伊井野ミコは告らせたい~不器用達の恋愛頭脳戦(?)~   作:めるぽん

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番外編 未だに夕食の時に……

今になって思い返してみれば。

僕は、ずっとアイツにバカにされっぱなしだ。

 

小等部の6年間は────

 

「あー!いけないんだー!」

 

授業の合間の休憩時間。

教室内に甲高い声が響き渡る。

 

「ちょっとキミ!がっこうにおもちゃもってきたらダメなんだよ!」

 

幼い少女が、休憩時間中に携帯ゲーム機で遊んでいる一人の男子に突っ掛かっている。

 

「うるせぇバーカ。せんせーでもないのになんでぼくにちゅういしてくるんだよ」

 

注意された男子は、不機嫌そうに言葉を返す。

 

「わたしがせんせーじゃなくてもダメなものはダメでしょ!せんせーにいってやろ!」

 

頬を可愛らしく膨らませご立腹の少女。

 

「そもそもなんでダメなんだよ。じゅぎょうちゅうにやってるわけじゃないのに」

 

「えっ……え?」

 

答えに困窮する少女。

頭脳に恵まれて産まれてきた彼女ではあるが、この歳ではまだ論理的に相手を説き伏せるような思考は難しいというものだ。

 

「……と、とにかく!ダメなものはダメなんだから!はやくしまいなさい!」

 

「そんなんじゃなっとくできないからやだ。ぼくはゲームがすきなんだ」

 

ああ言えはこう言う相手の男子が言う事を聞いてくれないせいで、とうとうその少女の怒りは沸点に達した。

 

「ゲームばかりやってるとバカになっちゃうわよ!はやくやめなさい!」

 

「うるせぇバーカ!バカっていったほうがバカなんだよ!」

 

「なによ!アンタがさっき、さきにバカっていってきたんでしょ!このバカ!」

 

 

……こんな感じで、いつもバカにされてた憶えがある。

 

 

中等部の3年間でも────

 

「……数学、35点か」

 

中等部の教室で、その男子は返却された答案用紙を見て呟いた。

中等部から、『算数』は『数学』へと移り変わる。

偏差値77を誇る秀知院学園では、中等部の時点で数学もそれなりのレベルの授業を課せられる。

勉強嫌いでは点数が取れないのも当然である。

 

その一方で──

 

「今回は満点は1人だけだ。このくらいのレベルならもう2、3人居て欲しいところではあるが、まあ惜しいヤツも何人か居たからな。腐らず頑張るように!」

 

満点。

その男子からしたら冗談のような点数が、教壇から聞こえてきた。

その言葉を受け、生徒達の間でひそひそ話が繰り広げられる。

 

「(……満点居るんだって。結構難しかったのに)」

 

「(どうせアイツでしょ?いつも涼しい顔して満点のアイツ)」

 

「(ほんとムカつくよねー。風紀と勉強一筋です!みたいな)」

 

……確かに引くレベルではあるけど、別に悪い事ではなずなのに。

どうしてアイツがそんな言われ方されなきゃならないんだ?

 

その男子は、耳に入ってくるひそひそ話に若干の苛立ちを覚えた。

 

とその時、男子の机から答案用紙がはらりと床に落ちた。

見られて自慢出来る点数ではない。その男子は慌てて、床に落ちた答案用紙を拾おうとした。

だが、先に答案用紙を拾い上げた手が有った。

 

「げっ」

 

「…………」

 

答案用紙を拾い上げた少女は、答案用紙右上の点数を一瞥し、呆れたような表情を見せた。

 

「はい、これ。ゲームばっかりやってるからこんな点数なのよ。もっと勉強しなさいよ」

 

軽蔑の眼差しとセットで、その少女は答案用紙を渡して来た。

 

……こりゃ悪く言われるわ。

僕の点数なんてお前には関係ないだろ!?

『自業自得よ』みたいな顔して渡してきやがって!

背中に変な貼り紙されてたのを取ってやったりしてるのに、いっつもぎゃいぎゃいうるせぇ恩知らず。

……この前、ひっそりあんなモノ贈ったのは失敗だったか。

もしアレが僕からって分かったら、何言われるか分かったもんじゃない。

 

「(人の心配してる暇があったらアンタはちょっとでも勉強しなさいよ。だからアンタはバカなのよ)」

 

……有り得る。めっちゃ有り得るわ。

……気が進まないけど、これ以上バカにされる前に少しは勉強しとくか。

 

 

 

ある意味一番酷かったのは、高等部の3年間かもしれない────

 

 

何やかんや色々有って、アイツと2人で出掛けてた時の事。

 

「What should I do from Meguro ward to Shibuya ward?I want to participate in a Halloween event……」

 

早口で喋る、外国人の若いお姉さんを見かけた。

対応しているリーマン風の人は、さっぱり分からずお手上げといった様相を見せている。

……どうしよう。力になってあげるべきか。

と、そんな事を考えながら見つめていたからか、そのお姉さんがこちらに小走りでやってきた。

 

「Do you understand English? Please help me!」

 

慌てているのか、ちょっと早口だが……

最近の勉強のおかげで、何とか分かるかも。

 

石「I understand English to some extent.」

 

「Oh!」

 

話が通じそうな事が分かった女性は、安堵と喜びの笑顔を浮かべる。

 

「What should I do from Meguro ward to Shibuya ward?I want to participate in a Halloween event……」

 

「You can get there by taking a train from Nakameguro Station on the Toyoko Line.」

 

「Thank you! May you be happy!」

 

「ちょ、ちょっ……あー、You're welcome」

 

外国人の女性は、案内してくれた男子に熱い抱擁を交わすと急ぎ足で去って行った。

 

「……わ、悪い待たせたな……っておい」

 

隣で待たされていた女子は、ひと目でそうと分かるほど不機嫌になっていた。

 

「アンタ、あの人の胸ばかり見てたでしょ。おっきいからって、視線が露骨すぎるのよ。それに抱きつかれて照れちゃって。バカ。変態。スケベェ大魔王。おっぱい星人」

 

……困っている人を助けて、何でバカだの変態だの言われなきゃならねぇんだよ。

いや確かに、ちょっとだけ、ちょっとだけ、一瞬くらいはあの胸に視線が行ったかもしれないけど。

 

そして、その日の昼食時──

 

「ほんと、アンタはバカな上に変態なんだから。私が目を付けてなきゃ、その内その辺の人を襲いかねないわね」

 

げんなりした表情の男子の目の前で、少女がぷんぷん怒りつつランチを食べている。

その量は、少女の小柄さと反比例するようになかなか大量だ。

 

「……確かにちょっとだけ目が行ったかもしれねぇけど、没収物をこっそり熟読してるような誰かさんにはあんまり言われたくねぇな」

 

「なっ……」

 

「ほら、口にソース付いてるぞ」

 

男子が少し呆れた顔で、怒れる少女の口元を軽くサッと拭く。

すると、ソースと共にその少女の怒りも拭い去られ。

代わりに、その表情はほんのり赤く染まった。

 

「……誰にも優しいんだから。バカ」

 

その少女の呟きが、男子の耳にははっきりと聞こえた。

 

困っている人を手助けしてあげたのにバカ。親切にしてやってもバカ。

理不尽だ。

 

 

 

 

────そして、今も夕食の時には────

 

「ほら、口元にソース付いてるわよ。ほんとアンタはだらしないんだから」

 

少女……いや、今はもう少女ではないその女性が、呆れたような顔で口元を拭いてきた。

 

「ん。悪いな」

 

男子……いや、こちらも今はもう男子ではないその男性は、答えるもどこか上の空だ。

 

「どーしたのおとーさん?」

 

女性の隣で、幼い少女が不思議そうに父親の顔を覗き込む。

 

「きっと何かヘンな事を考えてたのよ。お父さんは本当に……」

 

「『ムッツリスケベさん』なんだよね!」

 

少女が後の言葉を引き取った。

 

「……子供に何を教えてんだよ」

 

お父さんと呼ばれた男性は、呆れた表情で女性の方を向いた。

 

「何よ。本当の事でしょ?」

 

女性が毅然とした目で男性を見返す。

 

「おかーさん、おこってる?」

 

少女が心配そうに母親の顔を見つめる。

 

「大丈夫だよ。お母さんは素直じゃないだけでお父さんの事大好きだからな」

 

「ほんと!?」

 

少女の頭をぽんぽんと撫でながらの父親の言葉に、少女が目を輝かせる。

 

「ちょ、ちょっ……」

 

「お母さんはな、お父さんの事が好きすぎて……」

 

「ちょ、ちょっと!子供に何を教えようとしてんのよ!」

 

「何だよ、『本当の事』だろ?」

 

ついさっき自分が言った言葉をそのまま返されて、女性は答えに窮してしまった。

 

「………………………………まあ、そうだけども」

 

女性は、真っ赤になった顔をぷいっと逸しながら渋々肯定した。

 

「おとーさんとおかーさんなかよし!」

 

少女が、にぱあっと輝かしい笑顔で両手を上げてバンザイした。

そんな我が子を見て、男性と女性はふっと笑顔になる。

 

「……いつまでもバカにされっぱなしじゃないぞ、伊井野」

 

「……呼び方」

 

「あっ」

 

男性からしたら、してやったりと勝ち誇ったつもりで言った言葉だったが。

よりにもよって、昔の呼び方をしてしまう痛恨のミス。

 

「ふーん……私はまだ『伊井野』なのね」

 

昔の呼び方をされてご立腹な女性……ミコが、頬を膨れさせ分かりやすく不機嫌を露わにする。

 

「この前つばめ先輩と偶然会った時の印象がまだ残ってるのかしら?アンタがそのつもりなら、『伊井野』と『石上』の頃に戻る?」

 

「じょ……冗談やめろよ。悪かったよ」

 

とんでもないミスをしてしまい、平謝りする男性……石上。

 

「ふん。この甲斐性無し。浮気者。……バカ」

 

他者から見れば幸せな夜が過ぎていく中、石上は、心の中でため息をついた。

この、頭が良いけど妬きもち妬きと過ごしていくからには、こんな感じでずっとバカ呼ばわりされていくのかもしれない、と……

 




カプ厨である私が好きな『未だに夕食の時に馬鹿にされる』あのコピペをネタにしてみました。
英語部分はグー○ル先生にぶち込んだだけです(笑)
最近少しだけ筆が早くなったので次回の本編投稿も少し早くできそうです。

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