この〇〇のない世界で   作:ぱちぱち

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とりあえずどこまでしていいか考えてました。
遅れてごめんなさい。

4.27 細かく修正してます。最後の人分かりづらそうだったので答え入れました。
感想返しが間に合わないので先に外務省の欄直しときます。教えてくれてありがとうございます、完全に日本の省庁で考えてしまってたw

誤字修正。北の大地よさん、五武蓮さん、山田治朗さん、仔犬さん、kuzuchi様、所長様、アンヘル☆様ありがとうございます!


追記
前回の加害者:H.P.ラブクラフト。自身に迫りくる何かを探知し逆撃。現実への干渉手段を奪い去った。


この仁義なき世界で

「強い娘だと思う。俺は母から沢山の愛情を注いでもらったが、あの娘はそうじゃない」

「こんなに小さな頃からあの娘は一人で、しかも曲らずに生きてきたんだ。これは凄い事だよ」

「まぁ、今回は運悪くご同輩になっちまったが。日本の臭い飯は美味かったか、今度会ったら尋ねるんだ」

「ああ。勿論心配なんてしてないさ。きっとすぐに戻ってくるよ。『ハーイ、マイキー』ってね」

 

~クロイ・タクミ銃撃事件についてのインタビューにて マイキー・バイソン~

 

 

 

ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)とある隊員の視点

 

 タクミが飛行機の中へ入っていく。最後の瞬間まであの子は俺達に手を振ってくれた。

 ガラス張りの空港ロビーからあの子が乗った飛行機を見送りながら、右肩を赤く塗った連中が歓声を上げる。ここに居る人間はタクミのファンクラブでも最も行動的なメンバーで、あの子の書いた挿絵から取って『ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)』と呼ばれている者たちだ。

 

 最高に最低な連中で、この見送りの為だけに仕事をサボって3日かけてNYに来たという奴も居た。恐らく地元に戻れば首だろうと嘆いている奴に周りの人間が「しょうがないさ」と声をかける。もし首になっていたらウチに来いよと声をかける奴も居る。ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)に差は存在しない。等しく皆最低だ。

 

 長旅をしてきた連中には宿を取れなかった奴も居る。そんな奴にはロサンゼルスに住んでいる赤肩の仲間が自宅を開放して、タクミの見送りに相応しい恰好に整えさせたらしい。俺はちゃんと休暇を取り、ホテルも予約してあったからそちらには合流しなかったが、合流した後に連中は夜中までボトムズの歌を流して盛り上がっていたらしい。それを聞いた時は正直に羨ましいと思った。

 

 勿論見送りに体調不良で顔色を悪くしてタクミに心配をさせるような馬鹿は居なかった。そんな奴はボトムズ親衛隊(レッドショルダー)には参加出来ないからな。ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)には健康的な体力とタクミとボトムズメンバーに対する忠誠心がまず求められる。

 

 当然この場に居る500名は全員がボトムズ親衛隊(レッドショルダー)であり、各州支部から抽選で選ばれた見送り要員になる。全国数万人の中から選ばれた500名だ。生涯自慢できるだろう。

 

「よぉ、ジョン。見たか」

 

 ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)同期入隊者のケヴィンが涙を流しながら声をかけてきた。何を見たか、なんて聞くまでもない。俺達のタクミをちゃんと見れたかの確認だ。勿論だと返すと彼は俺に抱き着いてきた。俺もまた彼を抱き返す。1年前なら男に抱きしめられればその瞬間銃を引き抜いただろう。だが、ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)で銃を持っている奴は居ない。何故ならば銃を持っている奴は己の拳に自信を持てない臆病者だからだ。

 

 そして、涙する同胞に向ける物は拳ではない。抱擁と、友情だ。

 

 

 最高の気持ちで俺達は空港を後にし、近くの小さなステージが設置された公園に集まった。楽器を持ってきていた赤肩の仲間が下手くそな演奏でボトムズの名曲を流し始めると、俺達は酒も入っていないのに大きな声で歌った。隣に座る名前も知らないボトムズ親衛隊(レッドショルダー)の仲間は、今日この日から兄弟になった。ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)は最高だ。ライブの度に俺達は兄弟が増えていく。そして、そんな俺達の可愛い妹で……娘でもあるタクミは、最高に最高だ。

 

 幸せな気分で俺達はそのまま夜を明かし……騒ぎを聞きつけた近隣の住民たちを巻き込んで一夜のバカ騒ぎを終えた俺達の元に、顔面を蒼白にしたボトムズ親衛隊(レッドショルダー)の仲間が駆け込んできた時、その幸せは終わりを告げた。

 

 『タクミ 重体』と書かれたその文面を見た時。俺達は天国が落ちて来たのを感じたんだ。

 

 

 

「いや撃たれちゃないけどさ」

「……どうしたい、お嬢」

 

 とある病院の最上階の一室。ロイヤルスイートもかくやと言わんばかりの豪奢な部屋の中で、もぐもぐと銀さんが剥いてくれたリンゴを食べながらいんやーと首を振る。多分どっかで噂されたんだろう。変な言葉呟いちまったぜい、

 

「あと、銀さん。私、元気。リンゴ、自分で剥ける」

「一応患者だ。大人しくしときな」

「そんなー」

 

 文句を言う為に口を開くと銀さんからひょい、とリンゴを口に放り込まれた。銀さん前から思ってたけどこう、小刀の使い方上手い……上手過ぎない?

 あっという間に剥き終わったし何より殆ど皮に実がついてない。これは使い慣れてますねぇ。

 

「まぁ、商売道具の延長線みたいなもんだからな」

「ふーん。極道さんも大変なのね」

「………ああ。そうだな……」

 

 銀さんが苦い表情を浮かべている。色々、思う所はあるんだろうな……まぁ手ぇ抜く気はないんだけど。幸いな事に銀さんの親は本当に昔堅気な親分さんらしく、そちらに被害が行くことは無さそうなんでこちらとしては安心している。銀さんに迷惑かける気はないんでね、私も。

 

 その上? それこそ知らんわ。銀さんと銀さんの上位までは気を使ってやっても良いがはっきり言って奴っこさんらはやりすぎた。私を的にして脱税の容疑をかけたくらいまでならこっちもね。矛をすっと収める位は出来たんだよ。

 

 でもね……銃撃してきたら戦争しかないでしょう。しかも私たちはあの時検察の車、つまり公用車に乗っていた。これに銃弾ぶち込んだって事は御上に面と向かって泥団子を投げつけたに等しいんだからな。しかも公衆の面前で。

 

 いくら上の方である程度の利益のやり取りがあるからって限度って物があるんだ。仮にこれなぁなぁで済ませたらもう警察も検察も面目丸つぶれ。全力で相手を潰さなければ上層部どころか中層位まで粛清の嵐だぜ!

 

「そういえばクロちゃんは?」

「弁護士をつれて元の会社に行った。検察の腕っこきが側についてる」

「包帯巻いてよくやるねぇ」

 

 一応庇ったとはいえガラス片をもろに被ったせいで結構切り傷が出来てたしね。病院に駆け込んだ時にきっちり処置をしてもらったから問題はないと思うけど、余り無理はしてほしくない。

 

 ん? 庇った私はどうなったかってそりゃ無傷だよ。服は結構破れて応援に来た警官たちにせくしーしょっとを拝ませちまったがな。失敗したな、カメラ用意しとけば写真集か何かを作る時に使えたのに。もう一回やるって言ったら流石に銀さんとパッパをマジオコさせちまいそうだから自重しとくか。

 

 世間では私が大怪我を負って入院したという形で報道されているがこいつはデマだ。入院しているのは本当だがどっちかというと追及というか、検察側の手勢に囲まれて病院の奥に保護されてるってのが正しい状況だな。

 

 今回の騒動、私は検察側……つまり国側と組むことが決まった。大恥をかいた上に手袋を投げつけられた検察は上層部内でのお掃除で忙しく、まだ動く事が出来ない。そうなるとこちら側も待機状態になってしまうので怪我をしたパッパの件もあるからそのまま検察と関係の深い病院に匿われる事になった訳だ。

 

 銀さんは保護者枠ね。本来の保護者も一緒に入院したことになってるからさ、その世話役として身近な人を一人って名目で銀さんには護衛代わりにこの病院に泊まり込んでもらっている。下手に外に置いていたら銀さんまで的にされかねない状況だしね。的にされても殆ど倒しちゃうだろうけど。

 

 実際に高木さんは証拠隠滅の為とはいえ一度襲撃をされて、銀さんは一度それを邪魔してる。あちらさんからすれば銀さんを襲う理由は十分にあるわけだし、一々豚の前に餌をぶら下げてやる義理もない。このまま検察の態勢が整えば養豚場行きになるのだから、このまま静かにまったりと休暇を楽しむとしよう。終わったらライブやら何やら大忙しだしね。

 

 

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 

『やぁ、タクミ。会えて本当に嬉しい……本当に。無事でよかった』

『あ、ども』

『私はダズウェル・マグダウェル中将……えぇと、そう。在日米軍の司令官だ。君の保護は我々米軍がしっかりと行うから安心してほしい』

 

 白目を向きながら返答する私にダズウェル中将さんは苦笑を浮かべて頭を撫でる。

 

『ええと……ダズウェル中将、その。後ろのご老人は……』

『ああ、気にしないでいいよ。もうすぐ仕事を失う人物だ……君が覚えて置く事は無いだろう』

 

 私は震える手で彼の背後で直立不動の体勢のまま立つ老人を指さすが、中将はそちらをチラリと見て「ああ……」と興味もなさそうに一つ頷いてそう答えた。その人、内閣総……アカン。見なかったことにしよう。

 

 中将はそっと目をそらした私を手でソファに座るように促してくる。その指示に従ってソファに腰を下ろすと、中将は笑顔を浮かべてテーブルの上のお茶を私の手近な所に持ってきてくれた。

 

 ソファには先に背広を着た一人の男性が座っていた。仕事が出来そうな……パッパを後10年位年を取らせて髪を金髪にしたらこんな感じかな? という印象を与えてくる男性。その隣に腰を下ろした中将にも余り気を使った様子はないし、多分相当偉い人かな。

 

『初めましてタクミ・クロイさん。私はリッキー・ロスアダルト。駐日米国大使……日本に住んでいる米国人の代表、と言った方が良いかな』

『あ、はい。初めまして、タクミ・クロイです』

『無事でよかった。今はこの神の采配に感謝をするだけです……本当によかった』

 

 キツめな印象とは裏腹に柔らかな対応の男性だ。最後の部分だけやけに低かったけどもしかしたら私のファンなのかしらん。モテる女は辛いぜ。

 しかしそうか、外部には私は銃撃事件後にそのまま病院に担ぎ込まれた事になってるから安否が分からない状態なんだな。デマが流れたきりだしね。あれから3日経ってるけどこれやべぇな、ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)の連中が海渡ってきてるんじゃないか?

 

 あいつら現地の清掃活動とか言って現地のマフィアとか肉体のみで制圧して「ライブ会場の掃除をしたよ! タクミ!」って満面の笑みで報告入れてくる連中だからな。流石に日本でんな真似されたらボトムズ親衛隊(レッドショルダー)vs893の仁義なき戦いが始まっちまうので、来るなよ! 振りじゃねーぞって事前にボトムズ親衛隊(レッドショルダー)のトップのMs.Mって人には文章で連絡入れといたんだけど。

 

 来てるかなぁこれ。向こうの事務所には一応安全を確保したって連絡は入れたけど。ちょっと確認しといた方が良いかもしれないね。うん? 保護だけじゃなくて他に話がある? 何々……めいよしみん?

 

 

 【速報】黒井タクミ、米国名誉市民になりました

 

 予想外にもほどがある所から飛んできた話に今白目剥いてるよ。アメリカに戻ったら大統領の白い家で表彰式と永住権付きのグリーンカード貰えるらしい。パッパも勿論グリーンカード持ちだぜ!

 

 うん、あれだな。米国の方でそろそろ暴動が起きそうらしいんだな。私が撃たれた日、つまり来日した次の日の朝刊では私が緊急逮捕されてそのまま病院に搬送されたという記事が載ったらしい。間を端折りすぎてるけどそういえば同じ日にちだしな。そう見えるか、記者さん達には。しかも緊急搬送されてからは事情がアレ過ぎて国の恥なんてレベルじゃないので関係者に箝口令付きで連絡を取る位しかできず、外に対しては一切音沙汰無し。

 

 成程、暴動起きるわ。多分ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)の連中だろうな……募集要項に忠誠心ってデカデカ書いてる連中だからな。急いでMs.Mに連絡を取って沈静化して貰わねぇと……ホワイトハウスの前に肩を赤くした集団が列をなしてやってくる事になるからな。ボトムズ親衛隊(レッドショルダー)のテーマが鉄と銃弾のララバイになっちまう。

 

 まぁ、そんな事は超絶優秀なホワイトハウス勤めの国家公務員の方々にもわかり切ってる事だったらしく、即日ホワイトハウスはこの件についての調査とタクミ・クロイの米国名誉市民への決定(内定すら飛び越したらしい)及び米国市民の保護を名目にした全力介入まで宣言。普通なら国務省が止めるべきだろそこは頑張れよって思ったけど国務省にもボトムズ親衛隊(レッドショルダー)所属の人間が居たらしい。あっという間に日本に対して最後通牒まで突き付けて在日米軍が臨戦態勢をとる事態になったそうだ。

 

 ここまで聞いてお前らアホじゃね? て思った人が居たら君は正常だ。こいつら頭おかしい。私はそこそこの人気があるとはいえあくまでも一般人の歌手でまかり間違っても第二次日米戦争の引き金なんかじゃない。あっさりボコれるから問題ない? 違うそういう話じゃない。

 

 どこの誰が戦争の引き金を引いた女なんて名前を喜ぶというのか。ラブ&ピースで行こうぜ?

 

 

 

「勿論、私に銃弾撃ち込んできた奴にゃ遠慮なんてしないけどね」

 

 ギィッ、と高そうな椅子に座って私はテーブルの上に組んだ足を乗せる。ボロボロの室内は至る所に銃痕のような小さな穴が開いており、住み心地を犠牲にしてどこまで芸術性を示せるのかに挑戦している。前衛芸術って奴だろ、私は詳しいんだ。

 

『ここが賠償代わりの建物? やたらとボロっちいんだけど大丈夫?』

『ご安心を。土地だけ取り上げて残りは建て直す予定です。ちゃんとお祓いはしておきますよ』

『全然大丈夫じゃありませんね』

 

 御付きとして付けてもらった大尉さんのアメリカンジョークが笑えない。いや、今のはこの人のセンスが悪いだけか? お祓いなんて言葉知ってるから教養はある人みたいなんだがね。

 

 893vs警察&検察&自衛隊&在日米軍という異種格闘技戦を最前列で見させてもらってるんで文句は言わんが、もう少し血の気の少ない人をお付きにしてもらいたかった……あ、あんたボトムズ親衛隊(レッドショルダー)なんだ。今度のライブ本当に心の底から楽しみにしていたから血祭りにするのが楽しみ……うん、わかった。最前列に呼んじゃるからそう気を立てるなって。中止になったわけじゃないからさ。

 

 在日米軍が発動させた『operation:SUKIYAKI』は現地治安維持組織である警察や検察、また自衛隊の支援を受けて滞りなく発動された。

 

 まず初日に発端となった都内の暴力団事務所に在日米軍の装甲車が突っ込み、パニック状態の暴力団員達を麻酔銃で鴨撃ちして拘束。関係者に対する情報を得ると日米合わせた数万人規模の作戦従事者が手分けして都内の清掃を開始した。

 

 暴力団側も無抵抗な訳ではない。警察等の上層部にも根を伸ばしていた連中は事前に準備を整え、何名かの暴力団幹部の自宅はもぬけの殻になっていたらしいが、各地の空港や港にはすでに検問を張ってあるらしく蟻も逃がさないレベルらしい。

 

 当然バンバン拘束されていき、また仮に抜け出している奴が居てもそいつらの口座もカードも全て使用不可。

 

 小狡い奴が別名義の口座でいくらか資金を持っているかもしれないが、各地の交番から交通機関には実名と写真付きで逃亡犯の情報がばらまかれており、しかも情報に応じて懸賞金までついている。

 

 また、こいつらを庇いそうな組織……地方の暴力団関係にも捜査の手は伸びており、協力的ではない連中は軒並み警察と自衛隊のコラボレーションアタックを食らう羽目になっている。余波で8割位暴力団関係消えるんじゃないだろうか。

 

「何でこんな流れになったのかを教えてくれないか」

「………ファッキンゴッドって叫べば気が楽になるよ」

「そうか。ファッキンゴッド! ファッキンゴッド! ファアアアアァァック!」

 

 ロックの魂に目覚めたパッパの叫びが廃墟となった暴力団の事務所に木霊する。この土地は今度設立予定のパッパの会社の建設予定地だ。都内の一等地にあるから丁度いい賠償金替わりとして国側から打診があり、渋るパッパを押し切る形で私が打診を受けておいた。撃たれ損になるのは嫌だったからね。

 

 今回の騒動でパッパは高木さんや一部先見の明のある、パッパも認める人材達によって会社を離れて新会社を設立するらしい。今までの会社は『無くなってしまった』ので権利関係が宙に浮いた為、アメリカの支社を仮という形で独立起業させてそちらにこれまでの権利を全て回収。整理を行い、最終的には新しく建て替えた本社ビルに本社を移す予定である。

 

 当然アメリカ支社は残務処理で大変なことになる為、現在アメリカで抱えているミュージシャンたちは私の会社で一時的に面倒を見て、準備が整ったらパッパの会社……961プロダクションに籍を移す。私の会社はあくまでも私の財産管理の為に作った会社だ。ちゃんとしたプロデュースを行う会社に居た方が皆の為にもなるしね。

 

 

「しかし……折角日本に戻って来たのに何も出来なかったのは残念かな」

「ははは。こっちはお嬢……タクミの姿がまた見れて嬉しいがねぇ」

 

 暴力団事務所を出て車の中に戻る。今日はこのまま銀さんの管理している屋台村に顔を出す事になっている。私が芸を見せて居た時、指定席になっていた一番奥の広場はまだ開いているそうだ。その話を聞くと、まだ2年もたっていない筈なのになんだか懐かしくなってくる。

 

 そう、当時一番奥だけが開いていたので、銀さんに頼んでここで演奏やら蛇使いやらやってたんだよ。後半になると私の芸を見たくて来る連中が増えて、途中の屋台で飲み物やら食べ物を買っていってくれたから全体の売り上げに貢献してたって事で残り物を貰ったりしてたんだ。

 

「ほんとはもっと早く来たかったんだけどね」

「仕方ないさ……大人が悪ぃんだ。タクミ、気にするなよ」

 

 ガシガシと銀さんは私の頭を撫でてそう言った。でもね銀さん。私としてはこの1月で日本での足場を作ろうと思っていたんだ。その目論見がまさかのまさか足場予定の会社を叩き潰して新しく作る羽目になり潰えるなんてさ……残念通り越して脱力したわ。本来の目的であるライブの方でも全国5カ所を回る以上これ以上時間を使うことも出来ないし……パッパの会社が出来たらそこを基準にゆっくり進めるしかないかね……

 

「まぁ、もう気にしないよ。切り替えていかないとね」

「おう、その意気だ」

 

 またガシガシと頭を撫でられる。ちょ、せっかくジェニファーさんがセットしてくれたんだからあんまり崩さないでくれよ。私の髪、反抗期なせいでちょっと刺激を与えるとすぐにポンポン跳ねちまうんだから。直毛と言えば聞こえは良いけど一部重力に負けない奴が居るせいでほっといたら孫悟空みたいになっちまうんだから。

 

「おい、後ろで騒ぐな。もう目的地だぞ」

「あ、クロちゃんありがと。クロちゃんも寄ってく?」

「車止めてたら10円で傷だらけにされちまうからな。松崎の家に戻っておく」

「ああ。車庫は開いてるから使ってくれ」

 

 10円パンチ懐かしいなおい私もよくやっげふんげふん。銀さんがパッパに家の鍵を渡すと、パッパはこちらに目を向けて「くれぐれも変な事をしないように」と念押しして車を発進させた。信用無いなぁ。私割と自分から何か変な事はしてない筈なんだけど。

 

「お嬢は危なっかしいからなぁ、心配にもなるさ」

「そうかな?」

「そうさ」

 

 懐かしの屋台村に入ると、周りのおっちゃん達がどよめきのような声を上げている。あ、こら危ねぇぞ鉄板で手を焼くなよ?

 

「はぁ、なっつかしい」

「おお、そうだな。何か食べていくか」

「じゃあ、イカ焼き!」

 

 おっちゃん達に片手をあげて挨拶を交わす。ここに来たら、日本に戻ったって印象がするなぁ。やっぱり今生の私の原風景は、生まれた家でもアメリカでもなく、ここなんだろう。

 

 銀さんに買ってもらったイカ焼きを頬張りながら奥の方へ行く。私がいつも芸をしていた広場は相変わらず奥まったところに会って、小さなお立ち台だけがポツン、と置かれていた。商売道具のマムシなんかも保健所に渡しちゃったしもうここには大道芸用の機材もない。

 

 懐かしい記憶にお立ち台の上に登ってみる。子供の足でも登れる程度の段差は大したものじゃないが、ここに登ると自分の意識が切り替わるのを感じる。すっかり忘れていた感覚だった。

 

「ねぇ」

「ん?」

 

 そんな私に声をかけるやたらと幼い声がする。なんぞと思ってみて見れば、私より何歳か年下位のやたらと目力のある女の子がこちらを見ていた。果て、知り合いにこんな子は居た覚えがないが。首をかしげていると、少女はテクテクと歩いてきて私を指さした。

 

「あんた、くろいたくみでしょう?」

「そだけどあんたは?」

 

 怪訝そうな顔を浮かべる私に、幼女は不敵な笑み浮かべて腕を組んだ。

 

「あたし、ひだかまい! あんたにしょうぶをいどみにきたわ!」

「……は?」

 

 馬鹿面をさらした私にマイと名乗った幼女はふふん、とやたらと自信に満ちた顔でこちらを見る。

 

 

 この出会いがまさか数十年にも及ぶ腐れ縁の始まりになるとは、私も、そして日高舞にも分かる筈もなく。

 

「さぁしょうぶよ!」

「え、やだ」

 

 屋台が照らす小さなステージで、一つの物語が誰にも知られることなく始まりを告げたのだった。




これアイマスじゃなくてブラクラじゃ……なんて言葉とも今回でおさらばですね。
あ、ツイッター始めました。@patipati321


ボトムズ親衛隊(レッドショルダー):又の名を非公式精鋭部隊。参加条件は二つ。屈強な肉体と忠誠心。両方を兼ね備えた精鋭のみが所属を許されている。現在規模拡大中。

鉄と銃弾のララバイ:『鉄のララバイ』は名曲。異論は認めない。

米軍:米軍の高級士官は殆ど政治家みたいなもんです。というか普通の軍隊の高級士官は大体名士扱いになります。自衛隊が例外すぎるんやで()

全権大使:滞在する国に対する国の代表。ようは殆どこいつが言った言葉はそいつの所属する国が言った言葉って事です。つまり今回のあれやこれやは全部白い家からゴーサイン出てます。

ひだかまい:一文字で鬼、二文字で悪魔、三文字で日高舞。アイマス公式で最強だった(今もという声もある)って設定があるラスボス。娘の年齢から逆算して現在8歳。




クソ女神さまの反省日記

クソ女神
「なんかこないだから体が上手く動かない……しょうがないから夢に現れる形で声を掛けよう。あ、丁度いい所に強い魂の持ち主が……フランス語が分からないのにフランス語の学科に? 
出来ないことをやるのはいけないわ! 自分が得意な分野を伸ばさないと!」

クソ女神
「自分が得意な分野でもあっという間に大学辞めて都会に出ちゃった……しかも女中と自殺未遂……自分だけ生き残って……」

タクミ
「人間失格さんの人格矯正出来たら凄いわ。勲章物じゃね?」
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