限定時間   作:西月

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夕焼けの観測者になるための方法

「皆の衆、おまたせー」

「モカー、巴がひどいのーっ!」

「私も流石にそれは難しいと思うなぁ……」

「つぐまで!!……ん? モカ、その子どうしたの?」

 

 白い髪をした女の子に引っ張れるまま、3年B組の教室にきた、扉を開けると窓際に場所を取ってる一際目立った3人の集団が眼に入る。座ってるからわかんないけど、結構身長があると思われる赤髪長髪の女の子、肩口で切りそろえた濃いめの茶色の髪をした女の子。そして、私の手を引いてる白髪の女の子を見るや否や、涙目で寄ってきたピンク色の髪を2つ括りした女の子。

 どこかで既視感あるなぁ……と思ったら、あの写真に写っている美竹さんを抜いた4人が此処に集まっていた。そう言えば、さっき『写真をみんなで見る』って言ってたなぁ……。

 

「んー。ナンパ?」

「モカ! 嘘でしょ! 校内でナンパなんてどうやって口説いたの? 教えて! むしろナンパしてみせて!」

「ひ、ひまりちゃん……」

「はいはい。ひまりは一回落ち着こうなー」

 

 なんかすごい勢いでピンクの人が、モカと呼ばれた白髪の女の子の肩を持って揺さぶる。

 あっ、コレ多分ピンクの人はポンコツだわ……、と思いながら2人を見て苦笑いをする。なんか一連の流れがまるで漫才を見ているような掛け合いだ。

 

「ひーちゃんは口説きたいのか、口説かれたいのか一体どっちなの?」

「愛されるより愛したい!」

「ひまり……。全然訳がわからん」

「と、巴ちゃん……。でも、ひまりちゃん。答えが全然違うことになってるよ?」

 

 ひまりと呼ばれたピンクの髪をした人はドヤ顔で答えるも、会話がかみ合う気配が無い。頭の中で会話が一歩前に進んで居るんだろうなぁ……。と思いながら、先程まで袖を握られていた腕が自由になっているのに気がつく。握っていた手はいつの間にか取り出したパンを私に差し出していた。

 

「急にごめんねぇー。でも、このパンで許してね」

「う、うん。ありがと……。とりあえずこの状況はなに?」

 

 差し出されたチョコチップメロンパンを受け取り、連れてきた張本人に状況の説明を頼む。

 

「あっ、そうだねー。じゃあ紹介からー。こちら件の蘭を口説いたロマンチスト系の盗撮カメラマンさん。とりあえず確保したけど、全然悪い人じゃなさそう」

 

 とんでもない説明だった。口説いたというかお願いをしたのは間違い無いが、私はロマンチストを気取ったつもりは無い。

 

「「「あっ」」」

 

 三者、皆同じ単語は出したがそれぞれの反応が違った。

 「巴」はこちらを見つつ全体を値踏みするような感じで、「ひまり」はなんだか少し顔を赤くして、「つぐ」は私の顔を見て何かを思い出したようなそんな三者三様の顔だった。

 

「あの……、そのね……。盗撮した件はほんとごめん、あなた達があまりにも絵になっていたというか……」

「ともちんはー、そんなに拗ねちゃうとカメラマンさんが困るでしょー」

 

 とんでもない説明をした張本人の「モカ」は買ってきたばかりのパンの1つをすでに最後の一口の状況で一応の助け舟を出してくれる。

 

(いや……、あなたの説明でなんかお怒りを買った気がするんですが……)

 

 心の中で愚痴を言いつつ、とりあえず精一杯の笑顔を引き出し、改めて自己紹介をする。

 

「ちょっと遅れてごめんね。なんで此処に連れてこられたかはわからないけど私は望月真琴って言います、3-Cです」

 

「私は羽沢つぐみ、赤い髪の子が宇田川巴ちゃんでピンクの髪の子が上原ひまりちゃん、あなたを連れてきたのが青葉モカちゃんだよ! ところで、望月さんってもしかして今年の夏にコンクールの表彰されてた望月真琴さん?」

 

 ああ、目の前に旗は持ってないけど救世主がおる……。きっとあなたは話が分かるいいひとに違いない。

 でも、その話はできれば避けたかったなぁ……。

 

「えっ、ああ……。あれね」

「つぐ、そのコンクールってなんだ?」

「確か、写真のコンクールで優秀な成績を収めたとかで表彰されてたような……、内容まではちょっとしっかり覚えてないなぁ……」

 

 宇田川さんが羽沢さんに問うが、羽沢さん自身もあまり記憶に残っていないようだ。

 まぁ、確かにそうだろう、人の表彰記録まで覚えてるとか逆にすごい記憶だ。救世主が導いてくれた道だ、ここは無下にはできない……。

 カメラを持ち始めて、よく言われる事。『あなたってどんな写真を取ってるの?』と……。説明するにも、コレばっかりは難しい。何かテーマを決めて1本だけを撮り続けているわけでも無い。デジタル媒体で持ち歩くのが差し替えなども手軽でよく一番良いと思ってるが、デジタルだとアナログに落とした時の色味がやっぱり違うと思っている。結局私はアナログに頼って、写真を厳選しポートフォリオを作って歩いてる。何よりこの厳選する感じと、アルバムに自分で文字を書き込む感じが好きだから。

 カバンから1冊のアルバムを取り出し宇田川さんに差し出す。私のコレまでのポートフィリオ。金賞を撮った写真の他にも、様々な写真がある。

 にしても、学生写真コンクールか……。今となっては、随分前の話になるよな、とふと記憶の隅に追いやった思い出のページを開く。

 

 ◆◆◆

 

 

 私がカメラを趣味で持ち歩き始めたのは、叔父の影響だった。叔父の使わなくなった一眼レフを譲り受けて、なんとなく撮りはじめた。最も撮るものは風景がメインとだった。

 なんとなくで始めたカメラ。叔父の休日に県外に出てカメラでその風景を写し、気に入った物を苦手な編集を施して1枚の写真に仕上げる。そんな事を繰り返してると、風景のレパートリーもなんとなく少なくなってきた。

 県外の風景はいつだって撮れる。今じゃなきゃ撮れない「何か」を撮ってみたいと思った時、ふと学校を撮影する事を思いついた。

 

(在学中にしか撮れないってのが一番のメリットだよね)

 

 校舎を撮影しながら、そう思った。唯一の悩みは、カメラを構えると中にはあからさまに嫌がる人と積極的に写りに来る人。こちらとしては特に人を写している訳では無いので、対応に苦慮した。写真部というものがあれば、説明は早いかも知れないが羽丘には写真部は存在しなかった。

 そんな訳で私は「カメラを持って勝手に撮影してくる奴」として、あまり良い印象は受けなかった。

 

 ある日、そんなトラブルが重なり、お説教名目で3年で担任になった北条先生は1枚のチラシを見せてくれた。

 それが学生写真コンクールの公募パンフレットだった。もともと北条先生は大学で写真活動していて、その延長で教師になってからも様々な写真を撮ってるそうだ。

 

 コンクールに向けての写真活動なんてする気はなかったが、とりあえず出してみたらどうだ? と勧められて規定テーマと自由テーマの2つのテーマにそれぞれ数点の写真を出すことになった。

 無論、学生コンテストであったことから学校側の推薦文書も必要だったためそれを北条先生が一通り用意をしてくれた。

 

「なんか実績さえあれば、変に意識する奴も無くなるさ。なんだったら認定の腕章作ってやろうか?」

「腕章とか……、やっぱりそんな物必要なんですか?」

 

 北条先生は軽く言うが、個人的にはそんな大層なものが必要なものなのか? と思う。

 

「ほら、最近SNSとかで写真シェアしてたりするじゃないか、投稿サイトだってあるしな。まぁ、望月はそういうのに興味無いといった所で、顔が写るものは慎重にしたほうが良いってことだ」

「そんなもんなんですかね……」

「そんなもんだ」

 

 職員室の隅に設けられた面談テーブルに座り、北条先生は缶コーヒーを飲みながら大人の悟りを手元の一眼レフをメンテナンスしている中学生の私に諭す。

 

「まっ、何にしてもいい結果が出たらいいな」

 

 結論から言うと、「いい結果」は帰ってきた。

 中学3年の夏休みを作品づくりに注ぎ込み、ある1枚の校舎の写真を完成させ、規定の書類とともに現像した写真を送った。

 中学3年2学期が始まりそろそろ衣替えの季節かと思ってたある日、北条先生の真剣な呼び出しを受け、校長室の扉をくぐり無言で突き出された1枚の紙が事態を大きく変えて行くことになった。

 

「はっ? 金賞ですか?」

「うん、金賞だな……」

「いやいや、意味わかんないですよ……、金賞って参加賞かなにかでしょ?」

「いや、流石にそりゃないだろう……」

 

 さすが校長室。大層なソファが置いてるもんだとその黒いソファに身を預け、ゆっくり沈んだ所でなんにも考えてなかった頭に急に金だらいが落とされた気分だった。

 適当に撮影したつもりの写真は自由テーマで見事金賞を獲得してしまったらしい。北条先生もかなりの苦笑いだったが、北条先生の横に居る校長もかなり胃が痛そうな笑顔だった。

 私は訳が分からないと言う感じで何回もその文書を見返した。

 

「とりあえず、おめでとう。文面から見て、ぜひ授賞式にも参加してほしいとの事だ」

「いやぁ……、ずぶの素人が行く場所では無いですし。人に写真の考察をされるとか、私の写真の方向性が変わっちゃいそうなので遠慮させていただきたいです」

「本音は?」

 

 ものすごい苦い顔をしながら北条先生は私の言葉にすばやく反応して来る……。この辺やっぱり人を見てるんだよなぁ……、と改めて思う。

 

「休日に部活動でもない行動をしたくないです、むしろそれなら1枚でも写真撮りたいです。なんだかんだでモチベーション上がりましたので……」

「北条先生、では授賞式は彼女は欠席で学校代表として私と同行を。さも、写真部顧問のようにご意見を承りましょう……」

「そうですね……、悪乗りしすぎました……」

「問題児の更生のためとは言え、部活動申請書類出してきた時にハンコを押したのは私ですし、腹を括りましょう……」

 

 こうして仮想の写真部を作り出して、書類を書いた校長と北条先生が受賞式に出ることになった。どんな交渉をしたのか知らないが、悪乗りした校長も校長だが、北条先生が一番の悪であることは間違いない。がっくり北条先生は頭を垂れる。

 というか、今校長、私のこと問題児って言った? たまにトラブルは起こすけど、そんなトンデモ事案をやらかした覚えはない……。

 視線だけで、北条先生に目を向けると素知らぬふりの顔だ……。大人ってずるい。

 

「では、あなたには今回の快挙に免じて2つお願いごとを」

「……快挙に免じて……って日本語おかしくないですか? っていうか、2つもですか?」

「ええ、2つです。まず1つは全校集会での表彰式へ参加。もう一つはモチベーションの高いあなたへの依頼です」

「それ、すでにお断りしたいのですが……」

 

 できれば、目立った事したくない。すでに表彰式への参加と言うだけでハードルは高いこれ以上は勘弁願いたい。

 

「依頼は中学用の卒業アルバムスナップ写真の撮影です」

「はぁ?」

 

 急にそんな無茶な依頼内容を告げられ、口を大きく開けて声を出してしまった。この日は以降、学校内で取材腕章を片腕につけ一眼レフカメラをぶら下げて、ひたすら校内を撮影するのが私の学校生活になってしまった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「はい、ポートフィリオ」

「ポート……、それってなんなんだ?」

「簡単に言うと作品集。さっき羽沢さんが言ってたのは夏にあった学生写真コンクールの事。その時の写真もあるし、見てもらったほうが早いと思う。あんま自信ないけど……」

 

 宇田川さんは疑問符を浮かべながら表紙を開く。

 宇田川さんが表紙をめくった所で他の人達もそのアルバムが見えるように移動をする。彼女らがポートフィリオを見ている間に糖分元の補給として青葉さんから貰ったチョコチップメロンパンをいただくこととしよう……。

 

「あれ? コレ、職員玄関に飾ってある写真じゃない?」

「ああ、確かにあったなこの前の三者面談の時に母さんを職員玄関に迎えに行ったときに見たな」

「表彰されたのがその写真ね。校長が気に入ってめちゃくちゃ高い額縁買って飾ったって北条先生が言ってた」

 

 恥ずかしながら私の写真はものすごい装飾を施された額縁に入れられ、印刷業者に拡大処理された上で、チェック校までして今も飾られている。

 ほんとに勘弁してほしい……。デカデカと拡大処理された写真を見た時ほんと死ぬかと思った。

 

「望月さん、コレは通学路だよね。雨の降った後のただの夜道なのになんでこんな風に反射して撮れてるの?」

「んー、あそこだけ街路灯が新しくなってて、よく光るの。あと雨降るとあそこの路面はサイクリング用に舗装し直したおかげで水がいい感じに流されてくるから、それ使ってって感じ」

 

「へぇー、すっげーな。海もすごい綺麗に撮れてるなぁ……。っていうか、ホント一枚一枚がすごい綺麗に撮られてるって感じするな」

「海は和歌山の南の方だね。この辺でも全然綺麗に撮れると思ってたんだけど、私のおじいちゃんとおばあちゃんが関西に住んでて夏に行った時についでに……って感じかな。でも、やっぱりあっちの方はすごく澄んでる水だったなぁ」

 

 宇田川さんはなにやら海の写真に興味があるらしく他の海の写真も見始めた。

 

「この生け花の写真もすごいよね……、他の生け花の写真何種類かあるけど、この生け花だけなんか印象が違うね」

 羽沢さんが眼に止めた生け花の写真を一同が見ている。

 

「あーそれは……、この辺に生け花教室やってる所が主催でショッピングモールで定期発表会をやってるんだよ、いつも撮影自由だったからいつも練習に撮ってたんだけどね……」

 

 つい、写真について解説する口がつい淀んでしまう。

 

「けど?」

 

 写真を見ていた上原さんが私の言葉尻を拾い、その続きを促す。

 

「ほら、その写真の生け花の器が、他のとちょっと違うでしょ?」

「あ、そうだね。ちょっと器の形が特徴的な感じ。生け花ってこんなのにも入れたりするんだね!」

「私も詳しいわけじゃなくてね、よくわかんないんだけど、他のより奇抜な器で面白いと思って撮影をしてたら声を掛けられてね?」

「ふんふん」

 

 羽沢さんは他の生け花の写真とその写真を見比べたりして間違い探しみたいなことをしている。そんな羽沢さんを見つつ上原さんは相槌を打ってくる。青葉さんはパンを食べていた手を止めて、何やら考えてるようだった。

 

「なんか、その場に居た人に感想を求められてちゃって、『折角の面白い器なのに、背景が和だと器も和になって、画面的に面白くないから背景も全部創作して器を活かしたらもっといい絵が撮れそうです』って言っちゃったらね……」

「うわぁ……、本職の人にそんな事言っちゃったの?」

 

 上原さんが軽く引いて、開いた口が塞がらないって感じのリアクションだ。

 

「そしたら、次の展示会のときに特設ブースみたいなのが出来てて……、ライトアップ用の照明までついててね……。『待っていたよ!』ってその人に引っ張られて、この花を見せられちゃってね。そしたらまぁ……、撮るしか無いじゃん?」

「そりゃそうなるよねぇ……。でもこの背景の赤と黒ってすごい大胆だよね~」

「うーん、多分ライトを美味いこと当ててるからってのもあるからかなぁ、白い奇抜な器がいい感じだよね」

 

 今思い出しても、無茶言ったもんだ……。常連とは言え、流石に言ってからヤバイと思ったもんな……。でも、あそこの教室の展示会いつもいい感じに花を撮れるから良いんだよなぁ……。

 青葉さんは何か考え終わったみたく真剣な表情でこっちを見てる。

 

「……」

「……」

「……どうしたの? なんかあった?」

「まこちーは、その生け花を活けた人って知り合いなの?」

 

 青葉さんの問がよくわからない。ただ、確かに撮影常連ではあるが活けた人とあったことが無い。展示会の関係者であるわけでは無い。接点と言ってもほとんど皆無。だれが活けたなんて考えたこともなかった。ってか、まこちーってなんだ私のあだ名か?

 

「う、ううん。全然知らない人。話したこともないかな。いつも一般公開されて居る時間帯にしか行かないし」

「まこちーの感性ってこと?」

「感性って、そんなご大層な感性してないよ。大体いつも月イチでやってるから、練習がてら行ってるだけ」

「まこちーは野生の蘭ハンターだねぇ……」

「はっ? なんでそうなるのよ……」

 

 青葉さんが言いたい事がいまいち見えてこない。この生花のどこに美竹さんの要素があるというのか? ましてやハンターと言われるような事は一切無い。

 

「ひーちゃん、ともちんは多分知ってると思うけど、ちょっと前に蘭のお願いでハンズに買い物行ったの覚えてる?」

「ああ、なんか壁紙がどうとかそんな話してたな……」

「うん、覚えてる。蘭がすんごい悩みながらカーテン生地の所で止まっちゃって、結局私と巴だけでお茶している間に蘭がものすごい量の買い物してきた時の事だっけ?」

「そうそうー。蘭が一人じゃ持ち上げれない大きな荷物を無理やり持って、危うく落としそうになって、結局イケともちんに持ってもらったやつ」

「それ、私が店番をどうしても外せなかって、練習が流れた日だね」

「あの日、結局ハンズじゃ揃わなくてホームセンターまではしごしたのー」

「モカ、それがなんか関係あるのか?」

「多分、この写真に写ってるお花、蘭が活けたお花なんじゃないかなぁ……」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 彼女らは改めてその写真を見るが、その写真には作者名や題名は無い。撮って編集をした者的には、美竹さんが活けたという根拠にかける所だ。そもそも、美竹さんが華道やってると言われてもピンと来ない。あの子、いまいちそんなおしとやかに見えない。

 

「あ、この器が乗ってる赤布の模様、この前蘭が買ってた布だ!」

「あいつ、じゃあこの後ろの黒と赤の壁ぽく見えるのって、あの時買ってたボードってことかぁ?」

「すごい! 蘭ちゃん、こんな風にお花活けるんだ! すっごくかっこいい!!」

 

 なんか知らない所で、盛り上がってる所に水をさす。とりあえず把握はしておきたい。

 

「青葉さん?」

「なーに?」

「美竹さんって生け花なんてやってるの? 私全然知らなくて……」

「蘭のお家は古くから華道をやってる家だよー、華道の話すると蘭が嫌がるからあんまりしないんだけど、展示とか発表とかやってるって聞いたことあるしー、もしかしたら~とは思うんだけどね」

「嫌がる? こんなすごいのを活けてるのに? あの展示会、ぶっちゃけ無料なのも不思議なくらいハイレベルだって素人眼でもわかるくらいなんだよ?」

 

 あの展示会場、ぶっちゃけいつ行っても人が居るし展示場所もそこらのフリースペースや集会場でやってるわけではない。商業施設のど真ん中で警備の人もそれなりに居た上で無料展示をしているのだ。

 

「うーん、蘭は昔からお花が大好きなんだけど、お家が厳しい感じだからじゃないかなぁ……。ごめんね、あんまりその辺は本人からも聞いたことないんだ……」

 

 青葉さんは少し寂しそうな顔をして私の疑問に答えてくれた。まぁ、本人が語らないのであればそこに踏み入る事は出来ない、なんとなく察する事はできてもそれは安易に触って良いものかはわからない。それがたとえ心を通わせた友達であってもだ。全部が心の内では無いのだ。

 

「そっか……」

 

 あの写真の美竹蘭からは心の奥底から湧き出る暖かさを感じた。だが、その顔は此処に居る者達にもわずかしか見せたことが無いと言った。しっかり喋ったことが無い私の中の美竹蘭の偶像。彼女たちが見てきた真実の美竹蘭と言う存在。

 自分の中で持ち上げすぎているのかも知れないが、美竹蘭はそれでも魅力的だと思う。私はどうすれば真実の美竹蘭を見れるのだろうか?

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