これからの展開が気になるなぁーって、思っていただけたら嬉しいです!!
プロローグ
タァーンッという音が、中学校にある弓道場内に響きわたる。的の真ん中に向かって一直線に矢が突きささったのを見て、体から力を抜くように息を吐く。
「ふぅ……もう一度」
もう一度、同じ行程を繰り返す。小さい頃からずっと続けてきたことだが、別に好きだからやっているというわけではない。小さい頃、親父にやれと言われたから、ただそれだけ。本来、俺にはやる気もなければ、やる必要のないものだ。
昔から目がやたらとよかったのもあってか、的の真ん中を当てるのは得意だった。外すことはまずない。何より、俺にとって弓を射るという行為は作業に近かった。決まりきったことを寸分の狂いもなく、繰り返しなぞらえる。目標を持たず、言われたことをやるだけの俺には、最適なことでもあった。
(そういえば昔、芽吹にあなた自身が弓のようねって言われたっけな。はは、今考えればそれは言い得て妙……なのかもしれないな)
「部活は今日休みの日じゃなかった?にしても、まだ続けてたのね……必要ないんじゃなかったの?」
「習慣になっちまってな、別に必要だからやってるってわけじゃないさ。芽吹」
相変わらずの凛々しい声が聞こえたため、振り返るとそこには楠芽吹がいた。
彼女とは、家が隣同士だったこともあり関わることが多かった。なんだかんだで、付き合いは長く幼なじみと呼べるくらいには、一緒にいた。(遊ぶとかではなく、ただただ一緒にいた)
それと、俺は、彼女のことが好きだ。理由としては単純で、彼女の真っ直ぐな所に惹かれたから。
俺は、基本的に何かに自分から決めて打ち込むことがなかった。いつも親父から言われたことをやるだけで、自分の意志を持たなかった。
だけど、彼女は違った。いつも、自分を追い込み続けていたんだ。小学校では、運動も学習も何もかもに強い意志を持ちながらすべてに時間を費やしていた。
そんな彼女の姿が、俺にはとても眩しく見えた。誰に言われたからとかではなくとも、色んなことに一途な気持ちで打ち込める彼女に、俺は惹かれたんだ。
「声かけてくれればよかったのに」
「あんなに集中している時に、声を掛けたら邪魔になるでしょ?」
「芽吹なら、いつでも歓迎だ。何より、声を掛けられたくらいじゃ俺は外さない」
「あっそ……」
「もしかして、俺のことを待っててくれたのか?それだったらすごく嬉し」
「夕矢が、一緒に帰りたいってうるさいからでしょ?」
「そ、そうだったな。ああ、すぐ着替えるから待っててくれ。お前と一緒に帰りたいからな」
「分かったから帰るなら、早くしなさいよ」
そう言って、道場を出ていった芽吹の後ろ姿を見た俺は胸の内で呟いた。
(二年間、何をしていたんだろうな……芽吹のやつ)
そんな、彼女は小学六年生の秋頃に突然姿を消した。あまりに唐突だったから、理由も何も聞けなかった。彼女のお父さんにも聞いて見たが、答えてはくれなかった。
時は流れて、俺が中学二年生になると、いなくなったときと同様に、彼女は突然戻ってきた。もちろん、嬉しかった、好きな人が戻ってきたのだから。
だけど、気になったことがあった。帰ってきた時の彼女の目だ。まるで、魂が抜け落ちてしまったかのように、覇気のない目。それだけじゃない、教室ではいつも悔しそうに手を握りしめながら、俯いているのだ。
話掛ければ、しっかり会話してくれはするのだが、だいたい返事が譫言みたいだし。
(今日こそ、聞かねぇとな)
「遅い、早くしなさいって言ったでしょ?」
「すまん、着替えに手間取った」
「……行くわよ」
「おう」
二人で、帰路を歩く。芽吹が戻ってきてからはいつもこうしている。今の芽吹は、なんか危なっかしいからな。一人にしない方がいい。別に、俺ができるだけ一緒にいたいからって訳じゃないぞ?
「なぁ、芽吹」
「何よ……?」
「お前、なんか悩みとかないか?」
「……そういう、あんたはどうなのよ?」
「俺か?なんだよ、急に」
「あんた、昔からだけど、考え事がある時ほど射に没頭する癖があるから」
「そう……なのか?」
「ええ、別に分かりたくないけど、分かっちゃうのよ。昔から一緒にいたから」
すると、芽吹は懐かしそうに呟いた。その時の表情には、少し覇気が戻っているように感じたのは気のせいだろうか?
「もしかして……親父さんのこと?」
「親父……か。いいや、あの人のことじゃないさ、何よりあの人のことは今悩んだってしょうがないだろ?死んじまったんだから」
「……」
俺がそう答えると、芽吹がばつが悪そうに俯いてしまった。そこへ、俺が本題をふる。
「俺が、考えているのはお前のことだよ。芽吹……二年間も、どこにいってた?言えないなら、無理して言わなくてもいいが、何かあったなら言ってくれよ」
「……あんたには、関係ないことでしょ」
「……そうか、でも、なんかあったら言えよ。いつでも、力になる」
「いいって言ってるじゃない。どうして、あんたはいつもいつも私に引っ付いてくるのよ……」
「お前のことが、好きだからに決まってんだろ?」
「っ!!ほ、本当に相変わらずなのね……」
「当たり前だろ?俺は変わらない、もちろん、お前への思いも変わらないからな」
「あんたのそういうところ嫌いじゃないわ」
「そうか、嬉しいな。その、お前に褒められるのは」
「……聞こえてた?」
「ああ、ん?前に言わなかったか?耳も良いって」
そう言った瞬間に、芽吹は歩く速度を上げた。
「お、おい、なんでそんなに速くするんだよ!?」
「ここからは、もう一人で帰る。さようなら」
「ちょ、待てって!芽吹!」
「ふん」
置いてきぼりをくらわまいと、俺も速度を上げて横にならんだ。俺はこれだけで、幸せだ。芽吹の傍にいられるだけで、胸が熱くなる。
(この、芽吹が好きだって想いだけは曲げない。俺が唯一自分で決めたことだからな。二年も離れちまったんだ……今度は何があっても、俺はこいつと離れねぇぞ)
そう、俺はもう一度強く誓った。
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書物に囲まれた部屋に二人の人物がいた。どちらも、歪な仮面をつけている。二人は大赦に勤めている神官と呼ばれる存在だ。
「彼に、勇者適正の反応があったそうです……」
「そ、そんな!?本当なんですか!?」
「はい、本当です。しかし、可能性がない訳ではなかった。知っているでしょう?神世紀72年に起きた反乱を鎮圧させた三家を」
「赤嶺家、弥勒家、そして、鷹月家……そうか、彼は」
「ええ、その時代に鷹月家では男性で初めて勇者になった人物がいたそうです。詳しいことは、分かっていませんが……」
「何故、今になってその話を?」
「今だからです、三好春信。大赦は彼を、『防人』の部隊に迎え入れようとしています」
『防人』それは簡単に言ってしまえば勇者の量産型。これは、勇者適正がありながら勇者に選ばれなかった候補生と呼ばれた少女達がなった存在である。もちろん、こちらも男性ではなることは不可能だ。
「正気なんですか!?男性で勇者になれた存在が、鷹月家から出たのは知っています。しかし、それは過去のことでしょう?第1に勇者様では、ないのですか!?」
「これは、上からの決定です。そして、鷹月家も、弥勒家と同様の落ちた家柄……それに、先の戦いで現れた
「つまり……実験台ということですか?」
「これからに、役立てるためです。三好春信、あなたには彼のための『防人』システムの調整を任せます。これは上からの決定です、分かりましたね?」
「……分かりました」
三好春信と、呼ばれた男は仮面の下で悔しそうに顔を歪めていた。これが今の大赦のやり方だ。
世界を
(っ……すいません、先輩。夕矢くんを巻き込んでしまって)
今はいない上司に向かって、彼は心の中で謝罪した。
これより、語られるのは華麗に咲き誇る勇者達の物語ではない。
例え、誰の目にもくれなくとも人に踏みつけられようとも、それでも、地を這うように必死に生きようとする少女達共に、好きな女の子のため大事な仲間のため奮闘し続けた一人の少年の物語である。
正直、1話だけではちんぷんかんぷんのはず。僕もですよみなさん!(´・ω・`)
でも、こんな作品でも気に入ってもらえたら嬉しいです!これから連載していきます!
芽吹かわいいよ芽吹(・∀・)