伊井野ミコは告らせたい~不器用達の恋愛頭脳戦(?)~   作:めるぽん

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本作品のみ、『かぐや様』と並んで大人気のあの『五等分の花嫁』とのコラボSS作品です。

①財閥の存在など、基本的な世界観は『かぐや様』に準拠します。

②私のここまでの作品に基づいた独自設定が有ります。
ここまでの作品を読んでいない方は、

・ミコは『ステラの人』が石上である事を気付いて片想いしており、かぐやはそれを知っている
・かぐやと白銀は既に付き合っており、それをミコに明かしている

事を前提としてお読みください。
③時系列は、SS7話(4月下旬頃)と8話(6月中旬頃)の間のお話です。



番外編 クロスオーバーSS『5番目は大食い花嫁』

人は人生に数度、稀に見るレベルの『偶然』を体験する事がある。

それは宝くじ然り、運命の人との出会い然り……

『五つ子』なる存在もまた、そうそうお目にかかれない偶然のひとつである。

何しろ、5人の一卵性の子供が一度に産まれるという話なのだから。

 

その反面、いずれかの日に産まれている事には変わりはないのであるから、

その五つ子達と『誕生日が被る』事は、人口を考えればそんなにレアな話ではない。

 

 

「「「「「「ハッピーバースデー!」」」」」」

 

ここ、旬菜食健を謳うビュッフェ形式のレストラン・『なか野』。

本日・5月5日のランチの時間帯。

店内の隅の方に設置された大きなテーブルが並ぶ一角で、快活な若い女子達の声がこだました。

 

……だが、その声の出し主達は、直後に互いに隣のテーブルの方を見て「えっ」と呟いた。

 

五つ子達の誕生日パーティーの場に、隣の席として偶然居合わせて。

なおかつ、『自分も誕生日パーティーの最中』であるなどというケースは……『稀に見るレベルの偶然』と言って差し支えないだろう。

 

尊敬する先輩に水玉模様の三角帽子を被せられて、嬉しさと照れくささが混じった表情の1人の少女。

互いに互いの誕生日を祝い合う、五つ子の少女達。

 

人生稀に見るレベルの偶然の出会いが、そこには有った。

 

 

 

「あの……そっちの誰かもお誕生日なんですか?」

 

自分達と同じく『ハッピーバースデー』と叫ぶ声が聞こえた隣のテーブルの主に声を掛けたのは、今日が誕生日の五つ子の一人・中野四葉。

 

「はい~!今日はこのミコちゃんの誕生日なんですよ~」

 

そう言って隣に座る少女をグッと引き寄せ満面の笑みで答えたのが、名門・秀知院学園の生徒会書記・藤原千花である。

 

「同じ声が聞こえましたけど……そちらの誰かも誕生日なんですか?」

 

藤原が、同じ質問を返す。

 

「うふふ……誰だと思う?」

 

少し悪戯っぽい笑みで逆に問い返したのは、同じく本日が誕生日で、この五つ子達の長女・一花。

 

「当ててみてください!相談もアリですよ~?見事当てられたら、三玖の抹茶ソーダをプレゼントしちゃいます!」

 

「……飲み物はアルコール以外基本料金に含まれてるから欲しけりゃ向こうも取ってこれるでしょ。ていうか誰も欲しがらないわよそんなの」

 

四葉のおバカなノリにツッコむ、次女・ニ乃。

 

「……美味しいのに」

 

抹茶ソーダへのディスリスペクトへ頬を膨らませて不満を示すのは、三女の三玖である。

 

「(……誰だと思います?石上くん)」

 

「(いや、僕に聞かれても……単純に確率5分の1……いや一人居る男も含めたら、6分の1じゃないっすか)」

 

藤原に話を振られて困った顔をする、生徒会会計・石上優。

 

「(伊井野はどう思うよ?)」

 

「(……私だって分からないわよ。けど……)」

 

更に石上から話を振られたのが、五つ子達と同じく本日を誕生日とする、本日の主役・生徒会会計監査・伊井野ミコである。

 

「(けど?)」

 

「(あの人達……なんか顔が似てるような?)」

 

「(あっ!言われてみればそうですね。というか、声も似てるような……)」

 

「(……って事は、まさか)」

 

石上の頭の中に、一つの仮説が浮かんだ。

滅多に起こることじゃない。けど、有り得なくはない……

顔も声も似てて、歳も近そうな5人の少女。

これはまさか……

 

「ブッブー!時間切れですー」

 

石上が思考を巡らせていると、四葉が両手でバツを作り時間切れを知らせてきた。

 

「いつの間にタイムリミットを設けたんだ」

 

四葉に冷静にツッコむ、五つ子と同じテーブルに座る唯一の男子が、五つ子を無事卒業へ導く為に日々奮闘する優等生・上杉風太郎。

 

「では正解を発表しまーす!実は私達は……」

 

「『五つ子』で合ってますか?」

 

風太郎のツッコミもどこ吹く風と正解を明かそうとした四葉の言葉を遮る形で、石上が先んじて正答を述べた。

 

「わおっ!正解だよ!キミ、頭イイんだね~」

 

一花がやや芝居がかったように驚きながら石上を見つめる。

 

「死んだ眼をした人って頭が良いという共通点でも有るんでしょうか……」

 

五つ子達のテーブルの中では一番大量に料理を皿に盛っている五女・五月が風太郎の方を見ながら呟いた。

 

「俺の方を見て言うな。ていうか聞こえてるぞ、多分」

 

「はい、ばっちり聞こえてます」

 

不意にそこそこの切れ味の言葉のナイフを突き刺された石上が、ワントーン下がった声で答えた。

 

「それを言うなら、大食いの女子は僕みたいな人間に容赦無いっていう共通点でも有るんでしょうかね?」

 

石上が、向かいに座るミコの方を見ながら混ぜっ返した。

 

「誰が大食いよ?今日は誕生日だから少し多目に食べても良いかなって思ってるだけで……」

 

「お前以外に居ないだろ……いや、今日はすぐそこにもう一人居るっぽいけど」

 

五月の皿にチラリと視線を送る石上。

 

「だから!アンタが少食過ぎるってだけよ!私が大食いって訳じゃなくて!っていうかこのやり取り何回目よ!?」

 

「10回から先は数えてねぇよ!」

 

「まあまあお二人さん、痴話喧嘩はその辺にして」

 

「「痴話喧嘩じゃないです!!」」

 

石上とミコが同時に、苦笑しながら諌める一花の方をクルリと振り向いて叫んだ。

とその時、何かを思い付いたような表情で四葉がガタッと立ち上がった。

 

「そうだ!ねえ、その娘……ミコちゃんも、今日がお誕生日なんでしょ?」

 

「えっ……は、はい」

 

急に四葉に話を振られて戸惑うミコ。

 

「じゃあ!私達と一緒に合同でお祝いしない?人数多い方がきっと楽しいよ!」

 

「「えっ!?」」

 

またも同時に、今度は戸惑いの声をあげる石上とミコ。

 

「ちょっ、アンタ何言って……」

 

四葉の提案に二乃が素早くツッコもうとする。が……

 

「あっ!それイイですね~!じゃあテーブルくっつけてみんなでワイワイしましょう~!」

 

こういうノリが大好きである藤原千花が、目を輝かせながら賛同する様子を見て言葉は出なくなった。

 

「……まあ、僕はどっちでも良いですけど。藤原先輩、伊井野がどう思うかですよ」

 

ミコがどういう反応を示すか、石上には未知数であった。

 

見た目も、髪の明るさも……決して口に出せないが胸の大きさも、あの藤原先輩に勝るとも劣らないモノを兼ね添えた5人姉妹。

正直『リア充オーラ』が半端じゃなくて、自分的には少々苦手なタイプ。

そして伊井野も同じように、そういうタイプの人間がどちらかと言えば苦手な事も知っている。

いったい、この突飛なお誘いにどういう反応をするのか……

 

少し不安になって、ミコの表情をそれとなく伺ってみた。

だが、当のミコは、どう反応して良いのか分からないとでも言った顔をしていた。

 

「わ、私……そんな風に誘われるなんて今までなくて……」

 

伊井野ミコにとって、これまで誕生日とはそう特別なものではなかった。

仕事が多忙を極める両親は勿論の事、真面目で融通の利かなさすぎる活動が災いして交友関係も狭かった為、

都合が合えば祝ってくれる大仏こばちを除けば、基本的に祝ってくれる人間など居なかった。

だが、今年は藤原千花の提案の元、こうしてささやかなお誕生日会を開催してもらう事となった上に。

偶然にも同じ誕生日のお姉さん達が、一緒に祝おうと言って来てくれる……

 

「そ……その。私なんかで良ければ……」

 

「決まりだね!じゃ、よろしくね!」

 

四葉と藤原が、楽しそうに2つのテーブルをくっつけ始めた。

 

「……仕方ないわねぇ。ホラ、アンタ達も手伝う」

 

観念したニ乃が、風太郎や他の姉妹にも呼びかけた。

 

 

「はあぁ〜!ミコちゃんかわいい!可愛すぎるよ〜」

 

「ずるいですよ四葉!私にもなでなでさせてください」

 

四葉と五月が、戸惑いと照れくささの入り混じった顔のミコを愛でていた。

 

「アンタ達はこの娘のお兄さんとお姉さん?あんま似てない気がするけど」

 

二乃が石上と藤原を品定めするような目付きで見ながら問いかける。

 

「よくぞ聞いてくれました!確かに私はミコちゃんのお姉さ「いえ、みんな他人です。僕と伊井野が高2でこのちょっとアレな人が高3で先輩です」

 

話をややこしくしそうな藤原に割って入った石上が淡々と説明をした。

 

「ええっ!?私達の1個下なだけ!?」

 

ミコに頬ずりを続けていた四葉が、驚愕の表情を浮かべてミコをまじまじと見つめた。

 

「フータローの妹と同じくらいの大きさだから、小学生か中学生だと思ってた……」

 

抹茶ソーダをちびちびと飲んでいた三玖が呟く。

 

「……まあ、実際より歳下に見られるのは慣れてます」

 

なにせこの前の『生徒会長代理期間』にも、3年生の先輩方から散々妹分のように可愛がられた。

しかしやはり不満な事は不満なので、ミコの頬は少しむーっと膨らんでいた。

 

「ああでも可愛い!ほっぺた膨らましちゃって!義妹にしたいよ〜」

 

「でしょう?ミコちゃんは可愛いんですから!」

 

「……何で藤原先輩が得意気なんすか」

 

頬をつんつんしながら再びミコを愛で始めた四葉に対してどや顔をする藤原に、石上がツッコんだ。

 

「……しかし、コレが来季の生徒会長候補ねぇ」

 

やはり『マスコット的生徒会長』になりそうだ、という意思の込もった言葉を呟く石上。

 

「何よ!?私がちょっと……ちょっとだけ子供っぽいのは関係無いでしょ!」

 

石上に対してくわっと怒りを剥き出すミコ。

 

「へぇ〜、生徒会長?凄いものを目指してるんだね〜」

 

成り行きを見守っていた一花の、感心したような調子の言葉。

 

「まあ、一応今も役員やってますから。僕達全員、秀知院で生徒会やってます」

 

「秀知院!?」

 

石上の言葉に、風太郎が驚きの反応を見せた。

 

「何そんなに驚いてんのよフータロー?」

 

「お前……秀知院って言ったら、富豪や名家やエリートの生まれが集う偏差値77の超名門校だぞ!?」

 

二乃の言葉が信じられないといった表情で、風太郎が振り向く。

 

「えっ!?じゃあ見かけによらず超エリート集団!?」

 

「四葉、失礼」

 

驚きを全く隠さない四葉に三玖が冷静にツッコむ。

 

「まあ僕や藤原先輩はそうでもないですけど、伊井野は紛れもなくエリートですね」

 

「ちょっとおおおおおお石上くーん?自分を卑下するのは勝手ですけど私まで巻き込まないで下さいよぉーー!」

 

「えっ……藤原先輩は自分をエリートだと思ってるんですか?」

 

「引きこもり系ニートボーイの石上くんよりは!」

 

「ひっでえ」

 

そばに初対面の他校の生徒が居るにも関わらず、いつも通り正論の殴り合いを始める2人。

 

「そうよ石上!藤原先輩をアンタなんかと一緒にしないでよ!」

 

『藤原信者』であるミコは、五つ子と風太郎の方を向き藤原の素晴らしさを説き始めた。

 

「いいですか!こちらの藤原先輩は凄いんです!あのピディアピアノコンペで全国大会金賞!」

 

「まあ、小4の時ですけどね……」

 

「しかも5か国語を操るマルチリンガル!」

 

「母親が外交官で……」

 

もじもじ照れ照れしながらも、後輩からの褒め殺しに満更でもなさそうな藤原。

 

「それでいて秀知院で普通の成績を誇る秀才なんです!」

 

「そう、そこは普通なんですよねー。ミコちゃん正直だぁ」

 

一気にテンションの冷めた藤原であった。

 

「マルチリンガル……凄い。私なんて英語だけも出来ないのに」

 

三玖が、藤原をどこか羨ましそうな目で見つめている。

 

「まあそうなんだけど。伊井野の1年からずっと学年1位を譲らない方が難易度高いだろ」

 

石上の言葉を受け、五つ子達が一斉にミコの方を振り向いた。

 

「へ、偏差値77の学校で……」

 

「ずっと学年1位!?」

 

「か、可愛い顔して勉強オバケだぁ……」

 

「い、いやその、頑張ってるだけというかその!ちょっと石上、何言ってるのよ……」

 

遥か雲の上の存在を目の当たりにして恐れ慄くかのような五つ子達の反応に、ミコが慌てふためく。

 

「み……皆さん気を付けてください。ひょっとしてこのミコちゃんも、わざと100点満点の答案を落として見せ付けて恥ずかしがってくるかもしれませんよ」

 

「……五月からの視線を感じるのが気のせいだと良いんだけどなー」

 

五月からも現実からも目を逸しつつ、下手な口笛を吹く風太郎。

 

「そ、そんな事しません!ていうかそんな事する人居るんですか!?」

 

「げぇ……随分器の小さい人ですね。そんな嫌味な奴が居るんですか……」

 

「ぐぅっ」

 

歳下2人からの容赦無いダブルパンチが突き刺さる風太郎に、隣の一花が苦笑いを浮かべた。

 

「……キミ、石上くんも隠れエリート?」

 

三玖がどこか恐れているように石上を見つめる。

 

「何ですか隠れエリートって……まあ僕はマジの凡人ですよ。たまたま会長に助け……いや気に入られて生徒会に居るだけで」

 

「へぇ。今日はその会長さんは居ないの?」

 

一花が興味有りげに尋ねる。

 

「ええ、今日は会長と、あと副会長もなんか外せない用事が有るって……まあエリート具合で言えば、僕らよりその2人の方が凄いですよ。何せ学年1位と2位で、生徒会長と副会長、勉強もスポーツも完全無欠ですから」

 

「何よその化物カップル……」

 

もはや驚きを通り越して呆れたと言える表情の二乃がため息混じりに零した。

 

『化物』という余計な枕詞が付いてはいるが、『カップル』と呼ばれたらどんなリアクションをするのだろう?

この中で唯一、『カップル』である事が真実であるという事をかぐや本人から聞かされて知っているミコは、自らの頭の中で想像を広げた。

そして、ちらりと石上の方に視線を移す。

 

もし、自分も今年生徒会長になれたら。

石上が、引き続き生徒会入りしてくれたら。

いつか、自分達も……

 

と、ここでミコは妙な視線に気付いた。

視線を感じる方を振り向くと、一花が何かを悟って愉しんでいるかのような笑みを浮かべながらこちらを見ている事に気付き、慌てて下を向いた。

 

「……ちょっとすみません、お手洗いに」

 

野菜ジュースを飲みすぎた石上が、断りを入れてゆっくりと立ち上がった。

 

「私もデザート取ってきます~」

 

空の皿を持って、藤原も立ち上がった。

 

2人が居なくなった事で、少し肩身が狭くなったように錯覚するミコ。

両隣は四葉と三玖なので、物理的には何も変わっていないのであるが。

 

「……それでそれで、ミコちゃん。ミコちゃんってさ、好きな人居るの?」

 

一花が引き続きどこか悟りを含んだような笑みを見せながら、ミコに問いかけた。

 

「ええっ!?な、何ですか急に!?」

 

「いやぁ~、うら若き乙女達が集まれば恋バナに花を咲かせるのは何も不自然な事じゃないでしょ?」

 

マズい。この一花って人にはさっき、石上にちょっと視線を送っていた事が多分バレている。

 

「乙女じゃないのも一人居るけどな」

 

「お米の袋も一人で持てない上杉さんは乙女も同然です!それに私は俄然興味あります!」

 

四葉が元気良く左手を挙げる。

 

「ズバリ、理想のタイプってどんな人なんですか?」

 

四葉がマイクを差し出すようなジェスチャーを交えつつ、隣に座るミコに問いかける。

 

「え……えっと……」

 

変に悟られないように、ここはなんとか石上から遠そうな言葉を並べないと……

ミコは、偏差値77の秀知院にて学年1位を堅持し続ける優秀な頭脳をフル回転させて、パッと見の石上から遠そうな特徴を模索した。

 

「え……えっと!いつも私の事を見ててくれて!私の気持ちを分かってくれて!困った時は颯爽と助けに来てくれる王子様みたいな人です!」

 

「……ニ乃みたい」

 

隣に座る三玖が、ぼそりと呟いた。

 

「何よ。女はいつまでも少女の気持ちを忘れないものでしょ?この娘の王子様に憧れる気持ち、私は分かるわよ」

 

ニ乃がうんうんと頷きつつ理解の意を示す。

 

「でもね……」

 

ミコの方にズイッと身を乗り出し、深刻そうな顔になるニ乃。

 

「……必ずしも理想と同じとは限らない事は、覚悟しといた方が良いわよ」

 

他の姉妹達に聞こえないような小声で、ひっそりとニ乃が呟いた。

 

「……あ、大丈夫です。そこはもう乗り越えたというか……」

 

ミコも、顔を近づけているニ乃にしか聞き取れないような小声で答えた。

 

「あ、じゃあもう好きな人居るワケ?」

 

「!?」

 

ニ乃の言葉に、ミコが身をびくっと震わせて驚く。

そしてその反応を見れば、それが図星であるという事は誰にでも分かるものだった。

 

「ひょ、ひょっとしてカマをかけたんですか!?」

 

「違うわよ!ついうっかり!」

 

……そう、カマなんてかけるワケないじゃない。

多分私と同じ、『王子様』の理想と現実が離れてる事を思い知っちゃったであろうこの娘に対して。

 

「わあ!好きな人居るんですね~!誰ですか?」

 

「……そんなズバリ聞いて答えてくれる人は居ないと思いますが」

 

四葉の能天気さに五月が呆れながらツッコミを入れた。

 

「うーん、誰だろうねー?誰なのかなぁー?おねーさんぜーんぜん分からないなぁー」

 

どこかわざとらしい口調の一花の視線は、先程まで石上が座っていた席一点に集中していた。

 

「……えっ?そういう事……?」

 

人の好意には敏感な三玖が、一花の視線の意味にいち早く勘付いた。

 

「…………マジ?」

 

続いて、五つ子の中で一番恋バナに興味を持つ体質の二乃が、『いやいやそれは有り得ないでしょ』と言いたげな顔でミコを見つめる。

 

「えっ?どういう事ですか?」

 

「ミコちゃん答えてないのにみんな分かるのー?」

 

恋愛沙汰に疎めの五月と四葉は理解出来ていない様子である。

 

「戻ってくる前に聞いちゃおう……ズバリどこまで行ってるのかな?あのカレと」

 

「な……何を言ってるんですか。私は別に石上の事なんて……」

 

一瞬、その場だけ時が止まったかのように凍りついた。

続きの言葉が出てこずそのまま固まるミコ。ぽかんとした表情の四葉・五月・風太郎。

そして、勝ち誇った笑みを浮かべる一花。

数秒流れた沈黙を破ったのは、『やってしまった』事に気付いたミコの「あっ」という短い一言であった。

 

「「「えええええええええええええ!?!?!?」」」

 

止まった堰を切ったかのように、四葉と五月と風太郎の驚愕の叫びがフロアの一角に木霊した。

 

「でっ、ですからっ!?私はアイツの事なんて別に、そんな、なんとも!そんな!」

 

必死で取り繕おうとするミコであるが、今や耳まで顔を真っ赤にしたミコが、周りの人間に恋心の否定を納得させる事など不可能であった。

 

「もう遅ーい。私、一言も『石上くん』だなんて言ってないのになー?」

 

可愛らしくて可笑しいものを見るようなにやけを口元に浮かべながら、一花がミコを追及する。

 

「えぇー……まさかの片想いですねー……」

 

「全然気付きませんでした……」

 

理想像と一見かけ離れた『お相手』のカミングアウトに戸惑いを隠せない四葉と五月。

 

「あ、アンタ……さっきのはウソだったワケ?まあ私も……人のこと言えないけどさ」

 

ニ乃がチラリと、あんぐりと口を開けたまま固まっている風太郎の方を見た。

 

「……チョロくてかわいい」

 

隣に座る三玖が、あわあわしているミコを優しく撫でた。

 

「う、ううぅ……」

 

もはや既成事実となりつつある流れを、ミコにはもはや変えられそうにはなかった。

しかも、今自分を何故か撫でているこの三玖って人……

片目を隠した前髪にヘッドホン。低血圧そうな雰囲気。

なんか……髪を切る前の石上に似ていて……

 

「ぜ……絶対内緒にしててください……藤原先輩と、アイツには……」

 

「おや、という事はまだ片想いなんだ?かーわいいんだー♪」

 

とうとう観念したミコに、一花がにっこりと笑いかけた。

 

「ま、困ったらこの一花お姉さんに相談するんだぞ?なんか面白そうだし」

 

「ズルいですよ!私も頼ってくれても良いんですからね!」

 

「いえ四葉、そこは私が。勉強……は教えられる立場にないと思いますが、話くらいは聞けますよ?」

 

「……話くらいなら私も聞ける」

 

「アンタは相談に乗れるタイプじゃないでしょ三玖。ま、同じ少女の気持ちを持つ私なら乗ってあげられるわよ?」

 

「お前らはそんな事にかまけてるより勉強しろ」

 

相談役として殺到する五つ子と横から引き止める風太郎であったが、

ちょうどその時、幸か不幸か、石上と藤原が同時に戻ってきた。

 

「戻りました……って伊井野、どうした?赤いけど熱でも有るのか?」

 

「な、無い!無いわよ!」

 

ミコは必死で否定した。

またこの前のように額でもくっつけられたら、この場が大盛り上がりになってしまうだろう。

 

「心配要らなさそうですよ石上くん!ミコちゃんのお皿、ちゃんと空になってますから♪」

 

「あー、そうですね。なら大丈夫か」

 

会話が弾みすぎて各人皿を空に出来ていない中、ミコの皿は綺麗に空になっていた。

 

「そこで判断されるのね……ま、まあ良いわ。とにかく大丈夫よ」

 

気丈さを演じつつ、ミコはプイッと顔を背けた。

赤くなっている顔を、石上や藤原先輩にはできるだけ見せたくはない。

 

「いつの間に空になってんのよ……っていうか、五月の皿もいつの間にか空になってるわね」

 

二乃が、この場で数少なく空になっているミコと五月の皿を交互に見た。

 

「「これくらいお話の間に普通に食べれますよ」」

 

『別に普通でしょう?』といったミコと五月の声が、見事にハモった。

 

そして、2人の間に禁断の爆弾が落とされた。

 

「五月とミコちゃんって、どっちが沢山食べるんでしょうね?」

 

ここに居る全ての人間がふと思った事を、四葉が代表して代弁した。

そして今ここにようやく、『2人の大食い少女』達の視線が、ピタリと重なった。

言われるまで、互いに意識などしていなかった。

だが、ここまでを見るに、お互いに周りの人間から『大食い』と言われている事は察する事が出来た。

 

今まで、自分はいつも『大食い』と言われてきた。

周りに、自分より多く食べる人間なんて居なかった。

いつも『食べ過ぎ』と言われ、ついて来れる人間なんて居なかった。

けど……

この人なら……もしかして……?

 

「どうでしょう……伊井野さん」

 

五月が、ゆっくりと口を開いた。

 

「白黒……付けてみますか?」

 

五月からの挑戦状に、ミコは無言でうなずく事で応え、

2人の大食い女子の交わす視線の間に、ちりちりと火花が散った。

 

 

 

そして、35分後――――

 

「競ってる……凄い気迫です……」

 

「いや『凄い食い気』の間違いじゃないの?」

 

両者10皿目に突入した謎の大食いバトルの様子を、妙に真剣な眼差しで見つめる藤原と、呆れたような目つきで見るニ乃。

 

「両者一歩も引かない……プライド……いや食い意地と食い意地がぶつかってるのか?」

 

まさか伊井野に並ぶ大食い少女が居ようとは……と少し驚いた表情で石上が成り行きを見つめる。

 

「何やってるんだこいつら……」

 

ニ乃以上に呆れた顔を隠さない風太郎が呟く。

 

「けど……これは危険ですよ!?」

 

「?どういう事ですか?」

 

藤原の言葉に四葉が反応する。

 

「2人の食べた異常な量を考えてください……消化酵素の過剰分泌!今2人の胃は人間の限界を超えているんです!このままじゃ胃が使い物にならなく……!」

 

「ええっ!?」

 

「この試合、長引けば長引く程胃を痛めます……!」

 

「まだ晩ごはんも控えてるのに……どうしてそこまで頑張るんですか!?」

 

 

……などと、おバカ2人が勝手に外野で盛り上がってはいるものの。

実際の所、2人はそこまで熱意を持ってフードファイトをしているワケではなかった!

 

ただただ、自分の食べるペースと量についてこれるお互いに驚き合っていた。

そして、『どこまでついて来れるのか』を確かめたいという意味合いで、お互いに食べ合いを続けているに過ぎない。

ちなみにまだ互いの腹は、限界から逆算して8分目にも遠かった。

お互いが沢山食べれば食べる程、互いにむしろ嬉しさが募ってきていた。

 

ほら、私はとびきり大食いなんてワケじゃない。

これだけ食べる人が、自分以外にも居るじゃないか――――。

 

ほぼ同時に空になった皿を持ち、無言でガタリと立ち上がったミコと五月。

11皿目を盛り付けに向かう2人は、互いに視線と笑顔を交わしあった。

 

今ここにまさに、大食い女子同士の友情が固く――――

 

「お客様?申し訳ありませんが、ビュッフェ形式ですので……他のお客様のためにも、店の料理を食べ尽くすような真似はご遠慮くださいね?」

 

料理の並ぶコーナーへ向かおうとした2人の前に、申し訳無さそうな声の調子の女性の店員が割って入ってきた。

そしてその店員は、驚くことにミコのよく知っている顔であった……

 

「し、四宮先輩!?!?」

 

家柄を考えれば、こんな所で働いている事など予想だにしない人物。

四宮財閥総帥の長女にして、秀知院学園生徒会副会長・四宮かぐやが、エプロン基調の制服に身を纏ってそこに立っていた。

 

まさかの人物が目の前に現れた事に、驚いてうっかり皿を落としかけるミコ。

そして、かぐやの隣に来た男性の店員は……

 

「まったく……お前らがまさかここで誕生日会をしているとは思わなかったぞ」

 

「か、会長っ!?」

 

かぐやの支える男・秀知院学園生徒会長・白銀御行もその場に参上した。

 

「会長!?かぐやさん!?」

 

「え……会長?四宮先輩!?」

 

『秀知院組』が、今日来れなかったはずの2人の登場に驚愕していた。

 

「へぇー。じゃあこの2人がさっき言ってた化物カップルってワケ?」

 

「ば、化物!?」

 

「か、カップル……!!」

 

二乃の何気ない一言に、白銀は戸惑いかぐやは赤面した。

 

「あはは、すみません……えっと、実は……」

 

五つ子達を代表して、一花がこれまでの経緯をかいつまんで2人に説明した。

 

 

 

「……なるほど、伊井野さんの誕生日をあなた達もお祝いしてくださったのですね。ありがとうございます」

 

「俺も生徒会長として礼を言おう。ありがとう」

 

事情を説明されたかぐやと白銀が、軽く頭を下げ礼を述べた。

 

「すごーい……なんか品が有るっていうか、格の違いを感じちゃうというか……」

 

「……ほんと、お似合い」

 

かぐやの立ち居振る舞いに感心した四葉と、2人の間に漂う独特な空気を察する三玖。

 

「ちょっと!?会長とかぐやさんはそんなんじゃないですよ!?会長にかぐやさんは勿体無さ過ぎます!」

 

ぷんぷんと怒りながらニ乃や三玖の言葉を否定する藤原。

 

「そうなのですか?」

 

「……ええ、まあ」

 

「……ああ、そうだな。あくまで俺たちは会長と副会長という間柄なだけであって……」

 

五月の問いかけに、ややぎこちなさそうに答えるかぐやと白銀。

 

「本人じゃ、恥ずかしがって言えないのかもしれないよー?ミコちゃん、石上くん、そこんとこどうなのかなぁ?」

 

「……まあ、本人達が言うなら僕達には肯定出来ないですよ」

 

「……そうです。きっと、別にカップルってワケじゃないんですよ」

 

四葉の問いに、『大体察している』石上と、本人から聞かされていて知っているミコが少し視線を泳がせながら答える。

 

「ほらー!大体私もかぐやさんが取られちゃうなんて嫌です!」

 

「あ、あはは……」

 

そう言ってかぐやに抱きつく藤原を、一花が苦笑いしながら見ていた。

 

いや、これどう見ても『くっついてて、察してる』パターンでしょ。

この娘だけ気付いてないみたいだけど……

 

「ところで、何で四宮先輩がここに?会長……は、多分バイトでしょうけど」

 

かぐやの家柄を考えれば、こんな所でバイトなどする必要は無いはず。

 

「私もアルバイトですよ。卒業前に、ちょっとでも社会経験を積んでおこうと思いまして。で、せっかくだから会長の居るココで……

って、違いますよ!?別に会長と一緒に居たいとかそういうのじゃなくて!会長が教えてくれるというメリットが大きいと判断しただけで!」

 

「やだなあ、分かってますよかぐやさん♪」

 

「スーパーお嬢様なのにちゃんと社会経験を積もうだなんて……すごーい!」

 

かぐやの言葉を全て素直に信じ込む純粋なおバカである藤原と四葉の2人を、ニ乃は呆れ顔で見ていた。

 

いや、どう考えても『一緒に居たい』からここ選びましたって話でしょ?

後輩2人なんか、揃って『真意は分かってますよ』って顔してんじゃん……

 

……でも。

生徒会長と副会長は既にデキてて、この監査の子もこのパッと見冴えないヤツに片想い……

偏差値77の学校のトップに位置するエリートさん達も、やっぱフツーに恋愛とかするもんなのね。

 

ニ乃は、また風太郎の方をチラリと見た。

 

そういう事なら……やっぱり、コイツだって。

ガンガンアタックを続ければ……あれだけ否定してた恋愛ってモノにも、落ちるかもしれないじゃん?

やっぱ……どんどん仕掛けてみるに限るわね。

 

ニ乃は一人、新たに決意を固めたのであった。

……向かいの席で、三玖も同じ事を考えていた事には気付けなかったが。

 

 

 

そこから、各自小話を交えつつ、時は進んだ。

 

一花とかぐやの恋愛論が妙に一致し、間違いなく周囲に黒いオーラを見て石上と五月が震え上がったり。

三玖と石上が、『ヘッドホン愛用者』同士、リアルでは滅多に交わす事の出来ない『ヘッドホン談義』に熱が込もり、

その様子を複雑な表情で見つめるミコが、ニ乃から『ライバルが出ない内に攻めなさいよ?』とアドバイスされたり。

ノリの合う四葉と藤原が、互いの連絡先を交換し合ったり。

知る人ぞ知る有名レビュワー『M・A・Y』の正体が、今まさに向かいに居る人物であると気付いたミコが尊敬の眼差しを五月に送ったり。

『姉から借りたホラー映画にて、どこか一花の顔を見たような気がする』と呟いた藤原の口を、一花が慌てて塞ぎ、

風太郎が一花の耳元で『そんなに慌てる事ないだろタマコちゃん』とからかったり……

 

 

妙な盛り上がりを見せたミコと五つ子達の誕生日会も、お開きの時間がやってきた。

今、五つ子達と風太郎、秀知院学園の面々達は店の前に立っていた。

 

「お料理も美味しかったし、スーパーエリートなのに可愛いミコちゃんとも知り合えたし!サイコーだったよ、ありがとね!」

 

四葉が満面の笑みでミコに抱き付いた。

 

「まあ、勉強の虫な人達にも意外な一面が有るって知れただけ有意義だわ。相談には乗ってあげられるわよ、勉強以外はね」

 

「石上くん……また機会が有れば、ヘッドホンの話、しよ」

 

「え、ええ」

 

思いがけず趣味の合う女子の知り合いが出来た事に戸惑いが治まらない石上。

 

「むぐ……あ、あの、五月さん。今度良ければ、この前先輩に紹介してもらったケーキのお店、行きませんか?」

 

「良いですよ!時間が合えば……今度こそ白黒付けちゃいましょうか?なーんて……」

 

「有名レビュワーの『M・A・Y』ちゃんはいくつ星を付けるのかしらね?」

 

『再戦』の約束(?)を交わすミコと五月に横から茶々を入れるニ乃。

 

 

少し離れた所では、かぐやと一花が、互いのグループの代表者として挨拶を交わしていた。

 

「ありがとうございました。もし機会が有れば、また伊井野さんや石上くんの事、かまってあげてくださいね」

 

交友の少ないと言えるミコや石上に、少しでも元気な知り合いが出来るのは良い事だとかぐやは考えていた。

 

「こっちこそ、結構遠慮無くガンガン言っちゃって……けど、喜んで貰えたのなら嬉しいかな。四宮さんとは気が合いそうだし、機会があればまた会おうね」

 

「じゃあ、みんな行こうか?」

 

「ああ、お前らにはいくら時間が有っても足りないくらいだからな?」

 

一花の呼びかけに答えて集まってきた他の姉妹達に、風太郎がいたって真面目な顔で呼びかける。

 

「もー上杉さん、今日は誕生日だよー?今日くらいは勉強の事……」

 

「ダメだ!ただでさえお前らは赤点回避がギリギリなんだからな!」

 

「そうだな、『少年老いやすく学成り難し』だ」

 

「お前とは気が合いそうだな、生徒会長」

 

「ああ、そうだな」

 

『勉強の虫』同士の固い握手に、五つ子達はみな戦慄を覚えた。

 

「分かった分かった、ちゃーんと教わるから。それじゃみんな……」

 

さよなら、と言いかけたその時、ミコが五つ子達の前に立った。

 

「あ……あのっ!今日は楽しかったです!私、こんな賑やかな誕生日って初めてで……

誘ってくれて、ありがとうございました!」

 

少し照れくさそうに、一気に言い切ったミコはペコリと頭を下げた。

 

「(伊井野……)」

 

そうだ、コイツはそういうヤツだよな。

別に大した事してもらったワケじゃないと思うけど……

コイツには、嬉しかったんだろう。

賑やかなこの人達に囲まれて祝われて可愛がられた、今日のひと時が……

 

再び四葉と五月に抱きつかれたミコを見ながら、石上は口元に笑みを浮かべた。

 

「石上くん……何で一人で笑ってるんですか?きもーっ」

 

「……死にたいので先に帰っていいですか?」

 

「ダメよ石上くん、もう少し居なさいね」

 

藤原の容赦ない言葉のナイフがぐさりと突き刺さった石上を、かぐやが恐ろしげを含んだ笑みで引き留めた。

 

「ほらほら……離れて。……それじゃ、みんな!」

 

「「「「「バイバーイ!」」」」」

 

五つ子達のそっくりな5つの声色が、昼下がりに木霊した。

 

「さよならでーす!」

 

藤原が、元気良く手を振り返し去っていく五つ子と風太郎達を見送った。

 

「……賑やかな人達だったな」

 

五つ子達との思わぬひと時を振り返り、石上が呟いた。

 

「うん。でも……楽しかった」

 

ミコが、五つ子達が去っていった方向を見つめながら答えた。

 

今までとは全く違う、賑やかな誕生日。

妙なことがバレてしまいはしたけれど……みんな、自分をかわいがってくれた。

それに、自分と同じくらいに『食べられる』人とも知り合えた……

 

「楽しかったですねー!私と石上くんだけじゃこうはいきませんでした!あの人達には感謝しないとですね!」

 

「伊井野とあちらの五女が料理を凄い勢いで食っていくから、調理が大変だったけどな」

 

「ええ……」

 

能天気な藤原と、いつもより仕事が大変であった為対照的にやや疲れたような顔の白銀とかぐや。

 

「す……すみません」

 

ミコが恥ずかしそうに白銀とかぐやに頭を下げた。

 

「伊井野と同レベルの大食いの女子なんて、テレビに出てるような人以外有り得ないと思ってたけどな」

 

「人をフードファイターみたいに言わないで。だからアンタが少食過ぎるだけで……」

 

「はいはい」

 

「ちょっと!まともに受け取ってないでしょ!」

 

「受け取るだけ無駄だし……」

 

「何よ!」

 

「本当だろ?」

 

「やれやれ……」

 

言い合いを始めた2人を、仕方が無さそうな表情で白銀は見つめていた。

 

「ふふっ。あれでも……お互いの事はよく分かり合ってるんですよ、きっと」

 

石上が、つれない態度を取りつつミコをフォローしている事。

ミコがそれに気付き、石上を密かに想っている事。

互いが抱く真意を知っているかぐやは、余裕の笑みを浮かべていた。

 

きっとこの2人も、自分たちのようにいつかは……

けど、自分達が渡米するまでの間に大きく動いてくれるかどうかまでは、分からない。

そうだ。来月には……フランス校との交流会がまた行われる。

会長が準備の企画を提案した時には……このお可愛い後輩達が『仲良く』なるよう、私がちょっとだけ手助けしてあげましょうか?

 

ニ乃に『化物』と称された程の頭脳を持つかぐやの脳内が、人知れずフル回転を始めた。




ミコと五つ子達の誕生日が同じであると知ったので、
前々から「ミコと五月って娘はどっちも『5番目』で『大食い』だな」と想っていたのもあり、急遽今まで手付けずであった『五等分』を一気読みしてみて書いてみました。
メイン読者層である石ミコ同志だけでなく、両作品のファンの皆様にも喜んでいただけたら幸いです。

石ミコSS本編9話は、既に半分以上を書き終えているので今から1週間以内には更新出来ます。もうしばらくお待ち下さい。

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