今回は大きく話が進むわけではない為幕間となりました。
前回がむしろ大きく進みすぎげふんげふん。次回の布石等も敷いてみましたのでお楽しみ頂ければ幸いです(目そらし)
誤字修正、ゴールドアーム様、竜人機様、sk005499様ありがとうございます!
「“マイケル”は……姉はいつもあの娘の事を見ていたの。多分家族の私たちよりも彼女の事の方が詳しいんじゃないかしら」
「ある時私は言ったわ。『お姉ちゃんのほうがあんな娘よりももっと凄く歌えるし、かっこよく踊れるし、何よりヤバいわ!』って。大好きな姉がいつもあの娘の事ばっかり話すから、ちょっと妬ましかったの」
「するとね。姉は少しだけ目を丸くした後に笑ってこう言ったの。『タクミがヤバいのは、そんな所じゃないのよ可愛いアネット』」
「『あの娘が本当に凄いのは、歌えるからとか踊れるからとかそんな事じゃないの。もちろん、それらも全部あの娘の魅力だけど』ってね」
「姉は私との話でインスピレーションがわいたからと作曲に入ってしまって、暫く忙しくて結局それがなんなのか教えてくれなかったわ。でも、今なら姉が言いたかったことが私にもなんとなく分かる」
「【
~アネット・ジャクソン とある雑誌社からのインタビューにて~
ニューヨークはタクミのホームタウンだ。これはボトムズのファンだけでなく一般の音楽ファンにとっても周知の事実である。彼女を世に出したボビー・ブラウニーと彼女が出会った場所でもあるし、タクミとジェニファー・ヤングが出会った場所でもあるし、タクミストリートというそのものずばりの新名所まで存在する。それに何より【
そして、そんな街だからこそその建物は存在する。
『よぅ、キング。例の映画は順調かい』
マンハッタンの中心、セントラルパークを見下ろす形で存在するその超高層ビルディングの中ほど。とある会社のオフィスとして十階ほどが使用されている。その内の1階層は社主の意向により丸々が関係者用のフリースペースとなっている。
『ブルースさん! レコーディングは終わったんですか?』
エレベーターを降りるとすぐに広がっている大きなフロアには各所にテーブルとイス、そして見やすい位置に置かれたTVとスピーカーがあり、世界中で新しく世に出たホットな音楽やMVを再生し続けている。
『勿論さ。何せ今回は我らがプリンセスからの楽曲提供があったからな。まぁ、今回はうちの悪ガキどもの分だったんだが』
大きなフロアから更に奥へと進むと社員や関係者なら誰でも使用可能な食堂とシャワールーム、仮眠室、そしてレコーディングスタジオといった施設が存在する。ふっと頭に浮かんだ音は僅かな間に逃げて行ってしまう事がある。それを防ぐため、いつどんなタイミングでもレコーディングに入ることが出来るように設備が整えられている。
『ジョン達も遂にデビューかぁ。私も負けてられないわ』
そんなフロアの一室。最も奥まった場所にあるそこは、特に定められているわけではないが『とあるアーティスト』が良く利用するため、ある種の聖域として扱われている。
『焦りは禁物よ、アネット。貴女もあと少し頑張ればきっとデビュー出来るわ』
その“玉座”という名がつけられた部屋の中。お気に入りの椅子に座った
『ハイ、ブルース。順調と言えば順調ね。アネットのお陰で良いインスピレーションが沸いてきたわ。音が胸の奥から溢れて、頭に向かって雪崩れ込んでくるみたい』
『そいつは景気の良い話だ。ツアーに出た子猫ちゃんといい、同期連中はどいつもこいつも飛ばしてくるからおっさんも気が抜けねぇよ』
『本人に聞かれたらまた怒られるわよ』
ブルースと呼ばれた男の物言いに苦笑気味に答えながら、彼女は彼に視線を向ける。スター揃いのこの会社の中でも、“キング”と並び称される
『その時はプリンセスに学んだジャパニーズDOGEZAの出番さ。所で、もっと景気が良くなるパンチの効いたカンフル剤を持ってきたんだが……入り用かな?』
『マイキー・バイソン並のパンチ力?』
『勿論。保証書もいるかい?』
自身に視線が向いた事を確認したブルースは、おどける様にそう言うと手持ちのカバンから折りたたまれたニュースペーパーを取り出した。そんな彼の仕草に妹と共に笑顔を浮かべたキングは、受け取ったニュースペーパーに何気なく目を落とし、そして掲載されていたとある写真に大きく破顔する事になる。
彼女が目を通したニュースペーパーの一面。そこにはでかでかと彼女たちが所属する会社の主……黒井タクミが舌を出し、両手中指を天に突き立てている姿が映し出されていた。
「抗議の電話が鳴り止まないんだが」
「ちゃうねん(震え声)」
いや、こうさ。ついテンションが振り切れちまってね。高ぶる感情を表現しようとしたらドヤ顔ダブル○ァッキューが自然と形作られていたんだよね。まさかこんなドアップで撮られてるとは見抜けなかった。この黒井タクミの目をもってしても。
まさか全世界にドヤ顔晒される事になるとはなぁ。正気に返った後は冷や汗出たわ。
「こっちは冷や汗どころじゃないぞ」
「ごめんて」
苦虫を噛み潰しまくって薬にして飲んだのでは、という顔色のパッパにぺこりと頭を下げる。今回の件は流石に自身の過失だからな。場の空気に飲まれるなんて失態やらかしたらもう平謝りしかできん。
いや、前回の仕事は、というかパッパの依頼自体は問題なく達成できたんだ。問題になってるのはその後というか、ちょっとやりすぎたというか。ついついいつものライブのノリでテンション上げまくってたせいでその後のインタビューとかも全部【アイドル:黒井タクミ】じゃなく【ロッカー:タクミ】で受けちゃってさ。めっちゃ煽りまくって日本TV界めたくそにこき下げちまったんだよ。
Q:つまり?
A:控えめに言って阿鼻叫喚だよね!
「まぁ……当初の予定は達成できた。ちょっと、いや。大分やりすぎた感じがするが」
「流石にあの惨状じゃ包囲網もくそもないかー」
「それどころか美城は存続の危機。日ノ本テレビも株価急落で焼けダルマだ。誰がここまでやれと」
「いや、流石にそこは不可抗力だから」
おっとまたお小言モードに突入しそうだったから少し水を入れさせてもらうぜ! 実際あそこまで一気に崩れてるのは私のせいじゃなくて向こうの問題だからね。
そもそも今回の包囲網ってのが色々無理があったんだよ。今現在961プロが一強みたいな状態になってるのは、どちらかというと他の芸能関係の自滅によるものだ。それ以降の活躍に関してだって単に企業努力の範疇だし、961プロ側は他の大手みたいに圧力なんてかけることもなく必要だとされる番組に必要とされた人材を送り込んでいただけだった。
そんな至極真っ当な仕事のやり方しかしない961に対し、まず対抗できないから1強の足を引っ張ろうなんて理由で連中は結託していたわけだ。どんだけ自分とこのタレントへの報酬を渋りたいんだ連中は。こんな連中と関わる羽目になったんだから思わずダブルファッキュ○しても仕方ないだろう?
そしてそんな連中を叩き潰した結果、美城という柱がコケてあっと言う間に961プロ包囲網は瓦解し、互いが互いを食い合う戦国時代へと突入したわけだ。961以外はな。
……幸姫ちゃんのこれからの苦労を思うと少しだけ心が痛い。叩き潰した私が言うのも何だが彼女は良いアーティストだった。まだまだ発展途上だがゆくゆくは世代を代表できる人物になれるのでは、という可能性を感じる娘だ。
同年代に舞が居なければ、世代最高のアイドルと言われてもおかしくはなかっただろう。これで折れていなければ、或いは舞のライバルに上り詰めるやもしれないな。
「お前は違うのか?」
「私はね。アイドルじゃないよ」
今回の件で痛感したわ。私はやっぱりアイドルって向きじゃない。同じようにステージに立っても何かが違うという感じがするんだ。後ろに立っていたのがあの3人じゃなかったのも大きいんだろうけどさ。多分、私がアイドルとして立つとしたらあと一回だろうな。何となくそう予感を覚えながら、パッパの言葉に首を横に振る。
私の答えにパッパは「そうか」とだけ言って頷き、そして少しの間黙り込んだ後。何かを思案するような表情のまま口を開いた。
「なら。アイドルではなくロックアーティストの黒井タクミに尋ねるが。お前から見て、日高舞は何点だった?」
「70点だね。歌ってる最中に進化しやがったのはびっくりしたけどそれでもまだまだ」
本番で成長するなんて漫画の主人公みたいな事をしでかしやがったが、よく考えれば程度の差こそあれど他のアーティストも似たような事をやってたりする。例えばマイコーとかな。伸びしろのあるアーティストなら自分の限界以上を引き出すってのは不可能な事じゃない。あれが普段から出来てるんなら更に評価アップだがね。
私の言葉にパッパは満足げに頷く。この点数は合格点を超えてるって意味でもある。今の状態でも舞は諸外国のトップアーティストの中に混ざって揉まれても埋没しないくらいの実力はあるだろう。本当の本当にトップであるマイコーとかと比べたら流石にまだまだだけどな!
「それは、現在のお前の基準で考えての点数で良いんだな」
「うん。10歳であれなら十分でしょ」
「そうか。なら、もう一つ尋ねたいんだが」
「なんじゃらほい」
「2年前の、10歳の黒井タクミと比べたなら、どうだ」
覗き込むような視線で、含み笑いを浮かべながらそう尋ねる黒井の言葉に私は開きかけていた口を閉じて言葉を止める。
そうか。ここでその問いが出てくる位には舞を買っているって事か。つい口角が吊り上がりそうになる中、私は胸を突き上げる渦巻く感情に答えを見出そうと努めた。友情、ではない。愛情、は私はノーマルだ。言葉にならない言葉を探そうとこんな肝心な時に役に立たない頭に手を当てて私は目を閉じ……満面の笑みと共にその感情を吐き出した。
「90点」
2年前。あの時すでにプロとして一線を張っていた私と、ただの歌自慢の小娘との出会い。あの時に感じた直観と、心の中に響く何か。期待とよく似た感情は今、炎のように熱く私の胸の中で燃え上がっている。
背中を追って走り続けたんだろう。たったの2年で、あいつは私の背中が見える位置まで駆け上がってきた。これから体が成長するごとにあれはどんどん輝きを増して背に近づいてくるだろう。
上等じゃねぇか
舞が背を追ってくるというなら突き放せばいい。成長するのはあいつだけじゃあない。声量こそすでに人類の限界点に達しているが私の体は未だに成長を続けている。アイドルという土俵での戦いであろうとこの身体能力の差はそのまま体捌きの差になるのだ。
己の中にこれほどの闘争本能があるとは思わなかった。そう頭の中の冷静な部分が声を零すほどに今、
今回のようなおままごとの舞台じゃない。あの屋台村の決着は。あの娘との約束を果たす場所は。
3年後。きっと、彼女は私の前に立つ。その様子を思い浮かべるだけでじっとしていられず、私はパッパに一言声をかけて席を立った。一汗かいて落ち着かなければいけない。
こういう時は思い切り歌うのが良いんだが私の声量だと周囲に爆音カマすことになるしなぁ。スタジオでも使うか……あ、そういえばこの世界ってカラオケどうなってるんだろ。ないなら作るべきだろうか。
『ゴジラ! ゴジラ! でも私はミニラ! タクミニラと映画館で握手!』
説明しよう! タクミニラとは忙しすぎて撮影スケジュールにほとんど参加できない黒井タクミをプロジェクトに参加していたと強弁する為に生み出されたブサカワイイ系のマスコットである! 重量が20kgくらいあるから普通の子供では着れない上にサイズが子供用だから黒井タクミしか着て動けないぞ!
なんでこんな事になってるんでしょうかねぇ(震え声)
「こっちに専念してくれればもっと良い配役もあったんだが」
「いやぁ、アメリカの仕事もありますし、これで大学生でもありますんで」
テレビで流れるCMを見ながら嘆いていると、円城さんの息子さん、一郎さんの小言交じりの言葉が飛んでくる。いや、それはそうなんですが、ね。実際、めちゃめちゃ忙しいんだよね今って。ついに発売したインベげふんげふん。スペースウォーの宣伝に夏の陣冬の陣の参加、それに大学に提出するレポートなんかもあるしな。
夏の陣冬の陣が何でそこに並んでるのかって? その時に一緒にボトムズのライブもやってるのと、あそこが世界で有数の宣伝効果を持つイベントだからだよ。なんせ来場者数が10万の大台に届いちまったからな。開催初めてまだ2、3年だぞどうなってんだおい。
今年も大いにライブで盛り上げた後にあほみたいな規模の展示スペースに行ってずらっと並ぶ人人人の群れをかき分け展示会場を練り歩いて気に入った作品にはお墨付きあげて夜祭でマイムマイムを踊ったよ。10万人で食べるバーベキューはうまかった。全員の顔は流石に見れなかったがな。結局1日では展示スペースを回りきれなくて3日くらいかかったよ。疲労で死ぬんじゃないかと思ったのは前世ぶりだったわ。
まぁ、疲労した甲斐はあったというか。主催者権限で一番目立つブースで自社で開発したゲームを展示しといたらあっという間に長蛇の列ができて、少ししてからは列の奪い合いで乱闘騒ぎが起きたりする位の盛況を博していたのでこのゲームは間違いなく売れるだろう。ウィルからの定時連絡も最近は嬉しい悲鳴ばかりだからな。正直帰った時に書類を見るのがちょっと怖いくらいだ。
と、少し脱線してしまったがゴジラの話だ。現在、ゴジラの撮影は順調に進んでいる。東京映画と961プロ渾身の、というか961プロ包囲網の影響で暇をかこっていた俳優をやたらとつぎ込んだ結果、エキストラにまでそこそこ知名度のある人物が居るというもういっそ961プロオールスターと名付けたほうが良い有様だが、撮影スケジュール自体は順調に進んでいる。誰かが不意に出れなくなってもすぐに代役が埋まるくらい人的余裕のある状況だ。
そんな状態だから私の出番ないよね? いらないよね? と安堵してたんだけれどもそうは問屋が卸さなかった。というのも円城さん本人と、体力に問題がある円城さんの代わりに現場の指揮をしている黒川監督たっての要望があったからだ。
「……ずっと居ろとは言わん。ただ、お前さんのお陰で見れた英ちゃんの夢なんだ。せめて足跡を残しちゃくれねぇか」
最初に渋ってそう答えた私に、黒川監督はそう言って頭を下げた。世界のクロカワにそんな事されて嫌だなんて言えるわけないわな。うん。キツめのスケジュールを更にいじって私はなんとか無理くり撮影に参加する事になった。
そしてタクミニラである。
思ったね。詐欺だと。
「いやぁ、正直どうかと思ったが大人気だし良いんじゃないか? 親父も子供の笑顔が見れるって喜んでたしな」
「何故か大人気なんだよねぇ」
適当にブサカワイイ着ぐるみ着てゴジラのテーマ曲に合わせて踊ってるだけのCMなんだがな。テレビ局側の全面降伏により堂々とテレビ業界に戻ってきた961プロの影響力をガンガン使ってバンバン宣伝してるんだが、何故か一番反響がでかいのがタクミニラのCMってなんだよ。本当になんだよ。みんなあれか。ブサカワイイが流行りなのか?
CMが始まってからはひっきりなしに「あの不細工な着ぐるみはなんだ」とか「どこでグッズは買えるのか」といった問い合わせがテレビ局側に行ってるらしく、これを機と見たパッパと東京映画さんは急きょグッズ販売が決定。ぬいぐるみと適当にでっち上げた曲をカセットにして販売したところ右肩上がりで売り上げが伸びているそうだ。
いや、そっちじゃなくて映画の方に質問をしろよと声を大にして言いたい。映画にタクミニラでないんだけどどうすんだよおい。
「そちらは、心配してもしょうがないでしょう。まずは注目を集めた。それでよしとしましょう」
「円城さん」
「親父、体の具合は良いのか?」
「ああ……ちょっと疲れただけだ」
「今回は点滴だけですみましたが、余り無理はなさらず」
円城さんの車椅子を押しながら、この医院の主である
医院の主である
「やれやれ。無理が効かない年齢なんだからもっと体を労われよ、親父」
「分かってる、分かってる。同じことを間先生からも言われたよ。耳タコだ耳タコ」
一郎さんの言葉に円城さんが顔をしかめ、その姿に私たちは笑い声をあげる。撮影も順調で、思っていた以上に円城さんの体調も良い。これなら……もしかしたら。
封切りを、一緒に見れるかもしれない。
「おや、もう日が落ちている……近いとはいえ夜道は物騒です。息子に送らせましょう」
「いやそこまでご迷惑は」
「いえいえ。あいつも今は受験が終わって暇をしていますしね。おおい、黒夫」
ぼんやりと考え事をしている間に、一郎さんと間先生が帰り道について話し合っていた。どうやら息子さんが送ってくれる事になったらしい。この時代、前世程夜道も明るいわけじゃあないからな。都市の近くとはいえ確かに子供と老人だけだと物騒だと考えられるか。
確か間先生の息子さんは中学3年だったか。ボクシングをしていてそこそこ成績も残してたらしいから短距離の送り迎えなら十分すぎるか。まぁ私が居れば本当は必要ないんだが、折角の好意だし受けておこうかね。
「すまないな、黒夫君」
「いえ。特に予定はありませんでしたので」
間先生の息子さんは、何というか。見た目はどこにでも居る中坊だけどやたらと目力のある子だ。長袖のジャージを着ている為体格は掴みづらいが、動きは確かに何かのスポーツに打ち込んだように感じる。これならちょっと仕込めばすぐにダンスなんかも対応できるだろう。そこそこの有名人である私の顔を見て固まった後、一度深呼吸をして何事もなかったかのように動き出したそのメンタリティも中々のものだ。
と、違う違う。最近オーディションやらお散歩何でも審査団(冬の陣)なんてやってたから、どうも頭が審査員状態で固まってるわ。
軽く頭を振って思考をリセットし、黒夫君に話しかける。折角若い子(年上)と接点が持てたんだ。最近の流行り廃りをリサーチしとかないとな。なぁなぁおばちゃん少年飛翔って雑誌好きなんやけど兄ちゃん知っとるかい?
「ああ。毎週購読してるよ。筋肉マンは最高だ」
「分かる。たまご理論最高よね。えっと、他は?」
「あとは男高校に、こちら亀有公園前警察署とか。ああ、もちろんゾゾゾの鬼太郎も好きだよ。ただ、毎週連載してくれないのがもったいないかな」
「貴様、読み込んでいるな!?」
「ジジの奇妙な冒険も良いね。あの発想と独特な絵は見返すたびに新しい発見がある」
軽く話を振ってみると予想以上に食いつきが良い上に選ぶ作品のセンスが良い。これぞ男の子って作品ばっかりで、そういう意見こそこちらは聞きたいんだ。年齢が変われば作品に対しての感じ方ってのはどうしても変わってしまうからね。今、まさに青春真っ盛りの彼の意見こそこちらとしては欲しいんだよ。実際。
「じゃあ、どれが一番好きな漫画かな。やっぱり筋肉マン?」
「……いや、あの雑誌には一番好きな漫画は連載していないな」
「パードゥン?」
と、思わず英語で聞き返しちまったよいっけね。大分言語までアメリカナイズされてきたな――じゃない。連載してないってのは、短編で終わった漫画が好きだったのかな。他にはまだ漫画雑誌は、精々漫画投稿雑誌くらいしか存在しないはずだ。彼のあげた作品を聞くに見る目は確かな筈だし……
「どうかした?」
「あ、いや。さっき名前上がってた作品の中には無かったのかなって。私も好きな作品が多かったからさ」
「ああ、勿論みんな好きな漫画だけど、一番は別だよ。といってもプロの描いた漫画ってわけじゃないんだけどさ。中学入学の時に描いてもらった、思い出の漫画なんだ」
若干混乱しながら思考を回していると、黙り込んだ事に訝しんだのか黒夫が覗き込むように私の顔を見る。そんな彼に私は少し慌ててそう答えると、その言葉に頷いた黒夫は問題の漫画についてを教えてくれた。
プロの描いたものじゃない、という事は趣味か。友人か誰かが書いたのかな? 思い出の漫画って事なら確かに補正も入るししょうがないか。しかし結構な漫画好きっぽい彼が一番と推すなんて中々才能ある作者かもしれんな。
少し興味を持った私は、その漫画がどういった物なのかを尋ねてみることにした。面白そうなら作者を紹介してもらおう。そんな軽いノリと気まぐれで。
「どんな、か。何というか、凄い腕前のお医者さんの話だよ」
その気まぐれに、私は生涯感謝する事になる。
「金持ちからは徹底的に金を踏んだくって、でも手術の腕前は世界有数だから皆彼の元を訪れる。そんなお医者さんの話だ」
ドクリと胸が跳ねた。まさか、そんな馬鹿な。スローモーションのように世界が動く中、私は目を見開きながら黒夫へと顔を向ける。
ごくりと唾を飲み込む。それだけの動作なのに、やけに大きな音のように感じる。
「俺の名前、黒夫だろ。そこからもじって黒男」
ああ。そうだ。そうだった。彼は、彼の本名は黒男だ。
それは、私にとって馴染み深い。前世で何度も目にした漫画の、主人公の本名。
「ブラック・ジャック。それが主人公の、そして、その漫画の名前だよ」
漫画の神の足跡を、私はついに見つけ出した。
ブルースさん:元ネタはスプリングスティーン。現実でもマドンナと同じ日にアルバム出してたから張り合わせようと思ってた。でもマドゥンナ出せなかった(白目)
アネット:元ネタは一体何ジャネットなんだ……?
キング:彼女なのにキング。でもこの方をキング以外で呼びたくないという作者のわ(略)
闘争本能:体が誰のものかが良く分かりますね。
間 黒夫:ゲスト出演。ブラック・ジャックをよろしく!
クソ女神様とタクミっぽいのの小劇場
くそ女神さま
「あ、あの時代はもっと酷かったって先輩の残した記録には書いてあるわ」
「神様社会に先輩後輩あるんかい。え、誰? パンチとロンゲ?」
くそ女神さま
「サっちゃん先輩」
「それ魔おげふんげふん」
くそ女神さま
「天と魔の共存は、少し前まで順調だったわ」
「あ、すみませんそれ聞きたくないんでオフにしてください巻き込むな(震え声)」