万丈「いやお前どうした!目の下のクマがヤベーイ事になってんぞ!」
桐生「おう、万丈か………いや、例の訓練用のギャルゲーをやってたら頭の中が高度経済成長期に突入してはははははははは」
万丈「いや俺いなかったからわっかんねぇよ!つかまじで大丈夫か戦兎!」
士道「やばいこいつなんか深夜テンションでおかしくなってる!万丈何とかして!」
桐生「女の子、アキレス腱固め………ベストマッチ!」
士道「おい戦兎正気に戻れ!そんな女の子現実に居ねえよ!俺のゲームにもあったけどさぁ!」
万丈「だぁあーもう!あらすじ紹介が終わっちまう!どうしろってんだよ!!」
桐生「とーいうわけでぇー、ビルドが主役の第7話ぁー、どうぞーー」
士道「もうお前一度寝ろよ!!」
戦兎達が来禅高校に転入する、一日前。
【ラタトスク】所有艦、【フラクシナス】の一室では、琴里と令音が神妙な面持ちで話していた。
「……解析の結果が出たよ。彼にも、
「まさか本当に宿ってたとはね………」
令音が手元の機器を操作する。そこには、桐生戦兎についてのデータが記されていた。
「念のために調べてよかったわ。士道一人に背負わせるのは……酷だもの。だからと言って、彼を巻き込むのも本意ではないけれど」
「……当初の計画を変更する必要があるね。まあ、そこは私に任せてくれ」
「分かった。後で連絡ちょうだい」
言うと、琴里は席を立ち、部屋を出た。
それを確認したのち、機器を操作する令音の口から、ふと言葉が漏れた。
「……彼もやってくれるよ。おかげで、練り直しが必要となった」
その言葉の真意を知る者は………彼女以外に、誰もいないだろう。
「……君は何者なんだ………桐生戦兎」
◆
そして、それから一週間くらい経った頃。その話の渦中にあった桐生戦兎はというと…………
「は、はは。終わった…………凄いでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ………?」
「いやどうした戦兎!?」
休日の五河士道宅にて、目の下に濃いクマを作り、明らかに不健康そうな顔で疲弊しきった様子の自称天才物理学者の姿がそこにあった。第二の令音さんが目の前にいる。
ここまでの十日間。恋愛経験皆無の戦兎にとって、それは過密なスケジュールだった。
何故ならゲームだけではなく、ビルドのアイテムの修理や新武器の作成なども並行して行っていたからである。というか、戦兎としてはむしろそっちをメインで行っていた。
エボルトとの戦いで使用したビルドのパワーアップアイテムの殆どは、重大な欠損を抱えた状態で修理が必要な状態にあったのだ。さらに言えばビルドの武器、具体的にはホークガトリンガーや四コマ忍法刀なども、大小の差はあれど壊れていたのである。
今後スマッシュと戦うからには、それらのアイテムは欠かせない。付け加えるなら、最近はASTとも戦うかもしれないということで、対空戦用の装備も必要となっていたのである。
よって戦兎はこの一週間、授業の合間を縫っては修理や発明をし、そして琴里から渡されたゲームをやる。ついでにスマッシュの目撃情報があったのでそれとも戦う。かつて東都のため戦った戦兎にとっても、これがなかなか精神と気力を削る仕事だった。
五日くらい経ったあたりからパワーアップアイテムの修理をひとまず後回しにして、武器の修理及び新武装の開発、ゲームのクリアを優先した事で、なんとか成し遂げられたのだった。スマッシュの情報は比較的小規模に収まったので、肉体的な負担は軽減できた。一応フルボトルが増えたので、スマッシュの出現も悪いことばかりでは無かったが。
しかし、その間全く楽しみが無かったのかといえば、そうでもない。寧ろ合間でやっていたギャルゲーが、思いの外楽しかったのである。
恋愛どころかゲームすら殆どやったことの無い戦兎だが、操作方法を覚える頃には、ゲームのコツを何と無くだが理解し始めたのである。ゲームに出てくる女の子や選択肢、所謂シチュエーションについては確かに突っ込みどころがあったが、選択肢を選んでイベントを進める内に、ゲームキャラクターの性格や人物像が分かってくる過程が意外と面白い。______まあ、パンチライベントの時にアキレス腱固めをされた時には声を出して突っ込んだが。
「だ、大丈夫か?やっぱ、呼んで悪かったか?」
「いや、大丈夫だ。朝少し寝れたからな」
寝る時間が少なかっただけで一応の仮眠をとってコーヒー飲んできたので、取り敢えず意識は保っていた。今日、士道から話があるということで、こうして家に来たのである。
「それで………話ってのはなんなんだよ士道」
「ああ。実は………」
言って、士道が部屋の机の引き出しから、何かを取り出す。
「これ、多分お前らと関係があるんじゃないか?」
「えっ?」
士道が手渡してきたのは…………
「これ………フルボトル、か?」
朱色と灰色の、二本のフルボトルだった。
朱色のボトルには、何か炎のような意匠があり、シールディングキャップには角ばった炎の周りに歯車があるクレストが描かれていた。
灰色のボトルは、薄く何か斧のような意匠がある。シールディングキャップは白く、何も描かれていなかった。
戦兎の記憶にないフルボトルである。ロストボトルではないし、エボルトの使っていたボトルとも違う。これは一体…………。
「なんでお前が、これを……」
「俺も、よく知らないんだけどさ。両親が言うには、俺を引き取った時に持っていたものだって。………これ、フルボトル、ってやつだよな?」
「ああ。だけどこれは、俺の知らないボトルだ………。一体、何でこの世界にボトルが……」
しかも、士道は自分が養子として引き取られた時に持っていた、と言っていた。つまり少なくとも俺が来るよりもずっと前から、これはあったという事だ。
戦兎の頭の中には、いくつもの違和感が汚れみたいにこびりついたような、嫌な感覚が残っていた。
◆
それから、数日後。
「_____士道、戦兎、万丈。早速働いてもらうわよ」
「「「…………」」」
琴里の言葉に、神妙な面持ちになる三人。事の発端は、数時間前にあった。
戦兎は一週間の徹夜による寝不足を、士道は様々なトラウマを植え付けられ、心身ともに疲弊しながら、なんとかギャルゲー訓練を終わらせ、戦兎は一週間ぶりに八時間以上の睡眠を取ることができた。ちなみに万丈はその間、誰も構ってくれないので、一人寂しく筋トレをしていたという。大胸筋がちょっと良くなったらしい。
その後は生身の女性相手との会話も必要ということで、取り敢えずは士道が担任である岡峰珠恵を口説くよう指示され、戦兎が亜衣麻衣美衣のうちの一人の亜衣を口説くよう指示された。されてしまった。
問題はその後、士道が担当していた岡峰先生が『結婚』というワードに目がハンターのそれとなった事でなんとか振り切り、次の相手として指示された鳶一折紙と接触した時だった。
間の悪いことに、そこで空間震警報が鳴ってしまったのである。それを聞いた折紙は、
『急用ができた。また』
と言って、踵を返して駆け出した。
そこで戦兎、万丈と合流し、フラクシナスへと戻り、今この状態である。
「安心しなさい三人共。【フラクシナス】のクルーには、頼もしい人材がいっぱいいるわ」
「そ、そうなのか?」
「本当か?」
士道と戦兎が疑わしげな声で聞くと、琴里がバサッと上着を翻して立ち上がった。
「そうね、例えば」
そして、艦橋かだんのクルーの一人を指差す。
「五度もの結婚を経験した恋愛マスター・【
「いやそれ四回は離婚してるって事だよな!?」
「逆に凄えな。いやでも、逆に言えば五回は結婚まで行ったってことか」
「夜の店のフィリピーナに絶大な人気を誇る・【
「それ完全に金の魅力だろ!」
「戦兎、ピラピーナってなんだよ」
「フィリピーナな?細かいところで馬鹿を露呈しないの」
「恋のライバルに次々と不幸が。午前二時の女・【
「絶対呪いかけてるだろそれ!」
「安心しろ士道。呪いなんてそんな非科学的なもの存在しない………と、思うぞ?」
「なんで疑問形!?」
「百人の嫁を持つ男・【
「ちゃんとZ軸状にいる嫁だろうな!?」
「お、なんかカッコいい名前じゃねえか」
「全然カッコ良くねえよバカ」
「その愛の深さ故に、今や法律で愛する彼の半径五百メートル以内に近付けなくなった女・【
「なんでそんな奴らばっかなんだよ!」
「よく逮捕されずにすんだな」
「よく分かんねえけど、すっげえ帰りてえぞ俺」
「……皆、クルーとしての腕は確かなんだ。」
艦橋下段から、申し訳程度のフォローと言わんばかりの令音の声が聞こえてくる。
「いや、そう言われてもなぁ………」
「まともな奴がいねえし……」
「いいから、早いとこ行って来なさい。精霊が外に出たら、ASTが群がってくるわよ」
現在精霊は、校舎内にいるという事だった。それが幸いだったのか、現在ASTは迂闊に手を出せない状況らしい。
「それじゃまあ、グッドラック」
「おう」
ビッと親指を立てる琴里に、士道と戦兎、万丈も軽く手を挙げて返す。
士道の心臓は未だに高鳴っていたが、この機を逃すわけにいかなかった。
戦兎や万丈のような正義のヒーローになりたいとか、精霊を倒すとか、恋をさせるとか、世界を救うとか。
そんな大それたことは考えてない。
ただ_______またあの子と、話がしたかっただけだ。
◆
フラクシナスに設えられている、
ちなみにその転送機を戦兎が興奮した様子で分解しようとして、全力でクルーに止められたのはまた別の話である。
フラクシナスから転送され、士道ら三人は学校の、もっと言うなら士道達のクラスの2年4組の前に立っていた。
「まさか俺たちのクラスに来るとはなぁ」
「運が良いんだか悪いんだか。あ、そうだ。士道」
「ん?何だ?」
戦兎は士道を呼ぶと、持ってきたカバンから何かを取り出す。すると、その取り出した何かが、士道の周りを
「へっ?う、うわぁっ、なんだこれ!?」
『キュルッキュイーッ!』
「俺の、発・明・品だ。お前のお目付役、というか、護衛用のペットロボだな。名付けて、【アライブガルーダ】!」
そう言って指差したそのロボットは、赤い色の鳥みたいな外見をしていた。時折変な鳴き声を上げているのが少し気にかかったが、どこか愛嬌がある見た目をしている、と思う。
「凄いでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?………って、そんな事言ってる場合じゃなかったな。取り敢えず、そいつは持っておいてくれ。………あと、アレは持ってきたか?」
「え?あ、ああ。一応」
そう言って士道が取り出したのは、先日戦兎に見せた謎のフルボトルの一つ、朱色のボトルだった。
昨日士道が与えられた部屋の機器で解析した所、あの二本のボトルのうち、この一本からは強い反応が確認されたのだ。逆に、あの灰色のボトルはほとんど微弱な程にしか反応が出なかったのだが。
「もし何かあったら、そのボトルを振れ。そうすれば、ボトルの力を使うことができる」
「わ、分かった」
そのボトルがどんな効果をもたらすのかは分からないが、取り敢えず身を守る事はできるだろう。解析の結果、少なくともそのボトルを振る事で得られる効果は、ドラゴンボトルなどと同じ身体強化の類だということが分かったからだ。
『………今なら、引き返せるわよ』
最後の確認のように、インカム越しに琴里の声が聞こえる。
「……いや、やるさ」
だがその問いかけを、士道は強く断る。
「俺はもう、あんな顔は見たくない。だから………やってやる」
「………いい顔じゃないの」
後ろから、戦兎が笑いながら言う。万丈も同じ顔だ。
『それでこそ、私のお兄ちゃんよ。………二人とも。士道の事、頼んだわよ』
「おう!」
「任された」
戦兎と万丈も、強く答える。あの少女の為、そして_______ラブ&ピースの為に。
『さあ_______私たちの
その声を皮切りに、三人は教室のドアを開けた。
あれ?気づいたらUA4000越え………?お気に入り登録者百人………?あ、ありがとうございまぁぁぁぁあす!!!!
これからも不定期では有りますが、頑張って更新していきます。拙い文章力ではありますが、これからも応援よろしくお願いします。
次回、第8話 ベストマッチな名を を、お楽しみに!
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