「こんな時間に…誰よ」
夜7時頃、私楠芽吹は自室にてプラモ作りに励んでいた。趣味に没頭していると、インターフォンの呼び出しを受ける。
「はい、今行くから少し待ってて」
(全く、せっかくのプラモ作りの時間を…)
胸の内でぶつぶつと呟きながら、入口へと近づいていく。ドアを開けると、そこには夕矢がいた。
「夕矢?どうしたのよ、こんな時間に」
「お、おう、悪いな芽吹。今時間あるか?」
「別に、ないわけじゃないけど。私のプラモ作りを邪魔するのに十分たりえる用なんでしょうね?」
私の言葉にギクッという、擬音が聞こえそうなほど体を震わせる夕矢。
「お前にしか頼めないから、たりうる用ではあるんだが…」
「随分、よそよそしいわね。はぁ……で、結局何のようなの?さっさと言いなさい。別に怒ったりしないから」
夕矢は謎の深呼吸をしてから、私の目を真っ直ぐみて言った。
「背中に手が届かないから、湿布を貼って欲しいんだ(キリッ)」
「……はっ?」
あまりにも普通すぎる用事に、自分でも驚くくらいの間抜けな声が出た。
「たかだか、湿布を貼って欲しいくらいであんなによそよそしくするんじゃないわよ。紛らわしい」
「だってよ……芽吹の楽しみを邪魔したら悪ぃって思ったから」
溜め息を吐く。あんなに溜めるものだから何かと思った。それに、私にしか頼めないとか意味深なことも言うから。
「にしても、湿布ってあんた……寝れば治るでしょうに」
「辛辣だな……俺結構湿布には世話んなってんだぜ?昔っから、鍛錬ばっかりしてたからさ、どーにも体が……そういう、芽吹は使わねぇのか?」
「さっき言った通り、しっかり寝れば大概治るわ。あんたの場合、夜中まで筋トレとかしてるから治らないのよ。全く」
「図星だ…」っと呟く夕矢。こいつの場合、疲れがとれないのではなく。疲れをとらないだけなのだ。
「今まで、どうしてたのよ?貼るのは」
「ああ。家にいた時は、母さんにずっと頼んでたよ。だけど、防人になってからは部屋に一人になっちまったからなぁ。我慢してたんだが……ついに限界が来たらしくてよ、自分で付けようとしたんだ……そしたら」
「上手くいかなかった……てわけね?」
「そういうこと。流石、芽吹、鋭いな」
「何にも鋭どかないでしょ」
私の返答に夕矢はへへっと笑った。なんて、楽しそうに笑うんだ、こいつは。私と話すのが本当に楽しいと言うかのように笑いかけてくる。
「プラモ作りの時間をこれ以上取るのも悪いしな。そんじゃ、早速頼む」
「ええっ……って!ちょ、あ、あんた!何いきなり脱いで!?」
「んっ?そりゃ、貼ってもらう為だが…ダメだったか?」
「……はぁ」
少しはこちらの気持ちを察して欲しい。そりゃ、いきなり男が上半身裸になればビビリもするだろう。せめて、前置きとかは言って欲しい。
「な、なんか、すまん」
「別に、いいわよ。そんなことより、ほら背中こっち向けて」
「おうよ、頼む」
夕矢が着直した上着をもう一度脱ぐと鍛え上げられ、引き締まった背中が顕になる、こいつが筋トレを趣味としているのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
(男の人の背中って、こんなに広いんだ…)
「芽吹?どした?」
「……なんでもない、湿布貸して。貼るから」
「あんがとな、なんか、悪いな。湿布もつけてもらえて芽吹と夫婦みたいなやり取りもして、俺ばっか得してよ」
「誰と誰が夫婦よ、誰と誰が」
夕矢のいつも通りの発言を受け流しつつ、指示された通りに湿布を貼っていく。夕矢の背中には、それなりに傷があった。
「傷、多いわね」
「まぁな、昔の傷だ」
「昔?」
「親父との鍛錬でついたのが主だな。ま、これも全部お前を守る為の力を得る為についた…勲章みたいなもんだ。きにすんな」
「別に、気にしてないけど」
「……そうですか(泣)」
よくもまぁ、そんな事を真顔で言えるものだと呆れを通り越して感心する。湿布を、貼りながら顔を俯かせる。妙に胸の辺りが熱い気がした。
(いつも、私の近くにいてくれた)
背中に優しく触れる。私がどんなに、適当にあしらったり受け流しても。ずっと、俺はここにいると側にいてくれる馬鹿な幼馴染み。
(私を、引っ張っていってくれる背中。私だけの……)
「…芽吹?触ってもらえるのは嬉しいが、少しくすぐったいぞ?」
「あ、ご、ごめん。それより、もう貼れたから服着ていいわよ」
「おう、ありがとな」
何を考えているんだ、私は。これじゃまるで、私が夕矢の事を___________。
「すまん、邪魔した」
「本当よ、全く私のプラモ作りの時間を…」
「わ、悪かったって!今度は事前に連絡するから!」
まぁ、だろうとは思っていた。単純に私以外に頼める相手がいないのだ。なんだかんだで小さい頃から、一緒にいた事もあって抵抗も…そこまであった訳じゃないから別にいいが。
「今度があるの?」
「芽吹以外に頼めないしな。何より、俺が背中を無防備に晒すのは大好きな芽吹の前だけだ」
「なにいってんの?あんた」
「……自分でもなにいってんのか、わかんね」
お互いに顔を見合わせ、苦笑する。夕矢を避けながら、ドアを開けようとすると。
「急にどうした、芽吹!?もしかして、別れのハグか!?しょうがないな、湿布を貼ってくれたお礼として、熱いハグを…」
「ハグじゃないわよ、ドア開けてんの。ほら、早く行きなさい」
「はい……そんじゃ、また明日な、芽吹。おやすみ」
「うん、おやすみ。夕矢」
扉を閉め、夕矢と別れる。扉に背を預けながら、そのまま腰を下ろした。
「ふふ……」
笑みが溢れる、何に対して溢れた笑みなのかは分からない。
『俺が背中を無防備に晒すのは大好きな芽吹の前だけだ』
「意味わかんないけど、何でかしら。ちょっと嬉しい」
扉の前で、膝を抱えながら私はボソッと呟く。先ほどまで、触れていた背中の感触と温度を思い出し、私の胸はまた熱くなった。
小ネタ解説!?実はあるんです!
「急にどうした、芽吹!?もしかして、別れのハグか!?しょうがないな、湿布を貼ってくれたお礼として、熱いハグを…」
「ハグじゃないわよ、ドア開けてんの。ほら、早く行きなさい」
ここのやり取り、これは『スパイダーマン:ホームカミング』にて、トニー・スターク/アイアンマンがピーター・パーカー/スパイダーマンを家に送り届けた際に、車内でトニーがドア開けようとしたのをピーターがハグと勘違いしたシーンより、引用。ちなみにこのシーン、エンドゲームまで覚えておくと、いろんな意味で超泣ける。
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イチャイチャメブゥ書いてるの楽しい!!!(脳汁溶けてる)
でも、本編も進めなきゃ()