この〇〇のない世界で   作:ぱちぱち

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今回で最終回です。




嘘ですって昨日やりたかった。
今回で音楽関連に関する大きい流れがひと段落したのでちょっとサブタイトルが変わっています。



ぜんかいのあらすじ

(音楽関連を全振りできる)仲間がふえるよ! やったねタクミちゃん!


誤字修正。キーチ様、にゃるおじさん様、五武蓮様ありがとうございます!


追記
前回の被害者:ジョン・レノン。幼い頃に神学校に入り以後神の教えを説いている。当然ビートルズは結成していない。


事前に確認して大丈夫だと思ってたんですが曲名だけでも危ないかもしれないと指摘を受けました。確かにギリギリを責めすぎたかもしれませんし運営に逆らうつもりもありません。なのでちょっと修正しておきました!
歌詞ですらない曲名の和訳は流石に範囲外ですよね?(震え声)
>FAQに曲名はOKとあったと教えてもらい確認。曲名を入れました。やったぜ


この音楽が無かった世界で

「『貴女の歌を聞かせて、マイケル』って言われたの。女の人とは思えないパワフルな歌とダンスだって」

「ええ、普通なら失礼よね。でも私にとっては最高の誉め言葉だったわ。私は私らしくしているだけなのに、ずっと女らしくないだとか言われてうんざりしてたから」

「私は何かを間違えて生まれてしまったってずっと思ってた。タクミに会うあの時までずっと」

「だからあの日から、私の親しい人は皆私をマイケルって呼ぶの。彼女に貰った最高の名前よ。大好き」

 

~ミシェル・”マイケル”・ジャクソン 映画伝説の一夜(ワンナイト・カーニバル)完成披露宴にて~

 

 

 

 タクミの考案した全米を巻き込んだ大規模オーディション大会は、州大会の時点で各州の最高視聴者数を更新しながら推移していった。半年の間に各地で行われたこの大会は各地で新たなスター候補達を発掘した。勝ち進んだ者たちは自身が州の代表であるという自負の元に研鑽を行い、例え勝ち進む事が出来なくても自身の居る州の実力者たちの存在を認識した敗者達は、或いは闘志を燃やして、或いは新たな仲間を迎えて牙を磨ぎ、次の大会への準備を始めた。

 

 それらの戦いを終え、今度は3か月後に開かれた東西南北エリアでの4大会。州代表と呼ばれる者たちの誇りを掛けた戦いは見る物全てに熱い滾りを覚えさせ、新しい時代の幕開けを期待させるものだった。

 

 そして4大会が終わり、決勝の日がやってくる。季節はクリスマス。まるで誂えたかのように雪が降りしきる中、ニューヨークで行われたたった一夜限りの祭り。

 全ての頂点に立った一人の女性と、彼女の手を取った一人の少女によって、伝説の一夜(ワンナイト・カーニバル)と呼ばれる事になるその夜のフィナーレは、少女の足踏みから始まった。

 

『プリーズ』

 

 何事かを女性に語り掛けた後、タクミはマイクにただ一言そう言って、足踏みを始めた。ズン、ズン、と足を踏み鳴らし、そして、自身の手のひらを叩く。そして、再度同じ動作を繰り返す。ざわめきの声が会場内に広がっていく。

 

 そんな中、最初に反応したのはタクミの隣に立つ女性だった。タクミの足踏みに合わせて足踏みを行い、手のひらを叩く。彼女に遅れるように彼女の兄姉達がそれに続き、舞台の上に足踏みと手拍子の音が響き渡る。

 

ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ

 

 演者たちの次に反応したのは審査員たちだった。ジェニファーは自身の背後に置いていたギターケースを掴んで立ち上がり、足踏みに参加する。遅れるようにニールが、キャロルが立ち上がると、黒井やボビー、その他の関係者達がそれに続くように立ち上がり足踏みに加わる。ざわめく声はもう聞こえなくなった。

 

ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ

 

『もっと! もっとだ!』

 

 タクミの声に反応するように観客たちが立ち上がり始める。今日のこの日を見ようと各州から集まったその数は5000人。上質な服を着た紳士然とした人も居れば、自身に出来る精いっぱいのおめかしをしてこの会場に来た人もいる。そんな統一感のない観客達は、今この瞬間だけ同じ目的の為に席を立った。

 

ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ

 

 足踏みの音が増えていく。見れば他の参加者たちも舞台に集まってきている。ニューヨーク代表の美女やニュージャージー州のロックバンド。人数も人種も様々な彼らは舞台の上に再び上がると、足踏みを行い手のひらを叩き始めた。TV放送の為にその様子を撮影し続けていたカメラマンは画面を固定すると、居てもたっても居られないといった様子で足踏みに参加した。彼を責める事は出来ないだろう。他のクルー達も同じ状況なのだから。

 

ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ

 

 これから何が始まるのか、足踏みを続ける彼らは知らない。企画を行っているTV局の人間ですらも。ただ湧き上がる衝動に身を任せて、彼らは足を踏み鳴らす。

 

ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ ズンズン チャ

 

 最高潮に達した。舞台中央に立つ二人はその瞬間に同時に互いを見た。示し合わせたかのように交差する視線に、片方は戸惑いを、もう片方は笑顔を顔に浮かべてマイクに魂を吹き込む。

 

『”We Will Rock You!(世界をアッと言わせてやるぜ!) ”』

 

 世界がハジケる音を聞きながら、タクミは叫んだ。

 夜はまだ終わらない。

 

 

 

「ちゃうんや(震え声)」

「意味の分からないことを言ってないでほら、行くぞ」

 

 パッパに手を引かれながら私はTV局の局内を歩いていく。何をするのかって? そら謝罪だよ。明らかに審査の妨害やらかしちまったからね。いやぁ。うん。テンション上がりすぎてついやっちまったんだ!

 まさかマイコーが居るなんて思わなかったんだよ。今までの経験から言うとあのレベルの影響力持ってる人は皆見つからなかったからね。勿論探してたんだよ? ただミシェルなんて名前になってるなんて思わなかったから見落としてたんだ。ジャクソンズとかで探せば良かったのか。こいつはうっかりだぜ。

 

 さて、例のオーディション大会だが無事マイケルが優勝! 以上!

 で終わる筈もなく。幸いなことにマイコー達がオオトリだったのもあり大まかな点数がすでに出揃っていたので審査は厳正に行われました。

 私が妨害してしまったのがここで、マイコー達がパフォーマンスを終わる前に私が乱入しちゃったものだからそれ以降の点数が計算に入らないって状況になってしまったんだよね。皆足踏みしてたし。

 

 で、結果。審査員や会場の得点では何とマイコー達ジャクソンブラザーズは4位に。あわや優勝を逃す所だったが、その後の電話投票がすごかった。他の人たちも超一流どころかレジェンド級なんだが、突出したポイントを稼ぎ出してギリギリで優勝となった訳だ。

 ちなみに何故か私に電話投票をしている人が半分くらい居たので、その方々には審査員なんです、と丁寧に電話番の人が謝罪してくれたらしい。このTV局のお偉いさん方に頭を下げた後は、これからこの人たちを含めた各州のTV関係者に謝りに行かないとあかんのです。

 

 50州かぁ、へへっ震えて来るぜ。

 まぁ、過ぎた事は仕方ないとして問題はこれからの事だ。幸いにもマイコーと契約を交わすことには成功。彼女と彼女の家族はウチの会社の所属になり、現在はパッパの部下の一人がマネージャーとして身の回りの世話を行っている。ボビーおじさんという心強い味方もいるし、パッパの会社の支社もあるからこっちに家族皆で引っ越してくるそうだ。生活が安定したら用意している楽曲を使ってレコーディングを開始。彼女の歌声は半年もしないうちに全米を沸かせてくれるだろう。

 

 さて、マイコーの事はそれで良いとして、問題は他の参加者達だ。何名か見知った顔というか声というか。流石に全米16傑。レジェンド級ばっかりでビビったぜ。すでにレコード会社に所属したり交渉中だったりするグループが多かったが、まだ無名というか、ハナっからウチに所属する事を狙ってたっぽい2グループがわが社に所属する事になった。

 

 ソロ歌手のパツ金美人、マドゥンナ・ルイさんと地元の悪ガキどもを束ねて参加した16傑最年長のロッカー、ブルース・スプリングスさんである。

 もう一度言おう。マドゥンナ・ルイさんとブルース・スプリングスさんである。微妙に名字が違うけどこの二人の名前が挙がって来た時に絶対この二人のどっちかが優勝すると思ってた。ジャクソンズがまさかのキング(こっちじゃクイーンになっちまったが)を擁して優勝をかっさらっちまったが、最後のアレが無くてもいい勝負になってたんじゃって位凄いパフォーマンスだったのは間違いない。

 

 で、この二人がうちに所属したという事はだ。音楽関連、もう私が手出ししなくても何とかなるんじゃね? という結論になるわけだ。

 いや、勿論曲の提供は行う。時代に埋もれて消えていった名曲たちをそのまま放置なんて死んでも出来ん。ついつい世界をあっと言わせてやるぜ! なんてやっちゃったけど出来ればそのバンドの歌はメンバーが居ないとか、そもそもバンドが存在しないとかいう問題が無ければそのバンドに歌ってほしいんだ。そしてそれを間近で聞きたい。偽らざる本音である。

 

 時代の進みとかが大分ズレ込んだせいで駆け足になったが、ロックとポップスという作物にこれ以上ないほどの銘柄(スーパースター)が登場したのだから補助輪はもう要らないだろう、というのが私の意見な訳だ。まぁ、黒井パッパが見込んでくれている以上全部放り投げなんて無責任なことはしないし、ボトムズの活動もあるからな。少しずつ自分で出すのを減らしていくのを目指そう。

 それに、この立場じゃないとできない事だって結構あるしな。

 

『ねぇ、タクミ。これ本当にシングル全部に入れるの?』

『うん。ファンに感謝を込めてと、私の趣味。両方満たせる良い案でしょ?』

 

 うーん、と判断に困るような表情でジェニファーさんがキャロルさんを見る。だがね、ふふん。キャロルさんはすでに篭絡済みよ。昨日の内に見せたら予想以上に楽しんでくれたしね。そしてもう一人の仲間であるニールさんはむしろこっち側。共犯者の立場だ。仕上げは手伝ってもらっちゃったからね。

 えっ、何をしているのかって? 私のシングルに入れるイラストの話だよ。

 

 以前、アルバムの表紙にロボを書こうとしてパッパに怒られた事があるんだが、その時に表紙以外なら趣味を混ぜても良いと言われてあるんだ。流石にアルバムは失敗する可能性があったから何もしなかったけど、すでに全米クラスの知名度を誇る今なら多少の無理だって通せるはず。

 

 全米中にマイフェイバリットロボであるスコープドッグを知らしめてやる。

 すでに各シングルに入れるイラストは作成済みだ。1枚のアルバムに3枚のイラストが書かれており、そのイラストの裏に歌詞が書かれているため歌詞カードとしても使える親切設計。今回発売予定の6枚のシングル全てを購入すれば18pに及ぶキリコ・キュービィーの戦いの歴史を見る事が出来るのだ。オマケにレコードまでついてくるんだ。こいつはお買い得すぎる。うふふふふふふ。すごいぞー! かっこいいぞー!

 

 マーブルにレオパルドンを突っ込む策が没になってしまった時は思わず膝が折れてしまったが、私には使命があるのだ。そう、他人が作った歌を聴きながらコーラを飲みつつ大好きなロボアニメを見るという使命が。ロボアニメに関しては自作でも良い。誰が作ろうがカッコいいロボットは愛でて良い。自由ってのはそういうもんだってロジャーさんも言ってた。

 

 あ、丁度これから移動中に暇が出来るんだし今のうちにこれからのシングルに入れるイラストを量産しておくか。動く棺桶だけじゃバリエーションも足らんしな。ベルゼルガとかも好きなんだよね。兵器っぽさは薄れちゃうけど。

 

「うへへへへ。発売が楽しみだなぁ」

『お嬢、こら。はしたない笑い方をするんじゃないよ』

『マム、こうなったら暫く戻ってこないよ』

『お嬢は変わらないなぁ』

 

 ボトムズのメンバーの小言を聞き流しながら、私は数か月後に訪れるだろう全米総ボトムズファン化計画の成就を夢見て一人ほくそ笑む。

 

 

 そして3か月後。

 私はボトムズファンと言えば緑色の服装に肩を赤く塗るという雑誌の特集記事にお茶を吹く事になった。




後のタクミ親衛隊・レッドショルダー誕生の瞬間である。

後マイコーの台詞がなかったのは、彼女とタクミの会話がしっくり来なかったからです

ジャクソンブラザーズ:多分ほぼ最初期のアイドルグループ。マイコー以外はパッとしない印象だがマイコーが凄すぎて比べられるのが原因だと思う。それでもそこそこ売れたジャネジャクは割と別格。

マドゥンナ・ルイ:元ネタはほぼ名前まんま。姓が変わったくらい? マイコーが男だったらクイーンオブポップスと呼ばれてた人。

ブルース・スプリングス:この人も姓が短くなった。元ネタは米国ロック界のボス。あと大会参加の際に連れてきた悪ガキ共は何気にボン・○ョビの連中だったりする。連中の本来のデビューがこの位なんですよね




クソ女神様のやらかし日記

クソ女神
「まぁ、お医者様を目指しているのに漫画なんかにうつつを抜かして! ご家族の為にもしっかり勉強しなさい!」

「あれ。漫画の神様が居ない……まいっか」

タクミ
「チェーンソーをくれ。一番刃が鈍い奴を」

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