限定時間   作:西月

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アナウンスが遅いですが、一部オリジナル設定を盛っております。



夕焼けが居る場所

 扉を閉めるとカウンターの向こうで月島さんが笑顔で手を振ってくれてる。

 美竹さんと同じく、カウンターの方へ行き、一応関係者の括りには入るだろうから詫びを入れておく、今後のAfter Glowの印象もあるだろうからね。

 

「友人が騒いでしまい、申し訳ないです」

「全然いいよー。バンドの喧嘩なんてよくある事だし、実際ここでも何回か見てるからね」

「そうなんですか?」

「そだよー。ひどいのなんて舞台上で喧嘩が始まったこともあるし、だからフロアでの口喧嘩なんて全然平気だよ。まっ、滅多に出会う事は無いけどね」

 

 月島さんはケラケラと明るく笑う、バンド活動ってそんなに激しいんだな……。まぁ、私には無縁の話だろう、ライブハウスに来る事も音楽スタジオを使うことも滅多に無い事だと思うしね。

「それでねー」と言いながら、月島さんが壁際に並んでいたCDを何枚か選んで、カウンターの上に並べだした。

 

「さっきは最後まで話せなかったからその続きね~。望月さんは最近、話題になってる『ガールズバンド』って知ってる?」

「そうですね、その名前だけなら知ってます。ただグループとかどんな曲があるかとかは詳しくは知りませんね」

「まさにそれなんだよねー。まぁ、中には動画サイトに投稿してる子たちも多くは無いんだけど、やっぱり顔が映ったり、それ用に動画撮影したり動画編集するための機材も時間も必要になってくるからハードルが高いのが問題。総称の知名度が高いけど、どんな曲なのかを知るためには不定期に開催する彼女たちが活動するライブで聞くか、イベントとかライブ、路上で個人販売してるCDを手に入れるぐらいしか機会がないの」

 

 月島さんは手遊びのつもりなのか? 四角形CDケースの対角線を指で持ち上げくるくると回してみる。くるくる回るCDはネームテープだけが貼られ、ジャケットが無い。まるでブランクメディアか、もしくはタダの個人用のデータメディアの用に見える。

 

「ただCDを作るだけなら、個人録音レベルでもなんとかなる。人に寄っては録音データを専門の業者さんに頼んでマスタリングをしてもらう。んで、それをCD化してるのが現状って所かな? お店によってはCD販売用のプランも今はあったりするしね。中には事務所所属の完全プロも居てそっちは少数、この場合は普通に店頭に並んで販売してるね」

「はぁ……、結局なんの話になるんでしょうか?」

 

 ガールズバンドのCD販売状況に関する知識を教えてもらった感じだが、いまいち私にそれを話してどうしようとするのか? 月島さんが話したいと言う本題が見えてこない。

 

「じゃあ、直球勝負の本題にはいろっか、今までは事前準備みたいな物……。でねぇ、このCD達を見て何か思わない?」

 

 カウンターに10枚ほどのCDを横一列に並べ、そのうち7枚を少し前に出す。それはネームテープでしか、別のCDと判別が出来ないような状態のCDだ。

 

「……全部CDジャケットが無い?」

「そうそれ! このCDは全部CDジャケットが無いの。これはねCiRCLEが代行編集して販売してるガールズバンドのCDなの!もちろんCD化する時の予算もあるけど、中には頑張ってジャケット差し込んで来る子達も居るんだけどね……、やってみた子達に話を聞いてみるとこれがなかなかうまく行かないっていうのが現状みたいなの。ロゴやイラストデザインはさておき、まず曲にあったフリー素材になる写真を撮るのが難しいって……」

 

 月島さんはちらっと眼を細めてこちらを見る。

 

(あっ、すっごい嫌な予感するな……)

 

「望月さん。そんな子達のジャケット写真撮影とかやってみたくない? 眠れる才能を開花させてみたくない?」

 

 月島さんがとてもいい笑顔で素人カメラ女子(中学生)の私にとんでも無い爆弾発言をしてくる。

 

(予感的中……、そんないい笑顔で見ないで!)

 

 ◆◆◆

 

 月島さんの話は端的に言えばスタジオCiRCLEのお抱えカメラマンをやってみないか? ということだった。

 CiRCLEでのライブ中の撮影はもちろんイベントの時にも撮影したりして、CDジャケットに自分たちの写真を使いたいけど撮影が自分たちで出来ない人達向けに『ある程度』の素材を提供する。基本的にはあくまでもCD作成プランの『オプション』扱いとして、あくまでも本人達が撮影してほしいシチュエーションで撮影し、気に入れば値段を出すというオプションを考えているそうだ。割とゆるい構成に見えるが、『それって完全出来高制じゃないの?』と思う。

 そして、念押しはアルバイトではあるがカメラマンでは無いらしい、手が空けばスタジオのアルバイトとして活動もする。

 まだ身分は中学生なのでさすがにアルバイトするにしても、4月以降に詳しい話がしたいと最終的には押し切られ、この話は一旦終わった。大人って怖い。素性の知らないやつにそんな事させていいのか……。

 月島さんのとんでも話を聞かされ、かなり頭が痛い状態になりつつも、最後に宇田川さんからの伝言を伝えてくれた。イベント主催者がここに来るそうだ。そこでレギュレーション関係の話をして、その後でバンド練の様子を見てほしいとのことだった。

 精神的に疲れてしまったが、時間は限られている。ソファの隅っこでカメラバックを開けカメラのセッティングを始めようか……と思っていたら、ちょっと中年の男性と、月島さんの同年代くらいの女性がスタジオに入ってきて、何やら月島さんと話をしている。まあ、何処にでも居るおじさんだ、ちょっと恰幅はいいが、きちんとスーツを着ている。女性の方はラフな格好だがジャケットを羽織ってる所を見ると何かの営業かなーと、視界の隅に入れつつ愛機である一眼レフにズームレンズを取り付け終え、メモ帳を取り出し走り書きで書いたセッティングをカメラに設定を施していく。

 

「望月さん? 今、ちょっといい?」

「はぁ……? 何でしょうか? もう頭痛の種は勘弁してください……」

 

 月島さんから声がかかる。自分にはあまり関係ないと思っていても、先ほどのバイトの件がある……。きちんと警戒して置かなければ……、設定途中のカメラを丸テーブルの上に置き、呼ばれたカウンターの方へ足を向ける。

 

「宇田川さんが来たらもう一回顔合わせはするけど、今度のライブイベントの主催者さんを紹介するね。こちらは江戸川楽器店の店長の江戸川さんと店長代理の槇村さん」

 

 先程、店内に入ってきた男性と女性がともに軽く頭を下げる。まさかのイベントの主催者さんだったか……。一応、ちゃんとしておかないと、私の一挙手一投足で撮影NGを出されたら、宇田川さんに申し訳ないし間違っても彼女らのバンド活動に不利にならないようにしなければ。

 

「あ、はじめまして。この度は無理を言いまして申し訳ありません。私、望月真琴と申します。宇田川さんたちと同じ羽丘中学3年です」

「おお、聞いてる聞いてる! 全然いいんだよ、いつも彼女達には贔屓にしてもらってるし、宇田川の嬢ちゃんにはいろいろ商店街の付き合いもしてもらってるしな」

「そうでしたか。私、音楽のこととかイベント関係の事が全く知識がなくて、その……、いろいろ筋違いの事を言うかも知れませんが、よろしくお願いいたします」

「誰だってはじめは初心者だよ、何も気にすることないよ。気になったら私達2人にいろいろ聞いてくれ」

 

 とりあえず無難な挨拶を交わす、イベント毎ではハプニングもある可能性がある。念の為、ちゃんとしておく事のほうが大切だと思う。音楽イベント初参加で尚且スタッフ側に近い事をするのだ、何で問題になるかわからない、しかしながら江戸川店主は全然気にしないと言ってくれる。なんとなく緊張感が解ける。そうは言っても、やはり割り込み参加みたいになるし、ある程度は緊張感持っておかないと……。

 その後、宇田川さんがスタジオから出てくるまで、軽く世間話をテーブル席で江戸川さんと槇村さんとする。いわく、宇田川さんは商店街では有名なお嬢さんらしい、商店街のイベント事では宇田川さんは引っ張りだこらしい。私も商店街自体は買い物で行ったりするのだが、イベント事に参加することは少ない。強いて言うなら、年末の福引きくらいだ。なんか飾り付けしてるなーとかそういうのは見たことがあっても叔父と二人暮らし、生活面の衣食で見ても利用するのは商店街のスーパーぐらいだ。どこかでニアミスくらいはしているかも知れないが限りなくゼロに近いかもしれない。

 そして、羽沢さんは喫茶店の看板娘だそうだ。ちょっと待って、凄まじい破壊力の情報を聞いた気がする。エプロン姿の羽沢さんとか、すごい人気ありそう……。

 

 しばらく談笑をしてると、月島さんがタオルを片手に持った宇田川さんを連れてテーブルにやってくる。スタジオ練ってそんなに汗かくの? と思いながらも、役者が全員揃ってようやく本題ってことになりそうだ。




できるだけ、短く切ってスマホでも読みやすくしているつもりです。文章が読みにくいのは私の力不足です……、精進いたします。

本日もありがとうございました。
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