ以上の理由なんかいらない」
「……………っ」
士道が簡潔に答えると、美九が再び顔を歪めた。まるで、士道の言葉が信じられないとでもいうように。
「ふん………っ!お断りですぅ!だいいち、一人は男ですよね!?そんな奴の為に私が手伝うような真似するなんて、絶っっっ対に嫌ですから!」
「美九……」
「もう嫌です!あなたの話なんて聞きたくありません!全部嘘です!裏があるんです!人間みたいな利己的な生き物が、誰かをそんなに大切にする筈が無いんです!」
「美九、お前………!」
士道はぐっと拳を握ると、苦々しげに顔を歪めた。
そう。狂三に美九の秘密を聞いて尚、分からないのはそれだったのだ。
「何でそんなに人間を拒絶するんだ!お前だって_______」
と、士道が言いかけた瞬間、深い黒に閉ざされた世界に、一筋の光が射し込んできた。
次第にその光は大きくなり、空間に亀裂が走る。すると何処からともなく、狂三の声が聞こえてきた。
『______ご歓談中悪いのですけれど………そろそろ時間切れですわ』
「え………?う、うわっ!?」
「きゃっ!?」
瞬間、全身をいきなり引っ張り上げられるかのような浮遊感と共に、視界に黒以外の色が凄まじい勢いで入り込んできて______一瞬後には、士道と美九は、天宮スクエアのステージの上に投げ出されていた。
「う、うぇ………っ」
急に影から引き上げられたからだろうか、少し目がチカチカする。
だがすぐに目が明るさに慣れ____ステージ内の様子が見て取れるようになる。
士道を守るように幾人もの狂三が陣を成し、四糸乃や耶倶矢がそれを向き合うようにしている。さらに上空には、耶倶矢と相対するように、傷ついた夕弦が飛んでいた。
「配慮。大丈夫ですか、士道」
「夕弦、お前………」
「無用。これくらい、どうという事はありません」
夕弦は傷を隠すようにして言ったが、どう見ても無理をしている。
そこでふと自分の姿を見ると、姿がアライブのものに戻っているのがわかった。どうやら狂三が言っていたことは本当だったらしい。
「立てまして?士道さん」
「狂三………、今のは……」
「申した通り、時間切れですわ。影の中の人々をそのままにするには、影をその場に開いたままにしておかねばなりませんの。その影が傷つけられれば、その空間は崩れてしまいますわ。_____出来る限り時間は稼いだつもりでしたが、精霊二人を相手取っては、そう上手くいきませんわね」
言いながら、狂三が周囲に目をやる。
その視線を追うように周囲を見回すと、夥しい数の狂三の死体が転がっているのが分かった。随分と激しい戦いが繰り広げられていたらしい。
「わたくしの時間も無尽蔵ではありません。そろそろ引き上げ時ですわよ」
「く………っ」
本当なら、もう少し美九と話す時間が欲しかった。
だが、夥しく広がった狂三の死体、そして四糸乃、耶倶矢の敵意に満ちた視線。これ以上は不可能だ。その状況が分からぬほど、士道とて馬鹿では無い。
いや、以前であればもっと伸ばすよう言ったかもしれないが、今までの戦いが、士道に状況を見極める力を多少なりとも付けたのだろう。
「分かった。すまない_____!」
士道は、アライブは歯噛みして狂三に謝罪すると、背面から【ソレスタルファイアーウイング】を展開した。
「夕弦、行くぞ!」
「ッ!…………返答、分かりました」
夕弦はアライブの言葉に一瞬躊躇いを見せたものの、状況の不利が分かってか、了承した。
「【
そして狂三が高速化の弾を撃ち込むと、三人揃ってその場から飛び去った。
「にッ、逃さないで下さい………っ!」
「応とも!」
美九の声に応え、耶倶矢が後を追って外に飛び出してくる。
如何に高速化をしているとはいえ、相手は風の精霊。同じ風の精霊である夕弦はともかく、アライブ達は長期戦ともなれば追いつかれるかもしれなかった。
狂三が耶倶矢の方をチラと一瞥すると、握っていた短銃を再び掲げた。
「【
その瞬間、ステージの方から高速で影がその銃口に収まり____狂三は耶倶矢に向かって引き金を引いた。
「ふん、物分かりの悪い女め!そんなもの我には______」
挑発するような声と同時、耶倶矢の動きがピタリと止まる。
否。正確に言うならば、その場に停止しているのではなく、非常に遅いスピードで前進はしている。
「あれは………」
「きひひ、【
狂三の言う通り、耶倶矢との距離はみるみるうちに開いていった。如何に最速を誇る風の精霊でも、あの状態では追いつけまい。
三人はそのまま夜闇を飛び、街中のビルとビルの間に着地した。
「ここまで来れば、大丈夫か……」
「ええ………と、お二方。もう少しこちらへ」
「え?あ、ああ」
変身を解除した士道と夕弦は、狂三に手を引かれてさらに路地の裏に入っていった。
次の瞬間、ごうっ、と言う音ともに、上空を凄まじい風が吹き荒れた。言うまでも無い、耶倶矢だ。どうやら士道達を探しているらしい。
「あらあら、意識までは奪えないとはいえ、あの速度差でわたくしたちを捉えていただなんて。恐るべき動体視力ですわね」
「耶倶矢………」
上空を見据え、夕弦がぽつりと名を呟いた。
と、その時。
「おーい!士道ー!」
「どこだー!?」
聞き慣れた声が聞こえ、思わず路地から身を乗り出す。
間違いない。万丈と一海だ。どうやらアリーナから飛び去った士道達の姿を見て、隙を伺い脱出したのだろう。
「二人とも!こっちだ!早く!」
士道が呼びかけると、二人とも気づいてこちらに走ってきた。
そして一応周囲を警戒し、同じく路地裏に入る。
「二人とも、無事だったか!」
『キュルッキュゥ!』
士道が無事を確認すると、ガルーダも飛び出してきた。二人の様子を見ても、生身の肉体に傷を負った痕跡はない。
「へっ、当たり前だ」
「ああ。ちと手こずったけどな。それに、なんか途中から動きが鈍くなってよ。まあ、向こうも同じだったが」
「っ、それって………」
一海の言葉に、士道は思わず狂三の方を見る。すると狂三は、まるで士道が考えている事を見透かしたように微笑んだ。どうやら狂三の影は、外にも影響を及ぼしていたようだった。
「それで、どうだったんだよ士道。あの生意気娘への説得は上手くいったのか?」
一海が服をはたきながら問うてくる。
士道は小さく唇を噛んでから、美九との話について話した。勿論、美九を仲間に引き入れようとした事も。
「……まぁ、あの様子じゃあそう上手くはいかなかったか。……にしても、お前正気かよ。あいつを仲間に引き入れようとするなんて」
話を聞いた万丈が、士道に言う。
「……あらあら士道さん。わたくしの助力では不安だと仰りたいんですの?」
「そ、そういうわけじゃ………」
ない、とは言い切れなかった。全容の知れない敵に挑むのに、今の士道達だけでは不安だったのは確かだったのだ。トルーパー隊や通常の
すると一海が、狂三を宥めるように言う。
「その辺にしとけよ。確かに、相手の戦力が分からねえからには、仲間は多いに越した事は無え」
「うふふ、そうですわね。確かに、あの場で戦力を増強しようした士道さんの判断力は賞賛に値します。別にそれについて恨み言を言うつもりはありませんわ」
一海に同調するように、狂三が笑みを浮かべてそう言う。
と、それに合わせるようにして、狂三の足元に広がった影が蠢動し、その体積を増したかと思うと、そこから狂三がもう一人這い出てきた。
「うおっ」
「うわビックリしたっ」
『キュルッ!?』
「うおわぁっ!?」
狂三の能力をある程度知っていた士道と万丈、夕弦は軽く驚き、一海に至っては尻餅をついてビックリしていた。ガルーダは既に知っているだろうに、ビックリ仰天したように周囲を飛び回った。
「なななな、何だよコレ!」
「あーそっか、お前分身のやつ知らなかったか」
驚いた様子の一海に、万丈が納得した様子で呟く。
しかし新たに現れた狂三はそんな一海のリアクションにショックや不快感を覚えるでもなく、まるで微笑ましいものでも見るような顔を作った後、元からいた狂三に顔を近づけ、何やらヒソヒソと耳打ちをした。
「…ふむ、なるほど………ご苦労様。下がっていいですわよ」
狂三が言うと、耳打ちをしていた狂三がくるりと士道達四人の方を向いてスカートの裾を持ち上げ、優雅にお辞儀をしてから影の中に消えて行った。
「い、今のは?」
「ええ。別行動で情報を探らせていた『わたくし』ですわ」
「情報………って、まさか!」
今『情報』と言えば、一つしか思い当たらない。狂三はゆったりとした動作で以って、首を前に倒してきた。
「ええ。______十香さんと、戦兎さんの居場所が判明しましたわ」
「ほ。本当か!?」
「マジかよ!戦兎達の場所が分かったのか!?」
「確認。戦兎は、どこにいるんですか!?」
三人が狂三に食いつかんばかりに前のめりになって問う。
「おい、気持ちは分かるが落ち着けお前ら!」
すると一海が三人を宥めるように言葉で制する。が、当の一海本人も、逸る気持ちは同じだった。
一海の言葉に、三人は調子を戻すようにする。士道は一度咳払いすると、再度狂三に目を向けた。
「それで……狂三。十香と戦兎はどこに居るんだ?」
「………ええ」
言うと、狂三はゆらり、と顔を上げた。
「_______デウス・エクス・マキナ・インダストリー日本支社、第一社屋。そこに………十香さん達は幽閉されているようですわ」
どうでしたか?
更新遅れてすいません。以前twitterで呟いた小説のネタの設定を考えたり、絵描いたりしてたら盛大に更新遅れました。
そしてお気に入り登録者数が800人超えました!いつも応援してくださってる皆さん、本当にありがとうございます!
あと全く関係ないんですけど、水樹奈々さんの曲でExterminateとGlorious Breakっていうのがあるんですけど、(シンフォギア好きなら分かるはず)最近聴いたら歌詞の内容がデアラ原作中盤の十香と折紙にマッチしてるように思えて仕方ないんですが、誰か共感できる人いませんか?ぜひ感想欄でお聞かせ下さい。
それでは次回、『第69話 集うマイフェローズ』をお楽しみに!
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