伊井野ミコは告らせたい~不器用達の恋愛頭脳戦(?)~   作:めるぽん

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遅くなりましたが、お気に入りが1000件を突破していたので記念に。
例のアレでミコファン達が思ったであろう事をネタにしてみました。
連載中の本編とは無関係の時間軸・設定となっております。


特別記念番外編 『ゴールデンメンバーじゃないけれど』

【チカダンス】!

本作『かぐや様は告らせたい』が我々の世界にてアニメ放送された際、

良い話で〆たはずの第3話のエンディングテーマとして突如流れたカオスの塊である!

 

しかしそのカオスの塊は何故か人々を惹き付け、瞬く間に数百万再生を記録し、現在では1000万再生すら視野に入る程である!

『珍妙生命』と揶揄されながらも、やはりどこかカワイイという事を否定出来ない藤原千花の特徴がふんだんに表れたあの映像!

 

あの『藤原信者』が嗅ぎ付けない訳が無かった!

 

秀知院生徒会会計監査・伊井野ミコは、

自宅のパソコンで有名動画サイト『チューユーブ』を閲覧していた。

いつもはジ○ニ系の動画を見たりするのが主であるが、

今日は彼女のトップページに、『あなたへのおすすめ』として、あの動画が表示されていた。

 

「えっ!?これって……」

 

サムネイルに写っているのは、どう見てもあの憧れの先輩。

しかも、再生数も凄い。

 

白銀会長とか四宮副会長とか、それに……石上とか。

みんな何故か分かってくれないけど、やっぱり藤原先輩は凄い人なんだから。

世間の皆も、藤原先輩の凄さを分かってくれたのね。

 

そんな事を考えながら、動画のサムネイルをクリックして動画の再生を開始した。

 

『よーい よーい どーんだYO!』

 

画面の中で、藤原千花があの妙ちくりんな歌を歌い出す。

それでも、ミコの目は尊敬の眼差しできらきらと輝いていた。

 

……だが。

 

突如としてその輝きは、その瞳から消え失せた。

瞳から輝きが消え、絶望の表情を浮かべたミコはふらふらとベッドに倒れ込み、動画の視聴を止めてしまった。

1分43秒ある動画なのに、40秒程で視聴を止めてしまった。

いったい、何があったというのであろうか。

 

 

翌日、学校の教室。

ミコは自分の机で、まるであと数秒後にこの世が終わるかのような絶望の雰囲気を漂わせながら机に突っ伏していた。

 

心配する大仏が声をかけても、『ほっといて……』とどこまでも暗い声で返すだけ。

授業の時と昼食の時だけは顔を上げはしていたがその表情に生気は無く、

それ以外の時間はずっと机に突っ伏して打ちひしがれていた。

 

そんなミコの異常に、この男が気付かないはずがない。

秀知院生徒会会計・石上優。

表向きはミコの事を嫌っているが、周りがなかなか見えず危なっかしいミコを常に気に掛けている石上がこの異常を見逃す筈がない。

 

だが、そんな石上が何度か声をかけても、ミコの返答は大仏に対するものと同じであった。

 

そして時間は過ぎ、放課後。

夕暮れ時の教室で、ミコは未だに机に突っ伏して絶望していた。

 

そこに、教室を戸を開け石上がやってくる。

 

「……伊井野、まだ居たのか」

 

今日一日ずっとこんな様子であるミコに対し、半ば呆れたような声を出す石上。

 

「……まあ、無理に話せとは言わないけどさ。一人で抱え過ぎるなよ。僕に言えなくても、会長とか四宮先輩だって頼りになるし話も聞いてくれるだろうし。あっ、それこそ藤原先輩とかもあれはあれで……」

 

「……言えない」

 

「えっ?」

 

「……藤原先輩には、言えない」

 

石上は、今自分が耳にした言葉が信じられなかった。

自分の知る限り、最も敬虔な『藤原信者』である伊井野ミコが、藤原先輩にも言いたくない悩みなどが有るのだろうか。

 

「な、何でだ?藤原先輩の事尊敬してるお前が……」

 

その時、ミコが机に突っ伏したまま叫んだ。

 

「アンタには分からないわよ!『ゴールデンメンバー』のアンタには!!」

 

…………ゴールデンメンバー?

自分が、そんな妙な響きのグループの一員である覚えも自覚も無い。

だけど、どっかで聞き覚えが有るような……

 

数秒考えて、石上は思い出した。

……そして、全てを悟った。

ミコがこれだけ落ち込んでいる、その理由が……

 

「……いいか伊井野、よく聞け」

 

ミコは反応しなかったが、聞こえてはいるだろうと判断し石上は言葉を続けた。

 

「あの動画、お前が生徒会入りする前に撮ったやつだぞ」

 

「……………………えっ?」

 

その言葉でミコはガバッと飛び起き、慌ててスマホを取り出した。

チューユーブの再生履歴のページを開き、例の動画の再生を行う。

ただし見るのは、動画の内容ではなく投稿の日時。

ミコが見た、その日付は……

 

「……………………あっ」

 

確かに、自分が生徒会入りを果たす前の日付であった。

 

「藤原先輩に言っておくわ。あの動画の中に自分の名前が無くて伊井野が落ち込みまくってましたよって」

 

そう言いながら背を向け教室を出て行こうとする石上を、ミコが普段の倍はある力で学ランを引っ掴んで体ごと振り向かせ、叫んだ。

 

「だだだだだだダメ!ダメよやめなさい!そんな事言っていいワケないでしょ!」

 

顔を赤くしながら、涙目でポカポカと石上の胸を殴るミコ。

 

なんて、なんて恥ずかしい勘違いなんだろう。

てっきり、陰で自分など要らないと言われていると思ってたのに。

自分が生徒会入りする前の動画なんだから、自分の名前が無くて当然じゃないか。

 

「…………あー分かった分かった、言わねぇから」

 

石上が明後日の方向に視線を逸しながら言った。

 

 

一週間後。

 

「……ミコちゃん、今日は随分と機嫌が良いね?」

 

「そう?そうかしら?ふふん」

 

この日のミコは、大仏だけでなく、誰が見ても機嫌が良いと言えた。

表情にはるんるん気分が余すこと無く表れているし、時折鼻歌も聞こえてくる。

激しく落ち込んでいた一週間前とは実に対照的だ。

大仏には、その理由は分からなかった。

……が、石上はその理由がなんとなく察せられた。

 

「『カワイイ後輩 優くんミコちゃん』」

 

石上はミコにすれ違いざま、謎のフレーズを小声でぼそりと呟いた。

 

「!?」

 

上機嫌な表情であったミコは一転、一瞬驚愕の表情を浮かべてくるりと石上の方を振り向いたが、

石上はそれ以上何も言わず立ち去ったので追及する事が出来なかった。

だが、石上はそのミコの反応を横目で見て、ミコの上機嫌の理由を確信するに至った。

 

そして、放課後。

夕暮れ時の教室で、またもミコと石上ははち合わせた。

ミコは風紀委員会の活動の後、石上は生徒会の活動の後に教室に荷物を取りに来たのだ。

 

「石上。アンタも帰るところ?」

 

「ああ」

 

何気ないやり取りであるが、いつもと違うところはミコの声の調子が幾分か柔らかいところだ。

 

「……今日はこの前と違って随分機嫌が良いんだな」

 

「そう?……まあこばちゃんもそう言ってたし、そうなのかもね?。じゃあね」

 

そう言って教室を出ていこうとするミコに、石上が後ろから声をかけた。

 

「『プラチナメンバー』」

 

「!?!?」

 

朝と同様、またも謎の単語を呟いた石上に、ミコはくるりと振り向いて驚愕の表情を見せた。

 

「……な、何よ、それ」

 

朝言われた事を考えると、いくら浮かれた気分のミコでもその答えは分かるような気がしたが、とりあえず聞いてみる。

 

「『チカっとチカ千花っ♡Vol.2だYO!』」

 

「!?!?!?!?」

 

いわゆる陰キャな石上の口からはとても似合わない単語が飛び出したが、ミコにはその意味が充分伝わっていた。

 

「昨日上がってたアレ、見たんだろ?」

 

「…………っ」

 

ミコは返事を返さなかったが、恥ずかしそうに赤面して口をもごもごしているその様子は、かつて白銀が言った『沈黙は肯定と捉えて良いんだな』と言うに値するものであった。

 

「藤原先輩に言っておくわ。自分の名前が出ててウッキウキでしたよって」

 

「やっ、ややややややややややめなさい!バカッ!」

 

ミコが慌てて引き留めようとする。

その時、ある事実にふと気付いた。

 

「……ねえ、石上」

 

「何だよ、藤原先輩には言わねえって」

 

「……ふーん。本当かしら?言わないって?」

 

「な、何だよ」

 

何故かジト目でこちらを見つめてくるミコに、石上は危機感を覚えた。

 

「ねえ、考えてみたらすっごく不自然なタイミングじゃない?私が前の動画を見て落ち込んだ事がアンタにバレてから一週間後に、藤原先輩が新しい動画を上げてくれるって。

藤原先輩が私の反応を知らないにしては、随分と良いタイミングじゃない?」

 

「……ナ、ナンノコトデショウ」

 

しどろもどろ、カタコトなその返事は誰が見ても不自然さMAXであった。

 

「……言ったんでしょ、石上?」

 

「イ、イッテナ「言ったんでしょっ!?」

 

「…………つい口を滑らせました」

 

ミコの気迫に押されて、渋々認めた。

 

「…………バカ。バカああああああああっ!何で言っちゃうのよおおおお!は、恥ずかしいでしょおおおおおっ!バカッ!無神経!」

 

ミコが一週間前のあの時と同じく、顔を真っ赤にして涙目でぽかぽかと石上の胸を殴りつける。

 

「ま、まあ。藤原先輩も涙目で『新しいの作ってあげますから待っててください~!』って言ってたし、それだけ大事に想われてるって事で」

 

「それは嬉しいけどそれとこれとは話が別よ!!今度からどうやって顔を合わせれば良いのよおおおおおお!」

 

石上は、自分に寄りかからんばかりの至近距離で自分の胸を弱々しくぽかぽかと殴るミコを見て、思考を巡らせた。

 

……いや、これは違う。

コイツのくだらなさにつられて、僕もくだらない事考えてしまってる。

 

絶対くだらないだろ。

時期が時期だから出てなくて当たり前なのに、動画に自分の名前が出てなくてあからさまに落ち込んで。

新しい動画にはしっかりと自分の名前が出てる事に分かりやすく喜んで。

それがバレると恥ずかしがってこんな事してくる、コイツが。

ちょっとでも……かわいく見えるとか。

……僕もつられてくだらない事考えてるだけ。そうなんだ、絶対そうなんだ。

 

 

石上が、自分の心の奥底に眠る想いに気付くのは、もう少し先の話である。

 

 




遅筆でありますが、今後とも本連載をよろしくお願い致します。
感想は全てありがたく読ませて頂いております。

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