限定時間   作:西月

14 / 30
この話は、オリ主の環境を書いた内容になります。
重要なファクターは少ないですが、今後の話をするにあたって少しだけ寄り道という感覚です。


幕間 観測者を支えるもの

 After Glowとファミレスで別れ、帰宅の途へ。家の車庫に大き目の1BOXカーが止まっているのを確認する。

 

(あー。今日は帰ってくるって言ってたな……)

 

 玄関の扉を鍵を開け、無言で扉を開く。黒の革靴が整えられて並べられていた。玄関ホールの隅の方に通勤カバンと思われる、黄土色の帆布生地のショルダーが置かれている。

 

(会社のカバンってこんなラフでいいのかなぁ? あの人はこの鞄で会社に普通に行っているけど……)

 

 コート掛けには先客の濃い目の緑色のモッズコートが吊るされている。着ていた青色のマウンテンパーカーを脱ぎ、緑のモッズコートと重ならないように吊るす。

 玄関に重たいカメラバックを置き、リビングに入る。扉を開けてすぐにある壁のサイドボードに置かれている2つのフォトフレームに「ただいま」と声をかけ、中央の応接セットに目をやるとテーブルにカップラーメンの食べた跡を残し、少し長い目の応接ソファで寝ている無精髭を生やしちょっと癖っ毛で寝ているのに眼鏡をかけっぱなしの中年男性に声をかける。

 

「叔父さん……、いい加減ソファで寝るのは辞めてって言ってますよね?」

「んぁ……。おぁ……帰ってきたな、この不良姪っ子め……」

 

 私の叔父、望月雅也……、父の弟で私の保護者が寝起きのかすれた声で、こちらを見る。誰が不良姪っ子だ、まだ19時じゃないか……。

 

「ただいま、今日は晩ご飯はこれ?」

 

 応接テーブルに置かれている完食済みのカップラーメンのくずと割りばしを回収する。

 

「……なぁ、インスタントってたまに食べたくならないか?」

「はぁ? 何言ってるの?」

「こう、何て言うの? 今日は口がカップラーメンだったんだよ」

「で、これを帰ってきてすぐに食べたってことですか?」

「そういうこと。腹いっぱいになって、完全に寝落ちしてたわ……、睡魔やべぇわ」

 

 応接テーブルの下からおそらく寝落ちした際に持っていて、落としたであろうスマホを取り出し、スイスイと操作を始める。私は「はぁ……」と短くため息をつき、リビングの横にあるキッチンへ、カップラーメンの残り汁を流しに捨て、割りばしともどもごみ箱へ捨てる。そのまま冷蔵庫を開けると、作り置きのハンバーグが4つタッパーに入っており、付け合わせの野菜もタッパーに入ってた。

 

「叔父さん、冷蔵庫の中はもう見た?」

「ん? 見てない」

「友田さん、ハンバーグ作ってきてくれてるよ」

「マジか……、友田さんありがとうございます。明日の朝に食べます……」

 

 望月家は私と叔父の二人暮らしである。叔父は仕事で3交代の勤務をしているらしく、それでも週に3回帰ってくるぐらいの状況であった。私もさすがに3交代勤務で週3回しか帰ってこないのを一度問い詰めた事があったが、どうやら職場の仮眠室で寝ているらしく、そのまま夜勤開けの通常勤務を行っているらしい。帰ってこれるのに敢えて帰ってこない。

 友田さんとは望月家のいわゆる家政婦さんである。いつも洗濯と掃除、晩御飯を作ってくれる。家が留守になることが多く、夜ご飯の問題をクリアするために叔父さんが家事ヘルパーさんを会社で斡旋してもらったそうだ。タッパーに入っていたハンバーグを一つと付け合わせの野菜を軽く皿に盛り、小分けにしていたご飯を茶碗に移し電子レンジの中に2つとも入れ、あたためボタンを押す。

 

「ああ、そういや、もうすぐ4月だけど。高校の制服は貰ってきてんの?」

「もうあるよ。制服って言ってもブレザーの色が変わって2Pキャラクターみたいに見えるわ。それに灰色だから汚れが目立ちそうだわ」

「まこっちゃん? あなた。あの学校がお嬢様校ってわかってますか?」

 

 叔父は話をしながらも、こちらは見ずにスマホを横にしてソーシャルゲームをやっているようだ。私はキッチンの横に併設されている、二人暮らしには少し大きい4人掛けの食卓テーブルセットに座り、顔を合わせない会話を続ける。

 

「まぁ、ダメになったらまた買えばいいか……。あっ、4月に入ったら、また家の前の公園で撮影だな」

「えぇ……。あれ、またやるの……。さすがに高校生であれやるの恥ずかしい……」

「ばっか。ちゃんと節目は撮影しかなきゃ駄目だって。親父にも見せてぇしな。なんなら、また親父に『死ぬ前の冥途の土産節』聞きたいか?」

 

 家の前には少し小さいが公園があり、桜の木がある。私が生まれる前からある桜。父はそこが気に入って、この家を買ったそうだ。私が生まれて初めて家に帰ってきたときも桜の前で写真を撮り、幼稚園に入学したときは桜が舞い散る中で写真も撮った。小学校に上がった時もそうだった。中学に入った時に拒否を申し出ると、叔父は祖父に電話し、「会いに来ないなら、せめて制服姿を見せとくれ……」と言わせる暴挙にでた。

 結果、不服ながら桜が葉桜になる前に写真を撮られた経緯がある。

 

「あと、まこっちゃん? あなた共有NASにめちゃくちゃ大量にファイル突っ込んだでしょ? 中身ちょっと見たけど、何あれ? まこっちゃん、なんかのライブ撮影でもしたの?」

「学校の友達が、ガールズバンドやってて、その撮影を任されたの」

 

 驚愕の顔をする叔父。いや、その顔は私に対してとても失礼なのわかってますか? 電子レンジから温め終わったハンバーグとご飯を取り出しキッチンテーブルに置き、座席に座る。小さく「いただきます」と言ってから、ハンバーグを食していく。友田さんのご飯はいつも手作り感があって美味しい。自分でも作ることはできるけど、人の料理は自分で作るよりもおいしく感じる。

 

「いやいや、あなた一応問題児扱い受けてるの知ってる? 友達って……そんな仲のいい子居たの? あと撮影任されたって……、人とか撮るのめんどくさいとか言って、今までまったく撮ったことなかったじゃんか? どんな心境の変化なのよ……」

 

 もう何もかもしゃべるのはめんどくくさい。っていうか、この叔父は私の事をどんなふうに思っているのか……。……、待って、もしかして叔父さんならライブ撮影の経験があるかも知れない。確かに社会人になってからの趣味と言っていたから、そんなに経験はないかも知れないが、私よりはるかに経験者だもしかしたらあるかも知れない。

 

「叔父さん、私のことなんてどうでもいいだけどね。ちなみにライブ撮影って1回でもやったことある?」

「一応あるな、言っても会社の人のライブだけど」

「設定覚えてる? メモある? どんなふうに撮った? 写真ある?」

 

 食い気味に聞いた、もはやなりふりは構ってらいられない。今の問題点が解決がするならば手段は選ばない。普段なら設定なんて叔父を頼りにする何てあり得ないがそうも言ってられない。椅子から立ち上がりソファに座り込んでソシャゲをやってる叔父に詰め寄る。

 

「待て待てぃ……、ハンバーグのソースが顔についてるぞ。そもそも何年も前の話だし、メモなんか無いよ、勘のみで撮ったから。写真はあると思うけどだいぶ遡んなきゃいけないし、多分もうオンラインデータにしてるんじゃないかな、探すの一苦労だな……」

 

 経験者がここにいるの、経験値が物を言う状態で撮影されていることを知り、その落胆は隠せない。

 

(だめだ……、状況的に完全に詰んでる。何年分のオンラインデータを遡ることになるんだ……)

 

「なに? 落ち込んじゃったの?」

「叔父さん。うるさいわ」

 

 テーブルに戻って、顔についているというソースをティッシュで拭う。叔父は私の態度の急変に気が付いたらしく、スマホ横にしてソシャゲをしていたのを辞め、縦方向でスワイプとタップを繰り返しつつ、テーブルの席に座る。どうやらNASにアクセスして、私が撮影した内容を見ているようだ。

 

「んーでも、内容的にはいいと思うけどなぁ……。こういうの詳しくないけどさ。まこっちゃん、さすがに完璧主義すぎるでしょ」

「そういう問題じゃないの!」

 

 ちょっと声を荒げてしまう。叔父さんは少し驚いたよう私を見る。ちょっとずれた眼鏡を少し直し、スマホをテーブルに置いて改めてこちらを見る。

 

「どしたの、まこっちゃん。ちょっと落ち着きなさいよ。何? 何かあったの。どしてそんなにライブの写真にこだわってるの?」

「……」

「ほれ、真面目に聞くから。ちょっと話してみなよ」

 

 After Glowと出会いの話。美竹蘭という存在。After Glowの形の話。美竹蘭の寂しさ。After Glowの状況。うまく喋れたかわからないが、ここ最近に起こった変化を叔父に話して聞かせた。叔父は会話に入ることがなくいつもみたいに会話を茶化す事もなく、長くも拙い話に時折相槌を打って聞いてくれる。

 

「ふーん。そっかぁ……。なるほどねぇ……」

「……」

「んー、どうしたものかねぇ……。とりあえず真琴さー」

 

真剣な話をするとき、いつもの『まこっちゃん』という小さいころからの愛称を言わず、名前を呼ぶ叔父。その眼はいつも見せているような疲れた眼じゃなく、真剣な眼だ。

 

「なに……」

「そのアフターグロウだっけ? まぁ、彼女たちが欲しがってる『形』と『望むもの』を見誤っちゃだめだね。あと今、真琴が一番気にしていることは自分で考えなさいな。ライブ撮影方法についてはちょっと考える。それと次は超広角のレンズ持っていきな、しばらく練習した方がいい」

「でも、あれ被写体が歪むからあんまり好きじゃない……」

「絵面は確かに歪むかもだけど、全体を綺麗に収めるためには、多分広角じゃないと入んないよ。これみたいにさ……」

 

 叔父が差し出すスマホの画面は『巴』が少し見切れそうになってる下から撮った写真。

 

「とりあえず、疲れちゃったから俺、風呂入って寝るねー。あとよろしくー。明日は休みなので起こさなくていいから~」

 

 食卓に残された叔父のスマホと私。叔父のヒントが何を指しているのか今はよくわからない、が叔父の言う言葉を信じて今は撮るしかない。

 少し冷めてしまったハンバーグをもう一度電子レンジに入れ温めなおした。




少し物足りませんね……。課題になりそうです。
本日もう一度更新を予定してます。次は本編ですので、もうしばらくお待ちください。

ここで少し御礼を。
先日、また新たに評価をいただくことができました。
大変うれしく思います。ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。