では、本編どうぞ!
「ふぅ、これでよし」
手慣れた様子で残党の一人を縄で拘束する朝緋。二人の勝負は一瞬でついたという。
「チョーシいいわね、前より速度が上がってる気がする」
拳をシュッ!シュッ!と振っている姿はとても普段のお淑やかな彼女とはかけ離れた姿をしていた。
残党は相手がどのようにこちらを完封したのかも理解できないまま沈んだ。結果、朝緋は敵の目的を聞く事が出来なくなっているのが現在の状況である。
「もー少し情報が欲しかったところなんだけどなぁ……っと」
即座に首を動かす。さっきまで自身の顔があった位置を凶器が通り過ぎる。相当な勢いで飛ばされてきたのか、家の壁に凶器は突き刺さる。
「……懲りないわね、てゆーかさァ何人いるのよ」
はぁ、と溜め息を漏らす朝緋。目の前には二人の敵が立っている。いずれも手には凶器が握られており、その様子に更に朝緋は深い溜め息を漏らした。
「…あんた達、何者?」
「世界の終わりを望む者」
「終わりぃ?何それ、どういう事よ」
「天の神によって人類の掃討が果たされる事、我等はそれを望んでいる」
何かがキレたような、嫌な音が鳴る。場の空気が先程よりも重苦しいものに変化していく。
「なんで、そんな事望んでるわけ?」
「大赦という偽善者達が先導している世界…そんな物に我々は意味を感じない。どうやら、今でも天の神への抵抗を続けているようだが…そんなものは無意味だ。天の神には敵わない、相手は絶対的な力を持っている。大赦がいくら策を講じた所で…」
「……あー、もーいいわ」
「何?」
「もーいいって言ったの。ごめんなさいね、こっちが聞いたくせに遮っちゃって」
手からバキバキ、と嫌な音を鳴らしながら、こめかみに青筋を立たせた朝緋が正面の敵を睨んだ。
「よーするに大赦が気に食わないだけ…って事よね、あんたら。だからさっさと世界が終わって欲しいって?身勝手にも程があるでしょ」
「この世界は行き詰まっている、いずれ人は天の神の力に蹂躙され滅びるのだ。ならばそれが早まったとて」
「うっせえばーか」
声にやる気は感じられない。が、残党を見つめる彼女の目には怒りの感情が渦巻いていた。もう喋んなと言わんばかりの目である。
「何が行き詰まってるよ、だから何?あんたらの勝手な諦めに皆を巻き込むんじゃないっての」
昔と比べて、今では真実を知る人間の方が少ない。彼女は刀夜と出会った事である程度の事は知っているが。
(こいつらもある程度の事は知ってるってことよね)
残党、それは神世紀72年にテロを起こした集団の生き残り達が残した思想を受け継いでいる人達のこと。
(過去に縛られた悲しい人達…虚しいわね)
「戦う前に、一つ。あんたらの狙いはあの子達?」
その言葉に対し残党は何も答えない。ただ静かに凶器を構え、臨戦態勢へと入っている。沈黙を肯定と受け取り、朝緋も構えた。
「そ、でも残念。あんたらじゃあの子達は倒せないと思うわよ」
挑発してる訳でもなんでもない、ただ、本当にそうなのだと相手に言い聞かせるようにあっさりした様子で朝緋は告げる。
青い髪が靡く。残党にもはや勝ち目はない、いや最初から勝ち目などなかったのだ。何故ならば
「勝手に諦めてる奴等が、今も諦めずに戦ってる私やあの子達に……勝てるわけないじゃない」
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(さて、と)
敵は大の大人が四人、しかも残党と呼ばれる裏世界の人間達。自分達よりも多くの経験を積んでいる事だって想像に固くない。
(アイツらが弥勒さんの言ってた残党で間違い無いなら……油断も慢心できるはずがねェ)
奴らの動きを見た時、確信した。奴等は…『そこそこ慣れている』。相手を追い詰め、『消す』事に長けている連中だ。
所謂、殺し屋…的な感じだろう。大赦と小競り合いを起こしていると弥勒さんが言ってた理由もこれで頷ける。
(闇深ぇなぁおい)
とりあえず、と首を振って思考を切り替える。背中に背負われている矢筒へと手を伸ばす。手持ちは通常の矢が7、8本程度。やれる事は少ないが、それ故に行動は選択しやすい。
(油断はしない、
芽吹を守れ、と心が叫んでいる。勿論だとも、と俺は『それ』に強く頷く。芽吹と視線を合わせる。直後────。
「よっしゃ、芽吹…
「ええ」
動き出す。敵も黙って見ている事はしない。一人は即座に反応し、芽吹に向けて苦無を振りかざす。もう一人も俺目掛け、苦無を投擲してくる。
しかし、人数差があるにも関わらず数で押してくる事はしなかった。そう、残党達には明らかな油断があった。所詮子供だ、ガキが俺(私)達プロに勝てるはずがない…という慢心と油断が彼等には存在していた。
その油断を、見逃すはずがない。
「アホか」
「馬鹿ね」
投擲は紙一重で避け、振り下ろされた苦無は木刀で弾き飛ばされる。すかさず放たれた芽吹の回し蹴りが、正面にいた残党の顔に命中した。
「なんッ!?」
ガツッ!と、鈍い音が響き渡る。フルフェイス型の兜に守られている筈なのに、直に衝撃が来るほどの威力。倒れ込んだ残党の体はピクリとも動かなくなる。手はだらんと垂れ下がっており、力が入っていない様子だった。
「ごめんなさい。少し寝ていて」
そう言った凛々しい芽吹に視線を奪われそうになりつつも、矢筒に手を伸ばし即座に弓を展開、矢を射り飛ばす。それを避けるため、少し離れた距離にいた一人の残党が反射的に横に避けたのが見える。
「残念、足元注意だ」
瞬間、避けた残党が網に包まれ宙へと浮かぶ。焦った様子で網から抜け出そうとする残党を見ながら、ゆったりと近づいていく。
「こ、こんなもの…!」
「やめとけよ。動けば動くほど網の締め付けが強くなる一方だぞ、それ」
忠告は間に合わず、網によって身動きを完全に封じられた様子の残党を見て溜め息を漏らす。
「手玉にとったつもりだろうが…勘違いも良いとこだ。ここは俺の庭だぜ?そんなとこに油断してノコノコ入ってきやがって。あんたら、それでもプロかよ」
「貴様…」
「これがあんたの言ってた…トラップ?」
「あぁ、昔はこれによくやられた……と、そんな昔話はさておきだ。残り二人…やるか」
応戦してくる敵は、後二人……先程よりも距離があったものの、俺は見逃さない。
残党達が懐から拳銃を取り出し、動き出すのを見るや否やこちらに向かって銃弾を飛ばしてきている。防人にもなっていない今の俺達が銃弾をもろに喰らえば、致命的な衝撃になってしまう。
けど、こんなものは
「アイツらの行動は全部潰す。だから、信じて突っ込め」
その言葉に芽吹は何も返さず駆け出した。無言の信頼、彼女の後ろ姿からはそれを感じた。
その場に足を止め、弓を展開する。銃弾の位置を把握、どう狙えば、どう当てればいいか…考えるのではなく、視ろ。
(もし、ミスって芽吹に銃弾が当たったら?)
そんな事は絶対に、ない。
当てさせはしない。自分を信じて、ただ敵目掛けて飛んでいく彼女の邪魔だけは絶対にさせない。
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今更なに言ってんだか、と鼻で笑う。私では見ることのできない世界を常に捉えている、そんなあんたを私は信じてる。内から湧き出てくる恐怖を、アイツへの信頼で掻き消していく。
ここでの思考は逆に良くない。今は、目的を達成する事だけを念頭に置き、体を動かせ。
「安心、しなさいよ」
金属と金属が擦れ合う音が聞こえる。進行方向の先で、背後から飛んできた矢と銃弾がぶつかり合った音なのだと瞬時に理解する。
速度は緩めない。緩める必要がない、アイツは全てを潰すと言った。なら、後は信じて、突っ込むだけ。
我ながらアイツのことを信用しすぎている気がする、と思いながらも足は止まらない。
「なっ!?」
狼狽える残党。かく言う私は驚きもしない。何が起きたのか、単純な話だ。
(流石ね)
迎撃手段を失った残党を捉える。相手の体を覆い尽くす強化外装、あれは、木刀なんかじゃビクともしない。けど、多少外装が薄そうな頭部ならば…強い衝撃を与える事で、さっきの奴のように気絶させる事が出来るはず。そう、やることは単純。細かい事は気にせず、ただ、後ろにいるアイツを信じて。
「頭を……狙うだけ!!」
全力で振りかぶり、木刀の一撃をお見舞いする。ガキィン!と刀身が欠けるのが見えた。でも、問題ない……倒れこんだ一人目の横をすり抜け、思い切り地面を蹴り飛ばす。
「これ……でぇ!!」
「ちぃ!」
残党がすんでの所で体を逸らし、舌打ちをしながらもどこからともなく苦無を取り出し、こちらに向かってそれを振りかぶろうとする。
(隠し持ってたのね…まぁ、でも)
そう、関係ない。だって、私には──────
「夕矢が……いるもの!」
矢が苦無を吹っ飛ばした直後、私が振るった木刀による一閃が外装で守られた残党の頭部に命中する。その一撃をもろにくらった最後の残党はその場に倒れ伏せた。
「っ……つか──れた」
息を、整える。全くもって、心臓に悪い。拳銃を持った人間を相手にしたことなんて一度もないっていうのに。
手の震えが止まらない。なんとかなったという気持ちと、未だに込み上げる恐怖で情緒がおかしくなる。化け物との戦いよりも…人と戦う方がよっぽど怖い…そう、感じた。
「…っ、なのに」
私が、いつものように…鍛錬で培った実力を出し切れたのは。
「やったなー!さっすが、芽吹だ!」
本当に嬉しそうに、満面の笑顔で、こちらに向かって両手をブンブンと振っている幼馴染のお陰なのは、間違いなかった。
「……ほんっと、バカなんだから」
呆れたような言葉を吐く。けど、そう言った自分の声色は…どこまでも優しいものだった。
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「また、腕上げたんじゃないか?」
「そういうアンタこそね」
「へへ、だろ?」
照れつつも、背後で起きあがろうとした残党に向かってノールックで捕縛矢を飛ばす。「ぐぁっ!?」と小さな悲鳴が背後から上がった。
「普通の矢しか持ってなかったんじゃなかったの?」
「そう、だから作ったんだ。今さっき」
「……作ったの?…しかも、さ、さっき?」
「あぁ、こう近くにあった部品使ってぱぱぱーっと」
俺の返答に何故か呆れた様子の芽吹、もしかして、答えになってなかったか?おかしいな。
「……まぁいいか。で、こいつらはどうするの?」
「大赦に引き渡そう。警察でどうにかできるもんでもないだろ、こいつらは」
「ごもっとも。じゃ、連絡とかは任せたわ。私は朝緋さんに怪我がないか見てくる」
「あの人に限ってそれはないと思うが…まぁ、念の為頼む」
任せて、と短く返事をして芽吹が歩き出そうとする。かく言う俺は晴信さんにメールを飛ばす為、スマホを取り出していた。
「あら」
背後でそんな声がした。振り向くと意識を失っている様子の残党六、七人程を引き摺ってここまで来たらしい母親の姿が見えた。
「え」
「……だぁー、鍛錬の効果ですぎだっての」
そりゃ、芽吹は「え」ってなるわな。あんだけお淑やかそうだった人が今やバーサーカーにしか見えねぇもん。
そんな、バーサーカー(実の母親)は俺達を見るなり。心の底から嬉しそうに、笑顔を浮かべながらこちらに向かって飛んできた。
「良かったー!!!さっすが、ウチの息子!そして未来のお嫁さん!不測の事態にも二人で!協力して!しっかりと対処してる!これはもうやっぱり結婚しか(以下略)」
「ドナタデショウカ?」
「もー!何言ってるの、芽吹ちゃん!私だってば、朝緋!鷹月朝緋よ」
その言葉を聞いて目をシュパシュパさせながら「え」しか言わなくなってしまった芽吹、逆に目をキラキラさせながら、芽吹に抱きついてる母親。
少し頭が痛くなりそうな絵面だが、なんだかんだでいつもの日常が戻ってきた気がして安堵する。
「対応早。二人とも〜戯れあってるのも良いけど、大赦からコイツらの迎えくるらしいから。そろそろ家の方戻ろうぜ」
「OK!それじゃ、いきましょう!芽吹ちゃん!」
「あ、えちょ……た、たす」
芽吹を軽々と背中に背負いつつ、ロープで繋がれた残党七人も軽々と連れていくヤベー母親の姿を見届けつつ、俺も残党を背負い家の方へと向かった。
「あ、夕矢くん!こっちこっちー!」
「げっ」
あからさまに嫌そうな声を出してしまった。おかしいぞ、俺は春信さんに対応を頼んだはずなんだが…なんでこの人がくる?
「ふっふっふ、それはね。実は私、残党関係の事の処理を任され(押し付けられ)ている大赦職員なのです!だから、私がきた!ってわけ!」
目をキラキラさせながら、自信満々に胸を張る真野さんを見て軽く頭痛がしたがなんとか耐える。
「ねぇ、夕矢」
「どした?」
「この人ほんとに大赦の職員なの?仮面もつけてないし、何よりテンションがとても…」
「言いたいことは分かる、がこれが現実だぞ」
えぇ…と聞いたこともないような声を出す芽吹。相当真野さんのキャラに押されているようだ。まぁ、気持ちは分かる。
「兎にも角にも皆さん怪我がなさそうで良かった。朝緋様もご無事で何よりです」
「ご心配おかけしました〜少し怖かったけど、なんとかなりました〜」
「六人もノックアウトしておいてよく言う」
「久々に力が入っちゃって〜」
ぶいっ!と楽しそうにピースサイン向けてきてる母さんを見て、真野さんも呆気に取られている。キャラ強いな、俺の周りの女性達は。
「まぁ、とりあえず!ご協力ありがとうございました!後の事は、我々にお任せを!では!」
キラキラした笑顔を俺達に向け、大きめな乗用車に乗り込んでいく真野さんを見届ける。
とりあえずは、これで一件落着ってとこかな。結果的に大事な人を巻き込んでしまった。
「とんだ災難に遭わせちまったな、ごめん」
「……別に、気にしてない。そもそも私が勝手に付いてきたんだから、謝る必要ないわよ」
「けど、今回の事でアイツらがお前まで標的にしたら…」
「その時は、また『二人』でやっつけてやればいいじゃない」
「まぁ、そりゃそうだが…もしも俺が」
「ふーん、あんだけ好きだとか、近くにいるとか言っておいて。そういう大事な場面でいない事とかあるの?」
と、こちらを試す様に告げてくる芽吹。試す様でありながら、その目は俺の事を信じてくれている、そう思える程に真っ直ぐな瞳がこちらを見据える。
「いや、近くにいるさ。約束したしな、守るって」
「ま、それで良いわ。でも、守られてるばかりも嫌だから……たまには、あんたの事も守らせてよ」
「つまり…守り守られる的な?」
「ええ、まぁ…そう、ね」
「それって…もう結婚…」
「なんでそうなるのよ、ほんっと極端思考よねあんた」
「違うのか、じゃあ、なんだ…えと、相棒?」
「ま、それで良いんじゃないの。実際…その…良いコンビ、だと思うし…私達」
一瞬の静寂。すごいよな、人間って嬉しすぎると頭真っ白になるらしいぞ。実際、俺今そうだし。そんな俺の横では、顔を真っ赤にした芽吹が手をわなわなさせている。
「あ、やっ!違、今のは…そう!戦闘面において!私達は、良いコンビって意味で!」
「あ、あ、そう…だよな!なんてたって俺達、相棒だし!」
嬉しさがキャパを超え、俺もあたふたする始末。そんなよくわからん雰囲気になった俺たちの様子を……ニマニマと心の底から楽しそうに見て笑ってる母親の顔が視界に入る。
「あらあら〜」
「……んだよ、母さん」
「いや、ほんと結婚して欲しいなぁって」
「俺はいいぞ」
「私は嫌」
「頑張りましょうね、夕矢」
「勿論だ」
「つ、疲れる……(呆れ)」
そんな、もはや慣れつつある会話をしていると母さんが思い出したかのようにこちらに話を振ってくる。
「そういえば、二人はこの後どうするの?」
「まぁ、もう少し時間あるし、時間までは鍛錬してくかな。その後は電車乗って帰ろうかなって。明日も休みだが、申請は今日一日分しかしてないし」
「私も、同じですかね。夕矢と」
俺達の返答を聞くと、何故か首を傾げる母さん。なんか変なこと言ったかな、俺。
「でも、確か今日はもう電車でないと思うけど」
「「え?」」
言葉の意味が分からず、間抜けな声をほぼ同時に出す俺と芽吹(ハモッて嬉しい)。そんな中、ポタっと頭に冷たいものが落ちてくる。
「雨?」
「予報より早いわね〜…もう来たのかしら、台風」
「台風?え、でも今日はずっと晴れだって」
「最初の予報ではね。でも突然変わったらしくて、今から台風来るらしいの」
「「え?」」
ここでまたハモる二人。てことは、俺達ゴールドタワーに戻れないんじゃ…?
「うん!だからね、母さん夕矢の部屋に二人分の布団敷いておいたから!」
「あぁ、ありがとう……いやまてなんでだ?」
「だって、電車が出ないって事は帰れないって事でしょ?じゃあ、ウチに泊まっていくしかないよね!って思ったから」
「「え?」」
でも、ほら、俺ら戻らないと。だって戻らないと後で神官から何言われるか分かんねぇし。
「それなら大丈夫!私がしっかり連絡入れておいたから!神官さんからも『……分かりました。私も今はこちらを動けないので、では今回はお二人の事をよろしくお願い致します』って許可もらったし、なーんにも心配いらないからね!」
ペラペラと俺達の知らん事を喋り続ける母さん。俺も面を食らってるが、芽吹に至っては口を開けてポカンとしてる。
「ま、そんな訳なので今日はゆっくりして行ってね〜お二人さん♪」
キラキラした笑顔を向け、こちらにグッジョブしてくる母親。改めて思う、やっぱすげぇや、うちの母さん。
「…こ、ここは?」
明かりが一つもない空間で、彼は…いや、彼等は目を覚ました。状況を確認しようと動こうとするが両腕も両足も拘束具によって塞がれている為、自由に動けない。
「…何がどうなってるんだ」
「あの二人にやられて…その後、我々は」
周りから仲間達の声が聞こえる。姿は見えないが、皆無事のようだ。しかし、それだけではこの状況は好転しない。
困惑している彼等をよそに突然、一筋の明かりがつく。なんであれ周りに仲間がいる事をようやく視認できた事で安堵する彼等。
そこへ。
「目が覚めたようですね」
眉一つ動かさずこちらを見つめる黒服の女性が現れる。
「貴女は…依頼主のボディーガードをしていた」
「はい、その通りです」
「つまりは味方か、なら聞かせて欲しい。これは一体どういう状況で…」
「皆様は、ターゲットの二人にボコボコにやられていました。それはもう…ええ、コテンパンに」
ついでにとんでも無く強い女の人にも、と彼等の気も知らず呟く黒服。裏の社会に生きる残党にとって、表の世界でのうのうと生きている存在に倒されるなど、屈辱以外の何者でもなかった。
しかし、今回は失敗しようが成功しようが対価は払われると依頼主から受けていたので、何も得られないという事ではない為、彼等は安心していた。
「彼等に倒されたあなた達は、大赦に連行されたのでしたっというシナリオを『あの方』が作ってくださったお陰で……とりあえず、皆さんが連行される事は回避できた、ということですね」
「なるほど…何から何まで、感謝せざるおえんな」
「お気になさらず。そろそろ解放しようと思っていたので、皆さん目を覚ましてくれて助かりました」
そう言って一番手前にいた仲間に近づいていく黒服。状況を掴めた事で、皆の表情に安堵が生まれている。彼も安堵の表情を浮かべようとしたその瞬間。
「じゃあ、さっさとから外し」
バンッ!!!!と、空間に大きな音が響き渡った。直後、バタッという音と共に頭を撃ち抜かれた仲間の死体が転がった。
何が起きたのか分からず、空間は静寂で満たされる。その直後、また発砲音が鳴り、死体が増えた。
状況に気づいた彼等は声をあげ動こうとするも拘束具によって動きを封じられている為、何もできない。
「や、やめ…やめてぇぇ!!がっ…」
一人。
「ふ、ふざけんな!てめぇ、こんなことし」
一人。
「た、助け…お願い、た、たす…」
また、一人と。次々と仲間は脳天を撃ち抜かれ、生き絶えていった。残されたのは彼一人。
死体が、彼の横に積まれていった。
「さて、貴方で最後です。お待たせしました」
「……何故だ」
「はい?」
「何故!何故、仲間を殺した!お前の依頼主は言った!失敗しても構わないと!失敗したとしても、報酬を与えまた仲間の元に戻してくれると!なのに、なんだこれは!話が、話が違っ」
声が途切れる。理由は簡単、黒服が彼の口に向かって銃口を突きつけたからだ。声を上げられないまま顔を上げると、黒服の笑顔が視界に飛び込んでくる。
「……ええ、言いましたよ?報酬を与えると」
女は、静かに、引き金に指を掛ける。背筋に走る悪寒は止まらない。やはり信じるべきではなかった。行き詰まっていたとはいえ、こんな奴らに手を貸すなど間違いだったのだ。
「…こ、の…屑どもめ」
「黙れ、害虫風情が」
引き金が引かれると、またバンッと音が響く。動かなくなった残党の姿を見て、黒服は最後に吐き捨てるように呟いた。
「貴方達に与える対価は…宿命からの解放です、喜びなさい」
〜小ネタ解説〜
・サブタイ『俺達、相棒だろ?』
これはDisney+にて配信中のドラマ『ホークアイ』の第4話『私たち、相棒でしょ?』のサブタイトルのオマージュをさせていただきました。
・「よっしゃ、芽吹…やっつけよう」
同じくドラマ『ホークアイ』よりオマージュ。第6話『クリスマスがやってきた!』において、話の中盤辺りでクリントがケイトに向かって言った台詞のオマージュ。大勢のギャング相手に、弓を使い鮮やかに戦う二人の姿は必見中の必見!また、戦う前の二人の様子も中々良き良きで、ホークアイ好きの自分としてはもうめちゃくちゃ(以下略)
・背後で起きあがろうとした残党に向かってノールックで〜
このシーンは上記と同じくドラマ『ホークアイ』第6話『クリスマスがやってきた!』でのワンシーンより引用。ちなみに本編でクリントがノールックした際に使ったのは捕縛矢ではなく爆発矢。
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小ネタを入れるのが楽しいことこの上ない…毎度投稿が遅くなっていますが、仕事に負けずゆったり投稿していこうと思うので、これからも何卒!
いつもそうなんだけどさ、夕矢と芽吹の絡み書くとね。必ず惚気というかイチャイチャに発展するわ筆とまらないわで大変なんだよね()。ん?朝緋さんの強さについて説明をって?いやだって朝緋さんだし…