提督の提督による艦娘のための軍事小噺   作:柱島低督

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中身はだいぶ適当なので、暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。


陸戦編
第一回 戦車の種類


「提督、これは?」

 

「あぁ、それは……」

 

と話し出す。

 

「Mark I 戦車だ」

 

「WW Iでイギリス軍が投入した、って奴ですね」

 

大和は興味深げに机の上に置かれているバラバラの菱形戦車を眺める。

 

「気になる?」

 

「そうですね。前に約束してた戦車についての話、今聞いていいですか?」

 

そういえばそんな約束をしていたな、と思い出し作業の手を止めずに話を始める。

 

「最初のころの戦車は、塹壕を越えるための兵器だったんだ……」

 


 

戦車に当てはまる英単語は『Tank』である。

水槽などを表すタンクと綴りは同じ。

 

イギリス軍の最新鋭兵器である、火砲(尤も、このころはまだ機関銃程度だったが)を備えた装甲車両を、敵(ドイツ軍)に悟られてはならないと、ロシア(この頃は帝政ロシア)向けの『水タンク』として戦線まで持ち込んだということが由来である。

開発ネームは『Landship(陸の軍艦)』であるが、安直すぎるので隠蔽せねばならなかったのだ。

 

機関銃もほとんど効かず、塹壕はあっさり越えてくるという恐るべき兵器に、当時のドイツ兵(伍長だった()()悪名高きアドルフ・ヒトラー含め)は多大な精神的ダメージを受けたという。

 

それまでの、馬に乗った兵士が銃を構えて撃ったり、塹壕で向かい合って銃を撃ちまくるといった陸戦の既成概念をぶち壊した新兵器は、あっという間に世界の陸軍へと浸透。挙って開発を進めた各国の新型戦車は、あっという間に大型化し、高性能化が進んでいった。

 

一次大戦中に完成した仏・ルノーのFT-17軽戦車で基本形が整った。乗員室とエンジンルームが区切られ、視界と射界を提供する全周砲塔を搭載した。

 

この形が知れ渡ると、それこそそれまで以上のスピードで戦車・搭載砲の大型化・高性能化が進んだ。

 


 

そしてあるとき、とある設計者が砲塔を更に増やしてしまう。

そう。多砲塔戦車の誕生である。

 

戦車は強いが、歩兵に接近されれば対処できない。その死角を補うため、また別に砲を乗っけてしまおうという、ある意味良さそうに聞こえる特大級の地雷である。(慣用句的な表現で)

 

全周砲塔を2つ*1も積んでいるので、問題が複数以上現れた。

 1.どんどん肥大化していく

 2.防御すべき範囲も拡大するので装甲が薄くなる

 3.大きいので装甲が重い

 4.他の砲塔が邪魔で寧ろ射界に制限がかかる

 5.1,3に起因して取り回し・機動性が足りない

 6.いろんなものが詰め込まれているのでコストが跳ね上がる

 7.6に起因して整備性が悪い

 8.一つ一つの砲が小さくなってしまう

etc.etc.

 

特に2,3は深刻で、軽量化のために装甲を削れば、2が加速していく。また、6に関してはT-35重戦車(ソ)開発中に、スターリンが『君ら、なんで戦車の中に百貨店作ってまうん?(意訳)*2』と皮肉られる始末であった。*3

 

とまぁ、こんな具合に多砲塔戦車は歴史の闇として語り継がれてゆくのである。

 


 

閑話休題(そんなことはさておき)

 

戦車の発展の過程で、設計者らはとある一つの限界に突き当たる。

 1.敵を撃破できる火力(敵戦車を撃破できる一点の威力+歩兵を薙ぎ払える面制圧の破壊力)

 2.敵の攻撃に耐えられる装甲防御

 3.逃げる敵を追って攻撃できる+敵から逃げるための速力

 

この3つの性能の両立が困難になりつつあったのだ。

 

世間的に1が加速すれば、2が必要になる。すると重くなり、3が不足するのだ。逆の立場で、加速する2に対し1で対抗すれば、反動を抑えるために大型化して3が足りなくなる。

3に重点を置けば、特に2が不足する、といった具合に、3つをすべて完璧、は困難なのである。

 

エンジンの出力は有限なのだ。

 

だとすればできることは1つ。

分業しちゃえ、だ。

 

それぞれの項目に特化させた複数種類の戦車を、混合して運用すれば隙間を減らせる、という発想だった。

 

そして、

 1,2に特化した『重戦車』

 3に特化した『軽戦車』

 1に特化した『駆逐戦車』

 1,2,3をそれなりにこなせるバランス型の『中戦車』

と分岐していく。

 

但し英国では、

 1に特化した『自走対戦車砲』*4

 2に特化した『歩兵戦車』

 3に特化した『巡航戦車』

と分岐し、歩兵戦車・巡航戦車は火力不足で、重装甲のドイツ戦車と戦うときに大きな時限爆弾を残すのである。また、対戦車砲の破壊に最適な榴弾が射撃不可な砲を積んだ一部は、対戦車砲にカモにされるなど大きな禍根を残した。

 

駆逐戦車は、火力で言えば重戦車相手でも撃破可能な、強力な火砲を備えている。

ドイツの駆逐戦車は、全周砲塔を諦めた代わりに、低い車高と、長砲身の主砲で高い貫通力を持ち、待ち伏せで言えば最強格に属する。*5より後期のものでは傾斜装甲を採用するなど、2でも性能が上がる代わり、3が低下していく。

また、アメリカは、(オープントップではあるが)全周旋回砲塔を維持しており、前期のものでは中戦車の車体を流用するなど3よりも2の比重が大きかったのが、新型になるにつれ、軽量化とエンジンの強化で2より3の比重が大きくなっていく。*6

 


 

そして、終戦間際になってようやく、1,2,3をすべて満たしたイギリスの()()()()()として、『センチュリオン』が登場する。*7*8

同時期に登場したアメリカのM26『パーシング』もそのような存在と言えるだろう。最初は重戦車だったが、後に中戦車へと種別変更される程度の機動力は持っている。

 

このパーフェクトな戦車が、MBT(Main Battle Tank:主力戦車)として各国機甲師団の中核へと成るのである。

*1
場合によっては3つ以上

*2
正確には「君たちは何故戦車の中に百貨店など作ろうとするのかね』

*3
後に無人銃塔が追加されたソ連MBTはある意味多砲塔といえるかもしれない。

*4
迂闊に前線に出る車種ではない

*5
その分扱いづらいとか禁句

*6
本当にドイツと逆

*7
終戦に間に合わなかったが……

*8
そしてこのセンチュリオン、恐ろしいのが、コンセプト以外はなんら革新的な技術を用いていない点である。ホントにイギリス戦車の集大成といえるだろう




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