一海「今回は過去編か。まー過去編は漫画とかでよくあるテコ入れの常套手段だからなぁ」
真那「これ小説でいやがりますけどね。ていうかどうしました急に」
一海「いやだってよ、よくあるじゃねえか。素性も知れねえ、読者からの人気もイマイチなキャラが、過去編をやった途端人気が上がるって現象」
士道「あ〜……」
真那「確かに…………」
美九「ちょっと待ってくださぁい!それって遠回しに、私の読者人気はいまいちって言ってるんですかぁっ!?」
士道「うお美九!?」
一海「少なくとも本編での俺からの人気はイマイチだな。つーかこの過去編自体原作からの流用だし。書いたら書いたで原作とほぼ同じだし、書かなかったら書かなかったで新規読者がついていけなくなるし。要約めんどくせえし」
士道「おい最後筆者の本音出てるぞ。……ごほん。まーというわけで、第74話、どうぞ!」
美九「ちょっとぉ!説明してください!私って、ちゃんと人気ありますよねぇっ!?」
_____少女には、歌しか無かった。
勉強も運動も人より劣り、美術にも聡い訳ではない。小学校、中学校でも、彼女は劣等生のままだった。
そんな少女にも唯一つ、誇れるものがあった。歌だ。
きっかけは、幼稚園で先生に褒められた事だった。それは幼い少女にとって、何物にも勝る、自分一人だけの勲章に思えた。
そんな少女はやがて、テレビの向こうのアイドルに憧れた。煌びやかなステージの上で、可愛らしい歌声を響かせながら、皆に笑顔を浮かべる彼女らの姿に、少女は心奪われたのだ。
そして、少女が十五歳になった頃。アイドルのオーディションで審査員の目に留まり、晴れて少女____『誘宵美九』は、『宵待月乃』として、憧れていた存在、アイドルとしてデビューすることとなったのだ。
デビューしてからは仕事も軌道に乗り、CDも徐々にチャートに入るようになっていき、最初の頃は数える程しか客のいなかったライブも、続々と人が増え始めて来た。
客層は男性客が九割と言ったところ。今では考えられないが、当時の少女にとって、それは皆大事なファンだった。
CDやラジオも数多く収録したが、やはり少女は、自分の歌声がファンの皆に届いているという実感が一番湧く、ライブという舞台が楽しくて、大好きだった。
みんなが少女の歌を褒めてくれて。
少女の事を大好きと言ってくれて。
胸についた、目には見えない勲章が一際輝いて。
皆の喜ぶ顔を見ると、どんなに辛くても笑顔になる。
そんな、夢のような時間が、永遠に続くと信じて止まなかった。
_______だが。終焉はあっさりと、そして残酷なまでに、訪れた。
少女がデビューし、それなりに人気も出始めて一年ほど。事務所のマネージャーから、ある話を聞かされた。
某局のプロデューサーが、少女の事を気に入ってくれている、という話だった。
明確な指示は無かったが、つまりは
無論、そんな話を受けるつもりなど毛頭なく、丁重に断った。
自分がアイドルになったのは、テレビに出て知名度を上げたり、ちやほやされるためではない。自分の歌と笑顔を、皆に届けたい為だ。
そういう風に通して、その話は終わった、筈だった。
それから、しばらくの事。
少女の身に覚えの無いスキャンダルが、写真週刊誌に掲載された。
その内容は、少女の想像を絶するものだった。その余りのショックに雑誌を放り投げ、全身の震えが止まらなかった程である。
そこには………捏造されたと思しき、少女が見知らぬ男性とホテルの側を歩く写真や、過去の男性関係、堕胎経験。ドラックパーティに入り浸っているという内容まで、身に覚えの無い捏造記事がでっち上げられていた。
後からわかった事だが、どうやら先のプロデューサーが、このスキャンダルに一枚噛んでいたようだった。美九の事務所の社長とも懇意だったらしく_____美九は、あっさりと事務所での居場所を無くしていった。
だが、少女にとって一番堪えたのは、ファンの………否、今までファンと思っていた人達の、掌を返したような辛辣な態度だった。
少女の言葉より、どこの誰が言ったかもわからない噂話を信じられた事が、辛かった。
「(ねえ、前の彼氏とは何回ヤッたの?)」
「(堕胎って赤ちゃん殺すことでしょ?人殺しが何やってんの?)」
ブログにそんなコメントが書き込まれ、随分と客の減った握手会やサイン会で心無い言葉をかけられる度に。
少女の心と笑顔は、日に日に磨耗していった。
それでも、少女は諦めなかった。
自分には歌がある。どんな噂話に流された人も、自分の歌を聴けば分かるはずだ。
自分の歌には、力がある。
そんな根拠のない自信が、心の何処かに確固として残っていた。
そうして少女は、再びステージに立った。
だが、駄目だった。
会場にひしめく人々が、自分とは別の、何か恐ろしく、悍ましい何かに見えて来て、緊張とは別の動悸が、全身を支配していった。
しかし、歌わねばならない。曲が始まり、マイクに口を近づけ、喉を震わせた。
だが。
(………!…………!)
_____少女の喉からは、ひゅうひゅうと空気が発されるだけだった。
心因性の、失声症だった。過度のストレスが、少女から声を、歌を奪ったのだ。
こうして。歌しか持っていなかった少女の人生は、いとも容易く終わりを迎えた。
歌しかない少女が、声を失った時。それはもう、その少女の終わりを意味しているのだ。
だから、そんな少女が自殺を考えるのは、当然の帰結だった。
方法は何でも良い。首吊り自殺や、覆水自殺。睡眠薬の過剰服用。電車の前に飛び出したり、剃刀を手に当てて引くだけでも構わない。たったそれだけの事で、簡単に命は捨てられる。
でも少女が、それを実行に移そうとした時。
少女_____美九の前に、『神様』が現れた。
(_____人間に失望した君。世界に絶望した君。ねぇ、力が欲しくは無い?世界を変えられるくらいの、大きな力が欲しくはなぁい?)
◆
「私は_____失ったんですよ。一度。醜い男共のせいで_____声を………命よりも大事な、この声を…………ッ!」
感情を吐露するように独白し、美九が今にも泣き出してしまいそうな顔で言う。
「何度も死のうと思いました。でも、そこに……『神様』が現れて、今のこの『声』をくれたんですよ!一度歌えば人を虜にする、この最高の『声』を!」
恐らくその『神様』というのは、琴里に霊力を与えた正体不明の精霊【ファントム】だろう。
「……そう、だったのか」
『………キュルゥ…………』
士道は、人を人として扱おうとしない美九に、途方も無い違和感を覚えていた。
価値観や死生観が、人のそれとかけ離れ過ぎていると感じていた。それに憤りを覚える程に。そして美九の家で写真とCDを見つけた時、その違和感はさらに膨れ上がっていった。
だが、それは違った。
無論、美九の人間に対する接し方を肯定するつもりなど毛頭ない。霊力の『声』で無理矢理従わせ、女王気取りでいる美九のやり方を認めることは出来ない。
しかし、違う。美九は人間を自分より劣るモノとしか思っていないのではなく______
対等の関係として接するのが、たまらなく恐ろしいのだ。
信じたならば、きっと裏切られる。
託したならば、きっと見限られる。
頼ったならば、きっと騙される。
ならばいっそ………最初から、信じない方がいい。
人間と自分の間には距離を置き。
人間と自分は別種の存在だと認識し。
人間に自分の如何なるものをも託さない。
人間への失望が生み出した、自らの自覚なき防衛策。
美九が自分のものにならなかった腹いせにスキャンダルを捏造したプロデューサーと、それに踊らせれ心を傷つけたファン達。そんな身勝手な男達を侮蔑し拒絶し。
女性にも心を開かず、自分を裏切ることの無い可愛い人形としてしか接することができなくなってしまったのだ。
「だから、私は男が大っ嫌いなんですよ!下劣で、汚くて、醜くて_______見ているだけで吐き気がして来ます!」
美九が、吐き捨てるように言う。
「女の子だってそうです!私の言うことだけを聞く、可愛い子がいればあとは何もいりません!
「………ッ!」
美九の叫びに、士道は固く拳を握りこんだ。
確かに美九の苦悩は分かる。いや、分かったつもりでも、その絶望は士道には完全に理解し切れないだろう。自分の命より大事な声を失った事が、どれ程の苦痛だったか。
だが_____
「それは違う!お前の境遇は気の毒だと思うし、お前を傷つけた奴らには向っ腹が立つ!手のひらを返したファンだって胸糞悪いさ!けどな、だからって他の人間まで嫌うことはねえだろ!」
「何を………!黙ってください!男なんてみんな同じなんです!」
「いいや違うね!本当に、お前の歌を聴いてくれる人は一人もいなかったのか!?スキャンダルに踊らされずに、お前の歌を信じて楽しみにしてた人だっていた筈だ!」
『キュルッ!』
「そ、そんな人____!」
と、その瞬間、廊下の前方から幾人もの足音が響いて来た。すぐに、小銃を構えた
「いたぞ!侵入者だ!」
『確実に仕留めるんだ!』
「もう来やがった………ガルーダ!」
『キュルッキュイーッ!』
士道が呼ぶと、ガルーダが士道の手元に収まり変形する。ボトルを装填し、ドライバーへとセットした。
「変身ッ!」
変身すると、リビルドライバーから生成したアライブラスターを構える。どうやら琴里の炎は、先の問答の間に随分とアライブの肉体を回復してくれたようだ。変身して肉体もある程度保護された今なら、十二分に戦えるだろう。
だが、アライブは敵を目の前にしてなお、美九に一瞬視線をやった。
今は敵を倒さなければならない。だが、美九が自分の過去をここまで話してくれたのはこれが初めてだ。この機を逃しては、また振り出しに戻る。根拠は無いが、そう確信できた。
敵が一斉にレーザーや弾丸を放ってくる。が、それらは美九の声の壁と、アライブラスターから放たれた炎弾により弾かれた。
その隙を狙い、即座にモードチェンジしたアライブラスターを一閃させながら、アライブは叫びを上げた。
「美九!お前は自分の中で恐ろしい人間の幻想を作り上げちまってる!その声でみんな言う事を聞いてくれるから、それが膨れ上がって余計、本当の人間と話すのが怖くなってるんだ!!」
「はぁっ!?怖い………!?言うに事欠いて、私が人間を恐れてるっていうんですか!?ていうか今は戦闘中でしょう!何を余計な____ァァァァァァッ!」
美九の言葉の途中でまたも
「んなの知るかよ!何度だって言ってやる!お前はずっと、自分を肯定しかしない人間に囲まれて来たから、生の人間と会話すんのが怖いんだよ!でも、それだけ人間を拒絶しながら、心のどっかで、ちゃんと話をしたいって思ってたはずだ!」
「何を適当な……!あなたなんかに何が分かるっていうんですか!」
美九が声を張り上げ、アライブが朱炎の斬撃を放つ。
二人は大声で言い合いながら、時折出てくる
「わかるさ!だからこそお前は、自分の声じゃ操れない人間_____『五河士織』を欲したんだろッ!?」
「………ッ!」
美九が息を詰まらせ、表情を歪める。
そう。美九はこれまで自分の言う事を聞く人間、自分の事を好きな人間しかいらないと言っておきながら、自らを否定した士織に対して異常に執着していたのである。
「そ、そんなこと_____」
「それにお前は、そのご自慢の『声』を手に入れて再デビューした時、『宵待月乃』でも新しい芸名でもない、他でもない『誘宵美九』って本名を名乗ったんだろう!?お前は知って欲しかったんじゃないのか!?自分はここにいると、認めてもらいたかったんじゃないのか!?他でもない人間にっ!!そうだろう!誘宵美九ッ!!」
美九はうぐぐ………と顔を赤く染めると、廊下を前進しながらヒステリックな声を上げた。
「う・る・さぁぁぁぁぁぁぁいッ!黙れ黙れ黙れぇぇぇっ!知った風な口を利いてぇ!バカー!アホー!間抜けぇぇぇっ!」
最早罵倒と言うよりかはただの悪口になっていたが、その声には濃密な霊力が乗せられていたらしい。前方に顔を出していた
「おまっ、図星突かれたからってそりゃねえだろっ!あと誰がバカだっ!?バカって呼ばれんのは、万丈だけで充分だっつーの!!」
「図星なんて突かれてないですもん!違いますもん!あなたがバカなだけですし!バーカ!バーカ!!バーカ!!!」
「んだとこの我儘女!!やっぱお前に四糸乃や耶倶矢を任せてなんかおけねえ!こうなったら意地でも霊力封印して、絶対二人を戦兎と万丈の元に連れ戻してやるからなこの野郎……ッ!」
アライブは叫ぶように言うと、美九がビクッと肩を震わせた。
「そんな事……させないんですからっ!この『声』を封印されたら、私は、また______」
美九が歯を噛みしめるように言いながら、言葉を継いでくる。
「あなたは、またなれっていうんですか!?歌のない私に……無価値な私に……ッ!」
「そんな事______言ってねえだろ!!」
叫び、アライブラスターを振り抜く。炎の斬撃が飛び、トルーパー達を
「俺は人をいいように惑わす力なんて篭ってねえ、お前の本当の歌声と、本当の笑顔が見たいだけだ!!」
それは、本心だった。美九の家で聴いた、人間だった頃の美九の歌声。それは本当にひたむきで、今の美九にない魅力に溢れていたのである。
そしてジャケットに写っていた、彼女の笑顔。それは、今の美九のような偽りの笑顔では無い。本当に心から歌を愛していると、写真からでも伝わるような、気持ちのいい笑顔だった。
しかし美九は、忌々しげに顔を歪める。
「知った風な口を利かないでください……!この声があれば、私は最高のアイドルでいられるんです!この声を失った私の歌なんて、一体誰が聞いてくれるっていうんですかぁッ!!」
「俺がいるッ!!」
アライブが叫ぶと、美九は呆然として、全身を微かに震わせた。
「何を……適当なことを!私の歌なんて、聴いたこともない癖に!」
「聴いたさ!一曲だけだけどな!ひたむきで、一生懸命で、一途で、すっげえカッコよかったッ!今の歌よりよっぽど好きだね!誰も歌を聞いてくれない……?寝惚けた事言ってんじゃねえよ。今ここに、どんな事があろうと、例えお前が誰も信じられなくても、お前を信じて離れないファンが、ここに一人いる!」
「………っ!!」
美九は、今にも泣き出しそうな顔になり___しかしすぐに思い直すように首をブンブンと振った。
「そんな……そんな言葉____信じないんですからぁっ!そう言ったファンは、みんな私を信じてくれなかった!私が辛い時……誰も手を差し伸べてくれなかった!」
「俺はそうは思わない!お前を信じて待っていたファンは、必ずいるはずだ!でも、もし仮に_____何万分の一の確率で、もし本当にそうだとしたら!その時は俺が、必ずその手を掴んでみせるッ!お前の笑顔を、取り戻して見せるッ!!」
「都合のいいことを………!じゃあなんですか、私がもし十香さんと同じようにピンチになったら、あなた、命を懸けて助けてくれるとでもいうんですかぁ!?」
「当然だろうがッ!!」
「…………!」
一瞬の躊躇いもなく、アライブはそう言い切る。
その返答に、美九が一瞬足を止めた。だがすぐに不愉快そうに顔を歪め、アライブの後を追ってくる。
「信じませんッ!どうせ嘘です………!嘘に決まってます!」
「お前な______」
「大体ですね、なんで私があなたに助けられなきゃならないんですかぁ!身の程を弁えてくださいよねぇ!」
「いやお前から振った話だろうが!」
「ふーん!そんなの知りませんよーだ!」
美九がつーんと顔を背ける。アライブはマスクの下で、頰をピクつかせた。
「この………っ!」
だがそこで、アライブは今いる階層が、今までと異なっている事に気が付いた。
頑丈そうな壁が連なり、辺りには窓一つない。まるで______何かの隔離施設のように。
「もしかして……ここが?」
眉をひそめ、前方を見やる。
長く連なる隔壁の一部。そこには、頑丈そうな扉が設えられていた。
◆
「くっ、しぶてーですね……!」
「マaaぁぁぁぁァァァァアNaァァァァァァァァァ_____ッ!!」
外部で戦っていたファング達の状況は、芳しくなかった。
グリスの攻撃で一度は地に伏したオーバースマッシュだったが、あの程度でやられる訳もない。その後息つく暇もなく復活し、ファングに執心して狙い続けて来ているのだ。
「避けろガキっ娘ォッ!」
「ッ!」
すると、突然後方からグリスの声が響き、反射的に横へ逸れる。
グリスはヘリコプターボトルの力で空中に上がり、ツインブレイカーを構えていた。
「こいつを喰らいやがれ!!」
ツインブレイカーの銃口から、ダイヤモンドとライオンのエネルギーが放たれる。ダイヤモンドの弾丸にライオンボトルの熱いオーラを纏い、凄まじい勢いでオーバースマッシュへと向かっていった。
「邪mAナのヨぉぉぉぉォォォオッ!!」
対するオーバースマッシュは、ミサイルコンテナから赤黒いミサイルを発射し迎撃する。ツインブレイカーから放たれたダイヤモンドの炎弾が、一つ残らずミサイルとぶつかり誘爆していく。さらにその中のミサイルが礫を切り抜け、グリスに直撃する。
「のわぁぁぁぁッ!?」
ヘリコプターボトルにより作られたプロペラが落とされ、黒煙と共にグリスが地上へと落下していく。
だがグリスはファングの方を見ると、マスクの下でニヤリと笑って叫んだ。
「____今だぁッ!ガキっ娘ォッ!!」
「だーからぁ!ガキっ娘じゃなくて、崇宮真那でいやがります!!」
呼称に抗議しながらも、ファングクラッシャーの下部からブレードを展開し、背面のスラスターを噴かしてオーバースマッシュへと迫る。魔力により高周波を伴った鋭い一太刀が、オーバースマッシュを斬り裂かんとした、その時。
ファングの背筋を、まるで冷たい指でなぞられるかの様な感覚が襲った。
「______!?」
一瞬、オーバースマッシュの触手により背後を取られたのかとも思った。だが。違う。
これは広範囲に
「く………!」
それを認識すると同時に、ファングは慌てて身を翻し、回避行動を取った。
次の瞬間、ファングの身体があった空間を、黒いドラゴンのようなエネルギー体が通り抜けていく。
『_____おや、避けましたか。いい反応です』
言って、いつの間にかファングの背後に隠れていた人影が、悠然と顎を上げながら言ってくる。
龍を模したマスクに、全身の黒光りしている装甲。そしてその黒い装甲とは相反するような、白金のCR-ユニットを身に纏っている。
ファングは息を詰まらせた。______DEMが誇る最強の
「エレン…………ッ!」
『襲撃者達の中に、見覚えの無いネズミが一匹紛れ込んでいると聞きましたが……成る程。その戦い方に口遣い。貴方でしたか。崇宮真那』
言って、マイティがファングを見下ろすように視線を送る。
『残念です。あなたの事はDEMの中でも、私に次ぐ実力者と認めていたのですけれど。確か我が社のライダーシステムに真っ先に適合したも、あなたでしたね』
「は…………ッ、冗談じゃねーです。人の身体を好き勝手に弄っといて」
ファングが吐き捨てるように言うと、マイティはピクリと反応を示した。
「……なるほど。そこまで知ってしまいましたか。どうやら、ラタトスクに拾われたというのは本当のようですね」
「ふん、驚かねーところを見ると、あんたも共犯らしいですね。理想的なシナリオとしては、真実を知ったあなたが改心して一緒に社長をぶっ倒してくれる事だったんですが」
「残念ですが、私がアイクを裏切ることはあり得ません」
「……でしょうねぇ」
ファングは忌々しげに呟きながら眉を歪めた。_____正直、相手にしたくない女が現れた。アデプタス・ナンバーの頂点にして、自他共に認める世界最強の
しかも今は____
「消eロォォッ!!MぁaaaaナAぁぁぁぁぁッ!!」
オーバースマッシュが叫び、ドライバーを操作して無数の触手を操作し、二門の魔力砲にケーブルのように接続してエネルギーを貯める。
どこか空恐ろしい音声と共に、赤黒い肉塊がこびり付いた魔力砲から凄まじい魔力の奔流が放たれる。
「ぐ………!」
如何にファングとはいえ、オーバースマッシュ化により元から強力な威力だったものを、更に滅茶苦茶な威力になった魔力砲を直撃されようものなら、確実に消し炭になるだろう。身を捻ったファングは
だが、ファングは侮っていた。オーバースマッシュによるその攻撃は必殺技。即ち、ただ魔力砲を放っただけではないという事を。ファングの
「なっ!?くぅ………っ!」
急いでスラスターを噴かて急旋回回避行動を取り、マイティとオーバースマッシュを視界に納めるように後方へと飛び退いた。
右手には、白金の鎧と黒の龍を纏った最強の
左手には、その全身を異形に変え、真紅の怪物となった最狂の
『二対一というのは気が進みませんが、アイクの意向なら仕方ありませんね』
「A、ハ、はhaハハ、mAナ、まNぁ、ツいni追イ詰めTAワyぉ……Mぁァァナぁぁぁぁ?」
「ち………」
二対の視線に睨み付けられ、ファングが忌々しげに舌打ちを零したその時。
「いーや、二対一じゃねーぞ!」
下から、聞き覚えのある声が迫り、次いでファングの隣に、金色の影が現れる。
グリスだ。先程ミサイルに撃墜され地上に落下したが、どうやらもう一度戻って来たらしい。
「……戻って来やがりましたか。尻尾巻いて逃げ出したかと思いやがりましたよ」
「へっ、抜かせ。新参者にばっか任せてちゃ、俺の先輩としてのメンツが立たねえからな」
『……仮面ライダーグリス、でしたか。数を互角にしたところで、結果は変わりませんよ』
グリスの姿を前にして、マイティが変わらず冷淡に告げる。
だがグリスは、その言葉に不敵な笑みでもって返した。
「おい、そこのクローズもどき。聞いたぜ?お前、自分で最強とか言ってるらしいな」
『ええ、事実ですから。
マイティの言葉を遮って、グリスが否定する。
「確かに
そしてグリスは、もう一度強い意志でマイティを見据える。
「_____仮面ライダーってのはな、大勢の希望を託されて戦ってんだよ。その希望背負って、皆の思いに、明日に応える。それが俺の信じる、仮面ライダーだ。………だからお前らみたいな外道に、仮面ライダーを名乗られんのは、不愉快なんだよ」
『………理解に苦しみますね。私より強い者など、この世界のどこにもいませんよ。最強である私と、このアクエリオスオーバースマッシュを相手に、貴方達のような者が勝てるとでも?』
「勝てるさ。______心の火、心火だ」
右拳を胸に当て、強くその言葉を紡ぐ。
仮面ライダーグリスの戦う意志であるその言葉を、右手を握り締めて、放った。
「心火を燃やして_____ぶっ潰すッ!!」
どうでしたか?今回は説明回みたいな感じだったので、ちょっと冗長になってしまいました。
あと美九はちゃんと人気あるから安心しなさい。
ガル鉄の最新話はもう少し時間が掛かりそうです。すいません………最近なかなか時間が取れなくて。
あ、デアラアンコール10巻読みましたが、いやー面白かったですね!てっきりもう最終巻かと思いましたが、まだ続きがあるとはとても楽しみです!
あと五日くらい前に、スラッシュライザーが家に届きました。滅茶苦茶待ちましたが、無事届いてよかったです。財布の中身は死にましたが。
それでは次回、『第75話 アールの覚醒/今、風と共に』をお楽しみに!
よければ高評価や感想、お気に入り登録をよろしくお願いします!