それでは、第3話を始めていきます。
「よし……行くぞ、ロイ! 『ねこだまし』!」
「ピカ!」
イクトの指示でロイがシャロとの距離を詰めるために走り出した時、アーサーは懐かしそうな様子で笑みを浮かべた。
「へへ、懐かしいな。ただ、わかっていると思うが、俺達にその戦術は効かないぜ? シャロ、『まもる』だ!」
「ピカ……」
アーサーの指示に対してシャロは頷きながら返事をすると、自分の周りに球形の半透明の障壁を作り出した。そして、それを見たロイはその場で立ち止まると、軽く笑みを浮かべながら宙返りをして最初の位置まで戻り、イクトは同じように笑みを浮かべながらアーサーに話し掛けた。
「やっぱり、『まもる』を使いますよね」
「当然だな。ロイを出した時は『ねこだまし』で相手を怯ませてから『アイアンテール』や『ボルテッカー』で確実にダメージを与えていき、危なくなってきたら回避を優先しながら『ねがいごと』で回復をしていく戦法を使う。それなら、まずはその『ねこだまし』をどうにかしてしまえば良い話だからな」
「…………」
「そして、今回は交代無しの一体ずつでのバトルだから、もう『ねこだまし』は使えず、後はタイプ相性の関係からダメージをあまり与えられない『ボルテッカー』と『アイアンテール』、そして回復技の『ねがいごと』しか無い。しかし、シャロは電気タイプの技のダメージを無効にし、物理攻撃力を上げる『ひらいしん』の特性を持っているから、『ボルテッカー』ではダメージを与えられない。つまり、お前達は不利な状況にあるわけだな」
「……あの時や旅の中での特訓バトルの時みたいにですね」
「ははっ、そうだな! だが、お前達はその時みたいに勝つつもりなんだろう?」
そのアーサーの問いかけにイクトは大きく頷きながら答えた。
「もちろん、そのつもりです」
「ピカ、ピカピカピカッチュ!」
「そうだな。ポケモンリーグ準優勝者の実力、見せてやろうぜ!」
「ピカッ!」
イクトとロイが頷きあっていると、それを見たアーサーは楽しそうに笑みを浮かべた。
「……くく、やっぱりお前達は面白いな。さて、それじゃあバトルを再開しようか」
「はい! ロイ、『アイアンテール』!」
「ピカッ!」
イクトの指示に従い、ロイがシャロに向かって走り出すと、アーサーはそれを見ながらシャロに指示を出した。
「シャロ、『めざめるパワー』だ」
「ピカ」
シャロが頷くと、シャロの周りには半透明のエネルギー体が幾つも現れ、それらはロイへ向かってまっすぐ飛んでいった。そして、それを見たイクトはニヤリと笑うと、ロイに指示を出した。
「ロイ、そのまま『アイアンテール』で『めざめるパワー』を打ち返せ!」
「ピカ!」
その指示に従ってロイが『アイアンテール』で『めざめるパワー』を打ち返し始めると、アーサーは余裕綽々といった様子でシャロに指示を出した。
「良い判断だが、それくらいは予想済みだ。シャロ、『まもる』」
「ピカ……」
シャロは返事をすると、再び『まもる』を使い、打ち返されてきた『めざめるパワー』をガードした。そして、その様子にイクトは歯をギリっと鳴らした。
「やっぱり、『まもる』が厄介だな……でも、使った直後だから今は使いづらいはずだ! ロイ、『アイアンテール』!」
「ピッカ!」
イクトの指示でロイが走り出すと、アーサーはそれを見て楽しそうに笑った。
「ははっ、良いねぇ。その真っ直ぐな戦い方、やっぱり嫌いじゃないぜ。だったら、俺達もそれに応えないとな! シャロ、『でんこうせっか』!」
「ピカ」
アーサーの指示に従ってシャロは自分に向かって走ってくるロイへ向けて目にも止まらぬ速さで走り出すと、そのままロイにぶつかろうとした。しかし
、ロイはそれを『アイアンテール』で受け止め、二匹のピカチュウはバトルフィールドの中央で押し合いを始めた。
「ピィ……カァ……!」
「ピカ……ピカチュ……!」
「そのまま行け、ロイ!」
「負けるなよ、シャロ!」
トレーナー達の応援の声がバトルフィールドに響き渡り、ロイがシャロを少しずつ後ろに押し始めたその時、『やれやれ……再会早々バトルをしているとはな……』という声がイクト達の頭の中に響き渡った。
「えっ……」
「この声は……まさか……!?」
そして、イクト達がロイ達の真上に視線を向けると、そこには宙に浮かぶ二人の人物と三匹のポケモンの姿があった。
「レイ! シア! ラピス! それに、リーチェとリアさんまで!」
「……はっはっは! 俺達の登場よりもすごいサプライズが待っていたな!」
「ピカァ……」
「ピカ……」
そして、イクト達が見つめる中、ミュウツーのレイ達がバトルフィールドに降りてくると、シアは真っ先にイクトへ向かって走り出し、イクトの事を強く抱き締めた。
「シ、シア……?」
「……帰ってくるの、何で教えてくれなかったの?」
「あ、いや……シアには用事に集中して欲しかったし……」
「……その気持ちはもちろん嬉しいよ。でも、心配をしてたんだから連絡くらいはして欲しかった」
「……うん、ごめん。これからは帰ってくる時や何かあったら連絡するよ」
「……それなら許す」
そして、シアはイクトに向かってにこりと笑うと、自分達の事を静かに見つめていたレイに対して頭を下げた。
「レイもありがとね。ここまで飛んでくるのはやっぱり疲れたでしょ?」
『……そんな事はない。この程度で疲れを感じる程、私は非力ではないからな』
「ふふ、そっか。後、リーチェもありがとね。リーチェが教えてくれなかったら、イクト君が帰ってきた事を後で知る事になってたから」
『うふふ、どういたしまして』
シアの言葉に対して色違いのセレビィであるリーチェが笑みを浮かべながら答えていると、それを聞いていたイクトは少し不思議そうな顔をしながらシアに話し掛けた。
「なあ、シア。リーチェが教えてくれたってどういう事だ?」
「えっとね。リーチェが言うには、散歩がてら昨夜の『ロンドシティ』に『ときわたり』をしてたら、博士がイクト君と電話をしているのが聞こえて、今日イクト君が帰ってくるのがわかったみたいなの。それで、イクト君の事だから私には落ち着いた頃に連絡をすると思ったみたいで、朝早くに私のところに来て、イクト君が帰ってくる事を教えてくれたから、レイに頼んで『ロンドシティ』まで『サイコキネシス』で飛ばしてもらったの。因みに、用事はしっかりと済ませてきてるから、安心してね」
「なるほど……アイツらからリーチェが散歩しに行ってるのは聞いてたけど、まさか昨日の夜に『ときわたり』をしてたなんてな……」
『ふっふっふ……このリーチェ様の前ではどんな秘密も意味を成さないのよ!』
「はは、たしかにそうだったな。リーチェ、シアのところまで教えに行ってくれてありがとうな」
『どういたしまして。それにしても……』
リーチェはそう言いながらにやにやと笑うと、シアとイクトの事を交互に見始めた。
『イクトは本当にシアに愛されてるし、シアは本当にイクトの事を愛してるわよね。だって、再会して早々抱きつくんだもの。あーあ、アタシもそうしたくなる程の相手が欲しいわねぇ……』
「だ、だって……イクト君がいなくて寂しかったし、会えて本当に嬉しかったし……」
「俺ももちろん嬉しかったよ。シアがこうして会いに来てくれるとは思ってなかったからさ」
「そ、そう……?」
「ああ。まあ、抱きついてこられた時は流石に驚いたけどな。でもその分、シアがどれだけ俺の事を考えてくれていたかはわかったし、今回シアが会いに来てくれたのは本当に良かったと思ってるよ。シア、本当にありがとうな」
「イクト君……うん、どういたしまして」
イクトのお礼の言葉にシアが満面の笑みを浮かべながら答える中、そんな二人の事を微笑ましそうに見ていたリアはふとロッカ博士の方へ視線を向けると、ロッカ博士が手に持つバスケットの中からイクト達を見るウル達の姿に気づいた様子でロッカ博士に声を掛けた。
「ロッカ博士、バスケットの中にいるその子達は?」
「……ん? ああ、この子達はイクト君の新しい仲間達よ。それに、なんとこの中には幻のポケモンと呼ばれている内の一匹、メルタンが入ってるのよ」
「メルタン……って、最近学会を賑わせているとされているあのメルタンですか!?」
「ええ、そうよ。せっかくだから紹介したいところだけど……」
そう言いながらロッカ博士がイクトとアーサーを見ると、イクトとアーサーは顔を見合わせてクスリと笑い合ってからロッカ博士に話し掛けた。
「バトルならまた後でも良いですよ、ロッカ博士」
「ええ。それに……久しぶりの再会を果たした今、正直バトルをするよりも色々と話をしたい気分ですから」
「……わかったわ。そういう事ならバトルは一時中断し──」
その時、自分達の方へ向かって幾つかの足音が近づいてくるのに気づき、イクト達はそちらに視線を向けた。すると、そこにはシオンとレドを含めた数匹のポケモン達の姿があり、その姿にアーサーとシャロはとても嬉しそうな笑みを浮かべた。
「アイツら……ははっ、大分元気そうじゃねぇか」
『そうだね、ボス。さて、早速彼らに僕達も元気だという事を教えに行こうじゃないか』
「おっ、シアの通訳も久しぶりだな」
「ふふ、そうですね」
『こうして通訳をしてもらうと、旅をしていた時を思い出すね』
「だな。さて、新しい仲間も紹介しねぇとだし、さっさと行くか」
『あはは、そうだね。仲間が増えたとなれば、彼らも大喜びするだろうし』
そして、イクト達がシオン達へ近付くと、シオン達の後ろにいたポケモン達はアーサー達の前に立ち、とても嬉しそうな様子を見せた。
『ボス! おかえりなさい!』
『ボス! ダスクから聞きましたが、これで俺達はまた一緒にいられるんですよね!?』
「ああ、そうだ。リーン、ワット、モリア、マイト、マーサ、待たせてすまなかったな」
アーサーが頭を下げ、エーフィのリーンやボスゴドラのワットがそれに対して慌てる様子を見せる中、ゾロアークのモリアだけは落ち着いた様子でアーサーに話し掛けた。
『ボス、頭を上げてくれ』
「モリア……」
『俺達はまたこうしてボスとシャロに会えて嬉しいし、謝罪の言葉よりも欲しい言葉がある。ボス、アンタならそれがわかると思うぜ?』
「……そうだな。皆、ただいま」
『ただいま、みんな』
『おかえり、ボス、シャロ』
『おかえりなさい!』
そして、アーサー達が再会の喜びを噛み締める中、シアはベルトから三つのモンスターボールを取り外し、それをイクトに渡した。
「はい、イクト君。レイとリィルとオルタのモンスターボール」
「ああ、ありがとう。でも、もう良いのか?」
「うん。しばらくは『ポケバンド』関連の用事は無さそうだし、何かあったらまたイクト君に声を掛ければ良いだけだからね」
「わかった。よし……それじゃあ出てこい、お前達!」
そう言いながらイクトが二つのモンスターボールを上に放り上げると、中からフシギバナのリィルとカメックスのオルタが現れ、とても嬉しそうにイクト達に話し掛けた。
『イクト、ロイ、おかえりなさい!』
『育て屋の準備は順調?』
「ああ、まだ庭の手入れや中の掃除の段階だけど、今クレインやアーク達が新しい仲間達と一緒に頑張ってくれてるよ。な、ロイ」
『うんっ!』
『新しい仲間……』
『あ、そういえばロッカ博士が持ってるバスケットの中に見慣れないポケモンがいるね』
「ああ、メルタンのウルとアンノーンのエースだ。二匹とも引っ越し先で出会ったんだ」
イクトが説明をすると、リィルとオルタはバスケットに近付き、にこりと笑いながら自己紹介をした。
『初めまして。僕はフシギバナのリィル、イクトのポケモンの内の一匹だよ。これからよろしくね』
『そして、僕はカメックスのオルタ。同じくイクトのポケモンの内の一匹だよ。ウル、エース、これからよろしくね』
『うん、こちらこそよろしくね』
『よろしく頼む』
リィル達とウル達が笑い合う中、シオンはスッとイクトに近付き、小さな声でイクトに話し掛けた。
『主殿』
「ん、何だ?」
『他の皆も主殿と会いたいと言っておりました故、会いに行かれてはどうでしょう?』
「……そうだな。せっかく帰ってきたわけだし、俺も皆に会いたいからな」
『僕も僕もー!』
「よし、それじゃあまずは皆のところに行くか!」
そのイクトの言葉に全員が頷いた後、イクト達は研究所にあるポケモン達の居住スペースへ向かって歩き始めた。そして、居住スペースに着くと、イクト達はすぐさまそこにいたポケモン達に囲まれた。
『おかえりなさい、イクト、ロイ!』
『イクト、ロイ、おかえりー』
「あははっ。ただいま、皆」
『ふふ、ただいまー』
ポケモン達からの言葉にイクトとロイが嬉しそうに答える中、それを見ながらウル達は驚いた様子を見せた。
『スゴい……イクト達にはこんなにポケモンの仲間がいるんだ』
「ふふ、中には私やアーサーさんのポケモン、元々この研究所に住んでるポケモンもいるけど、半分はイクト君のポケモンだよ」
『シアとアーサーのポケモンはもちろん、イクトは旅を終わらせた後、時々この研究所のポケモンの世話をしに来てたから、研究所のポケモンとも仲が良いのよ』
「それにここにはいないが、この『イリス地方』にはイクトと仲を深めたポケモン達が数多くいる」
『そんな彼らも入れたら、本当にイクトのポケモンの数は膨大なものになるだろうね』
『へー……』
イクト達の様子を見ながらシア達が会話を交わしていた時、ラティアスのルピアは首を傾げながらイクトに話し掛けた。
『ねえ、イクトさん。次は誰を育て屋さんに連れていってくれるの?』
「ん……それはまだ決めてないけど、やっぱり皆行ってみたいか?」
『それは……ね』
『この研究所での生活には不満はありませんが、やはり全員イクトさんのお側にいたいと思っておりますから』
「……そっか」
『まあ、イクトの側にいると安心するからね。その気持ちはよーくわかるよ』
『そうですね』
『違いないな』
ロイやシオン達の言葉にイクトが嬉しそうな笑みを浮かべる中、それを見ていたアーサーは何かを思い出したように声を上げた。
「そういえば……なあ、イクト。今でもポケモンバトルに懸ける情熱は冷めてないよな?」
「あ、はい」
「そいつは良かった。実はな、ムショにいる時にちょっとしたイベントを思いついてたんだ」
『ちょっとしたイベント……ねえ、それって何なの?』
「ウチの『ベイカー・コーポレーション』主催のバトル大会だ。『ロンドシティ』名物の祭り、『ロンドフェスティバル』のイベントの一つとして開催しようと考えててな」
「『ロンドフェスティバル』……そういえばそろそろその時期ですね」
「ああ。せっかく、昔、セレビィ──リーチェがこの『ロンドシティ』を訪れた事を記念して開かれるようになった『ロンドフェスティバル』だ。盛り上がるイベントを増やすのもありってもんだろ?」
「たしかにそうですね。一昨年も去年もシアに気分転換という事で『ロンドフェスティバル』に誘ってもらいましたけど、本当に楽しかったので、今年も参加したいなとは思っていたんです」
そのイクトの言葉を聞き、アーサーは満足げに頷いた。
「なら、大会にはもちろん出てくれるよな? お前を利用するようで悪いんだが、もう二年前とはいえ、ポケモンリーグを準優勝したお前が出ると言うなら、それを観戦したいと言う奴は多いだろうからな」
「あ、たしかにそうかも。ネットのスレッドではまたイクト君のバトルを観たいっていう声は結構上がってるし、イクト君が育て屋さんの開業費用を稼ぐために参加してたバトルの動画も人気みたいだから、イクト君が出るって知ったら、参加したい人やバトルを観たい人がいっぱい集まると思うよ」
「あはは……それは嬉しいですけど、少しプレッシャーなような……」
「まあでも、ポケモンリーグに出た時よりは、プレッシャーも少ないだろ?」
「……そうですね。久し振りにバトルを楽しみたい気持ちもありますから、是非参加したいです」
「くくっ、決まりだな。それじゃあ俺は、今から市長のところにこの企画を持ち込んでくるかね。まあ、あの市長の事だから、主催者の俺以上に乗り気になると思うがな」
「……そうかもしれませんね。ところで、そのバトル大会にリアさんは参加するんですか?」
イクトのその疑問にリアはキョトンとした表情で首を傾げた。
「私? 私かぁ……うん、せっかくだから参加しようかな。でも、主力メンバーは流石に出さないよ?」
「でしょうね。主力メンバーを出す時は、あの事件のように本当に必要な時や俺やシアと本気のバトルをする時くらいですからね」
「ふふ、そうだね。まあ、あの子達には悪いけど、あの子達を出したら、色々大騒ぎになるからね」
「そうですね」
「イクト君はどうするの? やっぱり、ポケモンリーグの決勝戦を戦ったメンバーで行くの?」
そのリアからの問いかけにイクトは顎に手を当てながら小さく唸った。
「うーん、どうしようかな……」
『あれ、もしかして悩んでるの?』
「ああ。せっかくのお祭りだろ? だったら、今までとは違うメンバーで行くのもありかなと思ってな」
「今までとは違うメンバー……つまり、今回はロイやレドとは別の子達と一緒に出るの?」
「それも良いかなと思うんだけど……まあ、これに関しては後々考えるよ。チャンスはみんなに等しくあげたいからな」
そう言いながらシアに微笑みかけた後、イクトは身体を空に向かって伸ばしてからポツリと呟いた。
「……さて、クレイン達の事もあるし、昼過ぎには帰らないとな」
「え、そんなすぐに帰っちゃうの?」
「ああ。クレイン達なら心配はいらないと思うけど、流石にこれ以上はあいつらに負担をかけたくはないからさ」
『確かにそうだけど、こうした帰ってきたからには、もう少しみんなと一緒にいたいなぁ……』
「その気持ちはわかるけど……」
ロイの言葉を聞き、イクトが少し困ったような表情を浮かべていたその時、「ああ、それなら心配はいらないぜ?」とアーサーがニヤリと笑いながら言った。
「心配はいらないって……どういう事ですか?」
「ここに来る前、ミスト団にも所属していた会社の人間を数人お前の育て屋に向かわせてたんだ。だから、今頃到着してるんじゃねぇかな」
「全員、イクトさんのポケモン達とは顔見知りですし、ポケモンドクターの資格やポケモンブリーダーの資格を持ったメンバーである上、ポケモン達の様子や掃除等の進捗状況についてはイクトさんに定期的に連絡をするように命令をしております」
「それはありがたいんですが……本当に良いんですか?」
「ああ。お前達には色々世話になったし、あいつらもイクトの助けになれるなら是非やりたいって言ってたからな」
「そうなんですね……」
「まあ、そういう事だから、少なくとも今日のところはこの『ロンドシティ』に留まっておけ」
「……わかりました。それじゃあ、そうさせてもらいます」
笑みを浮かべながらイクトがそう言うと、アーサーは満足げに頷いてからイクト達に背を向けた。
「それじゃあ、俺達はもう行くな」
「はい──あ、今モリア達のモンスターボールを渡しますね。ロッカ博士、モリア達のモンスターボールは研究所の中ですか?」
「ええ、そうよ。ちょっと待っててね」
そう言うと、ロッカ博士は研究所へと向かい、その様子を見ながらイクトは笑みを浮かべつつ小さな声で呟いた。
「……ほんと、色々な人に助けられてるな、俺」
「ふふ、そうだね。 でも、それはイクト君だからだよ?」
「そうだな。お前は色々な奴のために精一杯頑張ってきた。だから、誰もがお前のために動こうとしているんだ。だが、それを当たり前だと思ったりするなよ?」
「はい、もちろんです」
アーサーの言葉にイクトは大きく頷きながら答えた後、ロッカ博士を待つ間、シア達との会話に花を咲かせ始めた。
「……うん、こんなもんかな」
その夜、イクトは実家の自室の机に向かい、日課の日記をつけていた。そして書き終えた後、イクトは日記帳をパタンと閉じ、ベッドの上で楽しそうに話をしているロイ達に話し掛けた。
「ずいぶん楽しそうだけど、何を話してるんだ?」
「ピカ? ピカ、ピカピカッチュ」
「明日の予定か……明日は出来るなら一度家に戻りたいかな。『ロンドフェスティバル』でのバトル大会の事もあるから、クレイン達を迎えに行きたいし」
「メル……メル、メルメルメル?」
「ん……スクルやブレイブ達も連れてきたいって?」
「ノーン」
「……たしかにな。せっかくのお祭りなら、皆で楽しみたいし、その方が良いか」
「ピカ、ピカッチュ!」
「はは、そうだな。そして、祭りを楽しむのはもちろん、バトル大会でも優勝する。たとえ、相手が誰であろうともな」
「ピカチュ!」
イクトの言葉に対して、ロイが拳を軽く握りながら力強く答えていた時、「メル……」とウルが小さく欠伸をすると、それを見たイクトはクスリと笑った。
「ふふ、それじゃあそろそろ寝るか」
「ピカッ」
「メル」
「ノーン」
そして、机の上のスタンドライトと部屋の明かりを消した後、イクト達は揃ってベッドに入り、静かに目を閉じた。
「それじゃあ、おやすみ」
「ピカ、ピカピ……」
「メルル……」
「ノーン……」
挨拶を終えた後、窓から月明かりが差し込む中で、イクト達は静かに眠りについた。
第3話、いかがでしたでしょうか。次回の内容は未定ですが、早めの投稿を心掛けたいと思っています。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。